紙の本
あえて問いたいのです。「この本を読んでどう感じましたか」と。
2008/11/21 16:49
24人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紅葉雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは児童書だが、大人にこそ読んで欲しい。
シエラレオネ共和国。
世界で一番寿命が短い国と話題になった事もあるが、覚えておられるだろうか。
平均寿命は男性約32.4歳。女性約35.7歳
(本書より。なおこのデータは2002年の物)。
日本の平均寿命の半分以下。
この平均寿命の短さは、「内戦」という「人災」が原因だ。
この国の不幸は、世界でも屈指の優良なダイヤモンドの産地だった事。
それが10年を超える内戦という悲劇を引き起こしたのだ。
ダイヤモンドの産地は反政府ゲリラに襲撃され、その支配下に置かれた。ダイヤモンドの売買による外貨が、その活動資金となった。
反政府ゲリラは罪もない人々の身体を傷つけていく。ある者は両腕を切られ、ある者は耳をそがれ、ある者は足を切断され。彼らは幼い子供にすら容赦せず、その腕を切り落とした。
こう書けば、いかに反政府ゲリラが非道かと思えるだろう。
でも。
この反政府ゲリラの兵士の殆どが、10歳から16歳の子どもだったとしたら……。
10代を通り過ぎた人ならば、自分が10代だった頃を思い出してほしい。
10代の人ならば、今の自分が、と想像してみてほしい。
自分が武器を手にさせられ、己の手を人の血で汚すよう命じられ、さらに逆らえば殺されると判っていたら。
……自分は、どうするだろうかと。
そう、その子ども達もまた被害者だった。
ある者は目の前で両親を虐殺され、ある者は誘拐され、ゲリラに組み込まれた。
「子どもは油断をさそえる」……それが理由で、大人が彼らを「殺人マシーン」とした。厳しい訓練をし、戦いの前には子どもの身体に麻薬を埋め込んで。
麻薬の影響で興奮状態になった子ども達は、人を傷つけるのも殺すのも平気になったという。
著者は、元反政府ゲリラの少年兵だったムリアと向き合い、その心の内も聞いている。
彼はゲリラを脱走し保護された過去をもつ。
ムリアの言葉の一つ一つが、彼の心に負った傷の大きさを感じさせる。
やっと戦いから解放された筈なのに。今度は心の傷と闘いながら、それでも前向きに生きようとする姿には胸を打たれた。その瞳は本来の年齢よりずっと大人びてみえ、だからこそ何か物悲しかった。
シエラレオネの内戦が終わったのが2002年。
元少年兵だった子どもたちは、内戦が終わった後、居場所がない事も多いという。家族にすら受け入れられない事もあると。少年兵は間違いなく被害者。
だが。
……加害者でもある、決して消えない事実。
少年兵に傷つけられた、ある被害者の言葉を引用したい。
「…(略)彼らはまだ幼い子どもだし、何も知らずに兵士として使われたんだろう。自分はその子たちを責めはしない。…(中略)おれたちはこの国に平和が欲しいんだ。何よりも平和なんだ」
そして。
「彼らを許さなきゃいけない。けれど絶対に忘れることもできない」
自分は普段、他人に本を薦めても、感想は尋ねないようしている。
本の好みは千差万別あって当然だし、ある一冊に対する感じ方や考え方は、人間の性格と同じで十人十色でいいとも思う。どれほど好みが似ていても、読者のおかれた立場や環境、さらには育った過程によっても、感じ方や受け取り方は違ってくるだろう、と。
だが。この本に関しては、敢えて違う態度をとりたい。
一人の大人として。……何より一人の人間として。
「この本を読んで何を感じましたか。あなたはどう思いましたか」
最後に。
自分はこの本を読んだ後、ずっとシエラレオネに目を向けてきた。
2007年、前大統領の任期満了に伴い、始めて民主的に政権が交代した。平均寿命も僅かだが伸びている。
復興への道を歩きだした彼の国が、これから先、厳しい風が吹き荒れるだろう時代の中、ムリアたちの願う平和な国になることを願ってやまない。
同時に思う。少年兵の問題は、ここだけのものではない。今この時も、戦いの中、武器を手にしている子ども達がいる。
自分は決してそれを忘れたくない、と。
紙の本
ただ、平和がほしい
2015/08/16 18:12
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投稿者:Yasushige - この投稿者のレビュー一覧を見る
後藤健二さんがジャーナリストとして伝えたかったことはなにか。
この本を読んで感じたことは、いかなる戦争も結局は悲惨な結果をもたらすということ。
今の日本は戦争を経験したことがない人が大半を占めており、”戦争”と聞いてもイメージが湧かないと思うが、この本を読めば戦争が何を生み出すかがわかる。
憎しみ、悲しみ、喪失感、何もいいことはない。
