紙の本
冤罪のメカニズム
2016/08/02 22:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
冤罪の背景はずさんな捜査だと言われるが、もっと奥行きがある。政治哲学、進化論、人間の共感、道徳感情が冤罪の原因である。数々の事件を自白させた名刑事の転落、警察の不正を告発した元刑事への仕打ちなど、人間の思いこみが冤罪を作ることを記している。
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093頁:足跡があったししたので,
・引用文。 「あったりしたので」?
165頁:厳呼たる態度をもって
・引用文。「厳乎たる」の意であろう。
227頁:他日の新聞記者が町議に殴られる場面でも
・このままでも意味が通じるから,いいのだろう。ただ225頁に「町会議員は……朝日の記者を一発殴った」とあるので,「他日」は「朝日」のあやまりかと下衆の勘ぐりをしました。
286頁:それらが相まり,たんなく弁護から大きく踏み出し……
・国語辞典には「あいまる」ということばは掲載されていないようだ。おそらく「相俟って」がなまっているのであろう。
350頁:開襟シャツに附着してい血痕が被害者以外の他の……型の……
・引用文。意味は「附着していた血痕」「附着している血痕」であろう。
366頁:事態は硬直状態に陥った。
367頁:事態が拡大した上に硬直化し……
・「硬直(こうちょく)」が,「袋小路」「手詰まり」という意味であるなら,「膠着(こうちゃく)」がなまったのであろう。
405頁:あまリズバズバやることはなかったよ
・引用文。「ri」がカタカナフォント。「り」ではなく「リ」。
517頁:恐ろしい事態が起ったりするは,
・たぶん「するのは」。
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凄い本であることは間違いない。昭和時代に起きた複数の冤罪事件の知られざる事実とそれを巡る考察をさまざまな視点から論じ切った書籍である。膨大な量の文献を渉猟している。しかし不思議なことに、肝心の冤罪事件やその捜査を主導した紅林刑事についての客観的な情報、経緯などについては秩序的に述べられていない。それを試みようとした箇所もあるがすぐに著者の肉声がどうしても混入してくる。それだけが残念であった。
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道徳感情はなぜ人を誤らせるのか。
倫理を超えた大義名分として掲げられ、自己の行為を正当化するからだ。
冤罪事件がテーマだが、ISの問題やブラック企業になんかも通じるところはある。
面白い!
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タイトルと中身があっておらず、少年犯罪の話、冤罪、評伝など、話があちこちに飛び、やや読みにくい。タイトル通りの話はほんの一部。
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500ページの大著とは思えないほど楽しく読める。結論までの事実の積み重ねはタイトルとどう絡むのか分からなかったが、最終的に道徳感情で経済政策まで説明できるとは。このような魅力的な本を書けるのだからふざけた筆名はやめればいいのにとは思ってしまうが。あとがきを読んで襟を正す。
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冤罪の発生には、道徳的感情論(アダム・スミス)が大きく関わっているという。人はたとえ自分が損をしても、不正な者を糾弾するというバイアスだ。千円をもらい、それを二人で分ける実験で、二人共了解すれば分配額がもらえる。この割合が750円と250円以上に差が有ると、不成立が多くなるらしい。どれほど不公平だろうが分配がゼロよりは得なはずなのに。
そして道徳的感情は、大恐慌をも生み出した。マネーゲームで莫大な収益を上げた企業を徹底的に糾弾するために、極端な金融引き締めを実施継続し、結果として国を経済恐慌に陥れてしまう。実際、ノルウェーとスウェーデンで異なる金融政策を取り、スウェーデンがいち早く立ち直り、ノルウェーでは恐慌になったという実例がある。日本でも金本位制の復活が恐慌を生み出したが、これも同様の例とのこと。
この本は、もともと紅林警部が多くの冤罪事件を生み出すところから始まるが、その話が、これほど壮大な物語になるとは想像もしていなかった。
なお、紅林警部の影響で、静岡県は冤罪が多いとの事。先日もニュースになった袴田事件も静岡だ。
