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うーん
2014/09/03 12:13
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はな - この投稿者のレビュー一覧を見る
たしかに、筆者が体験した病気は怖いです。でも私が気になったのは本文中に、発達障害や知的障害の方への差別感がちりばめられていることです。
なぜ、父親やボーイフレンドは発達障害や知的障害の方と筆者が間違われたことに、そんなに憤慨するのですか?
彼らとは違うと言いたいのですか?
見た目はほぼ同じなのに?
健常者には見えないところで、自由にならない体を持てあまし、奇妙な言動をするその心のどこかに本当の自分が隠れているかもしれないのに?
筆者は運良く病気から立ち直って、酷い状態の自分が周りにどういう目で見られて、それがどんなに自分の自尊心を傷つけたか訴えていますが、発達障害者と間違われて憤慨した近親者の態度に対して何ら注釈もつけていない時点で自分を傷つけた人たちと同じ立ち位置にいるのではないかなあと考えてしまいました。
なので私は星2つにしました。
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ニューヨークポストの記者が自身の体験を書いた体験記です。
著者は2009年に病気になるまでは、社交的で話し好きな有能な記者だった。しかし徐々に精神的におかしくなっていく。部屋にシラミがいるという確信が離れず、彼氏の部屋をあさったりし、徐々に仕事がうまく運ばなくなる。かかりつけ医や神経内科医へかかるが、異常なし。しかしついに痙攣発作を起こす。そしてニューヨーク大学に入院するが、その後幻覚などが出現し・・・
前半は謎解きのようなホラーミステリーのような感じ。後半は、疾患から立ち直っていく姿。自身とは何か?のような哲学的話もあり、疾患の解説も含まれています。
自身は、病気の間の記憶が曖昧のようで、様々な情報(病院のビデオなど)や、自身に浮かんだ心中を混ぜて、小説のようになっています。記者としての冷静な目も見られ、興味深く読める体験記です。目次にIVIGや脳生検などがあり、知る人は何かわかると思いますが、一般には知れれていない病気と思います。
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一気に読めるミステリーを超えた一冊。
これがフィクションではないということも驚きだが、
この病を乗り越えた彼女が
偶然にも物書きであり、
のちに情報を集めて本書にまとめられたことは奇跡のようなものだ。
既存のミステリーに飽きた人にぜひおすすめしたい。
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「脳に棲む魔物」読んだhttp://www.kadokawa.co.jp/product/301404000029/ … 自己免疫疾患に苦しんだ著者自身によるノンフィクション。治療費1億に驚く(日本の皆保険制度は素晴らしい!)病名も原因も判らず治癒の希望もなく、ただ自己崩壊していく。病気がそこにあるのに医学は太刀打ちできない(つづく
昔から存在している病気でもそれが認識されない限り病名はつかず治療できない。闘病記を新聞掲載したおかげでこの病気の存在が広く知られることになったのは、患者と家族にとっては救いだと思う。探究心や使命感が強い医者のおかげで医学の発展はあるのだ。怠慢な医者も多いけど!(つづく
両親はともかく彼の献身ぶりに胸を打たれる。よく半年以上信じて介護したと思う。言語機能などアウトプットのレベルが低いと狂人/精神薄弱と思うまではいかずとも幼児扱いはしがちだけど内部処理は通常の場合があるから接し方は充分考慮しないと。これは外国語での会話でも同様だと思う(おわり
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ちょっとおどろおどろしさを感じる表紙写真でホラー小説か何かを想像してしまいそうだが、脳を侵すタイプの自己免疫疾患にかかった、ニューヨークポストの記者である著者の闘病記である。
著者が「映画『エクソシスト』の主人公の少女が私の症状とそっくり」と評しているのを読めばお分かりかと思うが、想像を絶するほどの壮絶な症状の連続に、よくぞご家族は諦めず寄り添い、徹底的に原因の追求まで辿り着いたものだと思う。この病気が解明されたあとの発病だったことも幸運だったとは思うが、当時、まだ医療関係者にさえあまり知られていない病気だっただけに、本当にラッキーだったのだろう。
