紙の本
人類への警鐘
2018/11/26 19:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1930~50年代にかけて、旧ソ連、バルト三国、東ヨーロッパにおいて未曽有の大量殺戮が繰り広げられた。スターリンの政策的大飢饉、知識人大粛清、ポーランド人知識層抹殺計画、ヒトラーのユダヤ人絶滅政策。
二十世紀における最大級の犯罪を、著者は膨大な文献と丹念な調査によって明るみにした。政治権力による大虐殺の根底にあるものは、人間性の否定である。人間の獣性が剥き出しにされた時、目を覆うような殺戮も平気になってしまうのだ。
人類への警鐘として、一度は紐解きたい書である。
紙の本
流血地帯
2022/03/27 17:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の指す「ブラッドランド」とは現在のウクライナ、ポーランド、ベラルーシ、バルト三国のこと。この地域でナチス・ドイツとソ連が行った「大飢饉」「民族浄化」「大虐殺」を真正面から描く。ある程度の覚悟をして挑んだが、やはり胸糞悪くなることこの上ない。過酷な状況を過ごした生存者たちの証言には胸を締め付けられるが、何百、何千、何万と淡々とだが着実に増えていく犠牲者の数にただただ戦慄を覚える。粛清を繰り返し洗練ささえ感じさせるスターリンに対し、なりふり構わず雑なヒトラーと地獄みたいな対比も。下巻へ進むのが気が重い。
紙の本
そうだろうか
2016/05/24 19:14
6人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、独ソ戦の時代、独ソに挟まれた地帯で、ホロコーストも含めてどれだけの人が殺戮されたかという視点で書かれている。その視点は、なかなか面白利切り口だが、根拠が曖昧であったり、思い込みのような箇所、あるいは事実誤認だと思われる箇所も散見される。
投稿元:
レビューを見る
書評で気になったので読んだ。
「カティンの森」での虐殺事件は知っていたが、ドイツ侵攻前のソ連の「政策」のことをほとんど知らなかったことが分かった。
それにしても、ここまで…。
事実の記録に加え、当事者(加害・被害とわず)の言葉が入っている記述。
難しかった。
投稿元:
レビューを見る
一般に、ホロコーストといったときまず思い浮かべられるのはユダヤ人強制収容所だろう。
第二次世界大戦時、ナチスドイツにより500万~600万のユダヤ人が犠牲になっている。
だが、それは大きな戦争犯罪であることには違いないが、唯一の大量虐殺ではない。なぜユダヤ人強制収容所が大きく取り扱われてきたかと言えば、連合軍に解放され、衝撃的な映像が世界を駆け巡ったことに加え、辛くも生き延びた人々の証言が注目されたことが大きい。
一方で、1400万人と考えられる犠牲者を出しながら、これまであまり注目されてこなかった大量虐殺がある。あまりにも短期間に、あまりにも完膚無きまでに殺戮が行われて証言者の数も多くなかったうえ、歴史的・政治的に複雑な地域であったため、死者たちの代弁者となる大きな勢力も生まれてこなかったのだ。
著者がブラッドランド(流血地帯)と呼ぶ地域は、ナチス・ドイツとソ連に挟まれたポーランド・バルト3国・ウクライナ・ベラルーシ・ロシア西部国境地帯である。
この地域での大量虐殺を歴史学的に検証し、最終的には大きく、ユダヤ史・ヨーロッパ史、民族・国家の歴史を再構築して、歴史的な流れを大局的に捉え直そうというのが本書の目的である。
