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表紙に書き込まれた文章を読み、丸々一冊著者の野生狼との暮らしについて書かれた、研究的側面の強い作品と想像していたのだが、実は単に彼の自叙伝である。
実際に野生の狼の群れにいた期間の描写は50ページ足らず。口絵の写真もその時のものかと思ったら、のちに狼の飼育をした時のものでちょっと残念。
また、正直言ってあまり巧みな文章とも言えず、翻訳もいまひとつ。最近いくつか読んだ犬関連本の研究者たちの「祖先ではあっても、犬は狼とは別の生き物で、狼の生態を犬に当てはめて考えるのはうまくない」という見解とは逆の主張をしており、そのあたり疑問に思う点もいくつかあった。
だがしかし!
そのようなマイナス面を差し引いても、彼のとった信じられない(どうかしてるとしか思えない)行動にはただただ驚嘆、狼とのまるで動物同士のようなやり取りはエキサイティングで目が離せず、著者の並々ならぬ狼への愛と情熱に圧倒され、ほぼ一気読みしてしまった。
犬のしつけは狼の生態から学ぶべきといいつつも、罰は暴力でなく冷淡さで与える、悪い犬はいなくてしつけが悪いだけ、など、最近の犬の研究者たちと同じ考え方を示す部分もある。
う~ん、まあ犬の問題行動の根本には、飼い主の接し方の問題があるってことよね…。駄犬の飼い主としては耳が痛い…。
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特別なつながり
ノーフォークの田舎で過ごした子ども時代
窓辺にオオカミが
過ち多き青春時代
女王と国家のために
すぐそばで肌を寄せ合って
倫理性の問題
新生活への切符
ばれてしまった
どうにか生計を立てる
荒野の呼び声
持久戦
待った甲斐あり
ちいさな赤ちゃんの足音
危機一髪
ほかにやりかたがあるはず
繁殖のしかけ
板挟みになった忠誠心
家を見つける
ポーランド
ついに出会う
痛い教訓
オオカミの食べ物は身分で違う
己の身分をわきまえる
基本に帰る
家庭の大事さ
別れ別れ
同時に発生した不思議な体験
ソウルメイト
オオカミという奇跡
限界を突き破る
崩壊
私には夢がある
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朝日新聞の書評を読んで。
アメリカ・アイダホの山岳地帯で、約2年間、一人で山にこもって野生の狼の群れとともに暮らした男の評伝です。
人間にこんな生活ができるのかと、びっくりしました。狼の群れに受け入れてもらうため、自ら狼のような生活をします。風呂にも入らず、着替えもせず、雪山にテントも寝袋も持たず、食料は自分で捕まえる獣か狼に分けてもらった肉や内臓だけ。生肉だけで2年間!狼の群れに入れてもらうには偵察役の狼に自分の弱いところ(膝や首筋)を噛ませて、抵抗しない姿勢を見せる必要があるとのことで、群れと一緒にいる間は噛み傷だらけになっていたとか。
著者はイギリスの軍隊に勤め、レンジャー部隊の訓練も受けていた経歴を持つとはいえ。。。しかも、ごく最近の話。いや~びっくりした。
ハインリッチ先生のタフな生物調査記にも驚かされましたが、先生の場合は学問的な必然性があったのでぎりぎり納得できましたが、この男の場合は野生の狼群れの一員になって暮らしてみたいという内的な衝動が主な動機となっていて理解不能です。が、狼の群れと暮らした男が話す狼の社会の掟、そこから類推される家畜から狼を守る方法、イヌのしつけ方のコツなどは、学問的には実証が難しいと思われますが、さすがに説得力があり、興味深いです。
しかし、自分が風呂も入らず生肉食う生活するのは良いとして、恋人にまでそれをやらせるのには本当にどん引きしました。
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正真正銘、狼の群れの中で暮し、狼の生態を体験し、狼の保護や飼育下の狼を守り、犬の訓練などにも役立てている著者の体験。
群れの中に一人入り、狼に認められるまでひたすら耐え、恐怖に打ち勝ち、群れの最下位の立場で認知される。壮絶としか言いようのない試練。死と紙一重の体験。なぜここまでして狼を体感しようとするのか、その気持ちが最後まで理解できなかった。
多くの動物学者から賛同されない理由もわからなくはない。
でも、すごかった!
