紙の本
三河は松平氏だけじゃない
2023/01/24 19:54
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三河の戦国時代というと、とかく徳川家康と松平氏ばかりが注目されるだが、それだけじゃないんだよという内容のリブレット。東三河を二分した牧野氏と戸田氏の抗争をコンパクトにまとめており、大変読みやすい。東から今川が、西からは西三河を平定した徳川が迫る中で、合従連衡を繰り返し、最終的には両者とも徳川に降伏して配下となる。それは三河=徳川という固定概念を改め、国衆が鎬を削る群雄割拠の状態と、東西から圧力を受ける境目の地域であったことを再確認させる。また知多と渥美の両半島、伊勢湾、三河湾を巡る繋がりも印象に残った。
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日本列島全体が戦国動乱のただなかにあった義元・秀吉・家康らの時代は、それぞれの地域に生きた武士や百姓たちが急速に力を伸ばし、歴史の舞台で活躍することになる《刷新》の時代の幕開けであり、今日の私たちが生きている地域社会の姿を根拠づけてもいる画期であった。
本書は後世に偶像化されて伝えられた戦国期の人々とその時代を、最新の中・近世研究が提供する史資料にもとづいて捉え返し、東西の結節点にあった東三河の有力豪族、牧野氏と戸田氏の消長と動向を軸に叙述した戦国期東三河の百年史である。豊富な頭注により地域史の波動を判りやすく伝える。(2014年刊)
1 牧野氏と戸田氏の時代へ
2 牧野と戸田の抗争
3 今川軍の侵攻と東三河
4 今川から徳川へ
5 活気づく地域社会
ブックレットではあるが、充実した内容。土地勘が無いので読みにくかったが、三河の戦国史を知る事が出来る良書。ゲームでは影の薄い今川家の諸将が活躍していることがわかる。
三河といえば徳川氏(松平氏)というイメージが強いが、第四章になるまで出てこないところに、三河の広さを感じる。
桶狭間後にトントン拍子で勢力を伸ばしたというイメージがある家康であるが、東三河の今川軍も健闘する。永禄六年(1563年)には、一揆による内乱に見舞われる。一揆との和睦後、あらためて東三河攻略を進める。ここら辺の過程をみると、徳川家も三河の一国衆であることがわかる。だとすれば、家康が義元の姪を娶る厚遇を得た理由は何故だろうかと疑問が湧いた。
諸史料を駆使した丁寧な記述は、好感が持てる。オススメの1冊である。
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YouTubeで家康関連の動画に参考文献として挙がっていて興味を持った本。
東三河(現在の豊橋・豊川・田原市)の地域史が概観できる。年代は1460年~1570年頃。この地域で起こった史実として桶狭間の戦い(永禄3年/1560年)が有名だが、本書ではその前後の東三河地域の経緯を詳しく知ることができる。地理的説明が詳細で、GoogleMapを見ながら読み進めるとより理解が深まって楽しい。
印象的なのは3点。
1点目は、この時代の地域統治に対する考え方の記述。牧野・戸田などの地域武士たちや地域の寺社は今川や徳川といった大名たちに支配屈服されるのではなく、多くはその本領を安堵されたままその地域の統治を認められていた。侵略者である今川家も、地域勢力を無理に打倒せず配下に組み入れて利用する形をとった。
2点目は、牧野・戸田それぞれに宗家以外の一門が複数いて、それぞれが別々の陣営に属し結果として家名を後世に残したこと。この方法は真田一家だけのものでもなかった。
3点目は、今川義元が尾張侵攻を企てた動機について。本国に居ながら東三河地域を支配するのは難しく、配下に組み入れた武士たちを安定して取り込むための新領地として尾張を求めたのではないかとのこと。もちろん上洛戦のためではない。
対象は東三河地域に限られるが、転じて時代に対する理解が深まった一冊。