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2016年10月23日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「ヤバい」。
チャンプ本。
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戦中、戦後すぐに静岡で起こったいくつもの冤罪事件。その一つである「二俣事件」を中心に、膨大な史料と現地取材でなぜそれらの冤罪が起こったのか、そしてどのようにして冤罪が解明されていったのかを解き明かす。
アダム・スミスの「道徳感情論」と進化心理学、認知科学、生態学、進化学などの科学を融合させ、冤罪を引き起こすのに「認知バイバス」が大きく関わっていることを明らかにする。そして、その「認知バイアス」を克服することがいかに難しいことか・・・・。例えば「最近少年による凶悪な犯罪、そして犯罪件数そのものが増加している」という言説。もっともらしく聞こえるということがすでに「認知バイパス」であり、実際はこの100年では少年犯罪を含む凶悪犯罪も犯罪件数も現在が最小であり、もっとも安全に社会になっているのである。事実をもとに「考える」こと。著者のペンネーム「かんがえるろう」はそのメッセージである。
それにしても500ページを超える大著、膨大な史料、様々な科学的知見を駆使し、人間の本質について縦横に語っていくのだけど・・・・私は混乱している。
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戦前の冤罪事件のルポと思っていたら、バークやアダム・スミスが出てきてびっくりした。教育学では、生徒が主体的に「考えること」を推奨する。しかし、本書の言うとおり、考えること=バイアスに囚われること、ならば、そのような指導は「公平な観察者」ではなく、「システムの人」を量産する。たしかに考えさせる指導をすればするほど、生徒は愚かになると言う印象がある。特に、正義バイアスにかかると救いがない。平和教育などがそれに当たるか。
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タイトルを見ると“道徳感情”について書かれた本だと想像しますが、“冤罪”について書かれた割合の方が多かったです。
戦時中起こった「浜松事件」。今の警察の捜査方法とは違っているのは当然かもしれませんが、組織も違っていたのですね。そして、それを解決したことによって生まれた“英雄”が「二俣事件」等の冤罪を生むことになってしまったようです。当時の警察組織や捜査方法など丁寧な説明で、初めて分かったことも多かったですが、何しろ分厚い本なので読むのは疲れました(苦笑)。
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冤罪の話かメインだが、内務省の話やら、戦争の話まで拡散しまとまりがなく、時間軸も前後するので読みにくい。著者が様々な知識を豊富に持っていることはわかるが、この内容を一冊の本に入れ込むのは無理があったのでは?それぞれ別の本にして、スッキリとした形で読みたい。
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特に前半、やたらとあれこれが宿命的だとかドラマチックな風に書かれているのに辟易した。それは置いといて、包括的に物事を捉えようとする姿勢は好感が持てるし、面白かった。「評判」が落ちることを恐れる犯行が多いとか、お金が「評判」の包装紙(他人からよい「評判」を得ていることのバロメーター)というのも納得。
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宮崎哲弥が今この時代に読んでおくべき本というものがあるが、まさにこの本はそれだろう、なんて勧めるものだから読み進めたものの。戦前の二俣事件、浜松事件、の異常犯罪と紅林刑事と冤罪の話が延々続いて最後はアダムスミスが出てきて、ぼくみたいな馬鹿には理解不能、ひたすら苦痛でした。 宮崎哲弥は面白くて3回読み直したそうです。
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前半は実録事件物として一級品。特に、後に拷問王と呼ばれ袴田事件などの冤罪を連発する紅林刑事が名刑事扱いされるようになる浜松事件の顛末が興味深い。
後半は、いきなり哲学書の様相を呈する。「道徳感情が冤罪をまねく」理由について、哲学や心理学を援用しながら、大胆な仮説を立てていく。この部分も著者の博覧強記がうかがえて知的好奇心を刺激するのだが、前半からの話の飛躍にかなりおどろく。2冊の別の本を、1冊に無理矢理まとめたような感じ。
前半も後半もすごく面白いんだが、通して読むと「奇書」というか……。それも含めて、とにかく必読。