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藤津亮太さんのレビュー一覧

投稿者:藤津亮太

25 件中 1 件~ 15 件を表示

愛は世界を救う、のではない。愛は世界を創る、のだ

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 愛は世界を救う、のではない。愛は世界を創る、のだ。
 シャーロキアンしかり、サザエさん学会しかり。そしてガンダムも例外ではない。
 歴史的一冊である『ガンダムセンチュリー』に初めて書かれたコロニー落としを行った「ブリティッシュ作戦」の詳細、『めぐりあい宇宙編』のロマンアルバムに掲載されたソロモン攻略戦と、ア・バオア・クー攻略戦の戦況略図。さらには、MSVと呼ばれる様々な開発途上の機体の存在。もともとそんなものはガンダム本編には登場しない。それぞれの書き手が、作品世界の細部を想像し、本編に登場する事実関係との裏付けをとり、そしてひとつの「事実」としてそこに記したのだ。これが作品への愛でなくて何であろう。ガンダムはファンのこうした愛と二人三脚で、その世界を作り上げてきたのである。
 本書はそうしてこれまで積み上げられてきたガンダムへの愛を集結しようとする前人未踏の試みだ。その結果、本書は製作期間3年、掲載画像2500、本文重量160万字という桁外れの規模になった。この本はこれまでのガンダムに関する記述をまとめ、矛盾する場所は、それぞれ異説という形で紹介する。そのためにここでは、「宇宙世紀0100に地球連邦総合大学リーア分校出版局が発行した『ガンダムの世紀』と呼ばれる本が、遠未来に発見され解読された」という複雑なギミックまで投入している。
「これは事典ではない。書籍という形そのものを創作したものなのである。つまりは徹底的に遊びである。それで良い」
 巻頭に、出版を祝すという一文を、ガンダム世界の生みの親である富野由悠季監督が寄せている。そのこれはその一節だ。
 作品世界を愛しているから、そこで遊べる。その結果、愛は新たな世界を創り出すことになるのだ。

 この本を手にすると、その3.5キロあるという重さに圧倒される。この重さは、紙の重さではない。愛の重さなのだ。

(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本フリクリ 1

2000/07/18 21:29

フリクリ1

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を書評候補に選んだ後、少し後悔した。

 アニメのノベライズって、「本を読むぐらいだったらアニメ見ればいいじゃん」ってツっこまれると反論しにくいんだよね。番外編や後日談ならまだいいけど、『フリクリ』はそうじゃない。執筆は脚本の榎戸洋司。ビデオ全6巻に合わせ、小説版は各巻2話ずつで3冊で完結する予定だ。物語もそのままに。

 でも、そんなことを悩むうちに、「小説版は小説版でありだな」と考えが変わった。

 なぜかというと、『フリクリ』って、内容は小学校高学年的思春期モノなわけですよ。切なかったり、甘酸っぱかったり。で、アニメ版はもちろんそういう要素を押さえつつも、ところどころ"あの"ガイナックスのアニメらしく演出が暴走するわけ。アニメの面白さを追求しようと演出が前面に出て、肝心の物語がぐっと後ろへ引っ込んでしまう瞬間がある。

 その点、小説版は直球だ。"無駄"な演出も、自己言及的なギャグもない。そのぶん『フリクリ』という物語のエッジはアニメよりずっと明確になってる。アニメが瞬間の気分を写し撮ることで観客の感情を揺さぶっているのに対し、小説版は物語の構造、論理、筋道、そういうもので読者を切ながらせたり、甘酸っぱい気持ちにさせたりしてる。

 というわけで、何も悩まずツルリと普通に読むもよし。こんなメディアの表現の差について考えながら読むもよし。そもそもお話そのものは面白いんだから。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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押井守inポーランド