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オオカミが好きすぎてオオカミの群れと暮らした男性の話。常人だったら100%死んでる内容が刺激的でおもしろい。
オオカミから学ぶべきこと。simpleにsystematicに生きることがheartfulに感じられる不思議。著者から学ぶべきこと。変人と思われても諦めない!それが強み!!
そしてちょっとしたラブロマンスがあり。オオカミと同じくらい人間を愛せればいーけどね、難しいんだろうなあ。
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野生の狼と共棲した男の自叙伝。何が凄いって、オオカミ少女のように環境により狼と暮らした訳ではなく、自ら狼の群れに入っていって、受け入れられているところ。
こういう(良い意味で)頭がオカしい人のおかげで、我々が動物から学ぶことはまだまだ多いことが分かる。特に、狼の群れの組織構成には驚かされた。
また犬の話もあり、飼い犬との関係を確認するいいきっかけにもなった。
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この筆者を気がふれている、と感じるか、羨ましい、と感じるか。
私は後者。
子供時代にキツネの家族と触れ合った経験から、長じてオオカミに魅せられ、単独でオオカミ研究施設に乗り込み、とうとう野生のオオカミの群れとともに過ごす体験までしてしまった人。
オオカミの群れに下位の存在として受け入れられ、オオカミから食べ物を分けてもらい、生肉を食べオオカミと噛み合い森で寝起きし風呂にも入らず着替えもせず二年間。
なんという凄い体験。
私は風呂には入りたいし服も着替えたいし布団で眠りたいし野菜も食べたい。
でもこの作者をほんとうに心底羨ましいと思う。
私にはとても出来ないけれど、いえ出来ないからこそ羨ましく素晴らしい。
ともに過ごしたオオカミの群れを離れて去る場面はせつなく苦しい。
ヒトとヒト以外のイキモノとはほんとうに通じ合う事はできず互いに力で相手をねじ伏せようとする関係でしかない。
という事になっているけれども、そうでもないのかもしれない、と思わせてくれる。
相手のふところに入り(命がけで)相手のルールを尊重することで、ほんとうに深いところで通じ合う事は出来るのかもしれない。ヒトが作った言語という道具も使わずに。
オオカミとはこれほど通じ合えた著者が、妻(恋人?)のことを理解し尊重する事は出来ず、自分の仕事に巻き込んだあげくに破局するくだりには、所詮ヒトのオトコなのだなぁ、と溜息もでる。
ヒトとヒトの関係も、互いに相手を力で支配しようとするのではなく互いに尊重する事で深いところで通じ合う事は出来るはずなのだけれども・・・。ヒトとヒトの方が難しいのかもしれない。同じ種族だというのに情けない話だ。それとも同じ種族だからこそ、出来ないのか。同じ種族だという甘えがあるのかもしれない。
オオカミとの体験をヒトの世に帰ってきてから建設的に生かしているエピソードには希望が持てる。イヌとヒトとの関係にも同じように適用できるのだ。このぶっつけ体験によって得た知識を、生物学の研究者達が受け入れない、という点もヒトというイキモノの業の深さを感じてしまう。
われわれヒトも、そろそろ大人になって洗練された存在になりたいものだ。オオカミのように。
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ロッキー山脈の中、野生狼の群れと2年間、寝食を共にした男。野生の狼の群れの生き方は、自然と共生し、仲間と生き抜くバランスが取れておることに驚く。その行動すべてのなかに、様々なコミュニケーション言語が存在する。決して無駄な猟はしない。
狼が教えてくれる「無為」の生き方には驚愕する他ない。
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文字通り、狼の群れの中に入り暮らし、そして今も狼の群れと共に暮らす人の半自伝的ノンフィクション
特に犬を飼っている方は通じるものがあると思います
