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3Dプリンターの機能が進化することで広がる未来について、いろいろなジャンルの話が載っていた。
こういう発展に付帯して必要となるのは、材料工学のようなアプローチでの技術革新か、全ての分子構造を再現or模倣できるプリント用素材に関する革新的な発明なのかな、と思う。
今後この2点がどうクリアされていくのか、大変興味深い。
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我々が向かえる近未来について3Dプリンタの衝撃を語った書。本の内容はもちろんだが、本の厚みにも圧倒される。
個人から発信されるものづくりが今注目を集めていることは、クリス・アンダーソンの『MAKERS』からも周知の事実である。中でも、3Dプリンタの登場によりいとも簡単に個人が銃器を入手できるようになったことは、すでにマスコミでも取り上げられることとなった。
3Dプリンタの技術は一分野に留まらず、食料や臓器の製造、さらには現実世界では作り得ない造形物までをも可能としている。この成長著しい技術的進歩とは裏腹に、規則・法制度はまだその入り口に足を踏み入れたにすぎない。
人が考え、想像できるSFのような世界が今後ますますその姿を露にすることだろう。脅威と言えば脅威、楽しみと言えば楽しみな世界の広がりを前に、個人のそして社会の在り方が今まさに問われているのかもしれない。
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これは3Dプリンターに特化した内容で、未来にはどのように使われていくか理解できますが、かなりマニアックな専門的な内容なので、興味をもつ人、実際にビジネスに関わる人だけが読めば良いでしょう。
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2040年の新世界 ホッド・リプソン、メルバ・カーマン著 3Dプリンターが変える暮らしと社会
2015/2/15付日本経済新聞 朝刊
新しいものづくりの手法として注目される3Dプリンターが、今から20~30年後にはどこまで進化し、何が可能になって、それが暮らしや社会にどういう影響を及ぼしているか、などを幅広く論じた好著だ。ただし、3Dプリンターがもたらす「すばらしき新世界」を手放しで描き出しているわけではない。
むろん低コスト・大量生産と高コスト・特注生産のいいとこどり、をねらう仕組みや技術的な発展を丁寧に説明し、それが個人ベースの起業やイノベーションの促進に貢献することを強調する。しかし、議論の重点は製造業を革新する仕組み、という文脈にあるのではない。むしろ、進化する3Dプリンターがわれわれの仕事、食生活、医療、さらには教育、遊び、芸術など創造的活動をどう変えていくか、現行の法律・規範や文化などとどう対立するか、に考察の目が向けられており、興味深い。
例えば、3Dプリンターで制作された補聴器のオーダーは全世界で1千万個に達するといわれているが、今後、義肢や関節などの制作にとどまらず、幹細胞を含んだゲルをインク代わりにプリントして身体・臓器のパーツが作られるようになったらどうなるか。栄養価などを調節した好みの料理が薬品・食品材料のプリントでできるようになったらどうか。SFのような状況が視野に入るが、半面で、すでに銃器の制作など好ましくない用例も散見される。個人の創造力が開放される一方で、3Dプリンターが生み出す新世界が突きつける問題は広く根も深い。
著者らは3Dプリンターの開発や普及活動に長い経験を持つ専門家。それだけに取り上げられる実例や考察は広範囲にわたり、印象的である。専門家ではない読者にとっては「3Dプリンター百科全書」とでもいうべき著作になっている。
2040年は原書名には無いが、視野に入れた20~30年後の中間をとったと思われる。日本ではまさに人口減少や高齢化社会が顕著に表れ、深刻な課題に直面している時期だろう。そこに向けて1人当たりの生産性を上げることや身の回りでのイノベーションを創発することが喫緊の課題だ。とすれば3Dプリンターの普及が持つ意義も影響も他国より一段と大きいに違いない。既存のものの新しい作り方ではなく、新しいものや価値観を創出する装置としての3Dプリンターは、コンピューターのような経済・社会を変える起爆剤になるのか、一読の価値がある。
原題=Fabricated
(斉藤隆央訳、東洋経済新報社・2200円)
▼リプソン氏は米コーネル大准教授で、3Dプリンター関連の技術などが専門。カーマン氏はテクノロジーに詳しいライター。
《評》専修大学教授 西岡 幸一
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15/07/26読了。3dプリントの過去現在未来を描いた本。ただプラスチック製のパーツを作れるだけではなく臓器や食物までもプリントできてしまうとか。また、3dプリンタを取り巻く法整備や社会も描いている。要要約か。ボリュームタフネス。
