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2014年83冊目。
マーケティングに関する知識として書かれているものは基本中の基本だが、
「NPOの場合」に当てはめて書かれているため、
想いだけではなくしっかり成果を出したいNPOは一読の価値あり。
「事前準備」「企画裏立案「実行・管理」とフェーズごとに分けて解説されている点も分かりやすく、
実際にNPOが実践している事例もとても参考になる。
すぐに取りかかりたいことがたくさん見つかった。
【メモ】
■「価値提供型」と「課題解決型」のNPO
■「活動」よりも「成果」
■「理想」と「現在地」
■「ニーズ」と「シーズ」
■マーケティングの対象は「受益者」と「支援者」
■強み・弱みを知るための「比較」
■個々の取り組みレベルでベンチマーク
■寄付額の1日単位の負担を明示
■目標金額に対する達成度
■10月〜12月は激戦期
■「相手に求める行動」を意識して制作物を設計
■採用の前に業務の明確化
■「KGI」と「KPI」
■「インプット」「アウトプット」「アウトカム」「インパクト」
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企業に勤める傍ら、NPOマーケティング研究所の代表をこなし、またアメリカのNPO情報の紹介をしているブログ「飛耳長目」を運営している長浜さんが、これまで発信されてきた知見の集大成的な本を出版されました。
先日日本財団ビルで開催された出版記念セミナーにも参加し、直接お話を伺うこともできましたので、そこら辺の感想も交えつつ感想をば。
■NPO業界にとって待望の一冊。
NPO業界にとっては待ちに待った本ですね。長浜さんのこの本と、そして1ヶ月早く発売されていた「NPOのためのIT活用講座」この2冊にかかれている内容は、これからのNPO活動にとって非常に重要なものです。これを疎かにする活動に未来はないといってもいいぐらい。
というかむしろ、なぜこの分野におけるこの手の必読書の位置付けがぽっかりと空いたままだったんだろう。
NPO関連の本で探してみると、NPO法人設立に関する書籍が大半で、その他は社会起業家系というか、最近とても元気な若手NPOを運営している方々の起業ストーリー的なものが多い。
もちろんそっちはそっちで重要だし、とても意義深い本が多いんだけど、NPOに関わるスタッフが日々の実務で直面する課題を解決していくためのスキルを身につけさせる教科書的な本が見当たらなかった。
課題を解決していくためのスキル。うん、なんというんだろう。
たぶんNPO関係者の中には、そんな普遍的なスキルはこの業界にはないよ、というようなスタンスの人もいるのではないかと思う。
もちろん何かしらの社会課題を解決するためのNPOであって、その社会課題の最先端にいるのがその関係者であることは間違いないんだけど、そういう正解のない道を突き進んでいくためにも基本的な方法論は間違いなくある。あるんですが、そのことがわりと無視されているというか、気づかれないでいることが多い。と、NPOと営利企業どちらにも関わる身からするとそう感じることがある。
マーケティングをしっかり意識しようぜ、とか
ITばっちり活用して情報発信していこうぜ、とか
今回出版された2冊が語っているのは、そういう社会課題に立ち向かっていくための方法論です。武器です。
で、なぜこんなに大事なことが今まで本として語られていなかったんだろう、というのはけっこう疑問だったんですが、先日の出版記念セミナーにおいて長浜さん、久米さん、山田さんの3人がお話されているのを聞いてなんとなく理解できた。
3人が繰り返し言っていたのは情報発信の大切さ。NPOも、NPOスタッフも、プロボノとして関わる企業人も、もっともっと発信しようぜ、と。
まぁ簡単にいってしまえば、情報発信する人がまだまだ少ないんですね。
そして根本的にまだまだこの業界に関わる人間は少ないということ。
必要とされる情報も、知見も、まだまだ集まってないし、事例も少ないのであって、
今関わっている人たちが積極的に切り開いていく必要があるということですね。
■NPOにおけるマーケティングとは
さて、すっかり前置きが長くなってしまいました。
先ほどこの本で語られている内容はNPOが社会課��に立ち向かうための方法論、武器である、と書きましたが、著者はNPOにおけるマーケティングを「社会に対する価値の提供や社会課題の解決のための仕組みづくり」と定義しています。
ではこう定義されるNPOマーケティングとは、一般的な企業におけるマーケティング(「売れる仕組みづくり」)と何が違うのか。
