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紙の本
事件記者コルチャック (ハヤカワ文庫 NV)
著者 ジェフ・ライス (著),尾之上 浩司 (訳),真崎 義博 (訳)
わたしの名はカール・コルチャック。新聞社に勤める事件記者だ。ボスのビンセントとやりあいながら、カメラとテープレコーダーを武器に、今日も事件の渦に飛び込んでゆく…1970年...
事件記者コルチャック (ハヤカワ文庫 NV)
事件記者コルチャック
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商品説明
わたしの名はカール・コルチャック。新聞社に勤める事件記者だ。ボスのビンセントとやりあいながら、カメラとテープレコーダーを武器に、今日も事件の渦に飛び込んでゆく…1970年代に熱狂的な人気を得ながら、わずか1シーズン放送されただけで終了し、しかし現在に至るまで多くのコンテンツに影響を与えてきたカルトTVシリーズ。その幻といわれた原作小説を発掘!闇の世界に跋扈する連続殺人鬼を追う2話を収録!【「BOOK」データベースの商品解説】
事件記者カール・コルチャックは、カメラとテープレコーダーを武器に、今日も事件の渦に飛び込んでゆく−。1970年代に熱狂的な人気を得た伝説のTVシリーズの原作小説。闇の世界に跋扈する連続殺人鬼を追う全2話を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ラスヴェガスの吸血鬼 | 尾之上浩司 訳 | 15−291 |
---|---|---|
シアトルの絞殺魔 | 真崎義博 訳 | 293−483 |
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書店員レビュー
子供の頃…
文教堂 三軒茶屋店さん
子供の頃「事件記者コルチャック」というドラマが大好きだった。
コルチャックという名の、飄々とした中にも、どこかユーモラスな雰囲気のあるオジサン記者が、怪奇な事件に挑むシリーズだ。
その原作が先日早川文庫で出た。今になって、なんでまた? と思ったが、読んでみて、その理由がわかった。タイトルに込められた心意気のようなものも掴み取れた。
僕は子供の頃、コルチャックのドラマが大好きだったと書いたが、実は「事件記者~」というタイトルは、あまり好きではなかった。
コルチャックは日本で言うなら、怪奇大作戦のような話だから、タイトルもホラー色を強く押し出すべきだと、僕は思っていた。それをしないのは、視聴者に対しておもねっているからだと、そう感じられて、それが凄く嫌だった。
「ホラーの要素を含んだ話だとわかると馬鹿にされて見てもらえないから、社会派ドラマみたいなタイトルにしよう」
そんなふうに考えて「事件記者~」と付けたんじゃないかと、そう思っていた。
今回、原作を読んで、考えが180度変わった。この話は確かに「事件記者コルチャック」というタイトルでいいのだと。いや、そうでなくてはならないとすら思うようになった。「魔界記者~」といったタイトルでは逆にだめなのだ。なぜなら、これはあくまで、コルチャックという『事件記者』の物語だからだ。立ち向かっていく相手がヴァンパイアだったりするのは、言ってみれば「たまたま」なのであって、この話の主題はそんなところにはない。この話の肝は「真実を伝えようと、ただそのことのみを、がむしゃらにやり通す男のかっこよさ」だ。
権力にたて突き、ボコボコに打ちのめされても立ち上がる。酒に逃げ、友に逃げられても立っている。やめろと忠告されても立ち向かっていく。
コルチャックは言う。「だからといって、生きかたを変えたりはしない」
世渡り上手がかっこいいと思うひともいるだろう。でも僕は、情けなくても、だらしなくても、みっともなくても、歩みを止めないというのも、かっこいいと思うのだ。
時にはオロオロ歩き、時には逃げたりもしつつ、しかし概ねベクトルが前に向かっている(その先は真っ暗闇なのに)、そんな生き様に憧れるのだ。
ジャーナリストが凶悪な事件に出会って、心身ともにズタボロになりながらも真実を追い求める様を、リアルに描ききったこの作品。敵こそ、ヴァンパイアという、わかりやすい悪に置き換えられてはいるが、実際に世に蔓延る様々な悪を当てはめて読むと、骨太な社会派ドラマとしての「事件記者コルチャック」が浮かび上がってくる。
上から叩かれ、下から突かれ、それでも歩みを止めることが出来ないビジネスマン諸氏よ、今こそ「事件記者コルチャック」を読むべきだ。
(評者:文教堂書店三軒茶屋店 中川浩成)