紙の本
「尊厳死」=尊厳ある死、とは限らない。
2007/10/02 15:14
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年三月末に、ある病院で2000年から2005年にかけ「尊厳死」らしきことが断続的に行われていたことが発覚した。
一連の「尊厳死」を主導していた医師は告発されるが、尊厳死協会などが彼の減刑を嘆願し、その医師自身もTV等マスコミで「尊厳死」の必要性を訴えるなどし、一躍「時の人」となった。
これらについて、世間はおおむね「終末期にある人を、本人や家族の意思に沿って「尊厳死」させた「赤ひげ医者」が、彼に反対する院長や世間の無理解という分厚い壁に苦しめられている」という理解を示したのではなかっただろうか。
時を同じくするように他の医療機関やマスコミも「安楽死」や「尊厳死」に関連した事例や新たな動きを発表し始め、「尊厳死」の法制化を求める動きは社会的にも大きなうねりとなってひろがっていった。
この本はそのような流れの中にある世間に対し、イメージ先行で事実を把握しないままに進み続けることへの警鐘を鳴らしている。
この本はいま一度問いかける。「尊厳死」とは何か。そして誰のためのものか。
まず著者は、発端となった2000年から2005年にその病院でおこなわれた一連の「尊厳死」事例を検証する。当初はこれを「尊厳死」問題の典型的事例として扱う予定だったが、検証の過程で浮かび上がってきたのは、世間に広がっているイメージとは程遠い、尊厳死や脳死はもちろん、基本的な事実に対する圧倒的な無理解を示す医師の姿であった。
著者はそのことに驚き、嘆く。しかしこのような医師やこのような不幸な事例が「尊厳死」問題を考えるときの典型ではない。しかし、なぜこのようなことになってしまったのかを真摯に問うことは、今後の「尊厳死」問題を考えることに必要であると考えた。
「およそ患者自身の尊厳とは程遠い、まわりの都合によって定められる患者の死が、「尊厳死」という、曖昧で捉えどころのない言葉によって一括りに美化されてしまう胡散臭い現実を知っていただくことこそ、真の尊厳死を探る早道だと考えるようになったのです。」(初版の帯・125頁)
「尊厳死」は「尊厳ある死」であってほしい。しかし耳に心地よい言葉で表現された「何か」が「名前負け」している例は結構多いのである。「尊厳死」の法制化が叫ばれる昨今、この問題を語る際に避けては通れない一冊である。
紙の本
安楽死への論議もしてほしい
2007/10/07 17:40
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こよね - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者も認めているように、射水市民病院事件ルポとも言うべき内容で、人工呼吸器をはずした行為の問題点、矛盾を丹念に追いかけている。著者の良心と執念を感じる一冊である。たしかに、患者が求めない、おかしな「尊厳死」が医師や家族の考えで行われる実態はあろう。また、末期の医療水準もまだまだバラバラであろう。やっと、死の臨床学会が発足したようだが。
しかし、尊厳死の問題は、基本的に患者本人が苦痛から逃れるために「安楽死」を求める場合のことから出発した論議であり、尊厳死と安楽死は違うといった論じ方も、現実を正視したものではない。安楽死は尊厳死よりも問題が大きく、複雑な要素を持つが、「時期尚早」と言うだけではいけない。
安楽死を求めている患者は間違いなくいる。
安楽死を認めている国もあることだし、論議は行われるべきだ。
著者の次のテーマにしてほしい。
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呼吸器取り外し事件の具体例に多くのページ数をさかれているため、尊厳死というものを全体的にとらえるという点では弱いかなとも思いましたが、呼吸器をはずすという行為をここに書かれているX医師のようにアバウトに行う医師がいるのかというショックが大きく残りました。
助かり見込みのない患者の最期の苦しみが少しでも短くてすむように、ということで呼吸器をはずすという行為を善悪はっきり分けることのできることではないと思いますが、X医師の場合は医師の都合や彼の勝手な考え方による判断のものが多く、とても患者のことを最優先に考えた結果としての尊厳死ではなかったのではないかという印象でした。
尊厳死に限らずとも、文書として公にすると日本語の解釈は人によって変わってくることが多々あると思います。ましてや医療行為は、医師や病院の質や技術力によって左右されることが往々にしてあり得る世界です。だから尊厳死を法制化するというのがいいことなのか、悪いことなのかはわかりませんが、現場で働く医療者は自己独断的にならず、常識をもって、その上で患者にとってベストな医療とは何なのかということを考えていかなければならないと感じました。
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読んでいる途中ですが、ちょっと軽い感じがします。おそらく文章的に。内容的にはX医師がどうして呼吸器をはずしたのか、そもそもなぜ呼吸器を装着したのか、ということを作者の取材によって追い求めていく話です。ちょっと作者の自分は自分は感が強いかなと思いました。
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祖父の死をきっかけに尊厳死に興味をもった。書店で署名だけを見て購入。内容としては、呼吸器外しについてが大部分を占めており、呼吸器外しを行った医師の(著者を通した)意見と、著者の意見のみにかなり偏っていたように思う。呼吸器外し事件について知りたければよい本なのかもしれない。
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[ 内容 ]
二〇〇六年三月、富山県の射水市民病院で入院中の末期患者七人の人工呼吸器が取り外され、死亡していたことが明らかになった。
実際にはいかなる事態が起きたのか?
