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- カテゴリ:一般
- 取扱開始日:2012/11/08
- 出版社: 岩波書店
- サイズ:20cm/515p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-00-022195-5
紙の本
われらが背きし者
著者 ジョン・ル・カレ (著),上岡 伸雄 (訳),上杉 隼人 (訳)
カリブ海の朝七時、試合が始まった―。季節外れの豪奢なバカンスが、ロシアン・マフィアを巻き込んだ、疑惑と欲望の渦巻く取引の場に。どうして私たちなのか、恋人は何を知っているの...
われらが背きし者
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商品説明
カリブ海の朝七時、試合が始まった―。季節外れの豪奢なバカンスが、ロシアン・マフィアを巻き込んだ、疑惑と欲望の渦巻く取引の場に。どうして私たちなのか、恋人は何を知っているのか、このゲームに身を投げ出す価値はどこにあるのか?政治と金、愛と信頼を賭けたフェア・プレイが壮大なスケールでいま、始まる。サスペンス小説の巨匠、ル・カレ極上のエンターテインメント。【「BOOK」データベースの商品解説】
ペリーとその恋人ゲイルは、カリブ海のアンティグア島で「生涯一度」の贅沢な休日を過ごしていた。しかし、ロシアのマネーローンダラー、ディマとその家族に出会い…。政治と金、愛と信頼を賭けたフェア・プレイがいま始まる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョン・ル・カレ
- 略歴
- 〈ジョン・ル・カレ〉1931年イギリス生まれ。オックスフォード大学卒業。「死者にかかってきた電話」で小説家デビュー。ほかの作品に「寒い国から帰ってきたスパイ」など。
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紙の本
すべてはこのエンディングのための序章であったのか!
2013/04/29 22:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジョン・ル・カレのスパイ小説の感想であらすじには触れることはタブーなんだ。
冒頭から読者を煙に巻く。
しかも上品に巧みに。
だから煙に巻かれること自体を楽しむ。
そういう仕掛けになっているからです。
ペリー(スポーツ万能で成績優秀、血統もよい)が恋人の弁護士・ゲイルと訪れたカリブの高級リゾート地でロシアマフィアの大物らしい人物・ディマとテニスの試合をする。ディマにはいかにもマフィアのボディガードとおぼしき連中がくっついていて、さらに陰気な妻と怪しげな子どもたちが一緒なのだ。場面は突然変り、いや、時間も飛んでいるね。二人が英国諜報員らしいルークとイヴォンヌからどうやらカリブでの出来事を尋ねられている。
とにかくなにがなんだかわからないまま、ここは読み落とさないようにしようとその気にさせられて、丹念に読んでいくことになるのだが、それがまさにル・カレの筆力だ。
カバー裏の紹介文だってこの程度です。
「カリブ海の朝七時に、試合が始まった………。
季節外れの豪奢なバカンスが、ロシアン・マフィアを巻き込んだ、疑惑と欲望の渦巻く取引の場に。どうしてわたしたちなのか、恋人は何を知っているのか、このゲームに身を投げ出す価値があるのか?
政治と金、愛と信頼を賭けたフェア・プレイが壮大なるスケールでいま、始る!」
語り手だが、ペリー、ゲイル、ルークとイヴォンヌ、そしてディマとめまぐるしく変る。ということはだれもが真実だけを語っているわけではない………ここはしっかり押さえておきたい。だいたいスパイは謀略というプロの嘘つきである。しかも嘘をついているばかりでもないだろう。それぞれが思い込みあり錯覚あり誤解あり推定ありで語っているのだろう。もちろん真実だって語っている。
諜報員・ルークの上司は上級職員のヘクターであり、ヘクターを動かせるのが諜報部事務局長・マトロック。マトロックを指図できるものは?ルークもヘクターもこのディマ・オペレーションの一部しか知らないのです。マトロックですら全体を掌握しているとは思えない。
つまり登場人物の誰も全体像がつかめていないのですから、まして彼らの語りを聞かされる読者が、なにがなんだかわからないことになっても、仕方ないのではないでしょうか。
紹介文はル・カレを「サスペンス小説の巨匠」としています。「スパイ小説の巨匠」としなかったところがミソですね。この作品は現代の巨大マネーゲームの裏舞台を描いている。国家の枠組みをメルトダウンさせかねない経済戦争では、国家に忠誠を尽くすとされるスパイの出番はもうなくなったよと、ル・カレがメッセージをしているような気がします。
ロシアン・マフィアのボス・ディマをアメリカはどうしたかったのか?
誰がどういう作戦を立案しどのようにリードしたのか?
なぜそのようなエンディングになったのか?
少なくともここに登場した人物にはわからなかった。
わたしにはいまもって謎が謎のままくすぶっています。
そんな小説は小説として破綻している………?
いやぁそうではないでしょうね。
現代という魔物は事実だけはしっかりと積み重ねはしますが、因果を結ぶ主役がなにものであったかを不明にしたままに、あれよあれよと事態を進めていくような気がします。
『われらが背きし者』のゾッとさせるリアリズムです。
イライラがすっきりと解消されればいいのだが………、最後もなかなか意地が悪いぞ。
よくよく現実に立ち返れば、これ以外の手はない究極の一件落着。
まさか!と、このエンディングは決して忘れることができないでしょう。