紙の本
これ一冊で日本経済の何たるかがわかってしまうお買い得な本。
2005/05/10 17:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:子母原心 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはお買い得な経済本だ。何しろ新書版で日本経済の何たるかが一気に学べてしまうのだから、コストパフォーマンスのよさは計り知れない。これ一冊で日本経済に関する基礎知識は十分に得られる。「中級者」や「上級者」にとっても、知識の再整理として読むのにも適している。
著者が強調しているのは、「政策割り当て」の考え方だ。これは人々の創意工夫を引き出すには「構造改革」や「競争政策」などを実施する。一方、「物価や雇用の安定」には「経済政策」、とりわけ「金融政策」を割り当てるべきである、という考えだ。
これらを日本経済にも十分当てはまる。日本経済が戦後の焼け野原から、高度経済成長を実現できたのは、「競争政策」によって企業間競争が活発になったからだと述べる。その例として挙げられるのは池田隼人内閣の「所得倍増計画」だ。これは聞いたことがある人は多いだろう。この「所得倍増計画」こそは、「民間企業は市場機構と競争を通じて経済合理性を追求しつつ、その創意と工夫により自主的活動を行う」という「競争政策」なのだ。この時期に勃興した企業が、「トヨタ」「ホンダ」「日産」「松下」という現在でも世界に冠たる大企業である。
よく日本経済の発展に関しては、旧通産省主導による「産業政策」に拠るところが大きかったといわれている。しかし、「産業政策」は大して効果を持たなかったのが実情なのだ。上に挙げた企業は「産業政策」によって成長を遂げたのだ、といわれるとどうだろう。「それは違う」と思う人が多いはずだ。
逆に、「政策割り当て」に失敗したケースが、「失われた10年」こと1990年代の日本経済の低迷なのだ。日本の企業が、規制によって競争ダイナミズムを失い、それが経済停滞につながったといわれる。しかし、この1990年代は急速に失業率が上昇し、なんといっても物価の下落ーデフレに見舞われた時期でもある。こうした物価と雇用の政策は、「経済政策」すなわち金融政策の失敗によって生じたものだ。ところが、この経済停滞を「聖域なき構造改革」という「競争政策」によって打破しようとしている。この「政策の割り当て失敗」こそが失われた10年の原因なのだ、というわけだ。
また日本経済の過去の流れを振り返るのにとどまらず、現在の日本経済が抱える問題点を、この「政策割り当て」の観点から明快に提示していく。具体的にはまず、失業率やデフレの改善のためには「金融政策」を、すなわちインフレターゲットを導入することを提唱する。そして、競争メカニズムを引き出すために郵政や道路公団の民営化などの規制改革を提唱する。
経済を見るには複眼的な思考が必要なのだ、ということを教えてくれる好著だ。
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戦後復興からいわゆる失われた10年、そして日本経済の現状と将来の展望に関して非常によくまとまっている新書です。文章も非常に読みやすく、論理的にも明快で経済おんちでもわかった気になれます。ただこれはあくまで岩田先生流の経済解釈である、ということは念頭に置いたほうがいいかもしれませんね。なんにせよお勧めの一冊です。
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経済の回復より構造改革を優先させては、「改革」そのものが、危殆に瀕するという、「改革」の本格的論議が述べられている。基本的に著者は、「改革」については賛成しているのだが、デフレの状態にある社会を、マイルドな「インフレ」の情態にまで持っていかない限り、改革の意義が達成できないという。
■この点では、岩田の議論は、一貫している。日銀が、量的金融緩和の解除への意志を、年次目標も無く言い募っている現在(2005年11月)日銀の金融政策が、マクロ経済としてみた場合、正当なのかどうか吟味するには、岩田や、深尾の見解を抜きにしてはまっとうな経済議論は出来ない。
現実経済では、様々な要因により、市場競争が妨げられたり、マクロ経済が不安定になったり、環境が破壊されることがある。その要因は、競争を制限する規制、業者の利益を図る裁量的な行政、一部の業者を優遇する公共調達、受益者負担のない公共事業や補助行政、不十分な情報、市場の外部性、マクロ経済における「合成の誤謬」である。後者の二つが、構造改革によっては解決の出来ない事態である。
財投機関債と財投債の政府保証の及ぶ改革方法の手順の間違いのある郵政民営化、年金改革の賦課方式による若年層の負担増大の悲劇、地方財政改革の日本的悲劇、道路公団の民営化の上下二階方式の規制改革の不徹底と不備、英国の供給側の改革をそのままデフレ不況下の日本に当てはめる愚かさ、構造改革と少子高齢化の問題、日本の企業統治など、現在の日本が抱える社会の問題の縺れた解決の糸を解きほぐす便にはなるに違いない。
memmo
有料道路事業を経営する特殊会社は、自ら資金を調達して、採算性を見ながら、道路の建設費用を負担する。が、それ以上の費用については、公団の資産と債務を継承する保有・債務返済機構からの資金調達や、国・地方公共団体の資金負担を仰ぐ方法も残した。採算を度外視した道路の建設の可能性が残る。
