紙の本
壮絶すぎる
2016/05/30 10:25
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投稿者:デンジャーメロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
筋金入りの格闘技ファンには衝撃な中井―ゴルドー戦。まさか失明に至るとは・・・
そう思うとゴルドーってヒドいやつ?しかし当時は闘争本能あふれるファイターでした。
他の収録作品の読み応えがあって、購入してよかったです。
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中井さんの話だけかと思いきや堀越英範という柔道選手の話もあり、そっちも面白かった。最後の対談は少し冗長かなということで星4つです。中井祐樹という人間がますます好きになる話満載です。
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増田俊也著『VTJ前夜の中井祐樹』読了。昨日『七帝柔道記』読み終えたばかりだったので連なる世界が、サーガとして輪郭がビシビシ伝わる。魂はいかに引き継がれるのか? 想いと時間の果てにある生きざまと人が生きた証。まったく格闘技門外漢だけど強烈な熱意と決意で書かれているものはジャンルを超越するのだとこの三作を通じてわかった。
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中井祐樹という人間がいたことを始めて知りました。
青木のセコンドにいる人だということは知っていたけども、この本で初めて知りました。
眼に指を突っ込まれて、戦えるか?
どのジャンルでも、黎明期には光と影の存在があって。その光の存在が大きくなっていくと同時に、そのジャンルも大きくなっていくわけで。過去を振りかえったときに、その光に塗りつぶされてしまっているけど、一瞬の強烈な光を放った人間もいるわけです。
中井祐樹は、その一人。
読了後、探しましたと動画。
引き込む戦術のせいもあるだろうけど、サミング以外にもパウンドの嵐。あれで、よく戦っていけたもの。現在のレフェリングでは、ストップでもおかしくはない状況でも、本人は冷静なんでしょうね。
そして、際立つヒクソンの強さ冷静さ。
やはり、グレイシー最強といわざるをえないです。彼を見ると。派手じゃないけど強い。
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☆3(付箋10枚/P189→割合5.29%)
いやー、この人はいいなあ。
前2/3くらいが短編集なのですけれど、今後の壮大な物語の序章を感じます。そして後半が七帝柔道記で本当に味があった和泉主将との対談、生の声が聞けるとは。
***以下抜き書き**
・人は、春に生まれ、盛夏を生き、秋を迎えて冬となり、やがて死んでゆく。
人は生き、死んでゆく。
ただそれだけのことだ。
春に死ぬ者もあれば、夏に死ぬ者も秋に死ぬ者もいる。
一歳に満たぬうちに死ぬ者もあれば青春の直中で死ぬ者もある。寿命がまだ尽きぬのに自ら命を絶つ者もある。まだ生き続けたかったのに人生の最盛期なのにアクシデントで死ぬ者もある。逆に、死にたくても死にきれず、生きたくもない後半生を苦しみながら生き続ける地獄の人生もある。
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は、人の生き死にのあり方を迫った本である。
…東の言葉はあまりに強かった。
「俺なら力道山を殺していた」
はっきりとそう言った。
「でも、なぜ木村先生は…って考えるんだ。あれほどの人だ、殺すことも切腹することも怖くなかったと思う。それがなぜって思うんだよ。あの題名は未来永劫、読者の胸に問いかけてくる言葉だ」
・増田 大宅賞のときも僕がめげそうになって、電話で「やっぱりダメです…無理です…」って言ったら、「何言うとるんじゃ、獲りにいきんさい」って。一つひとつの仕事に向き合う姿勢を教えていただきました。
