紙の本
熱狂とか旋風とかの代わりに
2008/02/07 01:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ大統領選挙の予備選の様子をテレビで見ていて最も気になるのは、
候補者の演説に熱狂する市民の姿だ。気になるというか、もっと正直に
言うと、羨ましい。
そんな現在のアメリカにますます興味を持って読んだのが本書だ。
アメリカの現代を知るには、政治の大きな物語や、FRB議長の
発言ばかり気にしていても、実相はなかなか見えてこない。
個人が緩やかにつながる地域社会-コミュニティの様子にこそ、
「今のアメリカ」は存在し、そこに生活する人間を感じることができる。
紹介される9つのコミュニティで印象に残ったのは、隔離された街に
富裕層が暮らすゲーテッド・コミュニティと、巨大な教会・メガチャーチを
中心に構成される街の話だ。格差と宗教の実態を体現するこれらの
コミュニティに共通する項目は、高度化した資本主義の世界だ。
あらゆるところにマーケティング的な手法が浸透し、生活の場としての
コミュニティをセグメント化していく。結果として多様になってしまった
コミュニティは、自由と安全がせめぎ合う資本主義社会の見本市のようだ。でもその雑多な感じは、分断された悲劇的な状態というよりも、「これから
もあれやこれやいろいろやりながら逞しくサバイバルしていくアメリカ」に
見える。
常にカウンターディスコース(対抗する言説)が現れることがアメリカの
強さだと著書は語る。従来の方法に対抗する仮説実験的な生活は、
スリリングでありつつもタフでしんどいものでもあるだろう。でも、
やること山積みで少数のヒーローではどうにもならない状況にある
アメリカで(いや世界で、いやいやむしろ何より日本で)カウンター
ディスコースの応酬こそが、ニューライフクオリティを生む鍵で
あるはずだ。
ヒラリー対オバマのような熱狂は、楽しそうで羨ましい気持ちもある
けれど、小泉さんが退いた日本では、もうそんなに何度も熱狂とか旋風は
なくていいとも思う。本書を読んだ後、熱狂のカウンターディスコースと
して味わいたいのは、コミュニティという生活の場にもっと関わってみる、
ライブ感だ。
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アメリカという国はよく分からないところが多々見られる。多様性、異人種性、格差、宗教。。その一面を『コミュニティ』というキーワードで覗いてみる。著者は人間社会学の大学教授で、短期間の間に、9つの地域のコミュニティを訪れている。メガチャーチを真ん中に据えた街。ミドルタウンと呼ばれた米国象徴の街。ディズニーが作ったミッキーもミニーも居ない街。フェンスで囲まれた安全な中で暮らす街。また死刑執刑務所のある街。広大な土地で農牧を営むも豊かになれない農民と、そこの土地を買いあさるセレブ。読み進めば読み進むほど、米国はひと言でくくれない国だと感じた。
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保守かリベラルか、伝統か未来か、グローバルか地域か、公か私か。原理主義、超高級住宅街、巨大教会など、9つのコミュニティの今日的状況を探りながら、アメリカ現代社会を読み解く。(梅田望夫のおすすめ)
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個人とも国家とも違う、「コミュニティ」に現代社会の可能性を感じました。もう一度読み直します。
アメリカを語る上で見逃せないその多様性とカウンター・ディスコース(対抗言説)の存在の大きさを感じた。
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世界の中心/先端としてのアメリカ(NYやシリコンバレーなど)以外のアメリカを知ることが出来る。
何と言っても、この人は文章のセンスがいい。顔に似合わず、すごくキザな文体をさらっと書ききってしまう。それだけでも、読む価値がある。引用の入れ方とかも、いちいち格好いい(随所にトクヴィルを引いてくる)
しかし、今回は雑誌連載の「ルポ」みたいなものなので、理論的考察が少ないのが少し物足りない。
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フラット化する世界で、これだけ各コミュニティが独自色を持って再生/発展しているということは本当に興味深い。制度や宗教による部分が大きいとしても、コミュニティでの市民参加や仕掛ける側のマーケティング活用は、学ぶべきところが多々あるように思う。何より、これらのコミュニティが伝統的なアメリカや昨今のグローバリゼーションへのカウンターディスコースとして、人々の手で新たに生み出されているというのが、驚くべきことだ。
こういった本こそ、いまの日本で読まれるべきと思えてならないが。。。
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【なぜ読み始めたか?】
○ 書評を見て、現代アメリカの社会状況を知りたいな・・・と思って読み始めてみました。
【どんな内容?】
○ アメリカに実際にあるコミュニティ(文字通りの“コミュニティ”だったり地域の自治体だったり)が紹介されており、それぞれは非常に特徴的であり、面白い。
○ 面白いけど、、はじめて聞く話でもない。
○ その9つのコミュニティは、著者の“意味づけ”に過ぎず、素材として提供されているだけで、それらをどのようにならべて、そこから何をつむぎだすかは、著者の言うとおり読者の関心や想像に委ねられている。
○ 終章で9つの素材を元にした著者の考えが展開されているが、簡単に言えば、「アメリカは多様だ・・・(だからそんなに簡単には言えないよ)」ということ??
