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ちょっと変わったテイストの中編集。いや、短編くらいかな?
よく分からないものもあったけど、印象に残ったのは「シンガポールでタクシーを拾うのは難しい」のワンシーン。
旅行先で意見の擦れ違いから別行動をとることにしてしまった夫婦。妻は街歩きを楽しみ、そこで出会った青年につい夫の愚痴をこぼす。すると青年エミリオは言うのだ、
「同じ相手と一緒にいても、やさしい気持ちになれることとなれないことがある・・・意地の悪さとやさしさは、まったく違う二つの感情ではなくて、根っこは一つのところにある・・・意地悪をしないとか、許すとかいったことができるだけ」・・・
いやはや。目からウロコ、とは言わないけど、でも心の奥底で本当はこう思いたかった、ということを目の前に掲げて見せられたような気持ちになった。
さらに、そののち出会ったエミリオのパートナーもこう言う、
「終わりを迎えることを考えるな。」
これには背筋がびしっと伸びた。
この本を読んでいたまさにそのころ、私はパートナーに対して怒っていて、その問題が解決しないことにも、自分自身の気持ちがなかなか収まらないことにも、うんざりしていた。こんな気分になるくらいなら、一人のほうがいい。あやうくそんな思いがかすめたときだったから、余計に響いたのかもしれない。
誰かと共にあるということは、めんどくさいし気を遣うし思い通りにいかないことだらけ、そこでできるのは「許す」ということだけ。なんだか宗教じみて聞こえそうだが、真理には違いないんだと思った。
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同じ言語を使っていても認識相違があるように、不慣れな言葉同士でわからないところを勝手に補完したらそりゃあ幸せな解釈になるだろうなぁ。
でもどうせ、完全に相手を理解できないなら可能な限り、勝手な幸せ解釈を身近でしていきたいなと思う次第。
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久しぶりに中島さんの本を読んだ。やっぱり好きだなと思った。ありえない日常だけれど、少し視座を変えるとこんな日常もあるのではないかと。人間のやりとりが生々しいし、生々しいけれどユーモラスで、こんなやりとりができるユニークな人になりたいと思う。
お気に入りは、『コワリョーフの鼻』と『シンガポールでタクシーを拾うのは難しい』だ。どちらも夫婦が題材だが、やりとりがそれこそ、生々しいのだ。何を相手に求めているのか。それが違和感なく全て入ってくる。『コワリョーフの鼻』はそこに、さらにユーモラスも加わり、ほっこりする内容だった。
他の中島さんの作品も久々に読んでみようと思った。
2014/09/27
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7つの短編集。
どれも不思議な気分になるお話。
でも、内容はそんなに不思議なものばかりじゃないんだけど、なんでだろう?
それぞれの話に深みがあって、そしてとってもユーモラスだった!
2015.2.21
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短編集。
少し苦手な不思議系。
不思議系だけども最後まで読めた。
最後まで読み切らずに期限切れで返してしまおうかと思ったが、最後まで読んで、作者のあとがき読めてよかった。
なんだか心強い気分になった。
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中島京子さん「東京観光」読了。7つの物語からなる短編集。実は中島さんの本を初めて読んだのが競作アンソロジーに収録されていた「コワリョーフの鼻」。他の作品も秀逸‥しかし‥あえて★三つ。中島作品への期待は大きいのである!