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今(2017.9)から3年前の末に日本語版の訳本として出版された本で、前書きで執筆に9か月を要したと説明がありますから、2012年頃の事実をベースにしていると思われます。この本は2040年の世界がどのようになっているかを、想像して書かれた本です。
「インターネット」と「スマホ」により私の生活が30年前と完全に変わってしまったように、今から20年後の世界は、この本で紹介されている「3Dプリンタ」の技術により根底から変わる可能性があることを感じました。
大学生だった1980年前半の頃、それまでにインターネットと似たようなシステムが出ては消えていて、インターネットが出たときも、初めは速度も遅くあまり便利でない上に、利用する料金は高かったこともあり、これが普及するとは思いませんでしたが、今を迎えています。
スマホも私にとっては同様でした。会社で若い人たちが使っているのを横目に見ながら、当初はガラケーで満足していました。ところが今では、スマホ無しでは一日の生活が始まらない程の存在になっています。
それに相当するほどのポテンシャルを持っているのが、3Dプリンターでは無いでしょうか。「プリンター」というネーミングから、現在家にある「2Dプリンター」の同類と思ってしまいますが、その応用範囲はとても広そうです。この本を皮切りに、今後「3Dプリンター」も本を選ぶときのキーワードに加えたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・3Dプリンタは、人間や従来の製造機械のやり方で物を切ったり、型で作ったりしない。物体を層状に形成すると、より多彩なデジタル化されたコンセプトを物理的に出力できるようになる。形状のデザインに精密な中空部分や、連結した部品があれば、3Dプリンタは、そうしたデザインを現実世界で実現できる最初の出力装置となる(p21)
・3Dプリンタは物体を積層して作るので、従来は自然界でないと不可能だった形状も実現できる。問題は原子が思いもよらぬ形で組み合わさることにある。デジタルなデザインは、作ってみると重力の試練や素材の制約に耐えられず、崩壊することがある。これに対してデジタルな世界は、われわれの想像に、柔軟さと創造的な自由を与えてくれる。(p25)
・スキャン技術と3Dプリンティングが組み合わさって、現実世界とデジタル世界とのあいだで高精度な形態移行が可能となる。現実の物体をスキャンし、編集・複製して、正確なレプリカを作ったり、元の物体を改良できる(p39)
・大量生産の隠れたコストとして大きなもののひとつは、バラエティが犠牲になる。規模の経済をメリットを享受するため(p43)
・大量生産は、まだ携帯電話のネットワークではなく、公衆電話に近い。数十億台の携帯電話と同じく、いつかものづくりは、何百万・何千万もの自律的な生産拠点で構成されるようになるかもしれない、中小メーカの巨大なネットワークを土台として築かれる分散型のシステムとなるだろう(p76)
・テクノロジーの核心は、一般の人々が新しいツールを手に入れて、それを日常生活に利用するときに起きる。新しいテクノロジーがどこにでもあるようになると、革命を引き起こせる(p79)
・マイクロスケールの取引は、国際取引をすばやく処理する通信テクノロジーと、オンラインバンキングのおかげで可能となっている。2009年の時点で、およそ7400万人が、総額380億ドルのマイクロローンを受けている。返済率は95%で、これは大手銀行や国家の返済率よりも高い(p104)
・3Dプリンタには2つの系統がある、第一は、原材料の層を積み上げていく、第二の系統は、原材料を結合してモノを作る。なんらかの原材料に、レーザーを当てたり接着剤をつけたりする。熱や光で粉末や感光性ポリマーを固める(p112)
・レーザー加工ネットシェイピングでは、粉末状の素材を正確にガイドした高出力レーザー光に吹き付ける方法、この利点は、チタン・ステンレスなどの硬い素材で物体が作れるところにある、同時に二つ以上のノズルで粉末をレーザー光に吹き付けることが可能なので、合金をプリント可能、ヘッドの一に応じて変えることさえできるので、徐々に変化する合金がつくれる(p117)
・選択的結合プロセス(2つめの系統)には、光造形法(SL):感光性ポリマー利用、と、レーザー焼結法(LS):感光性ポリマーでなく粉末を利用、がある(p119)
・3DPの利点でとりわけ大きなもののひとつは、カラーでのプリントが可能、糊をつけるとき、色付きのインクの液滴も一緒にふきつければ、フルカラーの3Dモデルが作れる、糊をつけた青銅は、炉の中で焼結させなければ、固体にならない(p125)
・チーズのように、熱可塑性樹脂は温まると溶け、温めても内部組成は変わらないし何度も使える。一方、卵は熱硬化性ポリマーは温めると固まるが一度終わったら終わり、温めると内部組成が変わる(p134)
