紙の本
情報としてのこころ
2001/02/22 01:29
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
文系の知が拓いた沃野に理系の新たな知がそそがれたとき何が生まれるか。著者はここに「情報学」の魅力の一つがあると書いている。
コンパクトな叙述ながら、すくいだすべき論点が網羅された好著。再読、三読すべき書物だと思う。ここでは、本書で扱われている問題の一つ「機械で心はつくれるのか」をめぐる文章を抜き書きしておく。著者の「情報観」が端的にうかがえる。
《〈情報〉とは決して機械的・非生命的なものではなく、逆に生命現象特有の存在です。「ヒトの心」とは、社会的な情報が織りなすダイナミックなプロセスそのものですから、非生命物質である機械で容易につくることなど不可能なわけです。》
《「ヒトの心」を端的にあらわせば、「機械の心をつくろうとする動物の心」と言えるかもしれません。つまりそれは紛れもなく動物の心的システムの一種なのですが、みずからの心的システムの類似物を製作しようと懸命に努力し続けるという特徴をもつのです。/機械とはヒトが自由に統御できるものです。少なくとも統御可能性が目ざされる存在です。(略)/とすれば、みずからの心を情報処理機械とみなすヒトという存在は、みずからを統御し管理しようという強い欲望をもっているとも考えられます。》
紙の本
理系の知と文系の知とを総動員し、情報を総合的横断的に考えている。よく理解しきれず。
2003/06/16 21:20
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投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
対象範囲が広すぎて、総合的で、よく理解しきれなかった。電子工学を専攻した者にとっては、情報とはその意味内容を捨象したうえで、通信工学やコンピュータ工学で扱われる無機的なものである。また、従来の科学的思考方法は、複雑な現象や事物は構成要素に分解し、単純化された各要素を個々に解析し、それを組み合わせて元の現象や事物を理解する、という還元主義である。ところがこの本では、情報を生命の織り成すパターン、生命の意味作用としてとらえている。人工知能工学、オートポイエーシス理論、動物行動学、アフォーダンス理論といった理系の知と、現象学、社会学、言語学、記号学といった文系の知とを総動員し、情報を総合的、横断的に考えている。「機械で心は作れるのか」、「動物に心は有るのか」という二つの問題を設定し、複雑なものを複雑なものとして取り組んである。従来の学問分野の分類で考えることにとらわれている者にとっては、このような研究もあるのかと新鮮な印象もうけるが、戸惑いも大きい。
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基礎情報学の権威である東大の先生が書いている本です。
基礎的な内容なんですが、少々難解です。
アフォーダンスや人工知能など情報学の基礎を学ぶにはうってつけの内容だと思います。
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8点
最高に平易に書かれた「西垣情報学」の入門中の入門の書。これを読んで面白いと感じたのであれば、次は「基礎情報学」を読んでください。
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インターネット多言語主義(マルチリンガリズム)とサイバースペース多言語主義はサイバースペースにおける(英語のみによる)単一言語主義(モノリンガリズム)に対抗する思考。
しかし英語が出来ればそれで良い、と私は考える。
あえて、他言語を習得するほうが時間の無駄。
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西垣通氏の著作は、これがはじめて。
文理にまたがる「知的乱暴さ」には脱帽。
綜合的な視点とはまさにこの事か。
職場の第一線を退き、師事したい気持ちすら生まれた。
一方で、あまりに説得力がありすぎるように感じられてしまう。
私自身が文系だからか?理系に平伏しているのだろうか?
