紙の本
眠りの世界とうつつを二股にかける
2009/03/20 09:46
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
先祖代々続く本収集で屋敷の一階の大部分を占領した図書室。
理論としての知識にかかわる人間精神の歴史にほかのどんなものより深くこころをひかれていたわたしは、本の中に埋もれ、科学に関する古今の本を読みふけるうちに、一枚だけ離れた場所に飾られている先祖らしき人物の肖像画を目にする。
※まるではじめてその絵をみたような思いだった。いや、その絵がはじめてわたしをひきつけたようだった。※
後ろを振り返ると、背の高い人物が見えた。視神経の錯覚だと、また読書にとりかかるが、それから次々とおこる奇妙な現象に巻き込まれていく。
人影が立っていた場所にある書棚列のすき間、細工された半欠けの本、ほとんど踵までとどく燕尾服を着たやせこけた腰の曲がった老人、レーヴン氏を追いかけて不思議な世界をのぞいた。
※そのなにかがいましがたやって来て、こんどは次のなにかを待ちはじめたようだった。※
父の手記からさらに奇妙なことを知る
そして、またレーベンを追いかけて不思議な世界に行ったヴェイン。
屋敷の広間にある扉には開けることのできない世界がある。世界はいくつも存在する。その世界に通じる扉もたくさんある。
屋根裏の空き部屋の鏡、内に開くドア、外に開くドア、次元のこと、三次元よりもっと複雑な次元があること、そして、次元のうちのいくつかは、わたしたち自身のなかにあるくせに自分ではちっとも気づいていない。
うつつの夢、現実から7次元、天国とそれらいろいろな世界を行き来したヴェイン。
文章に流れがあるのでどんどん読み進んだが、長いファンタジーだった。
G・マクドナルド氏特有のものなのかすっ飛ばしがあると確認作業にページめくって戻り、閉じてほかの用事をして、また読みはじめたりしながら読み終えた長い長い物語でした。
「ローナはわたしの横にやってきて・・・」
??これは誰?
小人仲間から母と呼ばれている一番勇敢で背が高いあの娘のことなのね・・・でも突然すぎる。
そんなことはたいしたことではない。
もっとわたしに想像力をはたらかせて読めということなの?G.マクドナルドさん?
突然、ローナで、突然、マーラで、突然、リリスと呼ばれても当然のように話がつながっていく。
それまでは、魔女だったり、豹だったり、女王様だったり、様々な姿だったリリス。
アダム、イヴ、名前を変え、姿を変えて現れる畏敬の存在。
その世界の法則をいちから学ばなけれいけないような世界、、心慰める冒険をしているとは思えない、ドキドキする、どのページを開いても興味深くて不思議な世界の入り口があった。
英米の少年少女たちはこんな深い物語を読んでいたのかとあらためて思う。
それと同時に、私、この話どこかで読んだことがあるというデジャブも感じていた。
章の中のいくつかの話に、いつだったかは忘れてしまったし、どこかも思い出せないけれど、いつかどこかで読んだ覚えがあるというデジャブを感じたのだ。
※踏みしめていく草ひとつひとつを、わたしの素足は愛しているようだった。世界とわたしと、世界の生命とわたしの生命が、いまひとつになった。
小宇宙と大宇宙がとうとう手を結びあい、とうとう調和したのだ。
わたしはあらゆるもののなかに生きていた。あらゆるものがわたしの内がわにはいりこんで、生きていた。ある物に気づくということは、その生命とわたしの生命を同時に知ることだった。
わたしたちがどこから来てどこを故郷としていたかを知ることはーわたしたちがひとつだということを知ることだった。※
ワンネス、みんなどこかでつながっている、ひとつだと感じることができたら、恐怖は薄れるだろう。
これは仮説ですが
ヴェインは、心がもろい人だったのではないでしょうか。現実から逃れて、学校と屋敷の図書室を往復し本に埋もれる生活。
もしかして、父親も含めて家系的になにか弱さを抱えていたのかもしれない。
だが、現実から離れ、きびしく恐ろしい果てしない内面の旅を続けるうちに、目覚め、うつつの悩ましい悪夢にも自分なりの対応できるようになったのかもしれない。
※自分はいま目覚めているということ、それからもう疑いを抱かずにすむことを、心から感じとるはずだ。
※わたしは待っている。眠りながら、目覚めながら、待ち続けている。※
きっとまた何かがやってくる、次へいく準備ができた時に。
眠りの世界とうつつを二股にかけて、自分を信じて待ち続ける。
紙の本
大人のファンタジー