この地域は、東欧と西欧の狭間の分断線のような場所だった。また、狭間であるがゆえに、ロシア側からもドイツ側からも蹂躙された地域であった。
1930年代以降のこの地域の悲劇はまず、ソ連・スターリンの手によるものから始まる。穀倉地帯と言われたウクライナを共産党傘下の共同農場として作り替えようとした試みは、大規模な飢餓を生んだのみで無残な失敗に終わる。これと並行して、クラーク(富裕な農民)層(と見なされた人々)を初めとする多数の逮捕者・処刑者が出ている。
さらにはこれに関連し、飢饉が陰謀によるものだとして、いわばスケープゴートとなったのがソ連国内に住んでいた多数のポーランド出身者だった。多くの知識人を含む彼らは「ポーランド・スパイ」と見なされ、1933年以降、大量に弾圧・処刑されていく。著者が「民族テロル」と呼ぶこれらの弾圧では、大半はスパイ行動などとは無縁の人々が犠牲となった。
ウクライナはまた、ナチス・ドイツからも食料庫として狙われる。ヒトラーは、スターリンが失敗した農場経営に、ドイツならば成功できると思っていた節があるようだ。
ポーランドもやはりドイツからも蹂躙される。歴史的にポーランドにはユダヤ人コミュニティが確立されていた。ヒトラー・ナチスは、昔からあったユダヤ人に対する反感をうまくすくい上げ、ユダヤ人と共産主義を結びつけた。ソ連の脅威が大きくなる中、ユダヤ人や共産主義は、ドイツ人の財産を脅かす敵である、とヒトラーは扇動していく。
第二次大戦開戦に伴い、ソ連の意識は日本側に向いていく。ヒトラーはその背後を突いて、東方に活路を見出すのがドイツの生き残る道と目する。
一方で、当初はドイツ本国から排除し、移住させる計画であったユダヤ人たちが移住できる土地が確保できぬまま、「再定住計画」=絶滅政策への道筋が整いつつあった。
古くから、四方からの侵攻を受けてきたポーランドには、知識を財産とする伝統があったのだそうである。民族のリーダーとしての誇りを持ち、国家が存亡の危機にあるときには、書くこと・話すこと・行動することで伝統を繋いだ。ポーランド出身の科学者、マリー・キュリーは発見した元素に祖国の名を冠し、ポロニウムと名付けた。19世紀末当時、やはりポーランドはロシア帝国との攻防下にあったのだ。そのことの重さを思う。
カティンの森事件でスターリン政権により殺害されたポーランド将校は、その大半が職業軍人というよりも、召集された知識人層であった。ヒトラーは「ポーランド人知識階級(インテリゲンツィア)の絶滅」を命じた。
知識の持つ力は大きい。これらの大量殺人はその悲劇的な証明だという指摘には胸が締め付けられるようである。
夥しい数の人が亡くなり、大地は大量の血を吸った。
1400万という数字はそれ自体でも重いが、その1つ1つにそれぞれの生があったことに茫然とし、頭を垂れる以外ない。
下巻はいずれ。
投稿元:
レビューを見る
どれくらい理解できてるかはわからないけど赤い対抗と続けて、知ってるようで知らなかった近代史を知ることができた。せいぜい70-80年前にこんなことが起きてたなんて信じられない。
メモ:ウクライナをドイツの食糧源にする→ソ連侵攻失敗→ユダヤ人排除
投稿元:
レビューを見る
子供の頃、ショッカーが幼稚園のバスを襲撃したりするのを見て、この人たちはどうして自分のやっていることが「悪いこと」だとわからないのだろう、と不思議だった。子供の自分にも「悪いこと」は「しちゃいけないこと」だとわかっているのに。この人たちは大人のくせに、どうしてそれがわからないのだろう?