■日経新聞を含めたマクロの経済の見方、特にマスコミの日銀の金融政策についてのコメントに飽き足りない人には、向く新書版だと思う。
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恥ずかしながら、初めて完読出来た新書。(たくさん放置中・・・いつか読む・・・)
基本的に「市場感覚」が全然ナイねんケド、なるべく身近な例に結び付けて考えてみると、経済も面白いなァと思い出しました。
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日本経済の過去・現在・未来を見渡せる良書。著者はリフレ派の代表格であり、マクロ経済の安定化のデフレ克服の重要性を説く。小泉政策の功罪も冷静にまとめられており、非常に有用。良い本です。
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恐らく近代日本史の知識があれば、この程度は既知であろう。
しかし、何故だかこれまで異常に毛嫌いしていたため、一切知識は無し。その食わず嫌いをようやく克服した一冊。
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高度経済成長期から平成不況までの日本経済の軌跡を経済政策に焦点を当てながら詳細に解説。
最後に、今の日本の課題と採られるべき政策を提示しています。
バブル崩壊、失われた十年といった言葉は知っていても、『なぜ起きて』『何が問題だったのか』がよくわからないという人にオススメ!
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大学生向けということもあり、非常に分かり易く戦後の日本経済がどのような変遷を遂げてきたのかが網羅されている。基本としては最善の部類に入る本。何故政府による産業政策が不要なのか、何故緩やかなインフレが必要なのかがちゃんと説明されてて、「インフレ=悪」と思ってる様な人ほど読んだ方が良。この程度の知識もないのにエコノミストとか言ってる人は凄いなぁと変な意味で感心する。
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-なぜ、戦後長い間、株主と経営者や従業員との間に利害対立が生ぜずにすんだのでしょうか-
アカデミックなタイトルですが、内容は、バブルやその崩壊、その後の経済停滞といった事象・現象が「なぜおこったのかを解明する」というアプローチなので、日本人なら誰もが肌で感じた「疑問」の回答を与えられ、スッキリすると思われます。後半は日本的経営の話や、環境問題にまで切り込み、問題が「今」の私たちの日常に近づき、飽きさせない。就活直前の学生と経営者には必須で読んでほしい一冊。
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日本経済についていろいろ触れている作品。
今後の日本のあり方や今までの日本経済の経緯について
論述されている。
自分はとくに失われた10年のところに関心があって
非常に面白い意見を聞くことができた。
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[ 内容 ]
わが国の経済は、この先、安定的な成長路線に復帰できるのだろうか。
不良債権処理、累増する国債、少子・高齢化と年金といった問題が山積している現在こそ、戦後の高度成長期から平成の「失われた一〇年」までを丹念に振り返る必要がある。
「日本的経営」の行方、コーポレート・ガバナンス、規制改革や構造改革などの課題を、さまざまな観点からダイナミックに捉える、最新で最良の日本経済入門。
[ 目次 ]
第1章 戦後復興から高度経済成長期まで
第2章 バブル景気から「失われた一〇年」へ
第3章 日本的経営とその行方
第4章 日本の企業統治
第5章 産業政策と規制改革
第6章 構造改革と少子・高齢化
第7章 日本経済の課題と経済政策
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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内容は充実していて、それでもって堅苦しくないから読みやすかった。今までの断片的だった経済に対する知識が少し整理された感じ。まだ詳しく知らない単語とかが出てきたから、もっと勉強してから読むとより楽しめるかもしれない。予備知識が全く無いと難しいかもしれない。
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高度成長から「失われた10年」を中心に、それらがなぜ起こったかについて丁寧に解説した本。
ニュースレベル程度の経済の基礎知識は最低限必要だと感じた。
起こった事柄の原因や対処方法がちりばめられており、逆に反対意見を知りたいと思わせるほど説得力がある。
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日本経済について歴史と政策について書かれた本。競争政策・安定化政策・小泉政権に焦点が当てられている。
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2回ほど読みました。日本経済の概要を理解するのに最適の書。日本経済の関する基礎知識を身につけたい方に最適の本です。
文章は平易で、バブルの問題、企業統治、産業瀬策などの現象を、非常に分かりやすく解説しています。