紙の本
着地点がどこにあるか、最後までわからなかった。
2015/09/21 16:33
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるデリヘルを核に、六人の視点人物によるそれぞれ別の物語が微妙に関係しながら紡がれていく。その六人の中にはデリヘルの娘もいる、客もいる、けれどデリヘルとは全く関係ない、別の部分で間接的に関わってくる人物もいる。大人も子どももいて、雰囲気がそれぞれ見事にちがう読み物として書かれている点は読みどころのひとつ。
この小説全体としてはある事件を追っているが、その当事者たちの視点では描かれていない点も作品の出来映えのよさに繋がっている。読者は、徐々に見えてくるその事件に意識を向けながらも、目の前に展開される別の人物の物語を読む。そうすることで話は複層性を帯び、奥行を増す。
六話のうち、特に最初のほうはゆるやかな繋がりで関係し、後半にいくに従ってその事件の深部へ切り込んでいく。その緩急のつけ方がうまいし、いっぽうでそれぞれの話としてもきっちりまとまっている。
ただ、幸せな話はあまりなく、どっちかというとざらざらした後口の話が多い。中には希望を感じる話もあったが、かなりひどい話もあって、幸せ感を求める人にはどうかな…という感じ。最後の話、つまり一連の事件の謎がわかった時のとらえ方も人によって様々だと思う。私自身は、疑問を感じるところもあったがラスト自体はよかった。
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読了後、上手く素直に感想が出てこなくて少し困惑してしまった作品。評判が気になり思わずネットでレビューを検索…「説教臭くなった」というレビューに思わず吹き出してしまったものの…ちょっぴり分からなくもない(笑)
『at Home』あたりから、ふと作者の年齢を思わずにいられない雰囲気があって…でも、決してそれが嫌というわけではなく…どちらかというと微笑ましい印象を持っていた。
ただ、基本的に本多さんは少年少女に託し過ぎというか、背負わせ過ぎ…と思わなくもない。
そして、その重荷をいつも解放してくれるのは大人ではない青年…それが時に寂しくもある…。
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「どうせ働くなら、うちでやらない?」
そう声をかけられたのは、夏休みが終わったばかりのキャンバスの中にあるベンチでのことだった。声の主に目を向けると、同じ学科の早瀬くんが私の背後に立っていた(本文より抜粋)。
大学生の早瀬が経営する店「ピーチドロップス」は、表向きの商売の裏で、ある人物の特定とそのための篩だしが行われていた。
バラバラだと思われた点がひとつの線になるとき、ある事実が浮かび上がる......!
2015年6月24日読了。
バラバラに思えた各章が実は点で、1冊の本としては線になる、という仕掛けのミステリー。
本多さんの温度を感じさせない独特の文章は相変わらず。以前ならその中に優しさや切なさが感じられたのですが、今回はやりきれなさが残りました。
ミステリーとしては○なんだけど、本多さんの作品に求めているものがどこにもなくて、ちょっと淋しく感じてしまったので、間をとって★は3つにしておきます。
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やっぱり本多孝好の文章は好きだな。嫌味もないし、臭くもないし、しつこくもない。あっさりとした文章なのに深みがあるというか。
やはり、この人は『死』がテーマなのか、あるデリヘル嬢(経営者でもあった)が失踪してしまい、その娘と、もう一人の少年(彼氏と言うべきなのか)が中心となって、2人にまつわるそれぞれの人物が中心となる連作短編集のような形で物語が進んでいきます。
失踪は事件なのかそれとも・・・。
いろいろな登場人物が、それぞれの章の中心となり最後にはきれいに結びつく物語は気持ちが良い。
とにかく読んで損はない小説です。
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母親である渚の消え方が納得いかない(´-﹏-`;)
そのために手を汚したり、関係者でもない人を巻き込んだりと少し身勝手すぎやしませんかと小一時間ほど説教したいわ(笑)
売ると買うは需要と供給の関係だし、必要悪かもしれないので否定はしないけど人に言えない仕事であることの部類だよなあ。
家族にも内緒にしたい仕事はするもんじゃないよな(¯―¯٥)
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ナイーブ系だった本多さんも遠くまでやってきたもんだというのがここ数年の感想です。今回もしかり。
女子大生がなんらかの事情で風俗のアルバイトをする1話目はどこかの石田さんっぽかったのですが、話が進むにつれとんでもないところに連れて行かれた感じがしました。冷や汗もんです。
そのデリヘルにまつわる連作集かと思いきや、3話目の小学校の先生からサスペンス色が濃くなって、物語が転がります。
ラストのオチといい、見事な着地でした。ただし、翼がやった罪がこうも軽く扱われちゃなぁ、善良な豊を巻き込むなよって老婆心ながら思いました。
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★2015年7月18日読了「君の隣に」本多孝好著 評価B
久しぶりの本多孝好作品。彼らしい今風の題材を上手に扱ってそこにある人間模様を描いている。今回は、社会派サスペンスとしてはそこそこの出来。しかし、私刑部分は、それで跡形なく処分できるのかしらとちょっと筋の甘い部分も垣間見られる。
舞台は横浜のデリヘル。そこの女性経営者が、自ら客をとった日に、子どもを残したまま失踪。彼女に人生を救われた者が、子どもを面倒見て、失踪後を追いかけると、、、、