このモヤモヤは大人になってもずっと残っていて、それでぼくはこういう本を読む。悪いことを悪いと思わない、思っていても「しちゃいけない」とは思わない大人が山のようにいることを知って、モヤモヤはさらに大きくなった。
第二次世界大戦の戦前から戦中に、ヨーロッパ東部で起きた大虐殺。ナチスのホロコーストはそれなりに知っていたが、それ以前に発生したスターリンの民族浄化についてちゃんと読んだのははじめてではないだろうか。
ヨーロッパの地獄にも閻魔大王がいるかどうかは知らないが、もし地獄の法廷が開かれるのであれば、ヒトラーやスターリンの弁明を聞いてみたいものだと思う。そしてもちろん、実際に虐殺に手を下した大勢の手下たちの弁明も。
投稿元:
レビューを見る
毛沢東が7000万人の中国人民を殺害したことを『真説毛沢東』で知りました。この書では、ヒトラーとスターリンはヨーロッパの中央部で1400万人を殺害したことを知りました。すべて非戦闘員なのです。政治的意図のもとに決行された大量殺人です。主にユダヤ人、スラブ人、ポーランド人が犠牲になりました。虫けらのを殺すかのようにいとも簡単に大量に人が殺されています。この時代の独裁者は狂人としか喩えようがありません。これからの世にこのような独裁者が現れないことを祈るばかりです。
投稿元:
レビューを見る
20世紀の人類の愚行といえば、ホロコースト。ホロコーストといえばアウシュビッツという認識しかなかった。
本書はアウシュビッツはその愚行の一部でしかない(だからといってその悲惨さが軽減されるわけではない)ことを明らかにする。
「20世紀の半ば、ナチスとソ連の政権は、ヨーロッパの中央部でおよそ1400万人を殺害した。犠牲者が死亡した地域-流血地帯(ブラッドランド)-は、ボーランド中央部からウクライナ、ベラルーシ、バルト諸国、ロシア西部に広がっている」
この流血地帯で何が起こったのか。飢饉、テロル、ホロコースト、戦争それぞれ一つ一つを見ていても「何故」それがおこったのかはわからない。ナチス政権、ソヴィエト政権、ユダヤ史、ヨーロッパ史を綴りあわせて「何故」を描き出す。
犠牲者を数字で表すだけでなく、ゲットーの壁に血で綴られらた言葉、カティンの森で虐殺する前に将校が書きさした手記、餓死寸前の少年が残した言葉など、犠牲者の「生」が随所に書き込まれており、正直読むのはとても辛い。
しかし「大量殺人の被害者は人間だった。真の意味で彼らと自分を同一したければ、彼らの死でなく生を邪悪すべきであろう」と著者は書く。
一方で「倫理上にはるかに切迫した課題は、犯罪者の行動を理解することだ。(中略)他者を人間以下の存在と見なせば、ナチスから遠ざかるどころか、一歩近づくことになってしまう。他者を理解できないということは、知の探求を放棄することであり、歴史を放棄することでもあるのだ。」だから、ヒトラーとスターリン、その側近たちの(今から見れば完全に論理破綻しているが)合理的な虐殺の理論も本書では展開されている。
結論の「人間性」は必読。
高校生くらいのときに読んでたら、人生変わってたかもしれない本。
投稿元:
レビューを見る
ホロコースト、南京ほかの中国戦線、北米の日系人収容所、ソビエトの強制収容所、イスラエル国家の建国――。1930年代〜50年代は、人類史上まれに見る強制収容・強制移動と虐殺と大量死の時代だった。その中でも、従来表立って歴史の中で語られてこなかった/十分に記憶されてこなかったヒトラーのドイツとスターリンのソ連の間に挟まれた地域の、1400万人にのぼる犠牲者をテーマとする重厚な歴史書。
特筆しなければならないのは、これは戦争の結果としての被害者ではなく、旧ソ連とドイツの当局が、それぞれ政策として立案し実践した「殺害政策」の結果に他ならなかったことだ。この1400万人という数字には、同じ地域で戦闘に従事した結果としての死者は含まれていない。そして同じ頃、東アジアでは、日本帝国が中国大陸や東南アジアで、やはり政治的に多くの死者を〈生産〉していた。
