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本書は明智光秀の再評価を特集した雑誌歴史読本の再編集の文庫本です。第一部 徹底追跡!明智光秀の生涯では、本能寺の変の直前まで光秀が織田家中随一の武将であったことを改めて認識出来ました。中でも「延暦寺焼き討ち」で部下に殲滅戦の「なで切り」を実行させて最も功績のあった光秀が、滋賀郡及び延暦寺所領の多くを得たことはあまり語られない事実です。また本書にはありませんが『石清水八幡宮と天下人―信長・秀吉・家康』によれば、延暦寺焼き討ちの前に、信長が王法を護る延暦寺を潰してもよいかと、神祇官の吉田家に尋ねると、延暦寺は宗教ではなく政治勢力なので、潰しても構わないと日記に残していることは、光秀の関与も想像できて興味深いです 第二部 明智光秀を巡る7つの論点では、特に「光秀の城」が光秀の力を物語っています。安土城に先駆けて瓦葺きの天守閣を持っていた坂本城。丹波平定の拠点として丹波亀山城、福知山城、周山城を築城し、落城させた黒井城や八上城を修築して、これら全ての城に部下を配置していました。第三部 本能寺の変はなぜ起きたのか?では「虚飾に満ちた光秀の動機の数々」が、小説やドラマに出てくる光秀の信長に対する怨念説が根拠が無く学会では否定されていることを改めて認識出来ました。(しかし相変わらず大河ドラマ真田丸でも光秀は凡庸で恨みがましい武将でしたが、同直虎では颯爽としたイメージでした!)最後の特別付録原文と現代語訳で読む『惟任退治記』は秀吉が変直後に記させたものとして有名ですが、今回初めて目にしました。今後も参考にしたい貴重な史料です。(怨念説の原点でもあります)