また、壮絶な闘病のなか、周囲の人々が日記やビデオなどで記録をとり続けていたことも驚きだ。結果、当時の記憶が欠落しているという著者が、この臨場感あふれるスリリングな闘病記を書き上げることができ、こうして世にこの病気を知らしめる機会を作ることができたわけだ。
著者もいうように、解明されたのが最近なだけで、病気そのものは必ずしも新しいものではなかったようだ。そう考えると、今までに何人の人が正しく治療を受けられないまま、悪化させたり命を落としたりしていたのかと暗澹たる気持ちにもさせられる。ひょっとして、今現在も、誤解されたまま正しい治療に結び着いていない人がいるかもしれない。著者が7ヶ月で仕事に復帰したことを思うと、その想像は恐ろしくすらある。
現在は記者の仕事をこなしつつ、この病気をより多くの人に知ってもらうための啓蒙活動にも奔走しているらしい。
再発の危険もそれなりにはあるらしいが、研究されてまだ年数が浅いこともあってまだまだわからないことも多いのだそう。
著者の活動が実を結び、病気の解明が進んで多くの人が救われることを願う。
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時間つぶしのため、たまたま入った新宿紀伊国屋1FLの新刊棚で手にした本。『脳に棲む魔物』というタイトルは仰々しいが、脳に障害を受けた人の性格が変わったのだろうと想像がつくネーミングだ。パラパラと読んでみて購入を決めた。帯にはNYタイムズのノンフィクションで1位になったとある。
本のカバー裏の写真でみる、著者のスザンナ・キャハランはなかなかの美人。「こんな綺麗な人がどんな魔物に?」という興味も惹かれる。日本ではスザンナ・キャハランで検索してもあまり出てこないようだが、Youtubeなどで「Susannah Cahalan」でググると沢山出てくる。TEDのURLを付けておく。
https://www.youtube.com/watch?v=bQvqAaOLBnw
スザンナ・キャハランはワシントン・ポストの記者だ。そんな彼女はごくごく普通の生活を送っていたのだが、あるときからトコジラミが異常に気になったり、大切な仕事のインタビューで頓珍漢な質問をしたり、偏頭痛に悩まされたりし始める。そして最後は、全身を硬直させて、口から血の混じった泡を吹き出すまでの激しい発作まで起こす。
当初、病院で検査を進めるも、原因は分からなかった。だが、彼女にとって幸いだったのは、その数年前に「抗NMDA受容体脳炎」が発見されていて、それを疑う医師・ナジャー先生に巡りあったことだ。この病気は、神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体、NMDA型グルタミン酸受容体に自己抗体ができることよる急性型の脳炎だ。つまり、自分で自分を攻撃するようになり、脳内の神経伝達がうまくはたらかなくなるということだ。幸いなことに、この病気に気づいたナジャー先生の処置で、著者は徐々に回復に向かう。
この本を読んでいると、つくづく「自分とは何か?」と考える。頭の回路が少し不調をきたすだけで、まったく別の人格になる。心配でしかたなくなる。一つのことにこだわる。そして、疑う。本当にちょっとした神経回路に不具合が生じるだけで、まったく違う自分が浮かび上がる。繊細な脳神経システムがシンフォニーを奏でるが如く機能しているときに、普段の自分がいる。でも、それって、本当に自分なのか。実は自分だと思っているものは、単に脳が作り上げた虚像ではないのか。そんな風にも思えてくる。
だが、一方でこの本を読んでいて思うのは、そんな「自分」でも、大切なものがあるということだ。スザンナ・キャハランは、病気にかかり大変だった時期に、良心とボーイフレンドに助けられた。彼女の人生でとても困難だった時期に、「安心」と「意味」を与え続けてくれた。人は「安心」する場所が必要だし、そして「意味」も必要だ。
この本を読むと、自分自身がいまここにいる「意味」を考えさせられる。
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(No.14-17) ノンフィクションです。
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『マンハッタンでひとり暮らしをする24歳の新聞記者スザンナが心身に変調をきたしたのは、ある朝突然のことだった。
最初は虫に噛まれたものと高をくくっていたところ、徐々に左腕がしびれそれが左半身に広がっていった。
同時に、仕事への意欲を失い、部屋の片付けさえ出来なくなる。幻視や幻聴を体験した末、口から泡を吹き、全身を痙攣させる激しい発作を起こすまでになる。
