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新潮社の編集者を経て小説を書き出した著者の3作目だとか。著者とほぼ同世代である40後半の編集者が離婚して、都心のマンションを妻に明け渡し吉祥寺の古民家に移り住む。そこで昔の不倫相手と再会し、焼けぼっくいに火がつきかけるという話。
読みながら終始思っていたのは、40半ばにもなって、しかも知的な職業なはずの編集者とかやっていながら浅薄な男だなあという主人公の印象。カッコばっかりという感じが終始拭いきれず。こういう人間でも、いっぱしに一家をかまえてたりできていたものなんだという……。まあ、浅薄だからこそ考えずに行動できていいのかもしれないけど。
とにかく、これを著者自身とついつい重ねてしまうので、小説自体が陳腐に思えてしまったし、内容を少しも髣髴とさせない装丁画などもカッコつけの産物にしか思えなかった。
そして伏線が生かしきれていないのも残念……というか、むべなるかな。
自分としては、アメリカの大学でMBA取得を目指している(というところがまた浅薄な感じ)息子が、スカイプで彼を紹介してきたというところで、主人公が父としてもっといろいろ考えたりすることでストーリーが活性するのかと期待したんだけど、まるで他人ごとかのように消化がよいさまを見せるだけだった。吉祥寺の家を貸してアメリカに渡った大家から託された絵画についても、逸話がありそうなのに何ら話がふくらむことはなかった。再燃しそうな関係についても、介護などの問題が絡んできそうなのに、妙にカッコいいままで進んでしまう(そしてなれの果てまではいかずに話は終わる)。
何というか、カッコよさを追及するあまり浅薄になっていることに気づかない壮年男性の姿をこれでもかと見せられた感じ。あくせく働き、家では虐げられているオヤジの悲哀や、時流に逆行するような頑固オヤジのほうがよほど愛おしい。なぜなら、カッコつけてる壮年男性は、結局自分のためだけに生きているからだな。
……あ、これってまさしくタイトルどおり!?
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勢いよく読めた。
著者の作品は二度目だが、ともに面白い。
図書館で借りたのだが、手元に置いて、いずれ読み直したい。
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まだ読み途中なのですが、沈む同様、美意識にはうなずけるものの、「んで?」という内容です、今のところ。ファッション雑誌の感覚で読む分にはいい、今のところ。
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食う寝るところ、住むところ。
古い思いのこもった家を借りて住んだ1年。
一度別れた恋人。その家族。
おばあちゃん猫。
吉祥寺の街でおこる人生の曲がり角
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お洒落な雑誌の写真見たいなお話。言ってみれば現実感がなく、元妻との離婚理由や葛藤もなく、結局不倫相手と寂しいからヨリを戻すだけの話に見える。家についてたくさん書いているのに、家の匂いがしてこない。48歳までどうやって生きてきた?息子、元妻はこの人の「なにか」にならなかったのか?「介護」も現実離れしていて、優雅が物事の美しい面だけみることなら、優雅というんだろう、と、優雅じゃない自分はそう思う。
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離婚をした。から始まる文章、妻の攻撃性をさりげなく強調していく感じ、その上で「そうは言っても、そもそもの非はこちらにあるのだ」ときて、ああ~不倫ね、不倫した側の人ってこういう話し方するよなあと白けた気分で読み始めた。……はずなのに、文章があまりに心地よいので引き込まれてしまう。
古民家の改装は素直に素敵でうらやましいなあと感じるし、日々のご飯は美味しそうで、猫や鳥たちとのやり取りも楽しく、そういう日々のいろどりが過不足なく、坦々とつづられていく。作中の女性は佇まいや所作が浮かんでくるようで、お話の中で落ち着いた光を放っており魅力的だ。
冷静に考えれば、しょうもない不倫男である主人公の反省のかけらもなく流されるままいい加減な態度は鼻につくものだし、井之頭公園周りに住んで(最後に土地買ってるけどあの辺りをさっと買えるなんてすごすぎる…)、買い物はアトレとデパ地下、家具道楽なんて完全に言い訳のしようもなく貴族で優雅なんだけど、そういう嫌らしい部分や男のアクみたいなものが文章で完全に脱臭されており脱帽。こう書くと嫌味みたいになってしまうけど、本当にすごいのだ。
松家さんのファンになってしまったかも。別の本を読みたい。
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前に井の頭公園の近くに住んでいたこともあり、映画のように映像が浮かび上がってきたわたしはラッキー!