【感想は?】
○ 読み始めた目的には適してなかったみたい。
○ 私は、はっきり言って、9つのコミュニティのストーリーのうち、2つか3つを読んだ時点で飽きてしまって、後はかなりのスピードでの駆け足で読みになってしまった。
○ 読み終えてのイメージとしては、9つのポイントを通りながらくるくると回ることによって、現代アメリカ社会の輪郭を描き出そうとしているような感じ?でも、アメリカ社会の輪郭って、この9つのコミュニティで網羅されてるの???
○ 輪郭のみで、中身がどうなっているのかは、わかりませんでした。
○ 「カウンター・デコース」(対抗言説)って言葉が、全体を貫くキーワードのような気がして、「だから多様だ!」みたいな感じで書かれてるけど、それってニワトリとタマゴなんじゃないの??「多様だから、カウンター・ディスコースが生じてる」ってこともあるような気が・・・・
○ 同時に借りてきて読んだ「そして戦争は終わらない」と比べると、取材がなんか雑のような気が・・・コミュニティの話なんだけど、“出来事や状況”が中心で書かれていて、“人”ではないんですよね。コミュニティに留まって内側から観察してストーリーを積み上げてる感じではないです。車で移動してフィールドワーク的な感じ。
【も一回読んでみる?】
○ 読んだことを後悔するほどでもないですが、もういいでしょう・・・
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タイトル通り、アメリカのコミュニティに焦点を絞り書かれた一冊。
全体像ではなく特定の街や区域に絞って書かれているため、概要が書かれている本よりも身近な感覚で読む事ができる。
例えば、”宗教の信者達が作った街”、”柵で囲われた街(Gated Community)”、”ディズニーが作った街”。
これらは外界との交流は取りながらも、そこにひとつの閉鎖空間を人工的に生み出している。
長い目で見た時に、協調性という点では心配があるが、価値観の共有や安全を求め、このような許可証が必要な街は今後も増えるのだろう。
何ともSFのような話だが「セキュリティー完備の大型マンション」という形で、実は日本にもGated Communityに近いものは存在している。
意図的に閉鎖された空間以外でも、治安の悪い地域が自努力で蘇った街、大農場や孤島の街、巨大教会(Mega Church)など、様々な場所にスポットをあて構成されている。
アメリカについて語られる時、『宗教』と『貧富の差』という言葉がいつも登場するが、まさに取り上げられているどのコミュニティもこのふたつの柱が顔を出す。
また、著者が繰り返し使用している「Counter discourse(対抗言説)」という言葉。
アメリカでは、ひとつの思想に対しては必ずそれに反対する論理が現れる。
これはアメリカに限ったことではないが、それが顕著であるアメリカの多種多様性がアメリカという国の強さでもあり、弱さでもあるのかもしれない。
文化や思想の分析ではなく、シンプルにコミュニティの紹介としてシリーズ化をしたらアメリカが、そして世界の素顔をもっと知る事ができるのかもしれない。
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2010/10/20 谷口ゼミ、良書。
・ザ・アメリカな、旧アーバニズムに基づいた都市が出てくる。
・メガチャーチ→1000人規模のゴスペル、集会
・ウォルマート跡地を教会に。
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久々に面白いノンフィクションを読んでいる。アメリカの、アメリカたる所以。宗教、セキュリティ、人種、貧困と格差。仕事と町の成り立ち。さまざまな、「アメリカ」のコミュニティを探り、その中で再生するもの、危惧するもの、アメリカの、普段のイメージとは違う、だけどアメリカだからこそのコミュニティが非常に興味深い。