医師の見立てでは、精神障害ないしは神経疾患。てんかん、双極性障害、統合失調症の疑いをかけられるが、処方薬は全く効果が無く、検査でも原因を突き止められない。症状は悪化の一途をたどり、実の父親に誘拐されるといった妄想に悩まされ、病院から何度も脱走を試みる。
医師たちが匙を投げかけた時、チームに加わった新顔の医師が精神疾患の疑いを否定し、最新の医療研究が明らかにした病因を提示して・・・・。
人格を奪われ、正気と狂気の境界線を行き来した日々を、患者本人が聞き取り調査や医療記録、家族の日記などから生き生きと再現して全米に衝撃を与えた医療ノンフィクション。』
著者は患者本人のスザンナですが、普通の闘病記録ではありません。なぜなら彼女にはその間の記憶が無いから。断片的な記憶は、本当に起こった出来事なのか妄想なのか分からないから。
スザンナは多くの関係者の話を聞き、膨大な記録を調べ、自分が書いたものや家族の日記を読み、自身を映した長時間のビデオを見て、あるときは患者本人に、またあるときはインタビュアーとして、病気だったときのことを再構成して書いたのがこの本です。
ほとんど一気読みでした。勢いよく読めたのは、ひとつにはこれを書いたという事はスザンナは治った、体のことは分からないけど少なくとも頭は正気である、と確信できていたからです。
読んでいて前半はかなり悲惨なので、治るところまで早く行きたい気持ちにもかられました。
それにしてもあまり知られていない病気になったとき、診断がつくまでの本人や家族の苦労は計り知れないものがあることがよく分かりました。
最初にストレスだの飲酒が多かったせいだのなどと医師から言われた時には、本人たちはほっとします。病気じゃなかったんだ!と。
でもそれは一時のこと。だってどんどん容態は悪化の一途をたどり、でもいろいろ検査してもどこにも異常はなく、検査結果だけ見れば「健康」になっちゃうのだから。そんなはずは無い、だってこんなに変になってるのに・・・。
家族の苦労と負担はすごいものがありました。よく頑張ったなと感服します。だってスザンナはすでに正気を失って、家族や医療関係者に対しても全然協力的じゃない。まるで敵に対しているような態度をとったり。
医師は仕事です。だから「スザンナさんはもう私の手を離れました」で終わらせることもあるわけで。お母さんは、じゃああの娘はどうなるの?とショックを受けながらも絶対に見放さない。
私が好きなテレビ番組に、NHKの「ドクターG」というのがあります。経験豊富な総合診療医が、実際にあった症例を元に研修医とカンファレンスをする番組です。
この本の真ん中あたりで登場したナジャー医師がやったことは、あの番組にでてきた総合診療医たちと同じだ!とビックリしたり感動したりしました。最初は検査しません。ともかく徹底的に本人や家族に話を聞く。患者の体に問いかける。ここを動かして、あれをやってみて、そしてその動きを観察する。
ピンポイントでどこが悪いのかを押え、そこの検査をして確認する。
ナジャー医師はスザンナの救世主でした。病気の原因を突き止め、ダルマウ医師という専門医に導いてくれたのです。
原因が分かったからすぐに治るものではありませんが、患者にとって診断が確定して病名がつくということはとても重要なことなのです。戦う相手が分かるのは希望に繋がるから。
ナジャー医師やダルマウ医師に救われたスザンナですが、スザンナによって救われた人たちもいます。
スザンナは職場に復帰後、この病気のことを記事にしました。それを読んだテレビのプロデューサーから依頼されテレビにも出演しました。その記事やテレビを見てこの病気を疑い、救われた人がいるのです。
スザンナは自身が発症した「抗NMDA受容体自己免疫性脳炎」を知ってもらう活動を行っています。この本を読んでさらにこの病気について知る人が増えるはず。すごい人だなあと感動しました。
ノンフィクションですが、上質のミステリを読んでいる気もしました。
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世界衝撃ストーリーといったようなTV番組で紹介されるようなタイトルですが、これはノンフィクションである上に、病気そのものから、そして病気による脳神経損傷からの快復をめざして闘いながら患者本人が書き上げた本です。語られる症状の重さを読み進めると、この事実だけでも驚くべきことでした。
病にかかる前の日々においても、自分にとって大切なことを持つことが、快復への希望を持ち続けるために重要なのだと認識させられました。
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NMDA脳炎の闘病記。
