紙の本
海外企業の買収はうまくいかないことの方が多い
2019/09/17 15:11
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投稿者:ホンの無視 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずこの本から読み取れることは単純に「海外企業の買収はうまくいかないことの方が多い」ということだと思う。
本書で取り上げるケーススタディには、
明らかに成功・失敗とわかる事例だけではなく、
一度海外企業の買収に失敗した後、その時の経験を活かして次の買収の成功へとつなげた例や、
絶望的な状況でも、懸命に事業再建に取り組んだ結果、
失ったものはあれど得たものは大きい、という状態にこぎ付けたものもある。
しかし、その様な「失敗を次に活かした」と言える事例があることを考慮しても、
「得るものが特になかった失敗」である事例の方が圧倒的に多い。
「少子高齢化が進む日本市場依存から脱して海外に打って出る」と抱負を語る企業は多いが、
言うが易し行うは難し、ということだろうか。
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松本茂著「海外企業買収失敗の本質」東洋経済新報社(2014)
*海外M&Aで経営者が謳う5つの利点。
(1)時間を買う、(2)世界市場占有率を獲得する、(3)シナジーを生む、(4)現地の有能な経営者の獲得、(5)円高を利用する。
*海外M&A成功判定基準
・買収後4年目を始点として、対象事業セグメントと地域/海外セグメント営業利益両方で最高益更新率50%以上を実現したケースを成功とする。
・買収後に自社が破綻、あるいは買収した事業を売却、撤退したケースは失敗とする。
*時間軸を買う
成功例:10年の長期で持続的な利益成長に照準
失敗例:買収後の短期的な株価や業績を重視
*10年の時間軸で買収後の戦略を考える。
・国内事業とのウィンウィンに固執しない。
・現地マネジメントん経営を任せない。
・大型海外M&Aは長期経営執行するトップの下で行う。
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最近、ソフトバンクの決算発表に関する記事が載っていた。その中でも、アメリカ携帯電話3位のスプリントに関する情報があった。少しは上向いてきているようだが、5年後、10年後になってこの買収が成功例に載るかどうかは、孫会長の手腕にかかっている。
今回の本でも、「1兆円超の大型ディール、買収の勝算」と言いう形で、取り上げられている。本当は、アメリカ携帯電話4位のT-Mobileも買収したかったのだが、司法省がうんと言わなかったので、スプリント単独でアメリカ事業を展開することとなった。
日本企業が海外企業を買収してどうなったかをいくつかの条件をもとにして判断したのが116件だ。そのうち成功しているのは、8%。失敗したのが44%、負も可もないのが48%と厳しい結果が出た。
海外の企業を買収しても、人財や資源を使いこなすことができるかどうかにかかっている。現地の人間にまかせっきりにして失敗した例がある。それどころか日本本社自体が消えてしまった悲惨なケースもある。
外国の企業を子会社にして口先だけのグローバル化を唱えても、「RINGISHO」などと言う日本でしか通用しない書類を作成して転送したり、子会社の経営陣が全員あるいはほとんどが日本人では、買収された企業の人はついてこない。
タイミングと経営陣の方針次第でいい買い物になるか不良債権のかたまりになるかが決まる。バーゲンセールとはわけが違うので厳しい買い物だ。
ソフトバンクに関する記事
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LE0E220150210
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結構当たり本。成功失敗を定義してそれぞれの例から共通点を引き、間にケースを交えるというまあスタンダードな作りで、読み物として面白い。学術書としては、例えば教訓として経営者が10年以上在位していることが海外M&A成功の秘訣の一つに挙げられているが、因果関係が逆である可能性は?といったところなど。また、サンプル数が取れないので確かさにはやや弱さが。この分野では仕方のないことですが。
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失敗例も成功例もそれぞれ。失敗例が圧倒的多数であることは定説どおり。
あげられている成功要因のうち、後続の買収案件有無は因果関係が逆ではないか。
一貫した戦略と、環境変化に合わせる柔軟性と。
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かなり丹念に事例を集めて丁寧に紹介している部分は良いのだけれども、それで終わっている。
多数の事例紹介の本に留まっている。