2002/02/08 14:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Shinji - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジョージ・マクドナルドが自らの思想体験をも織り交ぜて描く大人のファンタジー。めくるめく幻像シーンを体験しながら、読者の魂をも浄化に導く。荒俣氏の訳はまさにこれ以上ない名訳。
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序盤は読みにくかったのですが、次々と溢れ出る清浄なイメージに引き込まれました。美しい情景が沢山で、読み終わった後は気持ちが洗われたみたいにきれいになりました。
女豹にガシッと抱きつかれたい。
荒俣さんの訳がいいです。挿し絵の選び方も良いです。本作の為に描かれた絵じゃないんですが、なんか合っています。
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翻訳者で選んだりもします。この場合、文章がどうとかよりも、良いものを紹介してくれるに違いないという信頼から。
これは大当たりです。
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精神的というか、宗教色が強いものではあるけれど、それを抜きにしても(理解できなくても)素晴らしい1冊。
混乱もするけど、深みがすごいのでやめられない。
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個人的にファンタジーの最高傑作だと思ってる。
他のファンタジーにもっと凄いのがある、と感じる方が多いのは納得できるけど、
でも私はこの作品が本当に大好きで、私の中でこれを超える作品には出会えないだろうと思う。
ストーリーは、ある青年が、たまたま入り込んでしまった「もう一つの世界」で出会った
美女を追い求めて旅をするというもの。
この小説は、例えば指輪物語のような(ある意味)明快な冒険譚ではなくて、
生とは?死とは?本当に生きるということはどういうことなのか?魂の行き着くべき場所はどこなのか?
といった、哲学的・宗教的な要素が多分に含まれた小説。
ものすごーく説教的なファンタジーとなっているので一般的にはとっつきにくいだろうなぁ。
でも、マクドナルドの創造力は本当にすごい。
彼の世界も彼の思想も、物語から溢れ出んばかりに伝わってくる。
こんなに色鮮やかに世界を描く人っているんだなあ、と感嘆させられた。
…なんだか気持ち悪いくらいべた褒めしてしまったけど、それくらい価値のある作品だと個人的に思う。
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内容(「BOOK」データベースより)
時には雌豹に、時には絶世の美女に、時にはまたいたいけな老婆に変身するリリスとははたして何者か?ルイス・キャロルやトールキンをはじめ、カスタネダなどにも大きな影響を与えた、イギリスの幻想小説作家ジョージ・マクドナルドの最高傑作。夢見る若者たちの冒険を描いた瞑想的なファンタジー。
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内容が濃くてちょっと読んだら満足してしまうので、
最初のほうは1日1章読むのが限度。
小人たちが市に攻め込んだあたりからはどんどん読めた。
最初はアリス、最後のほうはナルニア国を思い出した。
レイヴン氏の正体にはかなりびっくり。
雨や川や風、そして沈黙・・・・
音のイメージが印象的。
特に水に関わる表現がきれいだった。
貸出延長してさらにそれもオーバー。
ちょっとずつしか読めなかったんですよう、許してください。
(10.04.18)
図書館。
励まし合って読書会課題図書。
(10.03.17)
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○2010/04/29
少し前、たしかヴィレッヂヴァンガードで表紙をみかけて、荒俣さん訳もされてるのか!と覚えて帰った。海外らしいカトリック色の強いゴシック系かな?と。
分かってはいたんだけど、読み終わってから、そっか、ファンタジーか…と思った。なんか壮大すぎて若干ついていけなかったかも。特に女王が出てきたあたりから。
結局レイヴンとのやりとりもいまいち掴みきれないし、仕組みが分からずじまいだった。でも残念ながら読み返す気がおきない。
でも小人たちがよかったなあ。可愛いけど怖い、色んな意味での子ども。
ラストは流れだけ感じてなるほど深いと。コツコツ読み進めてたけど、終わるたび疲れてた印象が残ってしまった。
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大学時代、友達に貸して貰いました。
一言いうならば、難しい…!!