一番の違いは、対象が受益者と支援者の2者存在するということです。
つまり、企業の場合顧客を対象としてマーケティング活動を行うのに対し、NPOでは「受益者(社会)に対して新しい価値を提供したり、課題を解決することを目的に製品やサービスを提供しますが、同時に、そうした活動を支えてくれるボランティアや寄付者、会員などの支援者の獲得活動を行」う必要があるということです。
単純に支援者向けのマーケティングが追加されているという違いだけではなく、受益者という顧客向けのマーケティングの性質も変わってきます。支援者の方に「寄付者」という存在が含まれていることと関係しますが、NPOの場合その活動分野によってはその顧客に支払い能力がない場合も多く(例えば発展途上国の子どもの支援など)、顧客向けのマーケティングにおけるサービス訴求のポイントも変わってきます。
また、支援者向けのマーケティングというのがNPOにおけるマーケティングの醍醐味的なところがあるのですが、
単純に自団体の経営リソースを補うためだけに行うのではなく、「市民を啓発して社会参加や自律・自立を促すという意味合いが含まれており、企業にはないNPO独自のもの」と長浜さんは主張します。
これは個人的には非常に共感できるポイントです。
これまで複数の現場でボランティアのマネジメントやコーディネートに携わってきましたが、ボランティアというのは単純に人手を補えればいいという視点しかないのであれば、それはボランティア参加者に対してあまりに失礼だと思っています。
ボランティア参加者は一人ひとり色々な考えを持って活動に参加してきます。もちろん活動理念や内容への共感という部分が前提にはあるべきですが、それ以外にも成長の機会であったり、人との出会いであったり、人によって色々なものを求めています。そこまで織り込んでボランティアを巻き込み、楽しんでもらう、という視点はボランティアを活用する上で必須の視点だと思います。
この点はボランティアマネジメントだけでなく、ファンドレイジングにおいても当然重要な視点であり、総じてNPOマーケティングにおいての最重要な視点といえるでしょう。
長浜さんもこの点はかなり重視されているようで、マーケティングの段階分けにおいて、企業のマーケティングで一般的に使われる4C(Customer Value価値、Costコスト、Convenience利便性、Communicationコミュニケーション)に加えて、”快適さ(Comfort)”という指標を追加した5Cというフレームワークを提示して解説をされています。
■NPO関係者必読。そしてNPOにちょっとでも興味のある社会人もぜひ。
NPO関係者はぜひぜひ読んでおくべきです。特にビジネスの現場での経験がなく、マーケティングについてあまり知識がないという人はあれこれ悩んで半端にマーケティング論をやるより、この一��を読めばばっちりです。
4C(本書においては+1C)というマーケティング論における基本的なフレームワークの基礎をしっかりと学ぶことができますし、随所で様々な分野の実際のNPOの状況が事例として引かれているので、自分たちの活動に照らしての検討も進めやすいと思います。
また、これからNPOに関わってみようかなと考えている社会人の方にもオススメ。
NPOマーケティングの特徴を知ることができ、企業のマーケティングとどう違うのかを理解できます。
特にファンドレイジングという分野は、日本ではこれからどんどん盛り上げていくべきところなので、
企業でマーケティング経験のある人に興味を持ってもらって、どんどん参加者が増えていくと面白いことになっていくんじゃないかなと思います。
■以上。
ということで、レビューだかなんだか分からなくなってしまいましたが、
内容もそうですが、NPO向けにこの本が登場した、ということがとても重要な一冊です。
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ファンドレイジングを勉強して初めてマーケティングを勉強。NPOならではの特徴を説明していてわかりやすい。
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マーケティングとしての根本的な考え方は変わらないが、NPO特有の点を踏まえながら事業活動の進め方を説明している。具体的には、ターゲットが受益者と支援者の2つに分類されていたり、あくまで社会課題解決を前提とした組織づくりなど。NPOにおける事業や組織の拡大が主テーマな気もするが、段階的に解説されていたり、事例を交えられたりするので理解しやすかった。