和泉 「しっかり準備をする」という考えになったのは、わしの二年の時の負けに尽きる。自分のせいで先輩たちに迷惑をかけたんが許せんかった。医者の世界でも自分の生涯の師である亀山正邦先生に教わったのが、「何かを発表するにも三つ四つ、常に準備しておかなきゃダメだ」と。急に「今度、発表をしないか」って言われることがある。ところが、ほとんどの人は準備しとらんし、準備しとっても一個か二個じゃ。まさか自分が出るとは思わんかった、そういう気持ちの人間はきっちり負けるんじゃ。
…増田 そこからあの地獄の練習に繋がったんですね。今、和泉さんが仰ったようなことは小菅正夫(旭山動物園前園長、和泉の十五期上の北大主将)さんも、中井祐樹君も言うんですね。僕が気づいたのは卒業してからでした。理想とする自分以上にはなれないと。
和泉 そうじゃの。それは明らかじゃ。
・増田 本当にすごい選手だった。でも、竜澤が後ろのほうで出て二人抜き返した。竜澤が二人目が腕絡みで折ったじゃないですか、平然と。一年目のとき、道警で「なんの意味があるんですか!」と怒っていたあの竜澤が。後輩が肩を折られたというのもあった。よく「なんで参ったしないんですか」って聞かれますけれど、もうそんな雰囲気じゃない。先輩は「肥やし」っていう言葉をよく使われますけれど…。
和泉 そういうのはホント社会に出てもいっぱいある。侮辱されたり、軽く見られたりいうのは。そこでそのまま受け入れるか、なにくそと思うかで大きく違う。
・和泉 それはね…まぁわしもいっぱい痛い経験しとるけえ。わしは北大五年間と徳島大六年間、合わせ���十一年も学生しとったから、本当に親不孝者じゃ。しかも大学院にそのまま入って無給じゃ。それからしばらくして初めて給料をもらった。親父はわしが医者になるのをずっと楽しみにしとってくれて、おふくろからよく「安心して喜ばせてやってくれ」って言われとったから、給料から十万円を入れて袋を持って渡そうとしとったんだけど、何かそのとき、口論になって…。
増田 電話でですか。
和泉 いや、親父が入院しとった病院へ見舞がてら金を包んでいって、つまらんことで口論になったんじゃ。それで「わかった。じゃあ、わしゃあ、もう帰る!」言うて袋を渡さずに帰った。そうしたら、明けた朝に吐血してそのまま死んでしもうた。金を入れたまま渡せなかった。すごく後悔が残った。親鸞も言うとるが「明日ありと思ふ心の徒桜」ゆうてね。明日があると思うと、それが徒になる。
・和泉 そうじゃの。抜き役の人がずっと取っていても、最後に取られたら悔いが残る(団体戦では抜き役と別け役がいる。抜き役が一人抜いても次に取られると±0になるため、抜いた次にきちっと分ける必要がある)。
そういう意識はわしも医者になってからも持ち続けた。わしは柔道では抜き役ではなかったけれども、今の診療でずっと外来の患者が来るじゃろう、同じ感覚じゃ。大変な患者が来ても、そこでハッと息を抜いちゃいけない。また次にとんでもない病気が直後に来とるかもしれないし、絶対に気を緩められない。負けて終わるのは医師として絶対にあっちゃいけないことで、それは今の分に完全に生きとる。
・和泉 大学病院とかにおったらあんまりすることがないんだけども、率先してやっているのは家に行って、その人たち(ALS患者)の顔を見て環境を知ること。まだ健康だと思っとるわしたちには、どうしても実感できん部分が多いから。でも、患者さんにとって治療法開発は本当に切実な願いなんじゃ。なかなか来てくれんなと思っていることもあるし、そういうところで時間を割いて診療に行けば、どれだけ治らない病気に対して治療が望まれているかいうのがわかる。そうすると、また治療法の開発研究にも力が入る。患者さんよりこっちの方が人生の後輩じゃ。ナンボ医者として色々知識がある言うても、そんなものは治らない病気になった患者さんにとっては何にもならない。一人ひとりこういう気持ちをお持ちなんだということに向き合う時間が必要じゃ。今、技術がすごく進歩しとるけ、研究室で一生懸命やればもしかしたら成果が上がるかもしれん時代じゃ。しかし役割分担がなされすぎてその人たちは患者さんと会うことは少なくなっとる。じゃが、両方しなきゃいけんのじゃ。
