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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2003.4
- 出版社: 藤原書店
- サイズ:20cm/299p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-89434-332-0
紙の本
帝国以後 アメリカ・システムの崩壊
ソ連崩壊を世界で最も早く予言した著者が、ハンチントン、フクヤマ、チョムスキーらを逆手にとり、「EU露日VSアメリカ」という新構図、「新ユーラシア時代の到来」を予言。イラク...
帝国以後 アメリカ・システムの崩壊
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商品説明
ソ連崩壊を世界で最も早く予言した著者が、ハンチントン、フクヤマ、チョムスキーらを逆手にとり、「EU露日VSアメリカ」という新構図、「新ユーラシア時代の到来」を予言。イラク攻撃以後の世界秩序を展望する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
エマニュエル・トッド
- 略歴
- 〈エマニュエル・トッド〉1951年生まれ。パリ政治学院卒業。ケンブリッジ大学歴史学博士。現在、国立人口統計学研究所資料局長。著書に「新ヨーロッパ大全」「移民の運命」「経済幻想」がある。
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紙の本
先を読むとはこういうことだ
2005/01/07 23:42
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高杉親知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
エマニュエル・トッドの魅力は、その射程の長さにある。本書をアメリカ批判と単純に受け止めるのは、それに賛成であれ反対であれ、誤りである。本書はアメリカの覇権が数十年以内に消滅すると予測するが、決してここ数十年にのみ通じる理論ではない。
特に興味深いのは、家族制度が社会を規定するという考えだ。例えば子供の内のただ一人が家督を相続する直系家族は、世界的には少数派であり、日本、韓国、ドイツ、ユダヤ等に見られるだけである。この家族制では世代が垂直的であり、兄弟は平等ではない。それが社会に反映されると序列や血統や継承にこだわる国家が生まれる。日独の奇妙な連帯感はここに由来するのだ。一方、兄弟が平等で結婚後も父に従う外婚制共同体家族は、強大な権力者と平等な平民からなる国家を生む。この家族制があるのはロシアや東欧や中国であり、共産主義が勝利した領域と一致する。
アメリカはしばしばローマ帝国になぞらえられるが、その社会が決してローマ的ではないことをトッドは証明する。アングロサクソンの絶対核家族では、親子、兄弟は独立的であり、遺産分配は遺言で決まる。社会は自由と差異を尊ぶ。一方、ローマ帝国を受け継ぐフランスとスペインは平等主義核家族であり、親子は独立的だが、兄弟は平等で、遺産は均分される。社会理念は自由と平等である。アメリカ独立とフランス革命の決定的な違いは、前者が自由だけを、後者が自由と平等を掲げていたことにある。ところが民族を超えた真の帝国を築くには人間の平等が不可欠である。平等を信じないアメリカは、民族にこだわらなかったローマ帝国にはなり得ないのだ。その証拠がアメリカでの白人・黒人間の結婚率の低さだ。ハリウッド映画を見ても分かるように、アメリカの白人と黒人は結婚しないどころか、恋愛すらしない。アメリカ黒人女性の内、白人と結婚するのは 2.3% に過ぎない。異常に低いこの値は、黒人が隔離されており、「人種のるつぼ」や「移民の国」というプロパガンダとは裏腹に、アメリカこそが世界の人種差別の中心であることを示す。そもそも国勢調査で人種を調べる異常な国なのだ。アメリカ人はせいぜい敵を作って身内の平等を実現するのが限界である。白人の平等は、先住民と黒人を排斥することで実現した。一方、ユダヤ人を受け入れた反作用でアラブ人を敵視するようになった。このような差異主義は世界には通用しない。
アメリカ経済が略奪的であり資本流入を必要としていることは、トッドを待つまでもなく明らかである。双子の赤字、製造業の衰退、貧富の差の拡大、企業の不正の横行など、アメリカ経済崩壊の予兆は、見る者には見えている。本書が最近のフランス外交の基本となり、ドイツがアメリカから離反したのは、何ら不思議ではない。分かっていないのは日本だけなのだ。