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正直、どこまで本当なんだろう…?現代の人間が本当に狼たちと同じ獲物の生肉を食べて何ヶ月も生きていけるんだろうか?…とそんなことも思ったけど、なんというか、こういう人っているんだな…と。近年もっとも好きだった作品のひとつミシェル・ペイヴァーのファンタジー「クロニクル 千古の闇」シリーズを思い出しながら読んでいた。狼、ものすごく興味深い!彼等の世界を少しでも垣間見られておもしろかったし、作者の人生もなかなか興味深いものだった。彼の番組、見てみたいなぁ。
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2013年9月9日読了。
私には珍しくノンフィクションです。
狼好きが高じて、冬のさなかに山にこもり、何か月にもわたって狼のパックに入って狼として暮らした男性の話。
その後も彼は、学界からは異端視されつつも、狼の保護に尽力してます。
狼の習性や暮らしぶりが人の目線で読める珍しい本。
かなり面白かった。
でも、彼のような生活は無理だな。
狼の写真もあって、狼好きにはたまらん本でした。
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どうして狼と「暮らす」必要があるの? 同じエリアで共存生活できればそれでいいので、群れの中で眠る必要はないでしょう?? と思って読み始めました。
のっけ(5ページ)から『頬から涙を流していた』という表記があってがっくり。目から涙を流すのなら分かるし、頬に涙を流すのも分かる。でも、頬から流せるのは、汗か血です。これは翻訳が粗いな、と覚悟しました。
幸いに覚悟したほど読みづらい翻訳ではありませんでしたが、どうして狼と「暮らす」必要があるの?は最後まで分かりませんでした。ともに暮らしたからこその学術的発見は多々あったにしても、妻の命を危険にさらし、動物の生肉(内臓を含む)ばかり食べて暮らす価値があることだったのかどうか。
人間関係にも体にもダメージを負いながら多くの発見をした著者の、研究成果が正当に評価され、自然と人間に寄与しますように。
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野生の狼の群れに近づき、仲間に入れられた男の物語。この人がいい人かというと何とも言えない、人間社会でははみ出しものだと言っていいだろう。それでもここまで突き抜けてしまえばいいんじゃないかと思わせる。
ショーン・エリスはイングランドのノーフォーク育ちで獰猛な牧羊犬や野生のキツネになつかれる子供だった。祖父に教えられ子供の頃から猟をし家族のために獲物を捕らえて来ている。そのためか補食動物よりなところがあり、農場で働き始めたころもキツネを殺せといわれたのにキジやウサギを殺してキツネに与えて逃がしている。軍を出た後、数年前に動物園で見た狼のことが忘れられず、ここから狼にのめり込んだ。
先ずはイングランド南西部のダートモア国立公園で飼育係の手伝いを始め、試しに夜間に狼の柵の中に入り狼が近づいてくるのを待った。臭いが大事だとは最初から気がついていたが、次に食事も変えなければいけないと気づく。1週間半続けると1頭の狼が近づいて来ていきなり膝の肉を咬み取った。ショーンは何も抵抗せず、2週間じっとしていた。狼は近づいて来て、匂いを嗅ぎ、突っ込んで来て闇に消える。狼の群れに新入りが近づくと、用心棒の狼が近づいて来て、軽く噛み付き(とは言っても人間には危険過ぎるが)相手が抵抗する気がないことを確かめ群れに入れていいかどうかを決める。次に匂い付けをし4〜5週間してようやく仲間を連れてくる。
鳴き声、遠吠え、噛み付き、匂い付けそして耳の位置、これらが狼のコミュニケーション手段だった。狼の群れはリーダーで意思決定者のアルファのつがいを生き残らせることが最優先だ。用心棒のベータが最初に他の群れや一匹狼に当たり、テスターは狼の群れの決まりを思いださせる。そしてオメガは狼通しの喧嘩の仲裁役で身分は低い。獲物を食べるときもアルファは内蔵、ベータは後ろ足などの筋肉等々階級がはっきりと決まっている。