2005年に症候群として発表され、2007年にNMDA受容体に対する自己免疫がその原因として特定されたばかりの病気。著者が発症したのが2009年で、テラトーマもなかったことを考え合わせると、発症したのはともかくとして、その後の経過はかなり幸運なものだったといえるだろう。
新聞記者だそうだが、文章は特にこなれていないし、NMDA脳炎についての記載は自身でも消化不良なのでは、と思わせる内容なので、一般的な読み物としてはやや難が多い。NMDA受容体は海馬に特に多いため、記憶の錯誤などの症状が起こりやすいというのは納得。
かつて野口英世が分裂病と診断されている者の一部に進行麻痺が含まれていることを示したように、現代の精神医学で統合失調症と診断されている者の中にこうした自己免疫性疾患の者が含まれているのだろうか?国内にも推定1000例以上はいる、とされているようだし、その比率が0.01%だとしても適切な診断・治療が施されずに統合失調症として放置されているのであれば多すぎるだろう。
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発表当時は珍しかった、自己免疫性疾患が突然発症した女性の、ご本人による回顧録。
こうした書物を読むときは、
・日本とは異なる保険診療/自由診療混合医療の国で起きた事である。
・書かれている内容は、現在また異なる基準で判定されたり、価値が変わったりすることがある。
の2点に気をつけながら読みます。
そして読み終えました。
不幸な偶然が3個積み重なった人と、幸運な偶然が3個積み重なった人の差に想いを馳せざるを得ません。著者は後者でした。
幸運その1.『ポスト』の正社員で、保険会社が診療費をカバーしてくれたこと。
幸運その2.両親も、恋人も、経済的に自立しており、著者を支える余裕があったこと。
幸運その3.然るべき論文を読み、自身の研究分野にもつねに情熱をもって取り組む医師に巡り合えたこと。
幸運な偶然が3個積まれていなかったら、この本は世に出なかったし、著者は精神病と診断されて社会福祉給付を受けるしかなかったのではないか。
それを想うと、今の日本でも、『ナニナニ障害』や『ナニナニ病』とされる人の何割かは、救えるのではないか。そうした事柄への気づきやすさを、持ち続けたいと思いました。
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妄想に取り憑かれたスザンナが、紆余曲折を経て世界で217人目の難病と診断され、さらにそこから回復するまで。
ノンフィクション。
表紙とタイトルのインパクトの凄さで手に取ってみた。
自己免疫性疾患というのは何とも厄介な…。
医学が進んでエクソシストとか癲癇とか双極性障害とか思われていた症状が正しく診断・治療出来るようになったのは素晴らしいこと。
だけどやはり最後に患者を支えるのは愛情だと再確認。
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映画「エクソシスト」さなからの狂気の症状になる脳の炎症を患った筆者の体験とその病のリポート。
すごい勢いで悪化する病、異常な症状、ひたすら信じサポートする家族とパートナー。
巻末の謝辞で平凡だがと感謝の言葉です残した筆者の気持ちが痛々しいほど伝わる。
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著者は、New York Postの記者である。記者の仕事をしていた24歳のある日から抗NMDA受容体自己免疫性脳炎という病により心身に異常に見舞われた。本書は、発病から復帰までの混乱の一ヶ月の物語を、回復後に自ら周辺に取材をして構成したものである。欠落した記憶を埋めるために、自身が書いた(覚えのない)メモを読み解き、自分が知らない自分の様子を関係者への取材を行なうのはどのような気分なのだろうか。その奇妙な体験は一般読者の好奇心を刺激したのか、アメリカではかなりのベストセラーとなったようだ。
脳炎による脳の機能不全のために記憶能力と自己を失っていく様子はわれわれが立脚する自己/脳の脆さを示し、うすら寒さを感じさせる。同じように脳卒中を脳科学者が体験した様を描いた『奇跡の脳』という本があるが、脳の損傷を体験した本人が語る心的体験は非常に興味深い。特に著者が病に苦しむ中で、救世主となる医師に壁時計を書いてくれと言われて書いた右半分に1~12の数字が並んだ異様な文字盤がわれわれの「意識」の奇妙さを生々しく感じさせる。(http://www.dailymail.co.uk/home/you/article-2254184/Real-lives-I-paranoia-hallucinations-nightmares-seizures--So-I-mentally-ill.html、などでもその図が見られる)