・増田 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』が単行本として出て、まだ大宅賞にノミネートされる前ですが、出版後すぐに和泉さんが名古屋に学会で来られた時に、ぶらぶら駅前を二人で歩いて「この寿司屋が美味そうじゃのう」って、ふらりと店に入ってカウンターに座ってビールを注いでくれたんです。「あんたが入部した日も、みちくさのカウンターにこうやって二人で座ったのう。あれからもう四半世紀も経ったんじゃのう」って。それで和泉さんが「これだけの本を書いたんじゃ。これだけのことを一人の人間のためにや��たんじゃけえ、これからどんなに苦しいことがあっても、辛いときでも、天国の木村先生が助けてくれるじゃろうて」って…。
・増田 すべて柔道に替わるんです。僕がちょっと辛いときがあったんですけど、竜澤が電話で「増田君、胸に“北大”っていう刺繍が入った道衣を着ていると思って歩いてみ。そうしたら、どんなことだって耐えられるから」って言ったときに、スーッと楽になったんです。
和泉 それは、誇らしいよね。
増田 誇らしいです。和泉さんが「畳を前に見てる」と仰ったように。
和泉 あの空間のイメージ。そう思うと緊張感も取れるし、神聖な気持ちになる。患者さんと接するときに、畳に上がるように最初のドアを開けて入ることは、わしにとっては本当にいいことじゃと思う。
・増田 僕が入部したときに和泉さんが「自分のために頑張れんことでも人のためなら頑張れるんで」って言ってくれましたよね。
和泉 本当にのう、人間ちゅうのは自分のことより人のための方が頑張れる。不思議なもんじゃ。自分のことはナンボでも妥協を付けられる。ここぐらいでいいと。それが人に対しては頑張れる。
…わしも医者で手先は器用じゃなかったから、同じことをしつこく繰り返した。例えば採血いうのは、あまり皆したがらない。いずれはナースがやる仕事じゃけ。それを徹底して、しつこく率先してやった。柔道によって培った発想で。繰り返しやってものにすると、その先が広がっていく。必ず生きてくる。
・増田 和泉さんは、僕だけにではなく、どの後輩にも同じように愛情を注いでくださいます。随分前に僕が後輩のことをちょっと悪く言ったんですよ。そうしたら、すごく怒られました。「後輩のことを悪く言いんさんな」って。僕はそういう一言を忘れられない。
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内容(「BOOK」データベースより)
格闘技史に残る伝説の大会を軸に、北大柔道部の濃密な人間関係を詩情豊かに謳いあげた『VTJ前夜の中井祐樹』。天才柔道家・古賀稔彦を8年かけて背負い投げで屠った堀越英範の生き様を描いた『超二流と呼ばれた柔道家』。さらに、ヒクソン・グレイシー、東孝、猪熊功、木村政彦ら、生者と死者が交錯する不思議な一夜の幻想譚『死者たちとの夜』。巻末に北大柔道部対談を併録。人間の生きる意味を問い続ける作家、増田俊也の原点となる傑作ノンフィクション集。
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http://tacbook.hatenablog.com/entry/2016/02/29/210405
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高校で剣道部に所属していたのだが非常にいい加減に参加していて、今にして思うと野球部か柔道部に所属しておけばよかったと後悔している。野球は本当に下手なのだが、あの時期に励んでいれば一生楽しむことができた。柔道部は、剣道部の隣で練習を横目で見ていた。柔道は大きな人が多くて怖かったのだが、今にして思えば勇気を持って入部していたらもっと格闘技に対してリアルに接することができたと思う。そうして増田さんや小林まこと先生の話に触れると学生時代にきついながらも充実していて楽しそうで本当にうらやましいばかりで、ぬるま湯につかりっぱなしの人生が恥ずかしくなる。
命がけで物事に取り組む姿勢に頭がさがるばかりだ。
堀越選手の達人レベルの背負い投げを見てみたい。ジェラルド・ゴルドーは悪者だ。本当にひどい。中井選手の話で1冊かと思ったら短かった。もっと読みたかった。
(2016/11/05)
(追記)
