紙の本
ミステリー「ヌード史」
2015/03/26 19:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:衒学舎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ヌードと愛国」は、明治維新から現代まで、国家や社会とヌードとの関係を、七つの事件によって解く本です。内容はかなり硬いのですが、テイストはミステリー仕立ての読み物になっています。
扱われるヌードは、絵画・彫刻・写真であり、七つの事件の中の一つは男性のヌードです。この事件では、女性が男性の裸体を描いた、ということで読者の関心を呼んでいます。
少々ミステリー仕立ての文章は鼻につきますが、何分一般の人に広く読んでもらいたい、という著者の願空回りする願いに苦笑すること度々、でした。多少高くても、学術的な文章で読んでみたい、と思わせる深い内容です。
投稿元:
レビューを見る
智恵子抄で有名な長沼知恵子のエピソードがさらりと書かれている。まず、修業時代に描いた男性ヌードデッサンが「おかしいほどリアルに徹する描写態度」だったと太平洋洋画研究所で伝説化されていた。
次にわいせつ文書図画公然陳列の疑いで起訴された武智鉄二「黒い雪」。米兵相手の売春宿から全裸の少女が飛び出してくる。基地のフェンス沿いの細い通路を逃げていくワンシーンがある。これが猥褻だと起訴されたのだが、この少女のモデルが知恵子だというのだ。エーという内容だが、その証拠を詳しく書いてある。
投稿元:
レビューを見る
ヌードを共通のキーワードに社会の変遷と思想や価値観の変化を説く労作。日本美術史の興味深いエピソードや女性映画監督の知られざる活躍、そして働く女性を巡る世間の見方など近代社会史の豊富な断面が窺えて読みこたえがある。
投稿元:
レビューを見る
12/21朝日 絵画や映画などで表現されてきたヌードを、近現代日本文化史という視点で眺めると、「日本をまとったヌード」の系譜が現れてくるという。明治期の長沼智恵子のリアルすぎるヌードから、パルコの手ぶらポスターまで、7体のヌードの謎をとき、近現代をはだかにする試み。
投稿元:
レビューを見る
かつてヌード表示は犯罪だった。
今みたいにネットとかもなかったから、本当に裸体は犯罪だったのだろう。
女子美術大学の前身は1900年に設立されたが、当時も美術を専攻するのは少数で、ほとんどが裁縫とかだった。
投稿元:
レビューを見る
7枚のヌードの画像をベースに明治時代以降の女性にまつわる歴史を巧みにまとめた好著だ.「智恵子」がヌードを描いた事自体、当時の状況を察するに大変なことだったと想像する.女流映画監督として満州で活躍した坂根、写真に巧みな仕掛けを加えて様々な表現をした大束、斬新なポスターで注目を集めた石岡など、作品の背景を含めて現代史を上手く表現していると感じた.
投稿元:
レビューを見る
ヌードとあるが内容はいたって真面目。ヌード写真や絵画の作成者の意図を数々の記録から解き明かした上で、愛国の精神とどう結びつくのかを論ずるという切り口そのものが斬新かつ興味深い。事実と著者の考えが明確に分けて記述されているところも印象が良い。