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アメリカ在住時に、梅田望夫氏のブログで薦められていたので読んだ。
自分が知っていると思っているアメリカは、ホンの一部であることを理解した。
渡辺氏はフィールドサーベイが非常に緻密で、洞察力が素晴らしい。勉強になります。
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生まれて初めてアメリカに住むことになって読んだ本。
9つのコミュニティ、しかもそれぞれかなり個性が強いコミュニティを著者が訪問して書いている。
ものによっては、あまり入り込めなかったのか物足りないと感じる箇所もあったけれど、あくまでアメリカ入門書として面白い。
ブルダホフというアーミッシュに似たキリスト教原理主義のコミュニティ
ボストンのスラムのコミュニティによる再生
セキュリティにこだわって作られた塀に囲まれた街
ミドルタウンと呼ばれる所謂典型的なアメリカ
刑務所の街などを通じてアメリカの多様性を語る。
多様性は人種や広大な国土から容易に想像できるが、保守とリベラル、共和党と民主党、公と私などのコミュニティの性質を明確にして語られるので、意識して読みやすい。
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2010年1月19日慶應MCC夕学五十講にて渡辺氏の講演を聞いてきました。,,難解な講義を覚悟していたのですが、予想外に平易な解説とオバマ氏の政治志向、今後の展望が語られて興味深かったです。,,ポイント,・米国の「連邦」の意味合い, 自由への脅威か、それとも手段なのか,・1830年代のトクビル(仏)さんの視点,・個人主義を補完するコミュニティの重要性, ex.ゲートコミュニティ、メガチャーチ,・アメリカ社会の運動律, 建国期→南北戦争→ニューディール時代→レーガン保守革命→果たしてオバマ大統領は???,・オバマ政権の特徴, 内包的手法(多元的価値の尊重), ex.天皇へのお辞儀へのチェイニーの批判, プラハ演説(核兵器廃絶)、オスロ演説(ノーベル平和賞受賞式)→どちらも、理想と現実を彼なりに表現。,,質疑で、,オバマさんはクリントンさんへのつなぎであり、米国は中台紛争を引き起こして、アジアでの軍事的プレゼンスを増強を画策している。という見方はマンガ的なのか?,というものがありました。,渡辺さんは、あっさりとマンガですとおっしゃられていました。,,しかし、オバマ流内包的手法が失敗した場合の反動は大きいと予想されています。
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全米の中から特徴的な9つの街を選び、現地を調査した結果を記述することによって、「アメリカとは何か」について、人種、文化、生活様式、アイデンティティー等の観点から論じたもの。米国留学経験を持ち、米国での生活が長い著者の意見には説得力があり面白く読むことができた。この本を読む限り、アメリカは「Melting Pod」ではなく、「Salad Bowl」といえよう。人々はとけ込んで一体となっているというより、個々は形を保って混ざり合っているだけということだ。印象に残る表現を記す。
「キング牧師「私たちは鳥のように飛び、魚のように海を泳ぐこともできる。しかし、兄弟のごとく共にこの大地を歩むという簡単なことをまだ学べずにいる」」
「「要塞都市LA」(マイク・デイビス)「東ヨーロッパでは壁が次々と倒れていく時代にあって、ロサンゼルスのあちこちで壁が作られているのだ」」
「全米ライフル協会(会員数400万人)「人を殺すのは人であって銃ではない」」
「「アメリカは○○である」という定義づけを常に拒むカウンター・ディスコース(対抗言説)が存在する点にこそ(米国の)特徴がある」