ゆっくり読みな、と言われたけれど、寧ろゆっくりとしか読めません…!(笑)
キリスト教ドグマの寓意性、が含まれているそうです。
だけど、それを深く考えるのではなく、音楽を聞くように話を読むらしいです。(あとがきより
私的には難易度が高かった…!
確かにファンタジーで瞑想的で、面白い、と思うシーンもありましたが、話の全体を理解するには何度も読まないと…否、何度読んでもイマイチ理解できない。
不思議の国のアリスの作者ルイス・キャロルに影響を与えた作品ということにも驚きです。
世界を行ききする感じが、アリスとリンクするのかもしれません。
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読むのに時間がかかった。頭で「どういうこと?」と考えていると、全く先に進めない。理解を放棄しないとムリ。
宗教的、哲学的な内容を含んでいるようであり、ファンタジーと言ってもあまり気軽におつき合いできる内容ではない。読後感は、すっきりせず、消化不良。
でも、もう一度読む体力は無い....
幻想的な描写は美しいけど、ちょっと装飾過多な感じで、やっぱりサクサク読ませてくれない。
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ファンタジーの元祖だとか、幻想的な表現云々という評価はもっともだが、21世紀的に言うなら「旧約聖書の二次創作」。
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良質な古典ファンタジィ。
広がる豊潤なイメージを楽しみ、端々の表現にはっと気づかされる思いで読んだ。
こういう本を読むと、自分にキリスト教の知識がもっとあれば、より楽しめるんだろうなぁとは思うけれど、「イメージを楽しめばそれでよい」と訳者の荒俣氏も仰っているので由とする。
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いや~、何とも難解な、禅問答を読んでいるような物語でした。 実は風邪をひいていたという以上にこの物語の難解さにちょっと手こずっていたということもあって3月の読書がなかなかはかどらなかったのです。 で、KiKi は普段であればあとがきは読了後にしか読まないことにしているんだけど、今回はちょっとあとがきをつまみ食いしちゃったんですよね。 そうしたら訳者の荒俣さん曰く
「リリス」の頁を1枚でも展けば(ひらけば)、そこには、蝶に変身するみみずや、小鳥に変わる蛇、ホタルみたいにおぼろな光を放ちながらとびまわる本、緑の葛の絡まる広間で踊り狂う骸骨の群れ、地下室の寝台でめざめを待つ死人たち、そして2つの世界のあいだに楔みたいに挟まった一冊の本といったすばらしく幻想的なイメージが、洪水のように溢れ出てきます。 その想像力のものすごさに、あなたは圧倒されるでしょう。 わたしたちは、「リリス」のなかに含まれたキリスト教ドグマの寓意性に目を奪われている必要などありません。 この作品を、めくるめく色彩に満たされた音楽として味わうことが、まず重要だと思います。
とのこと。 これを読んで KiKi はある意味開き直りました。 そっか、理解しようとか読み解こうとか考えなければいいんだ・・・・・と。 そう思ったらある意味考え込むことがなくなって描かれている世界を脳内で映像化する以上のことはしなくなってスイスイと読み進むことができました。 もっともその映像化された世界は必ずしも KiKi 好みじゃなかったりして、「幻想」というよりは「幻覚」みたいな感じで、そんな中にも美しさがあったりもして、ひょっとして麻薬をやるとこんな感じがするのかなぁ・・・・と感じちゃった(笑) で、この物語に何が書かれていたのか?と問われると正直困っちゃうんだけど、「死」という概念をベースにした「自分探し」という感じでしょうか・・・・。
(全文はブログにて)
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ファンタジーなんて余裕だろとか思っててごめんなさい。
とても読むのに苦労しました。
世界観がめまぐるしく転調し、色彩豊か(といわれる)な表現が並び、想像力を働かせることにひどく苦労しました。
キリスト教的世界観にたいするなれもないため、理解し辛い部分も多かったです。
数多くのファンタジー作品に影響を与えてきた名著と言われていますが、他の影響をうけたといわれる作品が難解さまで影響されずにすんでよかったと思います。