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商品説明
少年期の禅的修道を原点に、「東洋哲学」に新たな地平を拓いた井筒俊彦。イスラームとの邂逅、カトリシズム、「意識と本質」など、哲学者・井筒俊彦の境涯と思想潮流を、同時代人と交差させ、鮮烈な筆致で描き出す。
目次
- 第一章 『神秘哲学』
- 無垢なる原点
- スタゲイラの哲人と神聖なる義務
- 預言する詩人
- 上田光雄と柳宗悦
- 第二章 イスラームとの邂逅
- セムの子−小辻節三との邂逅
- 二人のタタール人
- 大川周明と日本イスラームの原点
- 殉教と対話−ハッラージュとマシニョン
著者紹介
若松 英輔
- 略歴
- 〈若松英輔〉1968年新潟生まれ。慶應義塾大学文学部仏文学科卒。批評家。(株)シナジーカンパニージャパン代表取締役。「越知保夫とその時代」で第14回三田文学新人賞評論部門当選。
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紙の本
智の巨人の思想遍歴と学問経歴を紹介
2011/08/12 21:45
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
井筒俊彦は南方熊楠と劣らぬ智の巨人である。二十以上か三十以上の多数の言語を理解し資料を原文で読むのを原則としていることや、多くの論文を海外でも発表していることなどが共通なだけではない。その研究分野の広さと深さに唖然とし、呆然と眺めているしかない。 井筒俊彦は哲学を主として学問の対象としているため、南方熊楠の著作よりもより読むのが難しい。しかしいつまでも立ち竦んでばかりもおられない。山は高いだけ、谷は深いだけ、より少しでも歩み寄ってみたいものである。
この本は、井筒俊彦の思想遍歴、学問経歴を綴り、紹介している。どのような人からどのような影響を受け、どのような人にどのように影響を与えたかも、記述されている。一流の人は一流の人と交流するものである。その出会いが双方にとって更なる思索・思考の展開・発展を生み出す。書籍を通じた過去の人との場合も含めて、人との付き合いとはそうありたいものだ。(読書の場合でも、著者の執筆時には思いもよらない意味を、読者が読み解き付加する場合がある。)
科学者や研究者だけではなく技術者の場合も、昔は一つの専門領域を深く追求し関連する周囲の分野を広く浅く理解しておく、T字形の知識を持つのが理想であったが、今では専門分野を単数ではなく複数持つπ形や櫛の歯形が理想となった。井筒俊彦の場合は面だ。イスラーム哲学やイスラーム文学だけでなく、ギリシア哲学、ヘブライ哲学、キリスト教哲学、老荘思想などの中国哲学、仏教哲学などのインド哲学、すなわち古今東西の哲学や、宗教学、神秘哲学、言語哲学、言語学、ロシア文学ほかの文学、詩、和歌と、論考し究明する分野には限界がなく隙間がない。
この書籍が井筒俊彦の思想や思索や業績について、どの程度正確に詳細に解説しているのか、を判断する知識も能力もないが、その碩学ぶり知的巨人度合いをより一層認識した。井筒の学問研究の重心は、イスラーム哲学ではなく、「神秘哲学」、「言語哲学」、「意味論的解釈学」、「哲学的意味論」であることが、理解できた。井筒俊彦においては、イスラーム哲学は「東洋哲学」や「神秘哲学」の一部分であったのだ。また、哲学とは頭で考えるものではなくて、全心身すなわち自己の存在すべてをかけて体験するものであるらしい。さらに私にとっては、この本は良い読書案内ともなった。