現在のアラブ地域の暴力化は、近代化に伴う発作だとトッドは言う。ヨーロッパで宗教戦争が起きたのは近代の直前だった。長い目で見れば、世界は民主制と非暴力に向かっている。アラブ地域では識字率が上がり、少子化が進みつつある。ところがアメリカはアラブ人を受け入れる理念も意志も持たない。この状況下でアメリカ国債を買い続け、また大量破壊兵器もアルカイダとの関係も無かったイラクに自衛隊を送るのは、失敗どころか狂気である。しかし日本は単に先が読めないだけなのだろう。1976 年、トッドが 20 年以内のソ連崩壊を予測したことを忘れてはなるまい。当時、ソ連の更なる発展を疑う者はいなかったが、トッドは乳児死亡率の上昇を見て、社会の劣化が始まったことを見抜いたのだ。そして今、アメリカ黒人の乳児死亡率は上昇に転じている。残り時間はあまり無い。アメリカは帝国幻想にしがみついて自壊の道を選んだ。日本にとって本当の危険はアメリカ衰退に巻き込まれることであり、存在しない悪の枢軸と戦うことではない。
紙の本
「豊かさ」ってやつぁ……。
2003/12/10 23:12
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
トッドさんは、フランス国籍のユダヤ人。国立人口学資料研究所所長。どうやって「旧ソ連の崩壊を予見した」のかというと、ごくごく単純化していうと、乳幼児の死亡率推移をみて、「あ。これは駄目だな」と思ったそうです。
「乳幼児のような弱者をきっちりと保護できない=それだけ社会全体のインフラが弱体化してきている」
という推論だそうです。それから、
「識字率が高くなると、女性の権利意識や性知識が増えて出生率が落ち着く。同時に、社会全体の知的レベルが上がって民主化が進む」
という仮説も書いております。主として、発展途上国の様子をみての仮説ですね。この仮説の後半はともかく、前半に関しては現状をみるかぎり、実証されつつあるようです。旧ソ連崩壊予言の件もそうですが、人口統計という専門知識に依った、かなり頷ける考え方だと思います。
アメリカと戦後世界の関係を大ざっぱに分類して、世界大戦への参戦から数十年の(他の国々から軍事的、経済的な面で助力を乞われる時期、アメリカの生産力で、そうした要請に応えられた時期)と、九十年代に工業製品の貿易収支が逆転して、グローバルな視点で見ると、国全体が完全に「生産者」から「消費者」へと転落してしまった状況を対比させ、その「実情」に国の指導者が無自覚である、としています。そして、書名が「帝国以後」であることからも容易に推察されるように、「アメリカが帝国として振る舞おう(=国際社会でのイニシアティブを握ろうと)すると、すでにそれに相応しい国力はないのだから、他の国々にとってかなり迷惑なことになる。逆に、ヘンにリーダーシップを取ったり他国に干渉をしようとせず、あくまで国民国家として振る舞おう(=一国家として内政に専念する)のなら、もともと地理的にも資源的にも人材的にもかなり恵まれているのだから、国際社会でも一目置かれる存在になり、優位に立てるだろう」としています。
もちろん、いろいろな統計的資料とか過去の「滅亡した帝国との類似点」をつらつらとあげたり、もっと詳細に説明されているわけですが。
巻末の訳者さんの「解題」でも触れられていますが、経済活動についての見方が工業生産力とかに偏りすぎてないか? とかは、やはり気になりますねえ。わたしは経済のことはぜんぜん詳しくないけど、それでも、現在の「世界経済」って、「生産力」だけで語れるほど単純なものではないのではないか? とかいう疑問は、ぽん、と浮かびます。読んでいていろいろと面白かったし、参考になる部分、頷く部分も多かったけど、部分的にはちょっと首を傾げるところもかなりありました。
酩酊亭亭主
紙の本
現在の国際関係における預言書的文書
2014/01/13 17:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:shiina - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際社会におけるアメリカ衰退論の起源がこの書物になります。
現在のヨーロッパ、ロシア、中国の政策は、この書物の内容に従って、政策を実行しているようです。
著者のエマニュエル・トッドは、ある意味現代におけるノストラダムスといったような存在のようです。
やはりヨーロッパ諸国は、植民地支配の終わりという歴史を経験しているため、策謀といったものに対して拒絶反応を示した結果、9.11事件をきっかけとした世界大戦には至らなかったのでしょう。
そのあたりが、現在の財政問題を戦争により解決しようとした米国ならびに英国の思惑どおりにならなかったことが、アメリカが躓くきっかけになったのだと私は思います。
トッドは一方的な経常収支のマイナスが米国衰退の原因と論じていますが、真珠湾のケースようにうまくいかなかったことが、非常に痛いところだったでしょう。
(英国がイラク攻撃のときに米国とともにのったことは、とても英国らしい行動だと思います。)
結果として、米国はさらに経常収支をさらに悪化させることになってしまったことになったと思います。