その後つづいた「尊厳死法制化」をめぐる政府・医療界・メディア等の動きも踏まえ、今、日本の終末期医療に真に求められていることは何かを渾身で問いかける。
[ 目次 ]
第1章 「尊厳死」に尊厳はあるか―「射水市民病院・人工呼吸器取り外し事件」から(事件の発覚 七人の患者が死を迎えるまで 患者の尊厳を世に問うのなら 覚悟が定まったとき 改革への模索)
第2章 終末期医療のこれから―今、真に求められているもの(尊厳死法制化への動き
「いのちの線引き」への医療界の底流 「尊厳死」問題と私)
資料
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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2006年に富山県の射水市民病院で入院中の末期患者7人の人口呼吸器が取り外され死亡した。
医者は「尊厳死」というがその真相は?
この本を読む前は痛みで苦しむ患者や家族の為にも
「安楽死」は認められてもいいのではないかと思っていたが、この事が「尊厳死」としてまかりとおれば医者の診療技術や家族の都合だけで「死」を迎えることになるかも知れない。
高齢社会が現実になったいま終末期医療を真剣に考えねばならないと思う。
中島みち氏自身もガン患者であり、彼女のお姉さんそしてご主人もガンで亡くされている。その時苦しまれたお二人のこともこの本を書かれた一因だと思う。
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中島みち氏は、取材にあたってとてもニュートラルな位置から入り、徐々に深層に入ってゆくに連れて、立ち起こってくる疑問符を率直にX医師に投げかけている。そのバランスの良さは評価に価する。月日が経ってこの事件を見直してみると、X医師の取った行為は尊厳死でも安楽死でもない、主治医の偏った考え方の現れに過ぎなかったことがわかる。
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尊厳死の在り方について真正面から向き合った1冊。
初版発行が2007年。6年断った現在、現状はどのように変化しているのだろう。
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今回この本を登録するにあたっての検索で、「尊厳死」に関わる書籍がたくさんあることに気付き、改めて現代社会の課題としての大きさを感じた。
富山の事件・事例からの考察であるが、善悪の判断を下すには余りにも難しく、しかし、それは誰もが避けて通れない「死」の問題でもある。
死を選択できる時代であればこそ、個人が自身の生き方・死に方への考察を深めて、ぶれない選択をしておかなければいけないのかもしれないと思った。
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富山県射水市立病院で医師により人工呼吸器取り外し事件があったことを覚えてらっしゃいますか。
この事件は、2006年3月25日に報道されました。
報道された事件と異なる事実を書いた本です。
著者の中島女史は、感情的にならずに最後まで冷静に配慮を重ねながら(外科部長に対してまで)取材して得られた事実を記載しています。
http://ameblo.jp/nancli/entry-11939246013.html
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2006年射水市民病院で起きた人工呼吸器の取り外し事件を主軸に、真の尊厳死とはどういうものなのかを筆者が語った一冊。
個人的には、筆者の感情や主観がありありと文章に現れるノンフィクションは好きじゃないです。
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尊厳とはなにか
死していく人に尊厳はあるのか
病気になった時点で個々の人生の尊厳が奪われていく
どうすれば尊厳が守れるのか、病気になって意思表示ができず、家族が治療方針を決めるのはどうか
死について家族で話すこともないまま病気になる人もいる
大事な家族です、そうなる前にコミュニケーションを、大事な家族の思いに応えられるように
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1996年刊行。
マーガリンよりバターの方がいい。液状を化学的に固形化したかららしい。
その他はたいしたことは書いていない。