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 映画のメイキング本には2種類のタイプがあるのではないだろうか。一つは、<ハウ・ダニット>。つまり、いかに映画が作られたかという撮影の技術やプロセスに比重が置かれているもの。もうひとつは、<フー・ダニット>。どんな人物がこの映画を作り上げたのか、という関心に応えるもの。これ従うと、本書は<フー・ダニット>系の分類されることになる。
 ではこの「フー」とは誰を指すのか。それはまず第一に押井監督のことであるのは間違いがない。だが、本書に登場する「フー」は監督だけに止まらない。撮影記録の中に姿の見えるさまざまなスタッフ、キャスト全員が、この「フー」なのだ。
 本書は、シナリオハンティングからクランクアップに至るまでの7カ月間の撮影記録を中心に、スタッフ座談会や現地での現場写真などで構成されている。こうした記事の中から浮かび上がってくるのは、撮影現場にいた人々が織りなす彩のようなものだ。
 言葉の違いから「言った」「言わない」の水掛け論に陥ってしまうスタッフ。何をすればいいかが不明確でフラストレーションをためる助監督。ノミの心臓でNGを連発する役者もいれば、監督の示した演技案になかなか納得しない頑固な俳優もいる。さらには痛風でダウンする押井監督。その一方で、欠番が出ると喜ぶのは日本、ポーランドスタッフに共通していたり、家族で常駐していたケータリング・スタッフの料理に感激したりと、トラブルばかりではなく、ホっとするような話題も登場する。こうした人々によって『アヴァロン』は作られたのだ、と実感できる。
 表紙は、ミエルニーチャ通りでの戦車のシーン終了後に撮影されたとおぼしき記念写真。そこにあるのはスタッフの顔、顔、顔。観客の<フー・ダニット>の問いに答える本らしい表紙だと思う。

 なお43ページでは、内トラ(スタッフ内エキストラ)の種明かしをしており、意外なシーンに出ている意外な人がスタッフだったという打ち明けられている。これを読めば、よりマニアックな知識が増えるので要チェック。

(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本世紀末アニメ熱論

2000/07/25 20:08

世紀末アニメ熱論

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者が某監督にインタビューした折り、こんなやりとりがあった。(僕はたまたまその場所に居合わせた)。

「監督にとって、フィルムをつくるっていうのは、セックスをすることと同じなんですよね?」
「そうです」
 大きく頷く某監督。

 この本は、著者がアニメ誌などに発表した文章をまとめたものだ。取り上げた作品は『ガンダム』『ブレンパワード』『ネオランガ』『冥王計画ゼオライマー』などなど。そこから得た感動を手がかりに、著者は「ものづくりとはどうあるべきか」という個人的なテーマへと迫る。そして、同人誌に発表された『世紀末の残像……ガメラ3という試金石』で、著者は一つの解答をつかみとっている。


 そんな本書を読みながら、なぜ某監督と著者のやりとりを思い出したかといえば、著者にとっては原稿執筆がセックスと同じだったのではないかと思ったからだ。

 例えばあとがきのこんな部分。
「大事なことは、こういうことです。誰もが作品というのは気持ちが良くて、好きだから観ている。好きだからものをつくっているに決まっているのだから、こういう素敵な関係性というのは、もともと世の中に満ちあふれている。この素敵さは、ちょっとしかことで見えにくくなったり、極性が反転してネガな気持ちの悪いものになりがちです。

 だから、もう一回みんなで見つけなおしてみよう。もっと気持ちよくなるために。(中略)ということなんですね、こうやってものを書いていることも」

 ここで、愛のないセックスはしちゃいけない(原稿は書いちゃいけない)と著者は語っているのではないか? まず「感動=作品に対する愛情」ありき。それが、次の新しいいい関係を生んでいくはずだ。

 こうした誠実さ(貞節さ?)こそ、「熱い」と言われる著者の実像ではないんだろうか。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

◆関連書籍→『アニメ新世紀王道秘伝書』

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ジー・ピー

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 既に休刊となった『アサヒグラフ』が'81年4月3日号で「ティーンズを熱中させる機動戦士ガンダムの世界」と題した特集を組んだ。その中に、ガンダムグッズを部屋一杯に集めたファンが登場する。ガンダムグッズといっても、20年以上前のこと、現在のオモチャの水準から考えれば、その多くは稚拙な出来映えで、本編に登場するガンダムのイメージとはほど遠い。彼はそれでも、そんなグッズを集め続けたのだ。
 実はたまたま、その「彼」に会ったことがある。その時、「彼」はグッズを集め続けた動機を教えてくれた。
「それまでのアニメと同じで、『ガンダム』も放送が終われば、忘れられて消えていってしまうと思っていたんだ。だから、消えてしまう前にと思ってグッズを集めたんだ」
 グッズの大半はもはや手元にないそうだが、「彼」はそんなふうに当時を振り返った。

