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ロシア革命を扱った小説。原著が発表されたのは1932年。
かつての暗殺者が三十年前の出来事を回想する。事件というより、ターゲットとの交流を。
主語がぽろぽろ抜ける文章が若干読みにくい。
それはどっちのセリフ?今すわったのは誰?とか、考えればわかるけれどちょっと止まってしまう。
わざとなのか訳のせいなのかどちらだろう。
で、読みにくいなあと思っているのに、どんどん目が先を追って最後まで読んでしまった。
扱われているのはロシア革命で、発表は1932年で、著者はユダヤ人で1942年にアウシュビッツで殺害されている。
だから、本当はどの時代のことなんだろうと少し考える。
どこまでが史実でどこからが風刺なのか確かめたくなる。
それから、そんなことは無意味だと思う。
だって描かれている「人間」は、どの時代でもどの思想でも変わらない。
どこにでも当てはまる。
殺すべき相手が人間に見える。ちゃんと人間として見ている。
それがすごいところ。
「敵」も「味方」も感情があって、恐怖があって、愚かで、現実的で。
人の描き方が繊細でリアル。
この作品は著者の中ではわりと異質な作品らしいけれど、他のも読んでみたい。