歴史記述の前提となるのは、〈いつ〉の〈どこ〉を対象とするのか、という時間空間の対象設定である。そして、多くの歴史書は(しばしば言語という障壁のために)国家や民族をその単位としてきたために、国境が複雑に入り組み、多様な民族が散在共存してきたこの地域での出来事を、的確に位置づけることができなかったのではないか。筆者は、ドイツ・ロシア・ポーランド・ウクライナのアーカイブをそれぞれ訪ねまわることで、彼が「流血地帯」と名付けた地域の大量死の実際を、決して単なる「数」に還元せず、しかしその「数」の圧倒的な迫力を突きつけながら、論じることができているように思う。
同じようなことを、例えば日本帝国が「満蒙」と名付けた地域を対象に行うことができるだろうか? そんなことを、一瞬考えてしまった。さて、続き(下)を読み始めよう。
投稿元:
レビューを見る
レビューはこちらに書きました。
https://www.yoiyoru.org/entry/2019/07/31/000000
投稿元:
レビューを見る
ブラッドランドとはバルト三国、ベラルーシ、ウクライナ、ポーランドといった、ヒトラーとスターリンの両政権によって1933年から1945年までだけで1400万人もの人々が殺された地帯を指す。なお、この犠牲者の数字は戦闘員を含んでいない。
上巻ではウクライナでの人為的な飢饉から、独ソ戦が始まって日本が参戦するくらいまでの期間を扱っている。ただひたすら餓死と銃殺について記述されている。狂っているとしか思えない。人間の恐ろしさをまじまじと感じさせられる。ウクライナの互いを食べ合う子供たちの話などは大きなショックを受けた。
投稿元:
レビューを見る
数年前から非常に気になっていた史的解説書。自分の読解力に揺らぎが大きく手に取る自信がなかった。
年末から正月にかけてじっくり腰を据えて読んだ。
文庫化もされている単行本、上だけで350頁弱。Amazonに投稿している感想を読むと、思った通り、唯我独尊的感想もあり、逆にその尊大さに感心する。
ウクライナの歴史に手を伸ばした数年前に知ったか陳の森虐殺事件の深奥が良く理解できた・・してナチスの収容所が全てポーランドにある理由。当然ながらポーランドはロシアを非常に憎んでいる史的要因など実に詳細に綴っている。
原題「ブラッドランド」とあるがエリアではなくランドの意~広大な大陸の大半を有するロシアと西欧諸国に囲まれたその地。
ロシアは言うまでもなく 世界最大の多民族国家であるがポーランド、ドイツ、バルト3国、チェコ、オーストリアも同様だ。WW1の敗戦処理で独に苦汁を飲ませたのがWW2の遠因と言われているがオーストリア、チェコ、ポーランドの分割解体をめぐる複雑要因はこのエリアにとてつも状の6割強を占めるのはジェノ状の6割強を占めるのはジェノサイド、飢餓、カニバリズムと圧倒する数の虐殺。
P227 辺から続く殺戮の大半はユダヤ、ベラルーシ、ウクライナ人。少し前に起こったウクライナの一回目ジェノサイドと合わせると2回地獄を見た人々がいるのが驚愕。スラブ下等人種と称して旧ソ連体制スターリンが都合よく歴史を歪曲させ、隠ぺいした事実の掘り起こしの功績は偉大だ。
9年ほど前の刊行ながら日本人のアカデミズムの中にはこれすらも受け止めることができない〇〇が存している。「ウクライナは早期に負けを認めた方が・・」とかね。
東欧の食の一大拠点であり消費の現地であるブラッドランドの戦いは21世紀になって新たなページを開いたままである。
ナチスドイツの負の遺産とばかり思っていたユダヤ虐殺~ショァー・・その実ヒトラーが海の帝王英国に負けじと陸の王者になるべくソ連を潰さんと計画を立てた大テロルソ連侵攻後の【民間人を肉の楯とした】所業。
今更言うまでもなく「血が通った人の頭」の生物とは思えない歴史観の枷。私たちの視界を曇らせるだけでは足りない。学ばなきゃ・・史観の現実を。
投稿元:
レビューを見る
胸に迫るものが色々ありすぎて、途中途中何度も本を手放してばかりでした。
ナチの反ユダヤ姿勢そのものが愚にもつかない、もはや思想とも呼べるものでもなく、論理的な筋道や政治的志向性の欠片がないものだとは知っていたが、まさかソ連も同じジェノサイドを、いや数だけでいえば、ゆうにナチスを超えるという歴史的事実に相当面食らってしまった。