 だが「消えてしまう」はずだった『ガンダム』は生き残った。20年の間に数多くの続編・番外編が製作され、グッズもまた進化と増殖を続けた。プラモデル、カプセルトイ、モーションライド、ゲーム、出版、ファッション......ガンダム・プロダクツの裾野は、20年前の「彼」の部屋の規模を超えて、とてつもなく広がっている。本書は、そんなガンダム関連の無数商品(プロダクツ)を総覧することで、20年の間に増殖し拡散した「ガンダム」の姿の変化と、その現状を捉えた。
 そんな現状について本書は取材先の言葉を使いつつ、こう書く。
「『親がアニメを理解する世代になり、2世代でアニメ作品を見られる環境になってきましたね。ガンダムも20年続いた効力が、やっと発揮されてきました(笑)』(バンダイ ホビー事業部企画開発チーム、岸山博文氏)−−中略−−ガンダムは、マニアからファミリーまで楽しめる、オールマイティなエンターテインメント作品としてのスタートラインに立ったばかりなのだ」
 そう、「彼」の部屋からいくら遠くへ来たと思っても、実はここもまたスタートラインでしかないのだ。

 かつて「彼」の世代の人々にとって、ガンダムとは青春の代名詞でもあったはずだ。思春期の悩みを抱えるヒーロー的でないアムロを自らと重ね合わせることで、唯一無二の作品となった面は大きい。では、これから拡大していく「ガンダムプロダクツ」は、それぞれのユーザーとどんな関係を結ぶのか。その関係を今後新たに見つけられるかどうかこそが、ガンダムが「オールマイティなエンターテインメント作品」たりえるかどうかの分岐点に違いない。もし、そうなれば、今は単なるキャラクターに過ぎないガンダムが、何かのイコンたりえるかもしれない。そんなことを考えさせられた一冊だ。

 最後に。資料性も高く、グッズが題材にも関わらずカタログ的になっていないデザインもいい。

(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本唐沢俊一のキッチュの花園

2001/05/28 16:12

唐沢俊一のキッチュの花園

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 「もの好き」という言葉があるが、この言葉をまるで字義通りに実行したような一冊だ。マガジンハウスの文芸誌「鳩よ!」の連載をまとめた内容なのだが、キッチュなアイテムばかりが勢揃いしている。

 悪趣味ないたずらグッズから、宇宙人グレイグッズ、アメリカン駄菓子にムシグッズ。よくもこんなものを集めたものだ、といいたくなるような「もの」のオンパレード。実は中には、料理グッズやペットグッズのように、それ自体はキッチュとはいいづらいものもまざっている。だが、そのあたりは著者の"もの好き"な「視線」で、しっかりとキッチュの系譜の中へと位置づけられている。

 本書の魅力は、取り上げられたグッズのキッチュさもさることながら、実はそのアイテムの数にある。よくここまでこれだけの役に立たないグッズの数を集めた、とあきれたくなるほど圧倒的な数。そして、それをわざわざ買って集めている著者の、“もの”好き=収集家ぶり。「個性的な趣味」という本来の意味での「もの好き」と、“もの”好きな収集癖の、幸福(?)な融合がこの一冊に集まっているのだ。

 というわけで、「もの好き」なアナタなら楽しめるはずの1冊です。

(アニメライター、藤津亮太)

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ガンダム・マテリアルズ

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 ガンダム・シリーズに登場する歴代ガンダムの設定画をまとめて収録。こうやって書くと、あまたあるモビルースーツ本の一種に思われてしまうかもしれないが、本書は違う。

 それは、本書に掲載された設定画に「デザイン」という方向からアプローチしたからだ。架空の推力や武装といったお馴染みの機体解説などはない。いわゆるリアル系ロボットをデザインするにあたって、それぞれのデザイナーはどういう戦略で、ガンダムのデザインをまとめあげたのか、あくまで「人型ロボットをどのようにデザインするか」という方法の発露としてそれぞれの設定画を捉えたのだ。

