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紙の本

原石の輝き。

2011/10/31 23:24

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

厳密には番外編というべき、シリーズの第9作。
読み始めてすぐに、読者は疑問符に包まれてしまうことだろう。
前作で薔薇色の婚約時代を送っていたはずのふたり。
ところが、本書20ページで、ローラはアルマンゾのプロポーズを断ってしまうのだ!
開拓農夫の嫁の仕事がどんなに過酷か、ローラにはわかっていた。
「長い冬」で開拓農地の厳しさを思い知らされた彼女だからこそ、わかる苦労は避けたい。
農夫の嫁にはなれない。結婚するならほかの仕事を探してほしい。
それがローラの言い分だった。しかし、アルマンゾは食い下がる。
農場の少年として、農夫になることにひたすら憧れてきたアルマンゾは、
父親に言われ、いまの自分の核になっている言葉をローラに伝えることになる。
農場主は一国の主だから、なんでも思い通りにできるのだ、と。
たった10歳で人生の岐路に立たされたあの日の記憶が蘇る。
スカウトされた馬車屋に馬車職人として入るのか、
このまま農場の手伝いをつづけて将来はどこかの農場主になるのか。
アルマンゾの心は決まっていた。彼は馬車職人としてではなく、
のちの農場主として馬を飼いたいのだ、と。そしてそれを両親に告げたのだった。
しかしいまは幼い少年ではないし、告げる相手は結婚しようとしている女性である。
アルマンゾは注意深く言葉を選び、具体的な数字をあげていく。
ひとりのときつくっていた小麦の量を今後はこれくらいに増やしていこうとか、
牧草をもっと増やして、馬を育てて売ることも考えているとか。
さらに、農業の最大の魅力をアピールする。
農場では、農民が何をやりたいかですべて決まってくる。
懸命に働けば町の人より稼げるし、いつだって自分が主人でいられるのだ、と。
まずは3年、農業をやってみよう。それでだめなら君のいうとおり、
違う職業に就こうじゃないか。
このひと言にローラは結局従うことになるのだった。苦労もまたたのし。
そして、いったん腹をくくったローラは、アルマンゾを心から支える。

この本は、ローラの遺稿から見つかったものを、ほぼ手を入れずに出版したもの。
じつはこの原稿は、第8作「この輝かしい日々」につづけて書かれたものではない。
ローラ・インガルス・ワイルダーその人についての研究は、始まってから比較的浅い。
まだこれからあたらしい事実がみつかる可能性もあり、断定的にはいえないが、
「はじめの四年間」は、ローラが作家として初期のころに書かれたものなのではないか
という研究家の意見がある。
内容的にはローラとアルマンゾが結婚してからの4年間を綴ったものだ。
12年かけて執筆されたシリーズは、当然、巻を追うごとに滑らかになる。
「はじめの四年間」は、たしかに時間軸的には「この輝かしい日々」のつづきだが、
執筆した時期がだいぶかけ離れているのだ。
しかも、「はじめの四年間」は推敲されていない下書き原稿のままである。
アルマンゾの名前もマンリー(彼の愛称)と記されていたりする。
ずっとシリーズを順に追って読んできた読者が違和感をおぼえるのも無理はない。

「はじめの四年間」は、あらすじを書こうとすれば気がめいるくらいの
暗い話なのだが、読み終えても疲労感を感じない。
心理的な内面はあまり書かれず、起こるできごとを淡々と描写していく。
かなり悲惨な状況が語られているのに印象はあっさりとしているのだ。
たとえば、生まれたばかりの赤ん坊がわずかのあいだに亡くなってしまうことも
さらりとしすぎているくらい、単に通り過ぎた出来事として描かれる。
でも、これがローラの描くものに一貫した特徴ともいえる。
時には、まったく語らないことが、言葉をいくつも尽くすことより雄弁になる。
ほんとうはここでもっと悔しかったんだろうなぁとか、落ち込んだだろうなとか。
読者の想像をひろげてくれるのだ。
感じた辛さをあえて書かないことに、潔さと深さをおぼえたりもする。
本書を読んでいて、庄野潤三を思い出した。それはあのきめ細かなフィルター。
読者の不快をさそうようなマイナスの感情が、注意深く取り除かれているのだなぁ、と。
「長い冬」から、人間関係の複雑さは描かれるようになるが、
ストーリーがそれだけに飲み込まれてしまうということはない。
児童文学というジャンルへの気遣いということもあっただろう。
「大草原のおくりもの」(角川書店1990)によれば、
ローラは、書きたくても子どもにふさわしくない出来事は書かなかった、と、
後にブックフェアの講演の席で語っている。
それは感情の吐露ということではなく、残酷なエピソードについてだった。

「はじめの四年間」は、とても地味な話だ。
若い新婚のふたりが、開拓農地でつぎつぎと苦難に見舞われる話だ。
けれども、ふたりは砂を噛むような状況のなかでも、絶望しない。
絶望はベンチに座っていて、通りかかる人を常に待っている。
ふっと気を許したら、絶望に手をつながれてしまう。
ふたりはきっちりとスクラムを組んで、絶望の入る隙を与えなかった。
アルマンゾの農夫魂と、ローラの開拓者精神は、心の奥深くで結ばれて
仕事を、人生を、たのしむことを諦めなかったのだ。
作家生活の初期に書かれたこの作品は、シリーズのほかのものとくらべると
粗削りで無愛想な感じを受けるが、逆にこの1冊だけを読むと、
ローラの描く物語の本質が散りばめられていると感じることができるかもしれない。
脱稿してそのままの状態ということは、編集者の手が入れられていないということだ。
ローラの書きたいように書いた、演出なしのありのままのローラの文章には、
推敲されたほかの作品群にはない魅力が詰まっているかもしれないのだ。
わたしはここに、研ぎ澄まされた感性を持つ作者のフィルターと、語らないことの効果を感じたのだ。
誰だって体に有害なものには敏感だ。でもそれ以上に、心に有害なものを入れたくない。
だからローラの、うわずみをていねいに掬ったきれいな水のような文章を
ずっと読んでいたいし、そういうものにまた出会いたいと思ってしまうのだ。

この辛く苦しい新婚時代をくぐり抜けたローラは、後にエッセイに書いている。
『わたしたちはなぜ、人生を楽しむために、余分の時間が必要だと考えるのでしょう?
人生を楽しみたいと思うならば、時間があるときとか、特にすることのないときとか、
そういう特定なときにではなく、すべての時間に楽しむことを覚えればいいのです。
・・・わたしたちは昔のような厳しい生活をしていません。
要は、自分が生活をどう見るかにかかっているのです』
「大草原のおくりもの」より趣旨抜粋

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2004/11/28 11:05

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