この感情が新たな戦争に導く悪循環に陥ることもある。
後藤健二さんは最後に語っています。
”たとえ、建物や街の風景はもとに戻っても、人の心に刻まれた憎しみや悲しみは消えません。”
戦争とは何かを考えさせる一冊です。
子ども向けの本ですが、大人も必読の内容だと思います。
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アフリカ西部にあるシエラレオネ共和国は「世界で最も平均寿命が短い国」として知られる。
ダイヤモンドを産し、けっして貧しいだけの国ではないが、長く続く内戦で疲弊している。
村を襲っては子どもをさらい、村人達はあえて殺さずに手足を切り落として生かしておき、恐怖を植え付けて服従させる。
さらわれた子どもは兵士にし、さらに残虐な行為をさせる。
身の毛もよだつような恐ろしい事態が起きているとい。
筆者は厚生施設で、かつて子ども兵士として小隊を率い、「やぶの殺し屋」として恐れられた少年ムリアと出会う。
過去を受け止め、未来を変えようと懸命にもがく彼の姿に胸を締め付けられる思いがした。
いつも戦争を起こすのは大人であり、犠牲になるのは女性や子ども達といった弱者なのだ。
アフリカに希望はあるのだろうか。
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子ども兵の社会復帰は現地住民の深い理解が必須で、それは憎悪や偏見を払拭する事から始めなければならない。
将来、この絵本を子どもに読んで聞かせてあげたい。
昔はな、こんなひどい事があってんやぞって過去の話として子どもに伝えたい。
そんな大切な事を思い出させてくれた
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シエラレオネ。
この国にダイヤモンドは、豊さではなく紛争をもたらした。
文字が大きく児童向けにかかれたと思われる一冊。ブラッディーダイヤモンドでも有名だけど、日本や先進国でおしゃれのために買われているダイヤモンドの利権争いから紛争が勃発している。そしてその紛争には、子どもたちも巻き込まれ子ども兵士という形で洗脳・利用される。
この本にでてくるムリアくんも麻薬を体に埋め込まれ洗脳され戦わされていた。
実質的な戦いの場から逃れても、心の傷は癒えない。大切なひとが殺されたこと、誰かの大切なひとを殺してしまったこと。
『わたしたちは許さなければならない。しかし決して忘れない。』
わたしたちにできることは、なんだろう?
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児童書です。
シエラレオネでかつて兵士として戦った少年について、簡潔書かれているので、大まかなことを知るにはいいと思います。
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図書館借り読了。
後藤さんが何を伝えたかったのかを知りたくて読みました。
麻薬を体に埋め込み子供を兵士に。
信じがたい事実が海の向こうにある。
ムリアさん達は今何を思うのだろう。
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アフリカ西部太平洋沿いの国「シエラレオネ」。
平均寿命が世界で最も短い国。
男性32.4歳。
女性35.7歳。
原因は内戦。。。
ジャーナリストとして、人間として、後藤健二氏は立派だった。
日本人として誇りに思う。
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(2015.02.05読了)(2015.02.04借入)
副題「子ども兵士・ムリアの告白」
冒頭に以下のように書いてあります。
―――――――――――――――――――――――
シエラレオネ。
アフリカの西部、大西洋岸に位置するこの国は、
「平均寿命が世界で最も短い国」として知られています。
長引く戦争は、国民を苦しめ、
たくさんの人が戦闘にまきこまれて亡くなりました。
シエラレオネは、質の高いダイヤモンドの産地としても知られています。
しかし、このダイヤモンドは国民の生活を豊かにしてはこなかったのです。
その利益は戦争の費用となり、銃などの武器に変えられてしまいました。
そして、その銃は、大人だけでなく、子どももにぎったのです……。
―――――――――――――――――――――――――
シエラレオネは、イギリスの植民地だったので公用語は英語。平均寿命は、男性32.4歳、女性35.7歳。人生30年ですね。
戦争によって、手や足を切られた人が、沢山いるそうです。兵士が切られたわけではありません。一般の人や子供達までも切られています。
少年兵士たちがやってきて、切るのだそうです。
後藤さんは、手足を切られた人たちに話を聞き、その後、手足を切った側の元少年兵に話を聞いています。