 その視点を補強するための記事も充実している。たとえば本書では、設定画の歴史にも触れている。設定画がそもそもどのように生まれて、アニメ製作においてどのような役割を果たしてきたかがコンパクトにまとめられている。このほかミリタリー方面やロケット開発の角度から見た「リアルさ」についての記事や、ガンダムに携わった3人(河森正治、カトキハジメ、山根公利)のデザイナーのインタビューもある。正直言えば、見慣れた設定書より、こうした記事のほうこそをもうちょっと長く読みたいという気分が残らないでもない。だがその不満は、これだけメカが登場するアニメがありながら、こうした切り口のムックが少ないことの裏返しでもあるのだ。

 まえがきによると、本書は、メカデザイナーを志望する人に向けてのテキストとしてまとめられたという。だが、ロボットが好きかどうか、ではなく、架空のメカを通じて広くフィクションを作りあげることの妙味に触れたい人なら、きっと楽しめるはずだ。シド・ミードが『∀ガンダム』のために書いた画稿をまとめた『ミード・ガンダム』(講談社)と併せて読みたい一冊でもある。

(アニメライター、藤津亮太)

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紙の本オトナでよかった!

2001/03/27 23:08

オトナでよかった

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 週刊アスキーに「夫婦対決 めおとでGO!」のタイトルで掲載されたエッセイをまとめた一冊。ちなみに連載時は、開田裕治・あや夫妻と同じお題について競作する、というスタイルだったそうだ。というわけで、お題はもうめちゃくちゃ幅広い。トラウマ、2000年問題、ヒーロー、手塚治虫などいろいろ。開いたところを適当に拾い読みするだけでじゅうぶんおもしろい。

 というわけで勝手にお気に入りネタを列挙して、本の紹介としよう。

・オトナのパラダイスの巻
見出しの「チョコ食って、ぱらいそさ行くだ!」にヤラれました。蛇足ながら補足すると、某マンガの有名なセリフのパロディです。

・オトナのカラオケの巻
だだっぴろいカラオケボックスで、寂しげにギャートルズを歌っている唐沢なをき氏の風情にうたれました。

・オトナのトラウマの巻
この回に登場する合唱曲「チコタン」。これ知る人ぞ知るツラい児童合唱なのだが、最後にヒロインが交通事故で死んじゃうのである。どうしてそんな内容なのかというと、当時交通戦争とまでいわれるようになった交通事故死者の急増が背景にあった、という話を聞いたことがあるのだが……。たしかにトラウマにはなるよな。

 というわけで、なんのことかわからなかったひとは読んでみてください。

(アニメライター、藤津亮太)

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EdgeofGundam

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「僕にとって”ガンダムを描く”ということは、一作目のあの雰囲気を絶対に壊さないで描くということなんですよ」
 この画集のみどころは、帯に書かれた著者、佐野浩敏のこの発言に集約される。そしてその発言がまさに実行されているのは、表紙に書かれたガンダムの姿を見れば一目瞭然だ。
 どうしてこれが一作目の雰囲気を継いでいるのか。絵の細部を見てみよう。腰のアーマーも分割されていないし、左足はメカというにはあまりにゆるやかな曲線を描いて足首へとつながっている。細部の情報量も増え、関節の合理性も高くなったガンプラとは全く違うアプローチで、この絵は描かれているのである。ガンプラがメカニックとしての存在感を追求したガンダムの姿とするなら、こちらの絵は「キャラクター」としてのガンダム像へとアプローチしているのである。
 佐野は「ロボ描き屋」と自称している。メカではなく、あえてロボと名乗るのもキャラクター性へのこだわりに違いない。そして、そのアプローチはデザイナーやイラストレーターからは生まれにくいものではないか。佐野は、イラストレーターであると同時に、『機動戦士ガンダム0083』や『天空のエスカフローネ』で力量を発揮したアニメーターでもある。キャラクター性へのこだわりは、手で動き=命を生み出すアニメーターの目線からこそ生まれたものだと思う。
  本画集には書き下ろしを含む120点を収録。ガンダムのアニメーションディレクターだった安彦良和との対談や、佐野イラスト風のザクのフルスクラッチ製作などの記事も収録されている。

(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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<ハウ・ダニット>の部分にフォーカスした一冊