なお、原題の「Brain on Fire」は、この文字盤を見て著者の病の原因が脳の機能障害に分かったときに、医者が両親に対して「お嬢さんの脳は燃えているんです」という本人と両親にとっては救いの糸ともなった言葉から取ったものだ。
著者は、自身および両親の経済力、両親と恋人の献身的な支援、そしてこの病を知る医者との出会い、といった幸運が重なり自分を取り戻すことができたと感謝する。これまで同じ病にかかっても見逃されて、躁鬱病や統合失調症と診断されて精神科で過ごすか、命を落としていた人も多いと推定している。著者が抗NMDA受容体自己免疫性脳炎と診断された当時、200番目くらいの患者だったものが、今はその症例が数千を超えているらしい。その事実は、過去に同病に罹った患者が「精神病」として片付けられていたであろうとことである、また今でも「精神病」とされている患者の多くが同様の脳の器質性疾患であるという可能性もある。そういった患者は適切な治療を受けることができれば回復できた可能性がある。そのような患者が、幸運がなければ助からないようではいけない、というのが著者の主張だ。
脳の不思議と人の強さを感じることができる良書。ベストセラーになったことも理解できる。
YouTubeでも著者がTEDxで講演した様子がアップされている。便利な時代になったものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=bQvqAaOLBnw
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感動的で貴著な本である。
著者、スザンナ・キャラハンは本にある病気になった時24歳。
訳者のあとがきにあるように、本書の構成は、前半が著者の次第に悪化していく詳細な精神症状と、医師による相次ぐ誤診、診断が確定されない中どんどんと精神状態が悪くなっていくさまと困惑する周囲の記述は、ホラー小説を読むかのよう。
実は私は読む前から診断名を知っていたし、精神科医でもあるので、この前半は読み進めることが非常に辛かった。我が身を振り返っても、24歳という若さで幻覚・妄想が出て来た場合、統合失調症ないしは双極性障害と診断してしまう可能性は高い。あえて言えば、突然の発症、それまでの社会適応からして、『この人がこんな症状を呈するのだからそこには何かがあるには違いない」という確信が持てた時に、見かけの症状からの診断を疑うことができ、徹底的な検査を繰り返すだろう。
スザンナ・キャラハンは何度も、精神疾患の確定診断から長期に不毛な治療へと導入される危機にさらされた。高名な神経科医からきっとこれは器質的な(身体に原因のある)疾患だと疑われて血液検査を受けても正常だったこともあり、一時は匙を投げられる。本人が書くように、本当にたまたま同じ病気を疑える病理に詳しい医師に出会えたこと、その医師でさえ3年前に経験していなければ果たして診断が出来たことさえわからない。
診断に至るまでの間、離婚してバラバラだった両親との絆、そしてボーイフレンド(恐らく彼も若いだろうに!)の示す彼女への献身的な愛情が本人を支え続けた。信じがたいほどの彼女への愛と信頼だと感じられた。諦めなかった彼らに感動する。
診断が確定すれば治療は一応進む。ただ、絶対的な治療が確定されているわけでもなく(現在もそう)、果たして上手くいくのかはハラハラする。勿論、本書を本人が書いている以上、回復したはずだとはわかっているのだが...。
本書は、まれな病気から回復した本人が書いただけでも貴重だが、診断過程、そこに至る本人と周囲の人間の葛藤、そして回復した患者の心理(決して晴れやかなものじゃあ無いのだ)が余すところなく描かれている。
感動的で、そして多分医者は(とりわけ神経科医、精神科医は!)必読の書と言ってもいいくらいだ。
本筋とは離れるが、著者が若干24歳でニューヨーク・ポスト紙の記事をしっかりと任されている点や、周囲からの信頼を得ていることにも驚く。学生時代からインターンとして同社に所属し、活動していたこともあるのだろうが、アメリカ社会と日本との差を感じる部分でもあった。
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翻訳はこなれていて読みやすい.医者の翻訳でないので,医学用語はおかしい個所があるが,これは校正者の問題.医者の翻訳は直語訳でひどいものが多いので,翻訳家の手によるものがずっといい.内容はもうひとつ.ベストセラーになる理由がよくわからないが,医療者でない人がよむと感動的なのかもしれない.