紙の本
元衆議院議員の目から見た獄中体験記
2004/09/24 10:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオトリさま - この投稿者のレビュー一覧を見る
政策秘書の名義借りをした事による詐欺罪により実刑判決を受けた山本譲司元衆議院議員の433日の獄中生活と事件を語る本。
獄中生活の手記というと安部譲二氏の「塀の中の懲りない面々」が有名だが、阿部氏は極道の世界に身を置く人なので著書の中で語られた「塀の中」は再犯者が収容される府中刑務所などの「B級施設」であり、そこで語られる収容者は赤軍派兵士、テキ屋、殺人犯などベテラン。
山本氏は初犯なのでA級に分類されて栃木県の黒羽刑務所に服役する事になった。
黒羽刑務所での山本氏の体験記は阿部氏とはまた違った興味深いものであった。
山本氏が刑務所での配役先は「寮内工場の指導補助」
寮内工場とは「塀の中の掃き溜め」と収容者の間で言われている一般工場から完全に隔離された場所にある体や心に病を持った収容者を集められた場所である。
痴呆症、自閉症、知的障害、精神障害、聴覚障害、視覚障害、肢体不自由など、さまざまな障害を抱えた寮内工場の収容者の日常生活も含めたサポートが「寮内工場の指導補助」の仕事である。
寮内工場で山本氏はまさに糞尿にまみれて奮闘する事になる。
そんな日々の中で「バリアフリー」と言われながらも社会に根強く残る「差別」という名の「バリア」に躓き再犯をくりかえす障害を持った入所者達の姿は心に突き刺さるものを感じる。
治安の悪化・不景気などの影響で刑務所の収容者は増え続け、日本全国の刑務所は過剰収容の問題に悩まされている。
「過剰収容」は職員と収容者どちらにもストレスをためさせ雰囲気が殺気立ち、工場内での暴力沙汰も増えている。
役所の縦割り行政の弊害。
明治時代から変わらない「監獄法」に対する疑問点。
など、国会に身を置いていながら獄中体験をする事になった著者にしか書けない鋭い分析に考えさせられる事が多かった。
現在、山本氏は将来的には障害者の授産施設やグループホームを運営する事を目標に、福祉関係の資格取得を目指して勉強中だそうだ。
それは、障害のある受刑者たちと過ごしてきた体験と恩人の死によってもたらされた目標である。
14ヶ月の刑務所生活は、これからの山本氏の第二の人生でどのように生かされていくのかに注目してみたいと思った。
紙の本
常に反面教師は自分の中に存在しているという箴言
2004/09/14 00:13
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投稿者:まざあぐうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
秘書給与搾取事件で実刑判決を受けた元衆議院議員山本譲司氏が入獄の日々を綴った初の書き下ろし。政治家に対する不信感から読み始めた一冊である。
順風だった衆議院議員当選までの日々、そして、国会議員をとりまく矛盾に疑問を抱きながらも、その土壌に染まっていく自分を顧みることから始まる。
実刑判決を自ら受け入れ入獄した著者の潔さに心打たれた。
元国会議員という肩書きを捨てて、新米受刑者としての日々を新たに生き始め、事件への悔恨、人生に対する煩悶を繰り返しながら綴る著者のひとつひとつの言葉が心に響く。
著者は「塀の中の掃き溜め」と言われている障害を抱えている囚人たちの世話係として、糞尿や吐しゃ物にまみれる日々を耐え抜いた。
耐え抜いたばかりか、障害を抱える同囚たちへの複雑な思いに苛まれ、精一杯の誠意を尽くす。
その姿は、政治家を志した著者の初心を彷彿させる。
政治家時代も福祉関係の支援を熱心に行っている。特に障害者への思いには熱いものが感じられる。その熱い思いが、試されたのであろう。
社会の偏見や差別から知らず知らずに犯罪を繰り返す障害者たちが置かれている劣悪な環境には、著者と同様胸をえぐられるような思いを味わった。
塀の中の日常風景を綴りつつ、明治時代から変わらない監獄法への疑問や受刑者たちの人権の問題をさりげなくクローズアップさせ、一般の読者が知り得ないであろう社会の矛盾点を指摘する。
入獄中、ふたたびクローズアップされた辻元清美議員の秘書給与問題の中で、辻元氏の著者に対する不用意な発言と反省のない言動には、報道されていた当時以上に腹立たしい思いを抱いた。
著者を支える家族や支援者、民主党の政治家たち、著者の弁護を担うT弁護士、著者を長年にわたって支えてきた秘書、著者をめぐる人々の暖かい思いには、並々ならぬものが感じられた。
それは著者の人間としての信頼を意味するものではないだろうか。
それほど多くの人々から信頼を受けている人間でも、罪を犯し得るものなのだろう。
著者は「あとがき」の中で「常に反面教師は自分の中に存在している」と語っている。それは、入獄の日々を通して新たに見えた著者の自己像とも言えるが、著者のその言葉は、私にとって、箴言とすら思える。
マスコミの伝える情報を鵜呑みにしてはならないことを改めて考えさせられた。著者の犯した罪は、確かに重い。そのことを自覚している著者は言い訳がましいことは同書の中で、一言も述べていない。