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 「押井守inポーランド」が、<フー・ダニット>の視点によるメイキングだとするなら、本書は同じメイキングでも<ハウ・ダニット>の部分にフォーカスした一冊だ。
 実写撮影した素材を、ほぼ全編に渡ってデジタル加工するという独特な手法で製作された映画『アヴァロン』。その独自のビジュアルはいかにして作り上げられたのか。その原点から技術の細部にいたるまでを、製作過程の素材などを潤沢に使いながら徹底的に解説している。約290ページ、3500円とかなりボリュームのある本だが、一読すればこのボリュームを超えた濃い中身がこの本の中にあることがわかるはずだ。
 全体は4章にわかれている。第一章は演出技法の解説、第二章はアヴァロンの原型を形作ったプリプロダクションの段階を扱い、第三章が撮影、第4章がデジタル処理などのポストプロダクションの過程を紹介している。
 この本は、あなたの『アヴァロン』に関する疑問の多くに答えるはずだ。たとえば、未帰還者が収容されている病院のシーン。そのように空を曇り空に変え、グレイの建物をあのような鉄錆のような色へと染め直したのか。あるいは、アッシュの衣装はなぜあんなデザインなのか? ドリビーデジタルサラウンドEXという音響フォーマットとは?  
 あらゆる専門的な疑問について、この本ではこと細かに解説してくれる。これ一冊あれば、『アヴァロン』を数回見直してもまだ見たりないと思うかもしれない。

(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本∀ガンダム Episodes

2000/10/08 17:36

∀ガンダムエピソーズ

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 『∀ガンダム』の小説版は、スニーカー文庫だけでなく、角川春樹事務所のハルキノベルスからも出ている。

 どちらも、テレビシリーズの構想を下敷きにしながら、独自に小説の世界を展開、三者三様のラストシーンを迎えた。これはテレビアニメのノベライズではあまりないケースだろう。だが、「おとぎ話」をモチーフにした『∀ガンダム』にとって、これはふさわしいスタイルだったように思う。「おとぎ話」はその意味するところは同じでも、さまざまなバリエーションが語り伝えられるものだからである。

 さて、本書はそんな「大きなおとぎ話」からこぼれ落ちた「小さなおとぎ話」を集めた番外編。

 物語が始まる前の主人公ロランの姿、本編では夫の死で取り乱したきりだったハイム夫人のその後、そして全ての争いが終わった後の登場人物たちの姿……。いずれもささやかではあるが、『∀ガンダム』のテーマである「ただ巡ること」はそこにしっかりと刻み込まれている。アニメのスタッフが設定した登場人物や世界観、そしてテーマを咀嚼し、小説として定着させた佐藤茂の筆力は見事だ。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本トンデモ一行知識の逆襲

2000/10/08 17:30

トンデモ一行知識の逆襲

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 雑誌などのページの柱に書かれた一行知識。例えば「伊丹十三は最初、一三と名乗ったが、マイナスからプラスへの意味を込めて、一を十に改めた」というような、瑣末だけれど妙に心に残る知識のことを、そう呼ぶそうだ。本書は一行知識愛好家である著者が、さまざまな一行知識をダシにした軽ーいエッセイをまとめたものだ。

 では、本書の中にどれほどの一行知識が収められているのだろうか。もちろん、本文中には、かなりの数の一行知識がちりばめられてある。だがやはり、一行知識の存在すべき正しい場所は、本文ではなくページのすみ、欄外だろう。そこで数えてみたところ、本書はページの欄外に183の一行知識をずらりとならべていた。本文を読んでいるうちに欄外が気になりだし、途中から本文を忘れて欄外だけ読んだとしても、これだけの量があれば、一行知識の楽しさを十分味わえるだろう。一行知識ファンの人には堪えられない本なのだ。

というわけで、私も最後に1行知識をば。
 本書23ページに登場するシッダルタ王子(後の釈迦)にミルクを与えた娘、スジャータ。ところが「サンスクリット語では人の名前の末尾の音を長音にすれば女性の名前ということになる」というルールがあるのだ。というわけで、彼女が娘である以上、本当はスジャーターと呼ばなければならない。スジャータでは男の名前になってしまうのだ。サンスクリット語を使う機会のある方は十分注意されよ。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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ジャパニーズ・アニメーション

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 日本を代表する産業だ、とか日本で一番進んでいるエンタテインメントだ、とか、近年突然脚光を浴びてるアニメーション業界。

 でもそうやって、したり顔で解説しているビジネスの専門家とか、その発言を利用しているマスコミ関係者とかで、ちゃんとアニメを見ている人ってどれだけいるのだろうか?