ちょっと盲目的に信仰してしまいそうな自分がコワい。
いずれにしても、勉強意欲をかなり強くあおられた。
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安い、たったの720円+税
税込み表示してないとこから、ちょいと前の本だってわかる
個人的には、タイトルは胡散臭い感じちょっとですが
中身は値段以上のものを提供してくれます。
「新書」という内容な事は忘れずに あくまで新書です
情報という観点から、1900年代初頭あたりから現代までの
各分野の中での出来事を取り上げながら、丁寧に説明していきます。
そういう意味で、哲学や科学の分野の理論書に初めて触れる人には比較的、良書と言える気がします。これを読んで、ここに出て来る人名を検索エンジンで調べてと、知識を広げるきっかけを強く作ってくれる本と言えるでしょう。
また、同時に一回りしてから読むと違った視点で
この本を読める その点でも良い本であると思います。
「情報」「情報化社会」というフレーズに興味がある方は
ちょいとお金を出してみてはいかがでしょう。
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心に関する書物には、大学で脳を研究してからとても関心が強いんですが、「情報学」という切り口での整理を試みたものってあんまりなかったような気がします。「脳の情報処理」は既に多くの研究者が何十年も取り組み続けているテーマですが、表題に惹かれました。書店でパラパラ見てみたいと思ってます。
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最近新書をよく手にする。
(単に出張が増えただけなのだが…)
行き帰りの駅の本屋で思わず買ってしまいがちなのだが、
最近反省中。
そういう場には、良書が少ない気がする。今日、この頃。
情報学関連で、著者の別の本を何冊か読んでいたことも
あり、手に取ってみた。(駅でではないよ。)
新書=入門書って感じで、少々物足りなさが否めなかったが、
読了後、思考停止に陥っていないか?
自分を振返ってみれた。
著者の世界観は、基本的に同意。
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[ 内容 ]
地球上に生命が誕生した三十数億年前に、情報も同時に誕生した。
情報とは生命の意味作用であり、ヒト特有の言語もその発展形にほかならない。
すなわち、ヒトの“心”とは“情報”が織りなすダイナミックなプロセスなのである!
それでは、動物の心を根底にもちながら、一方で機械(コンピュータ)で心をつくろうという野望を抱く、現代人の心とはいったい何か?
オートポイエーシス、動物行動学、アフォーダンス、人工知能といった理系の知と、現象学、言語学、社会学などの文系の知を横断しながら、まったく新しい心の見方を提示する、冒険の書。
[ 目次 ]
第1章 情報から心をみる(情報学からの展望 心は情報処理機械か ほか)
第2章 機械の心(機械が言葉をしゃべるとは 人工知能の挑戦 ほか)
第3章 動物の心(生命の誕生と歴史 心的システムの進化 ほか)
第4章 ヒトの心(言語が生まれる 原型言語 ほか)
第5章 サイバーな心(もとめられる身体性 イメージ商品としての機械情報 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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こころというものを人間、機械、動物などの例を取りながら説明していきます。あまり、興味を感じませんでしたが、考えさせられるものはありました。
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-2009.02.24
情報なるもの-その意味解釈や処理加工は、生物の身体内に蓄積されてきた情報系に基づいて実行され、結果として情報系自体も変化する。こういった累積効果こそが<情報>の基本的な性格なのだ。
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西垣さんは、後書きでも書かれているとおり、ところどころで「知的暴力」という過ちをおかしており、論証力という部分において、ちょっと突っ込みたくなる部分があるのだが、一冊通して読むと、得るところが多い書き手なのが魅力である。
今回は、オートポイエシスという概念に、アフォーダンスという概念を交差させ、生命的情報の本質に迫ることに成功している。そして、ヒトという生物がアフォーダンスからはみ出た存在であることの指摘においては、鋭いとしか言いようがない。