将来的には、障害者の授産施設やグループホームを運営することを思い描いているという著者、社会福祉士と精神保健福祉士、そして介護福祉士への資格取得を念頭において自学自習の日々を送っていると語る。
政治家一般への不信感は未だに拭えないが、刑期を終えた著者に精一杯のエールを送りたい気持ちと共に読み終えた。
刑務所という施設の実情や秘書制度の問題点に目を向けるためにも、また、社会の偏見や差別から知らず知らずに犯罪を繰り返す障害者への理解を推進するためにもできるだけ多くの人に読んでいただきたい一冊である。
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政治、刑務所の裏側など興味深かった。
著者の人生への取り組みには感心した。
獄中と娑婆のギャップがまさに社会の理想と
現実のようで身にしみてしまった。
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やたら難しい言葉が多くって。もっと一般的な言葉を使えばいいのに、何故あまり普通には使わないような四文字熟語や単語を使うんだろう?それとなんだかエラソーな印象を受けてしまうんだよね。
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いろんな意味でショックだった。読んでいて気分の良い物ではないけれど、ひとつの情報として知っていた方が良いと思いました。高校生という時に読めてよかった。
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読むのがしんどすぎて飛ばし読み。
累犯障害者を先に読んでいて良かった。じゃなきゃ1.2ページで挫折していた。
修飾過多な文章といい、自分の善良さや正しさを微塵も疑わない(ように見える)「健全さ」といい、このまま進むなら私はこの人が大嫌いだ。
だけど、それらの不快さに耐えてでも読むだけの価値はある(真ん中辺だけは)。
罰にも矯正にもならないような、なんのためにあるのかわからない作業だとか、必要な支援が与えられない情況だとか、知るべきことがたくさんある。
ていうかこれプライバシーとかいいのかな。
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刑務所に入った議員はどんなことを考えていたのか?
元衆議院議員・山本譲司さんの『獄窓記』を読みました!
新聞広告の柳葉敏郎氏のコメント
「こんなにも涙した本はない!」に惹かれて買った本。
私は広告屋ですが、
広告屋は乗せられてしまう体質なんですね。
乗せる人だから、乗りやすい感じ。
あとは究極の興味本位。
国会議員という偉い先生が、
刑務所に入るとどんな扱いを受けるのか。
どんなことを考えたのか。
そして、なぜ、この本を書いたのか?
自分の立場をよくしよう? お金儲け?
いろいろ邪推しながら読みました。
山本譲司さんは、秘書給与詐取事件で
実刑判決を受けて刑務所に入ったのです。
その辺の経緯から新米受刑者としての日常、
障害を抱えた同囚たちの世話をするようになったこと、
出所までの日々が、本当にていねいに、こと細かに書かれています。
記憶力がいいなあと思います。
看守たちの扱いは意外と紳士的なんですね。
映画で見るような看守と受刑者の葛藤もなくはないにせよ、
山本さんが描きたかったのはそこではなく、
刑務所という施設のあり方や、そこで学んだこと、
自らの「人生の学校」としての刑務所の姿を
ありのままに描きたかったのですね。
自分の刑務所での経験を書くことは
葛藤があったと巻末で書いています。
プライドの高い人ほどそうでしょう。
でも、この一冊は、ちょっとかっこいい部分はあるにせよ、
自らのその時々の気持ちや日常を
ありのままに描いている点でとても好感が持てます。
そして、刑務所内で出所を間近に控えて
亡くなってしまう受刑者の話には、涙が出てきました。
作ったドラマではなく、本当の人間ドラマが描かれています。
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途中何度も涙がこぼれた。政治を志す人は、多分生きる力が人より強いのかもしれない。まさに山も谷もある人生だ。ノンフィクションに勝る小説なし。刑務所の中での葛藤と、自己反省、そこから自分の生きる道を見出していくさまが、わかりやすく描かれていて退屈しない。文中には現総理も登場し、人間味のある様子が描かれている。現在は、著作のラストで著者が志していた通り、福祉活動家の道を歩まれているそうだ。
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秘書給与詐欺で逮捕された元議員・山本さんの手記。
塀の中で観た行刑の現実、特に障害を持つ犯罪者の処遇の問題点について。塀の外に出るまでの体験。