『七帝柔道記』を読んでから、読み返してみようとずっと思っていてようやく読み返したら、初回にだらっと流して読んだところがするすると入って来る感覚がある。『七帝柔道記』を踏まえなければ和泉さんとの対談も意味が半分以下だ。読み返す前に手放さなくて本当によかった。
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表題作は、中井という人物の思いに迫力はあったが、なぜかそこまで訴えかけてこなかった。他の短編と比べると、という相対的な意味で。それよりは、七帝柔道記で出会った人たちとまた再会できたことや、その中で後輩の中井という人か異端の道を歩んでゆく流れが、よかった。
超二流と呼ばれた男は、わかりやすくて楽しかった。勝負にも成績にも頓着せず、背負い投げだけを黙々と練習し、遂には完璧な背負い投げを身につけた男。
大道塾の話は、自分のお師匠さんもその時代を作ったプレイヤーの1人だったということもあり、感情移入して読んだ。東先生が友達を電話で呼びたがる気持ち、その寂しさのようなものってなんとなくわかる気がする。著者が夢で見たように、逝ってしまった人間とも全員で飲みたかったのではないか。
唯心さんとの対談もすごくよかったが、GHQが日本人の最新を失わせた的なネトウヨライクな認識を示し唯心さんと著者が夢共有するのが残念。他のところはほんとにすごく尊敬するのだが。まあ人間手間そんなもんだよね。
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増田が4年の時に北大柔道部に入ってきたのが中井祐樹〈なかい・ゆうき〉だった。そして中井が最上級生になった時、北大は12年ぶりに優勝旗を奪還する。中井はその後シューティングへ進み、格闘家として歩む。ヴァーリ・トゥード・ジャパン・オープン1995に参戦し決勝でヒクソンに敗れる。意図的な目潰しをしたのはオランダ人空手家のジェラルド・ゴルドーで、レフェリーの制止を振り切って執拗に行い、中井の眼球の裏側にまで親指を入れた。それ以前にも佐竹雅昭との対戦でサミングをしている。根っからのクズというか、白人なら有色人に対して何をやってもいいと思っているのだろう。
https://sessendo.blogspot.com/2018/07/vtj.html
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「VTJ前夜の中井祐樹」増田俊也著 読了。一気読み。七帝柔道記のその後を埋める表題作と巻末対談。熱の余韻が伝わってくる。格闘技が好きなわけでもないのに増田ワールドに引き込まれるのは、この熱のせいかもしれない。
→文庫化「VTJ前夜の中井祐樹 七帝柔道記外伝」
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◇電車の中で読み始めたところ、夢中になってしまい、乗り過ごす危険を感じて、電車の中では読むのをやめました。
以前、読んで気になっていた『七帝柔道記』の、その後を知ることができたのが嬉しいです。
おー、竜澤が主将、筆者が副主将になったのか。
それにしましても、タイトルから何てマイナーな話題なのか、
とかねがね思っていたのですが、読んでみて納得。
衝撃的な内容で、何度も読み返してしまいました。
やはり順番としては、時系列にそって、『七帝柔道記』を先に読むのがおすすめですかね。
◇さて、対談が収録されている、和泉唯信て、誰だこれ。何か聞いたことあるけど。
と思ったところ、『七帝柔道記』に登場する、印象的な著者の先輩でした~
この対談を読んで、初めて、下級生視点で書かれていた『七帝柔道記』の
先輩側の心がわかり、狭い視野だった自分を反省させられるのでした。
◇ちなみに、この和泉唯信氏、なんと浄土真宗の僧侶なのですね。
対談にも、親鸞の言葉が引用されていました。
「・・そうしたら、明けた朝に吐血してそのまま死んでしもうた。
すごく後悔が残った。
親鸞も言うとるが、「明日ありと思ふ心の徒桜」ゆうてね。
明日があると思うと、それが徒になる。
本当に真理だと思う・・・」
本書は冒頭、一周忌のシーンから始まりますし
いくつかの死が登場します。
無常観が漂っていることもまた感じました。