・デザインソフトは、ワープロソフトが文書をタイプする際の無駄な時間や紙を省くように、同じデザインをやりなおす面倒を軽減してくれる(p146)
・人間にまだ解けていない謎は、生体細胞に「スタート」ボタンが必要という事実、たとえ細胞を完璧な形の足場のなかでしかるべき場所に植え付けができても、その細胞をどうやって始動させるかは誰にもわかっていない(p186)
・ハンバーガーをフードプリントするのは難しくない、難しいのは、新鮮な食品・自然が作った食物を作る場合である(p221)
・フードプリンティングは、パソコンの初期を思い起こさせる、当初はくだらないものに見えたビデオゲームによって大勢の人が自分の家庭用コンピュータを買う気にさせられたころである(p248)
・3Dプリンタは、デザインや工学を学ぶ高校生に、より早く失敗させる、失敗が早いほど解決に至るのも早い(p258)
・3Dプリンティングとデザインのテクノロジーは、まずは小ロット生産をおこなう分野に商業的に食い込もうとしている、アクセサリー制作、高級な室内装飾、実験的なファッションデザイン(p286)
・製品の単位重量当たりで、3Dプリンタは射出成形機の10倍以上の電力を消費する、3Dプリントによる、ものづくりをそのままグローバルな規模に拡大するだけでは、決してグリーンなものではなくなる(p327)
・プリントジョブで残る金属粉末は、ほぼ100%再使用できるが、従来の製造プロセスで(研磨、機械加工、鋳造)は、原料の90%が無駄な副産物となる(p331)
・プラスチックを作るコストが安い理由のひとつは、自然環境から化石燃料を取り出すときに廃棄される副産物(ナフサ)から作られるため。プラスチックには、生物を特徴づける元素である、炭素と水素が大量に含まれている(p338)
・ジェームズ・ワットは蒸気機関の重要な要素であれこれと特許を取得したが、蒸気機関の発達史を見れば、ワットの特許が有効だった20年間は何の進展もなかった。特許の期限が切れると、蒸気機関が目覚ましい進歩を遂げて産業革命を起こした(p377)
・レップランププリンタは、従来の製品開発を揺るがす現代の形式として登場した、その特徴は、第一に、オープンソースのライセンスを用いて、プリンタの設計図をウェブで自由にシェアした、特許申請をしなかった、第二に、それ自体の交換部品を作れる。もう一台作りたければ、手元のレップラップで部品をプリントし、組み立てるだけで良い(p378)
・登録される現行の特許の大半はめったに商業的に利用されない、しかも裁判沙汰になるのは特許のわずか0.1%、その場合も半分は無効と判定されている(p389)
・デジタルには3つの意味がある、1)実体のない情報という意味で、物理的と対置される、2)電子的でプログラム可能、機械的と対置される、3)離散的で不連続な単位からなる意味で、アナログと対置される、デジタルコンピュータは、いずれも可能にする(p451)
・生命の構造は、アミノ酸という構成要素からなる。だから生物は自分で自分を修復できる。動物も植物も、互いを摂取し、生体材料を再利用できるのは、生体材料を再利用できるから。われわれがみな、22種の比較的少数の同じ構成要素のセットで作られているから(p453)
・AMFとは、ASTMインターナショナルとISOから発表された、3Dプリンティングの国際標準データ形式である、文書におけるPDF、音楽ファイルにおけるMP3、写真におけるJPEGである、この標準化により環境に依存せずにファイルをやりとりできることになる(p466)
・デジタルカメラの普及で、ウェブ上に大量の写真画像がアップロードされたように、3Dプリンタの普及とともに、大量の3Dデータが流通するだろう(p468)
2017年9月3日作成
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3Dプリンタで、機械はもちろん武器・食物・臓器、見たこともないモノまで何でも簡単に作れる未来がやってくる。すばらしいのか?恐ろしいのか?
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サブタイトルにもあるとおり,この本は3Dプリンタについての本である。これを書いているこの本が出た頃に比べると3Dプリンタの話題は少し落ち着いた感がある(2016年8月現在)が,この本は2040年の話である。まだまだこれからなのである。2Dでできることでさえまだ作り尽くしたわけではない。
正直なところ,冷静な分析ではないかもしれない。でも,いやだからこそ3Dプリンタへの希望と期待が生じずにはいられない。3Dプリンタの特徴を活かして書かれており,できそうな気はする。2040年にそうなっているかどうかは問題ではない。これを読んで,ひとつでも近づけること,その道を進もうとすることなのではないだろうか。
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3Dプリンタが変える未来。フードプリンタ、バイオ(臓器)プリンティング、
最終的には自分自身をプリントできるプリンタまで。