少年兵によると、ある日、反政府軍の人たちが家にやってきて、少年を兵士として出すことを拒否した両親を殺害し、少年を訓練する場所に連れて行った。
訓練された後、少年たちだけのグループで民家を襲って歩くのだそうです。その際、顔の頬の部分を切り、麻薬を埋め込むのだそうです。そうすると、残虐な気持ちになって、殺すのも手足を切るのも平気になるのでしょう。少年たちは、麻薬中毒になります。
話を聞いた少年は、反政府勢力のもとを脱走し、いまは、施設から学校に通っているそうです。
【目次】
1 「自由」という名の街
2 手や足をうばわれた人たち
3 家族をおそった子ども兵士たち
4 子ども兵士を探して
5 「やぶの殺し屋」とよばれた少年
6 麻薬にむしばまれた子どもたち
7 傷ついた心
8 戦うことから解き放たれて
9 ムリアの学校
10 「大統領になりたい」
11 自分のために生きる
~ムリアのある一日~
シエラレオネという国について
あとがき
(2015年2月6日・記)
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後藤さんが亡くなって、メディアが取り上げる中で、
数年前に読んだことのあるこの本が、後藤さんが書いた本だと知った。
当時、ダイヤモンドを巡ってコンゴなどアフリカの国で内戦が続き、私たちの生活の中の一部が、内戦の遠因になっていることを知って、とてもショックだった。そんな中で、少年たちが銃を持って戦うことを強いられたと聞いた。
後藤さんは、目の前で両親を殺され、誘拐され、人々を殺す兵士となってしまったシエラレオネの一人の少年兵を、丁寧に描いている。なぜ、子供たちまで武器を持って戦う、いや戦わされるのか?ずいぶん前に読んだ本なのに、とても印象的な一冊だった。
今も、後藤さんが訪れた国では、年端もいかない少年、少女たちが、同じ状況におかれ、戦場へと連れて行かれて、平和に武器をむける存在になってしまっているのだろう・・・
後藤さんの揺るぎない平和への思いが
書かれたこの一冊を、心にとどめておきたいと思う。
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亡くなった後藤健二さんの著書。
手に入りにくいということで。
(増刷されたことでしょうが。)
イスラムだけでなく、アフリカも訪れていてくれた、少年兵問題も取り上げてくれていた。
こんなに温かい眼で世界のことをしらせてくださっていたのに…
今となっては、ただこちら側から観ていただけの私としては言葉もありません。
合掌。
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後藤さんの書かれた本ということで読みました。
シエラレオネの事を何もしらない自分が恥ずかしくなりました。しかもこの本は今から10年も前に書かれていたなんて。
世の中の状況が平和ではない方向に進んでいる今、後藤さんのようなジャーナリストを助けられなくて無念です。
子どもたちが武器ではなく、ペンを取れる世の中になりますように。
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シエラレオネの内戦で、少年達が兵士になり、銃を持って人を殺していたことに驚きました。
しかし、その少年達の中で、武器を持った勢力から脱走し、立ち直って学校に通い勉強している子供達がいる事に救われます。この国の平和がずっと続きますように!
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ぼくくらいのこどもたちが戦争にかり出されて、
たくさんの人たちの家族を殺してしまったことがかわいそうだった。
戦っている人には殺すか殺されるしかなくて、
正しい理由なんてないと思った。
戦うなら、
本来力試しであって、戦うものじゃないと思うけど、
世界中のスポーツやチェスや将棋とかで競った方が良いと思う。
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子供にも読めるように書かれているところが、素晴らしい。
子供よりも知っていて当然なはずのいい歳をした大人が、この本を読むまでシエラレオネのことを全く知らなかった。
親を目の前で殺された上に無理矢理連れて行かれ、人を殺す訓練を受ける毎日・・・麻薬を顔や体に埋め込まれ、麻痺させられ、まともな思考が働かないまま、命じられるままに人の命を奪うことを余儀なくされる子供たちー。何の罪もないのに、ある日襲われて腕や耳を削ぎ落される人たち。訪れることのない平和。罪と後悔。こんな過酷な状況の中で、やっと生きている人達がいるということを、この本は教えてくれる。
どこかの国で今も起きている凄惨な現実を知る機会を、後藤さんは遺してくれた。他の著作も読まねば。