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サヴァンと共感覚にフォーカスされすぎなのが今ひとつなところですが・・・
・本書に紹介されているような特殊能力は教育や努力で
得られるものではないこと(それを否定しませんが)
本書の例だと「事故で」得られ、その前後で視覚含めて
明らかな差が生じている
この差は後天的に能力を得た著者しか語れない
貴重な内容です
著者ほど顕著じゃなくても普通の人には知覚できないものが
当たり前に見えたり理解できたりする人はいるんです
それを普通の人が(特に秀才系の人ね)否定することが多い
・その特殊能力には程度の差はあるものの何らかの
「代償」が伴うこと
その克服は本人の並外れた努力と周囲の協力が不可欠
P232〜235 の内容は著者の主観にすぎませんが
代償が大きい場合は生き地獄なのかも・・・
本書の後半はその能力のメカニズムを解明し、誰もがその能力を
引き出せれば・・・という論調ですが
私は、その前に先天的、後天的に能力を得たにも関わらず
「代償」が大きすぎて埋もれている人の発掘が急務だと思う
本人は生き地獄だし、社会にとっても大きな損失
根拠はないですが、いい具合に「中途半端なサヴァン」って
奇跡に近い例だと思いますよ
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この本は希望の書です。事故で後天的にサヴァン症候と共感覚を得たジェイソン・パジェットが共感覚者であるモリーン・シーバーグと共に彼に起こったこと、そして世界をどのように感じているかということが語られています。
また、彼が持つ情報を科学・医療研究者と交換することで、この世界に更なる可能性が加えられるかもしれません。それは、研究者ではない一般の人々にとっても意義のある機会だった例も紹介されています。さらに、後天性脳機能障害(TBI)あるいは高次脳機能障害に苦しむ人々にとって朗報が含まれていることは言うまでもありません。現実的に物事が進むのは非常にゆっくりな速さだとしても、そこに希望の道しるべがあるとないとでは、大違いですから。
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<後天性サヴァン症候群とともに生きる>
『日経サイエンス 2015年 02月号』の特集は「後天的な天才」と題されるものだった。その中に、生まれつきではなく、頭部に外傷を受けたことにより、特殊な天才的な能力が目覚めた人々=後天性サヴァン症候群の記事があった。本書はこの記事中にも取り上げられていた、ジェイソン・パジェットが、ライターであるモリーン・シーバーグの助けを借りて、その稀有な体験談を語る本である。
ジェイソンは、ある事件に遭うまで、どちらかといえば、刹那的で享楽的な毎日を送る、ごく普通の青年だった。遊び友だちも多く、昼は家業を手伝い、夜は友人と飲み歩き遊び歩いていた。学校に通っていた頃は、数学への興味などほとんどなく、「こんなものを勉強して何の役に立つんですか」と教師に聞くような生徒だった。
31歳のある夜、友人からの誘いに意気揚々と出かけた彼は、ふくらんだ財布に目を付けられ、暗い小道で悪党に激しく投打された。病院で検査を受け、激しい脳震盪と打撲と診断された。
彼が自らの大きな異変に気づくまで、さほどの時間はかからなかった。暴力的な事件により、想像に難くないが、PTSDを負い、人付き合いを避けるようになった。だが、異変はそれだけではなかった。周囲のものが突然、幾何学的な図形として意味を持ち始め、あらゆる形から光が放射されているように見えだしたのである。
数学的な共感覚の目覚めだった。
彼は、引きこもり生活をしつつ、自分に見えるようになった絵を懸命に描き起こし始める。
やがて彼はその図形を通して、おそるおそる再び外の世界と関わりを持つようになっていくのである。数学系の大学という、以前の彼からはまったく予測もつかない場所をきっかけとして。
まったく違う人物に生まれ変わったかのような彼の「その後」の人生は決して平坦ではない。後遺症に悩まされ、幾度となく傷つき、新たに得た才能を制御できずに苦しむ。
しかし、困難な中でも少しずつ世界とまた交わり、数学を学ぶ人々や他の共感覚者、脳研究者などとつながっていく姿は感動的である。
彼は世界とつながり直す途中で、信頼に足る伴侶を得て、結婚もしている。
本書は共感覚や数学について専門的に語ろうとしているわけではない。
むしろ、人生において大きな変化を体験し、傷を負いながら、なおそれを乗り越えようとしている人の闘いの記録としての側面が大きい。その意味において、本書は普遍的な物語と言えるだろうし、専門用語が飛び交う読みにくい本ではない。
但し、その分、共感覚とはどういうものか、あるいはサヴァンとは何かを知りたい向きには不満も残るだろう。ジェイソンの描く図形が、どの程度数学的に意味があるのかというのもわかりにくい。アート作品としても驚嘆すべきものであるように見えるが、例えばフラクタルとして、例えば円周率πを表すものとして、彼の描く図形がどれほど革新的で本質を突いているのか、数学者がどう捉えるのかの裏付けに関しては、本書では十分には触れられておらず、少し隔靴掻痒な感じが残る。
とはいえ、本書を読んでいる��脳の働きの不思議さに打たれる。また、人とは、体とはいかにもろいものであるかと思う一方で、その強靱さにも驚かされるのだ。
ジェイソンも、一歩間違えば、社会生活が不能になるような重篤な障害を負っていてもおかしくなかった。映画「レインマン」のモデルと言われるキム・ピークは驚くほどの記憶力で9000冊もの本を暗記することが出来た一方、自らの靴の紐すら結べなかった。特殊な才能を手に入れつつ、その能力を人に伝えることができる、非常に微妙なバランスをジェイソンは保っている。
サヴァンや共感覚とともに生きていくとはどういうものか、その一端を感じさせ、脳の仕組みの複雑さに触れる1冊である。
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図書館で借りた本。31歳の時に強盗に遭い殴蹴される暴行を受け脳を損傷。それまでは社交的な普通の青年だったのが引きこもりに。ある日数字に取り憑かれ円や多角形の中に斜線を引いた絵を描きまくるようになる。窓に映る光が立体的に見えるそうだ。後天的サヴァン症候群になったジェイソン・パジェットの自叙伝。具体的な数学者としての実績話は無く、アートデザインに近い感じに見受けられる。渦巻き模様に惹かれるのは私も同じだな。
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ところどころは難しくて「この人は何を言っているんだろう」と思う部分がある。しかし、本人からしてみても以前は(恐らく)私と同じ程度にしか理解できなかったはずだ。そう考えながら読むと、分からない部分ですら興味をそそられる。
少々自慢のように受け取られる部分は元々なのかどうなのかは分からないが、少し気になった。
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サヴァンも共感覚も聞きなれない言葉だったが、数字に色がついて見えたり、味が感じられるってどこかで聞いたことがある。
筆者は、ある事件をきっかけに、サヴァンと共感覚を持つことになる。事件以前に、高度な教育を受けていたわけではないから、自分の中に眠っていた才能が事件によって開花したことになる。筆者だけじゃなくて、誰にだって眠れる才能があるともいえる。