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- カテゴリ:一般
- 発売日:2016/10/26
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/538p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-309-20718-6
- 国内送料無料
紙の本
アメリカーナ
著者 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ (著),くぼたのぞみ (訳)
【全米批評家協会賞(2013年)】恋人オビンゼと離れ、アメリカに旅立ったイフェメルは、失意の日々を乗り越えて、人種問題を扱う先鋭的なブログの書き手として注目を集める。一方...
アメリカーナ
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商品説明
【全米批評家協会賞(2013年)】恋人オビンゼと離れ、アメリカに旅立ったイフェメルは、失意の日々を乗り越えて、人種問題を扱う先鋭的なブログの書き手として注目を集める。一方オビンゼはナイジェリアで巨万の富を得て結婚し…。3大陸大河ロマン。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
- 略歴
- 〈チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ〉1977年ナイジェリア生まれ。19歳で奨学金をえて渡米。ジョンズ・ホプキンズ大学、イェール大学などで学ぶ。作家。「半分のぼった黄色い太陽」でオレンジ賞を受賞。
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紙の本
小説の舞台に広がるどうしようもない現実。
2017/05/18 01:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
読了後、掛け値なしですごい作家さんだと分かりました。
ノーベル文学賞はきっとこんな人に贈られるのでしょう。
後書きによると恋愛小説を書きたかったとのこと。でも私は、
恋愛要素よりもアフリカーナたちの心模様に惹かれたのです。
アメリカのプリンストンでイフェメルは電車を待っています。
髪を編むためにトレントンまで行くのです。
プリンストンで何人か見かけた黒人は、肌の色がとても薄く
細い髪なので、街には髪を編んでもらえる場所がないのです。
黒人のためのヘアーサロンが、ないのです。
アメリカ黒人のこと以前は二グロとして知られた人たちと
カッコ書きしてあり、意味を初めて知りました。
むかし読んだ本の海外のマナーの記事を思い出しました。
大きくて体の丸い黒人のおばさんに対して、鉛筆みたいな日本人が
がたがた震えながらブ、ブラックと呼びかけている絵が載っていました。
おばさんは平然と見下ろしてオーケーと答え、黒人は二グロではなく
ブラックと呼べばいいと説明されていました。
二グロを黒人の差別用語と理解しましたが、何十年もたって誤解が
解けました。アフリカ系アメリカ人だったのですね。
あらためて考えると、その説明文の状況自体が変です。さも当然と
ブラックと呼びましょうなんて、冷静に考えれば変だと分かりそうな
ものですが、皆さんはいかがでしょう。
イフェメルはアメリカナイズされたアフリカ人であることを自覚していて、
アフリカーナアメリカンは祖先が奴隷の人達で、アメリカーナアフリカン
とは違うと考えています。
アメリカの白人相手でもイフェメルは人種の話題を口にします。
善良な白人は、○グロと聞くと顔面蒼白になります。
しかし現実は……アメリカの現実は冷徹なのです。
分かったふりをする白人などは無意識の自己欺瞞に満ちているのです。
階級社会は厳然として存在します。
ナイジェリアでは金持ちか成績超優秀だったはずなのに、アメリカに
では最下層の扱いを受け、警備員ごときに馬鹿にされる始末です。
いかがわしい仕事や違法な働き方をしないと食うに困るのです。
頭が腐った白人どもに悩まされ続ける差別バリバリの、でも現実から
目をそらさない筆致に息をのみます。
ナイジェリアでは黒人であるなんて考えもしませんでした。
アメリカでは嫌というほど思い知らされました。
でもみんなアフリカには帰らず、アメリカにしがみついています。
でもイフェメルはナイジェリアに戻る決意をします。
いつか来た道を戻り、時間が巻き戻されていくように、コクジンという
存在がゆるやかに消えていくというお話です。
とても読みやすいです。
真にすごい書き手は難しいことを簡単に書ける人なのです。
井上ひさしさんの受け売りですが。
誇り高きアメリカーナアフリカンのお話ですが、
黒人という用語を入れ替えれば、それこそ世の中のあらゆる所に
転がっている差別に当てはまるわけで、人間の尊厳を蹂躙していく
現実を、まるでバナナの皮でもむくみたいに簡単に見せてくれるのです。
黒はどんなイメージですか。日本語の持つ本来の意味では
黒色は悪いというニュアンスはないはずです。
いつの間にかブラック企業なんて言葉が蔓延しています。
ふと気がつきました。ブラックが悪いなんて意味は、いつ決まった
のですか。ちょっと恐ろしくなりました。
知る人ぞ知る作家さんなので初版部数も少ないのでしょう。
単価に跳ね返っています。それでも、いつか日の目を見ることを
信じてこの本を発行した編集者の執念に脱帽です。
読んで損はありません。