デリヘルを舞台に、そこに何の考えもなく飛び込む軽い女たちと生きるためにやむなく身を沈める女たちなどの結局歪められた人生と彼女たちに対する世間の偏見と公権力の冷たさ、それを利用する男達、それでも生きようとする中で次第に彼らの人生のオリは溜まっていく。。。
格差社会が顕在化してきた現代日本を象徴するような作品ではある。決して明るい内容の作品ではないが、ある意味このような世界とは関係なく生きている私にとっては、改めて考えさせられる作品でもある。
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とても興味深い作品でしたよ~
デリヘルという風俗の業界を舞台に日常にある心、それと並行しながら持ち合わせる屈折した心をミステリーとして成立させた作品
連作短編(作者はこれに分類されることは心外だと述べていますが)の形でお話は進みます
女子大生、中年の会社員、学校の先生、元警察官、中学生の男子、闇を抱えた男
共通して登場する人物がデリヘル『ピーチドロップス』を営む大学生
彼はある女性の行方を追っています
彼に希望を与えたある女性・・・・・
生きているのか、死んでいるのかも分からない・・・・・・
そして、彼と同居する女の子
女の子の素性とは・・・・・
謎だらけな前半戦から人の表と裏を描き出し、彼ら彼女らの真実を晒します
ひとつひとつのエピソードにとても心惹かれて
たぶん多くの人が持ち合わせているのだろうな・・なんて想像させられる・・他人には隠し続けている・・いけない心
結末はちょっと意外で肩すかしをくらった感もあったけど
繊細で、もろくて、痛々しくて、でも、やさしくて、とても雰囲気のある作品でした!!!!!!!!!!!!!!!
ちょっと大人な性描写がありますのでご注意です
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何かが起こっているんだろうなと言うことは確かにわかるのですが、ページが進むにつれてその「何か」が徐々に明らかになっていく様にはただただ嘆息させられます。加えてこの結末。何も言うことはありません。
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翼と早瀬くん。
二人に関わる人々から、二人の生き様を浮かび上がらせる。
翼が幸せになりますように。
2015年8月12日
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デリヘルを舞台とした、6篇の短編集。
全篇、中途半端な感じがぬぐえない。
登場人物の「デリヘル嬢」が
「好きで体を売りものにしてる女なんていない。人としての自尊心を切り売りするようなつらい仕事。つらい仕事なんだから、自分のためじゃなきゃやってられない。…それが当たり前。なのに、つら過ぎる仕事だから、それじゃ保たなくなる。誰かのためにやってるんだ。そう思わなきゃ、やってられなくなる。そこにあいつらは、つけ込んでくる。」
という場面がある。
僕は女でも、デリヘル嬢でもないので、分からないところはあるんだけど、どんな仕事にも多かれ少なかれ当てはまるところはあるのではないか。
僕の職場は、相対的に言えば恵まれた職場であるといわれるとは思うが、精神病になる人も、自殺する人もいる。
風俗嬢を「つらい仕事」の代表、象徴として題材にしたこと、今回の作品の背景にしたことに、どこか浅薄なものを感じてしまう。
ま、それは、僕だって苦しいんだ、と言いたいがために感じる、筋違いな違和感なのかもしれないけど。
でも、ほんとはそこを突き抜けて共感できる、作品を待っている、ということのなのかもしれない。
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『感心はしなかった。が感嘆はした』渚の生き方私もそう感じましたが
翼はちゃんと居場所見つけられます。自分のしかるべき場所わかっていれば強くなれます。
豊は本当いい子だなぁ。
ラストいいです。
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従来の本多さんの作品とは、
ちょっと趣きの異なる
性風俗の世界を扱いつつ、
また、そう云った際どい描写もありつつも
やはり、
うんうん、やっぱり本多作品やなぁ、
と云う独特の雰囲気は漂っている。
詳細は、⇒ http://noinu.blog.fc2.com/blog-entry-104.html
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ダブルミーニング
風俗を舞台としたかなり変わった背景ではじまる物語。しかし、そこにはありきたりではない広くて大きな愛が隠れている。物語の中の全ての出来事は虚構であり無意味だけど、ラストにはありったけの真実が横たわる。そうか、タイトルはふたつもみっつも意味を含んでいるのか。感心した。そしておもしろかった。
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★★★★☆
愛ゆえの冷たい魔法
【内容】
伊勢佐木町のデリヘル「ピーチドロップス」。店長の大学生(早瀬俊)を中心とした愛と喪失の物語。
【感想】
前半の2章を読んだ時点で、あぁデリヘルのオムニバス(連作)なのかと思いました。
しかし、3章であれ?となり5章でおいおい!6章で愕然!!!
大事なことを登場人物自身で説明させること無く、落としこむ技術は"流石"の一言!
タイトルが、青春ラブストーリーみたいで残念です。
ぼくなら「冷たい魔法」にしますかね。もしくは「ピーチドロップス」かな。
「ストレイヤーズ・クロニクル」であさっての方向に言ったしまった、本多さんがパワーアップして戻ってきました。
wowowさんは映像権を買いに行きましょう。1章は無くても平気なので5話形式でいけますぞ。