 では、どのアニメを見ればいいのか。あるいはアニメのどこを楽しめばいいのか。膨大にならび、なおかつ日々増殖していくレンタルビデオ店のアニメコーナーの前で、なんとなく後込みしているヒトもいるんじゃないのだろうか。

 本書はそんなアニメ初心者にとって、丁度いいガイドブックになるのではないか。アニメの歴史から、作家論、作品論と、バランスよく配置されている。これ一冊をもちながら、ビデオ店にいけば、もう迷う必要はないだろう。もっとも、解説の何カ所かに気になる部分はないわけじゃないけれど、作品選びに支障があるほどじゃない。

 それが指摘できるぐらいならアナタは十分なマニアだ。そんな人はこの本がなくたってビデオは選べるはずでしょう。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本とんまつりJAPAN

2000/08/07 19:28

とんまつりJAPAN

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 億千万の胸騒ぎ〜に、旅情を刺激されたのか、みうらじゅんがエキゾチック・ジャパンをディスカバーしに出かけることを決意した。そのエキゾチックな日本の正体こそ、とんまなまつり、略して「とんまつり」だ。

 蛙飛行事、笑う祭り、尻振り祭り、子供強飯式、うじ虫祭り……名前を聞いただけで、「?」が脳裏に点滅する祭りの数々。そんな不思議な名前を持ち、そしてそれ自体も少々不思議な祭りを、みうらじゅんがルポする。といっても、彼は予習も何もしない。ひととおりガイドに目を通す程度だ。あくまで祭りの名前からうけるインスピレーションだけを頼りに、「とんまつり」を求めていく。その一期一会(大げさ)ともいえるような邂逅の記録が本書のわけである。
 ところで、毎年祭りを当たり前のように行っている地元の人から彼を見れば、彼のほうが「とんま」に見えているんじゃないのだろうか?

 みうらじゅんは、この「とんまつり」をちゃんとした形に残そうと、ビデオ撮影をし、それをソフトにまとめたという。詳細を知りたい方は、ここにアクセスを。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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紙の本アニメ新世紀王道秘伝書

2000/08/07 18:13

アニメ新世紀王道秘伝書

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 テレビアニメを見る面白さの一つに、「繰り返し」がある。例えば、なんらかのトラブルが発生し、その緊張の頂点で主人公の変身なり、発進があり、トラブルが解決する。こうした「型」に少しずつバリエーションをつけながら、繰り替えし続けることで、テレビアニメは豊かになっていった。

 もちろん「型」にはさまざまなスタイルがある。だがどちらにしろ「型」が単なる「型」でしかなければ、感動は呼ばない。「型」を「型」のままにしない、心、意志、アイデア、情熱といったものが、「型」という土台の上で、感動の華を咲かせるのだ。著者は、この「型」と「心」の幸福な結婚を「王道」と呼ぶ。

 本書は、ロボットアニメ(『ゲッターロボG』『マジンガーZ対暗黒大将軍』など)、出崎統作品(『エースをねらえ!』『あしたのジョー2』など)、タツノコ作品(『宇宙の騎士テッカマン』『科学忍者隊ガッチャマン』など)の3章からなる。取り上げられる作品は全15作品。だがその内容は、単なる粗筋、設定紹介ではない。インターミッションとして、安彦良和の『ライディーン』の初期デザイン稿と『大空魔竜ガイキング』の初期稿という資料性の高い図版が掲載されているが、それもあくまで単行本化に際しての「おまけ」的存在だ。
 
 著者の関心はあくまで、その作品なりの「王道」の存在を明らかにすることにある。その作品のどこが感動できるのか。当時、その作品のどこを見て驚いたのか。なぜ記憶に残る一本となり、どうして現在もそのキャラクターが愛されているのか。豊富な絵素材を利用しながら、著者は自分の感動を検証することで、「王道」へと迫ろうとしている。

 オタクがらみの本は多い。だが、アニメの作品論には意外なほど、「感動」をベースにした当たり前の評論は少ない。ましてや、一冊まるごと著者の個性で統一された本となると非常にめずらしい。それだけにアニメに限らず、映像作品とその感動について考えたいヒトにとっても、刺激的な内容になっている。

 著者の姿勢は「新世紀アニメ熱論」と併せて読むと、一層明確になる。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)

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