以下抜き書き。
・すなわち生物とは、いわば歴史を抱え込んだ存在なのです。非生物であるモノを記述するにはその物理的な構造からはじめればよいのですが、生物の認知活動を記述するには、歴史的側面を無視することはできません。そして、この歴史性すなわち時間的累積性こそが、〈情報〉(※生命情報)の本質的特徴なのです。
・現代社会においては記号の意味作用を安定させる強力な規範化権力がはたらいていること、そしてそのことが工学的な機械情報の重視、情報処理技術の進歩発展と深く結びついているということなのです。
・規範化権力は、辞書とか、学校教育とか、法体系といった近代的制度のなかに組み込まれています。
・われわれヒトは、自分の知覚だけではなく他者との言語コミュニケーションをもとに環境世界を認知し、そのイメージを作り上げていきます。つまり厳密には、ヒトは決して自分一人で環境正解を解釈しているのではなく、他者をまきこみ、共同で解釈をおこなっている、ということになるのです。
・文字という情報テクノロジーの登場によって、ヒトの社会には〈抽象化〉と〈普遍化〉という方向性が鮮明にあらわれた。逆に言えば、一つの語句の意味作用が抽象化・普遍化され、規範によって安定化されなくては、その語句は小さな共同体の枠をこえて何千何万もの人々のあいだで通用することはできないでしょう。
・端的に言うと、印刷技術の登場とともに、はるかな父祖の威光をひきつぎ聖なる声を発する存在である「王」は死んだのでした。
・近代国家では政治と宗教はふつう分離されます。宗教は共同体の統合をつかさどる社会的装置から、個人の内面にかかわる心理的装置へと重心を移していきます。
・文字を一次元にならべた印刷本はヒトの視覚だけを特権化し、感覚の比率を狂わせるとマクルーハンは批判します。
・優れた詩というものはすべて、見慣れた日常世界を組み替え、環境世界に新たな異なる〈意味〉を付与することができます。
・国民国家が「国語」を独占できる時代は、過去のものとなりつつあります。もちろん、二一世紀にも国家が無くなることなどないでしょうが、その形態や機能は、絶対的な政治単位からゆるやかな国際連合体の要素という方向に変わっていくかもしれません。そういう潮流のなかで、いかに自分の言葉をとらえ直し、自分のアイデンティティを見つめ、地球上のコミュニケーションに参加していくか、それがいま、問われているのです。
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情報学者で東大教授、西垣通さんの著書。情報学的観点からオートボイエーシス、アフォーダンスといった理論を交え心を論じます。いろいろな学説を交え心を論じている点はおもしろいですがいまいち結論が見えにくいという印象。でも良い本でした。
西垣通さんは日立の研究所でOSやネットワーク、データベースなどの性能設計や信頼性設計を研究したのち東大へ。東京大学情報学環教授。東大には情報学環という文理融合した様々な分野の研究者が集まり情報を研究している組織があるのですね。興味深い組織です。情報という学際的な領域は面白いと思います。
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(2003.02.08読了)(1999.06.19購入)
(「BOOK」データベースより)
地球上に生命が誕生した三十数億年前に、情報も同時に誕生した。情報とは生命の意味作用であり、ヒト特有の言語もその発展形にほかならない。すなわち、ヒトの“心”とは“情報”が織りなすダイナミックなプロセスなのである!それでは、動物の心を根底にもちながら、一方で機械(コンピュータ)で心をつくろうという野望を抱く、現代人の心とはいったい何か?オートポイエーシス、動物行動学、アフォーダンス、人工知能といった理系の知と、現象学、言語学、社会学などの文系の知を横断しながら、まったく新しい心の見方を提示する、冒険の書。
☆西垣通さんの本(既読)
「麗人伝説」西垣通著、リブロポート、1994.02.25
「マルチメディア」西垣通著、岩波新書、1994.06.20
「聖なるヴァーチャル・リアリティ」西垣通著、岩波書店、1995.12.05
「インターネットの5年後を読む」西垣通著、カッパ・ブックス、1996.04.25
「インターネット社会の正しい読み方」牧野昇・西垣通著、PHP研究所、1996.11.07
「デジタル・ナルシス」西垣通著、岩波・同時代、1997.01.14
「メディアの森」西垣通著、朝日新聞社、1998.10.30
「IT革命」西垣通著、岩波新書、2001.05.18