明らかに独国と仏国は己の願望を、この書物の内容をその裏づけとして実現してしまったわけで、どちらかというと、未来を予測するというよりかは、この書物によって、米国に大きな打撃を与える影響を最も多く及ぼしたと言えるでしょう。
最初の「開幕」の内容は一番最初に読むところですが、最後まで読んだ後もう一度読んだほうが、言っている内容がより分かりやすくなると思います。
紙の本
アメリカ似非帝国ただいま崩壊中
2003/07/14 00:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Snakehole - この投稿者のレビュー一覧を見る
アフガン,イラクとヤリタイ放題でいよいよ世界を統べる帝国たらんとしているかに見えるアメリカであるが,彼の国が真に世界帝国になりうるチャンスはとうに失われたのであり現在はその崩壊の過程にある,というフランス人歴史学者の挑発的分析の書。
まず,ソ連の崩壊以降世界は安定へと向かっているという基本認識が語られる。第三世界では未だイデオロギー的,もしくは宗教的熱病の発作のような争乱が見られるけれども,全体の傾向として発展と民主主義の確立へと漸進している……。ところがそうした方向を喜べない国が世界に一つだけある。それがアメリカ合衆国なのである。
例えば今話題のイラク新法,もし北朝鮮が攻めて来たら(毎日餓死者を出してるようなクニがほんとに攻めて来られると思ってるヒトが結構いるのは驚きだが)アメリカさんに守ってもらわなくちゃならないんだから賛成しなくちゃ,と言うヒトが結構いる。裏を返せば北朝鮮と仲良くできれば死ぬかもしれないイラクくんだりに我等が自衛隊を送る必要はないのであり,そうなると困るのは日本ではなくてアメリカだ。だからアメリカは軍事的に比較すればとるに足らないイラクやキューバ,北朝鮮を「悪の枢軸」と喧伝する。ヤツラと闘う正義のアメリカの言うことを聞け,というわけだ。
著者の分析では,そろそろアメリカのこの論理に基づく「演劇的小規模軍事行動主義」(ブッシュの言う「テロリズムとの戦い」の上の文脈による言い換え)の底が割れて来ている,ということになる。今回のイラク攻撃に関しても,アメリカにとって「欧州にある保護領」であるドイツが公然と異を唱えた。「極東の保護領である日本もいずれ……」という期待はいささか買いかぶりぢゃないかと思うが,ともかく今や「消費しかできない世界の略奪者」たるアメリカの崩壊は歴史の必然だという分析には,賛否はともかく一読の価値があろう。
紙の本
内容紹介
2003/04/15 11:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、ヨーロッパ中の話題を独占する注目の書、いよいよ完訳刊行!
70年代半ば、ソ連の崩解を世界で最も早く予言し、家族制度を軸にした独自の人類学的視点から世界を分析した気鋭の著者の最新著! 「ルモンド」、「フィガロ」紙や「レクスプレス」、「ヌーベル・オブセルバトワール」誌が激賞! 英・独・伊・露・西ほか世界各国で翻訳決定。
アメリカはもはや「帝国」にあらず──F・フクヤマ、S・ハンチントン、A・ネグリ/M・ハートを逆手にとり、凋落の一途を辿るアメリカ最後の狂気の本質に迫り、日欧ロの接近によるアメリカのユーラシア支配の崩解を予言!
【目次】
プロローグ
1.全世界的テロリズムの神話
2.民主主義の脅威
3.帝国の規模
4.貢ぎ物の脆さ
5.普遍主義の後退
6.強者に立ち向かうか、弱者を攻撃するか
7.ロシアの復帰
8.ヨーロッパの解放
ゲームの終り
《学芸総合誌・季刊『環』vol.12所収のエマニュエル・トッド氏へのインタビュー、『EUの将来と日本の役割──国際紛争に直面して』解題より》
「…真の帝国として世界を支配するアメリカの世界支配の仕組みを冷徹に分析しつつ、「強者(ヨーロッパ、日本)に挑む」ことを避けて、「弱者(イラク、イスラム圏)を叩く」アメリカの劇場的軍事戦略が、やがて警戒を強めるヨーロッパと日本、そして復活したロシアを互いに接近させ、ついにはアメリカのユーラシア支配の崩壊に至るという展望を示したこの本(『帝国以後』)は、果して発売以来センセーションを巻き起こしている。(中略)
それにしても『帝国以後』とは、センセーショナルなタイトルである。これが最近注目を集めたアントニオ・ネグリの『帝国』を意識したタイトルであることは、すぐに見て取れよう。ネグリの言う「帝国」とは、必ずしもアメリカ合衆国そのものを意味するわけではなく、アメリカ合衆国が頂点をなす世界資本主義のグローバルなネットワークを意味するようだが、最近アメリカを端的に「世界帝国」と捉える言説が盛んになっているのは、この本の鮮烈なタイトルの影響であろう。トッドはこうした風潮に対して、厳密な分析から成り立つ激烈な反駁 ——「アメリカ合衆国はもはや“帝国”にあらず」——を突き付けたわけである。」(石崎晴己)