松家さんの作品は3作目ですが、わたしの中での評価はこんな感じです。
火山のふもとで>優雅なのかどうか、わからない>沈むフランシス
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出版社に勤める匡は、離婚し井の頭公園近くの古民家に一人住まいを始めた。米国に住む息子と同居することになった女主人から、外観を変えなければリフォームしても良いし、リフォーム代は実費を出す。その代わり、自分が米国から帰ることになったら出ていってほしい、という条件で住み始める。匡は、古民家を自分の好みにリフォームし始める。ちょうどその頃、以前付き合っていた(不倫していた)佳奈と再会する。佳奈は、匡の家の近くに父親と住んでいた。
たぶん松家さんの好みのオシャレな古民家リフォーム、独り身の男性の優雅な食生活。元カノとのオシャレな関係。佳奈の父親の介護という件はあるものの、どう考えてもこれは「優雅」でしょう。そこを楽しむ小説なのだと思う。
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著者作品3冊目。著者としても3作目の作品。
いい感じに硬さもこなれた感じで、物語の進み方は滑らかだが、可もなく不可もなくと言ったところか。良作なのかどうか、わからない(笑)
まぁ、3冊目に本作で、良かったかな。
連載の媒体が『Casa BRUTUS』ということで、著者お得意の暮らしにまつわるオシャレな家具、リノベのあれこれといった話が出てきて、それはそれで興味深い。
執筆当時の著者自身より若い48歳、独身男性を主人公に、(一般人から見れば)優雅と思える暮らしぶりを、少し距離をおいて描いている感じで、境遇は著者に近いものの(出版業界勤務)、生々しくない。敢えての距離感だろう。
その主人公が離婚を機に、代々木のマンションを引き払い吉祥寺に移り住む。なんとなく自分の半生と重なり他人事とは思えない(苦笑)。
そして古民家を借り受け、自分の好みに改装を始めるという、いかにも『Casa BRUTUS』な内容。媒体の読者を意識した筋立ても必要だろう。
その後、かつての恋人との再会、その父親の介護問題、遠くアメリカに暮らす息子の独立の問題、そして改装した古民家の行方・・・。
吉祥寺というわが町の見慣れた風景、訪れるお店の既視感などが柔らかな筆致と相まって、優雅な読書のひと時を満たしてはくれた。
ただし、佳き作品なのかどうか、わからない(笑)
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「火山のふもとで」「光の犬」がすごく好きで、以来少しずつ読んでいる作家さん。
40代後半での離婚。井の頭公園近くの古い一軒家を借り受け、思い通りに手を加えていく主人公。
インテリアを初め、物へのこだわりが半端じゃなく、まあ裕福なのねと少々鼻白む。それでいて「優雅なのかどうか、わからない」って、十分優雅なんですけど。
それでも、松家さんの文章は心地よくてずっと読んでいたくなる。家の貸主の老女・園田さんやかつての不倫相手・佳奈、離婚した妻、アメリカ留学中の息子、そして家に居付くキジトラの猫・ふみまで、登場人物(猫)全てが生き方に潔さがあって清々しい。
結局何ということもなく終わるんだけど、人生の行く末をしみじみ考えてしまうような作品でした。
このくらいの歳になると佳奈の選択はすごく理解できて、一緒に住むことだけが幸せの形じゃないんだよね。優雅に息抜きできる場所が家じゃないところにあるって贅沢だな〜。