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何が突出して良かったとかではないんだけど、全編非常に面白いというか面白みがある。かすかに外連味も感じる。「植物園の鰐」のぶっとび加減と、「コワリョーフの鼻」の鼻行類にはぶったまげました。こんな場所で出会うとは。
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ちょいちょい「うぉっ!」っと心をわしづかみにする展開
この前に同じく中島さんの眺望絶佳を読んだので、こちらも東京観光のアンソロジーかと思っていました。
違いました。
シンガポールとか行ってしまいます。
あとがきで書かれているのですが、いろいろな媒体に求められた短編を集めた内容ですので、それぞれの話に関連性はないのです。
さらっと読んで行く感じでしたが、ちょいちょい「うぉっ!」っと心をわしづかみにする展開に持って行かれます。
「コワリョーフの鼻」の展開にはびっくりしましたわ。
後は天井の刺青の描写に見惚れたり、ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウェイを読んで映画のような情景が脳内に広がり、こないだ行ったばかりだけどまた北陸行きたいな、なんて思わされました。
巻末を見ると、集英社でいろいろ中島さんの本が発刊されているようなのでまた読み進めていきたいなという気持ちになりました。
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個人的には鼻の話が一番残っていて好きです。お互いに気になっていて心の中ではばれているんじゃないか、と考える妻と、自分のせいなんじゃないかと疑う夫。やさしすぎて羨ましい限りです。天井の刺青は最後のまさかの展開に人生ってわからないと思えるお話で、これはこれでよかったです。あとはゴセイトに会ってみたい。でもこれは自分の中のひとり感もあるような気もしました。
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久しぶりにこれぞ短編集!ってのを読んだ気がして新鮮でした。1人の作家がテーマに沿って小説を編んでゆく思考が伝わってくる。1冊の本として良いと思う。
「植物園の鰐」で、不思議系とまで言わないがこういうのかー、と思ったら次はまた違う感じで面白かった。どの作品も浮遊感と現実が共存していて、いつまでも読めそう。逆にこれが1番好き!ってのを選ぶのが難しい。
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7つの短編。「植物園の鰐」「シンガポールではタクシーを拾うのは難しい」「ゴセイト」「天井の刺青」「ポジョとユウちゃんとなぎさのドライブウェイ」「コワリョーノフの鼻」「東京観光」。
ピンと来る話もあり、そうでも無い物もあり。
期待が大きくハードルを上げすぎたかとも思いましたが、ネット上を見てもさほど絶賛はされてないようです。
7篇のうちの一つ『コワリョーフの鼻』は先日読んだアンソロジー『REBORN』に収録されていた作品でした。
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『シンガポールでタクシーを拾うのは難しい』、『東京観光』が面白かった。前者、倦怠期の夫婦の様子が生々しくて、そうなんだよね、相手をちょっと気遣えば問題にすらならないことが、気遣えないばっかりに大問題になるんだよね、あるある。と思いながら読んだ。夫婦間だけでなく、恋人同士でも家族でもあること。おもいやりは大切。お互いに。で、結局くだらないことで笑い合ってなんとなく仲直りして、というのも気の置けない同士ではあること。上手だなあ。後者はちょっと不思議な話。一度は遭遇してみたいな私も。夢か現実か分からない体験に。
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ポップな表紙が印象的な短編集。
1篇ごとに世界もがらりと変わる。
表紙のように、とてもカラフル。
が、共通するのは、どの作風も一風変わった人や設定があることだろうか。
小石川植物園で鰐を探し続けるヒロインも不思議だが、そこで彼女が出会うのは「銀杏の精」を演じ続ける中年男性。
放課後にだけ現れ、一部の人にしか見えない「ゴセイト」。
結婚前にした鼻の整形後のメンテナンスができず、鼻の話題に極端に過敏になっている女性。
彼女の夫はこともあろうに、ゴーゴリの「鼻」を生物学的に考証しようと、「鼻行類」などの話を滔々とする。
シュールな中に、独特なユーモアが感じられる。
シュールな作品に耐性(失礼!)がない人には、ちとつらいかも。
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独特の短編の短編集でした。闇、病みのあるのが特徴的なってこと。どんな終わり方とかじゃなくて出だしに問題定期して先に進むのが、どうなって終わるのかと思いながらでしたが、特に解決策がある訳ではなくてアワアワと進んで終わってしまったよ。ポジョも振り回されて、でも受け入れて、ずいぶんやりたい放題だけどと思うけれど。東京観光も不思議だけど、最後に笑ってお別れして良い思い出話でしたね。思ってたのと違うのが1番思う事かも、さよならコタツに平成大家族にの家族ものかなぁなんて勝手に思っていたよう。なんだかめっちゃ読んでる
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表題作のほか六編の短編集。
程度はいろいろだけれど、どれもチクリと痛い。誰もが隠し持っていて、なるべく表に出さないようにしているところをさらっと逆なでされるような心地。