イギリスの経験のあとショーンはテレビで見たネズパース族で「オオカミ教育センター」を運営するレビ・ホルトを訪ね、一文無しで専門的な教育も受けていないが昼は小間使いとして働き、夜は勉強するという条件ではずれのティーピーを貸し与えられた。最初の訪問は9ヶ月ほどで資金がつき再訪してからがこの本のハイライトになる。
アイダホ州の北西部ネズパースの赤いナポレオンと呼ばれた酋長ジョセフの2700kmに渡る逃避行のルートはカナダのシンリンオオカミがアイダホに至る古代のルートかもしれない。ショーンは一人森に分け入り野生の狼との接触を求めて行った。リュックサックは合流のための定点に残し、持っているのはナイフと罠を作るための針金や紐くらいだ。食べ物は罠にかけたウサギやリスに鳥などあとはナッツやベリーで肉は当然の様に生だ。なれるとともに行動範囲を拡げ、夜行性に変え狼の足跡を見つけるまで2ヶ月半、声を聴くのにさらに3週間、そしてファーストコンタクトがまたさらに3週間だった。そして次にあうのはまたさらに4週間後になる。その後1ヶ月は2〜3日おきに姿を見るようになり、さらに2週間後この狼の遠吠えに遠吠えを返してからやっとこの狼との交流が始まる。彼は5匹の群れの用心棒役だった。
イギリスの狼と同じように噛み付きのコミュニケーションが始まりついにはこの群れのボスのメスが倒れたショーンにのしかかり顔の目の前で唸る。そしてこのメスのショーンに対するしつけは終わった。とうとう一晩一緒に眠り、そして狼がショーンのために分け前ーシカの脚ーをモッって来てくれるようになる。最終的には森の暮らしは2年にも及び、体重も22kg落ちているがそれでも狼に養ってもらったといっていいのだろう。出来の悪い仲間だとしても子供が生まれた時には赤ちゃん狼に食事をねだられるようにもなっている。口の辺りを咬んで肉を咬んで吐き出せと催促してくるのだ。またショーンがクマに気がつかず水を呑むために沢に降りようとした時には1頭が体当たりして止めショーンを教育したりもしている。
後半ではショーンは飼育下の狼に野生のコミュニケーションを教える側に回る。こちらのドラマも興味深かった。しかしこれだけ狼とのコミュニケーション能力が取れるショーンが人間相手だと上手くいかない。付き合う相手は次々見つけるのだが狼にのめり込むあまりすぐに別れるはめになっている。狼の群れと暮らした男は人間の群れで暮らすのはあまり得意ではないらしい。狼の方もどうやって受け入れるかどうか決めたのだろう、人間が食料だと思われていないから大丈夫なのか?
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オオカミに育てられて、人間の世界に戻ってくる話は多いが、オオカミの群れの一員となる話は圧巻。
「著者のオオカミに関する生態学的発見は、学界の全面的支持を得ていないが、オオカミ自身およびオオカミと犬の共通性に関する知見は直接的な観察に基づいており、説得力がある」
説を唱えるに当たって、実物から得た1次情報より強いものは無い。
しかし、普遍性にかける場合もあるので、この辺りのバランスを中央あたりに重心をおいて取るのではなく、両極に重量をかけてバランスをとれる人が真に優秀なんだろうな。
常に強烈な二極と二律背反を抱えて暮らすのはしんどそうだけど…
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タイトルどうり狼の群れと暮らした男の物語でした。
狼の話しだけでなく、著者の子供時代から話しが始まり、狼と出会い、現在に至るまでが書かれています。著者の子供時代の話しはまるで架空の小説のようで、個人的には凄く憧れました。冒頭の部分では狼が出てこないので、いつになったら出るのかなと思いながら読み進めていましたが、後々になってその頃の体験も全て繋がっていることが分かります。
他の狼の書籍では語られないような本当の狼の姿をこの本を通してみる事ができ、情景描写も細やかに書かれているので想像しやすいです。よく一冊でまとめたなというぐらい量に多いですが、内容は濃く、読み終わったときの達成感も大きいです。
狼好きの自分としてはとても読み応えのある本でした。狼好きじゃない方でも、自然と人間の関わり、これから私達が他の生物のためにどうしなければいけないか、そんなことを考えさせられる作品でした。