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戦争と平和 4 (岩波文庫)
不吉な彗星の年。軍務に戻ったアンドレイは父と妹に敵接近を急報するが、退避目前に老公爵は死去、マリアは領地農民の反抗に遭う。戦争の本質を探ろうとピエールはボロジノへ発つ。い...
戦争と平和 4 (岩波文庫)
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商品説明
不吉な彗星の年。軍務に戻ったアンドレイは父と妹に敵接近を急報するが、退避目前に老公爵は死去、マリアは領地農民の反抗に遭う。戦争の本質を探ろうとピエールはボロジノへ発つ。いまや貴族も農民もなく、全ロシアの危機が始まろうとしていた。【「BOOK」データベースの商品解説】
目次
- 第 三 部
- 第 一 篇
- コラム21 歴史哲学
- コラム22 ダンス
- コラム23 ナポレオン軍の将軍たち
- コラム24 ロシア軍の将軍たち
- コラム25 一八一一年の彗星と神秘の数字
- 第 二 篇
- コラム26 貴族の荘園
- コラム27 ロシアの農民
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紙の本
物語の中盤、トルストイの歴史論の展開が始まる
2006/07/17 09:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナポレオン戦争を描いたトルストイの不朽の大作の新訳、第四巻は第三部の1,2篇を収録。前の第三巻に収められていた第二部の後半は戦闘場面もなく、どちらかと言えば穏やかに進められて行く部分であったが、この巻に入りいよいよフランス軍はモスクワに押し寄せ、慌てふためくロシアの人々やボロジノの戦いの様子が描かれる。
物語りも半ばを過ぎたこの一巻は、ちょっと他の小説にはない特徴を現してくる。トルストイの「歴史論」である。物語の筋を進めるのでもない、歴史の展開の原因、人の意志といった事柄についての著者の考察は、第三部冒頭から始まってこの後も随所にはさまれている。著者の意見を人物に語らせたり描写で伝えるだけでは足りず、どうしても直接表に出て記さなければいられなかった作者の熱を感じるところである。しかしこのはさまれている著者の歴史論の部分から戦況の記述、登場人物の描写への移行は滑らかで、自然に融合している。トルストイの文筆家としての力はこんなところにも現れていると言ってよいだろう。登場人物の細かな心の描写、戦闘場面の詳細、ナポレオンやロシア皇帝の真にせまった言動や性格描写といった数多くのものが、「これらの一つ一つが集まって歴史となっている」という著者の論を証明しているようだ。
トルストイの描写は、この巻でも、どの一つをとっても丁寧に書き込まれ、そこだけを取り出しても読みごたえがある。ボロジノの戦いの細かな描写は、トルストイが原文に入れていたという図面などもあり、この部分だけでも戦記物として興味深い。この時代のロシアの貴族、領主と領民の関係などを記録したような場面もあり、登場人物の新しい動きもある。ボロジノの戦場に入り込んだ、戦闘には素人のピエールの様子などは、「こんなのんびりした情景があったのか」と思わず笑いそうなほどである。
トルストイはこの戦いを通じて、何を書きたかったのか。いよいよ著者が語り始め、ストーリーをこえて歴史を、人間が生きるということを読む者に考えさせていく。この先、どのように物語は、著者の考察は展開していくのか、と緊張が高まる一巻。