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興味深い。日本の福祉行政について深く考えてしまう。しかし、同時に筆者の見栄と建前と逡巡と苛立ちが微妙に食い違いながら見え隠れする部分に、前科を背負うということがどういうことかがちょっと見えるような。
講演会に行ったときに出会った筆者がよくも悪くも等身大で書かれている本だな。
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障害者の塀の中の実態なんて考えたこと無かった。待遇改善するには規則を変える必要があるが、規則を変えるのは現場を知らない人間。『正しいことをしたきゃ偉くなれ』という言葉を思い出しました。
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正直言って、山本譲司という国会議員がいたことも、公設秘書給与流用で逮捕された事も、よく知らなかった。後半になって、辻本清美という名前が出てきてようやく「あー、この人知ってるわ~」となったけど、そういえば何か訴えられたとか何かあったかもなぁ、と思いだす程度で、政治に興味を持たない事が恥ずかしく思えるほど。
この本に書いてある事を全面信用すれば、山本譲司さんがしたことって、そんなに悪い事なの?と思ってしまうけれど、全てを正直に書いてる訳でもないだろうし、自分をよく書いてるのかも知れない。
ただ、刑務所の中での様子は興味深かった。
犯罪者なんだから、どんな扱いを受けようがしょうがないでしょ、という考えもあるかも知れないが、冤罪で放り込まれる人もいるかも知れない訳で、そういう人がこういう扱いを受けるというのはやっぱり理不尽ではあるなぁと思う。
山本さんは、元々福祉に興味を持っていて、そちらに力を入れてる人だったようで、刑務所の中でも敢えて、障害者が集まる施設を選んで、そこで働くけれど、刑務所の中というのは、外の世界の施設とは違って、不衛生だったり、病気もよく診てもらえなかったり、そのせいで、出所間近で亡くなってしまう人がいたりするというのは、やはり改善すべきことだろうと思った。
今は少しは改善されたのだろうか。
罪を犯して刑務所に入る事がなければ、現状を知る事もないし、興味を持つ人もいないかもしれないが、知るべきことは世の中にはたくさんあるのだと思った。
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男性にとって、母親というのは特別な存在なんだろうな、と思う。本編も興味深かったですが、引用された囚人が塀の中から母を思って詠んだ俳句や短歌は涙なしには読めませんでした。
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刎頸の友 ふんけいのとも→
たとえお互い相手の為に頚(くび)を刎(は)ねられても悔いはないというほどの仲のこと
中国の戦国時代の趙の物語
人の口に戸はたてられない
→人々が勝手に流すうわさ話はどうすることもできないということ
雪隠詰め 秘書と議員 一蓮托生
証左
未熟さと狡猾さがない交ぜ 市民感覚の解離 博引旁証
博引」はたくさんの資料や事例を用いて説明すること。
「旁証」は証拠となるものを出して見せること
食器孔 万鈞
いかなるときもいかなることにも
無聊をかこつ 無欲恬淡
気持ちの忖度 人権意識が高まるなか待遇の改善は、逆戻りのインセンティブ 大行は細僅を顧みず 吐露 等閑 なおざり 同看守
次の世があるというなら母よ母再び我を身ごもりたまえ
旧聞に属する話 人権意識の希薄さ
ジェノサイド インド 東ティモール インドネシア軍
1991年秋。インドネシア占領下に置かれていた東ティモールの首都、ディリにて。
スハルト大統領は、東ティモールを独立させると、他の島にも影響が出るため、独立を認めない方針を貫い
た。 スマトラ島北部のアチェ特別州、パプアニューギニアに接するイリアンジャヤ州でも独立運動が起きて
いるからだ。 インドネシアは、併合に反対する住民を武力弾圧し、独立派と併合派の争いも含めると、20万人以
上の犠牲者が出たといわれる。
1975年11月・・・・ 独立派が、東ティモールの独立を宣言する。
ポルトガルの政変に乗じたものだった。 しかし、すぐインドネシア国軍が侵攻し、領有を主張した。
1976年・・・・スハルト大統領は 「 27番目の州 」 として併合を宣言する。
国連など国際社会はこの併合を認めず、「 自分たちの独立国を作りたい 」 という東ティモールの人々の独立
運動は続いた。
経済支援は、1999年12月の東京で開催した第1回東ティモール支援会合における3年間の約1億3千万ドルの支援表明から始まり、その3年後の支援国会合における3年間の上限約6千万ドルの支援を表明し、その後、公共事業整備や選挙実施支援、経済復興支援などの国づくりおよび復興支援を中心とした援助が現在まで行われている
障害が殺人に起因する ゼノンの逆接
大上段に構える
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2003年刊。
秘書給与詐欺事件で実刑判決を受けた元国会議員の手による刑務所内の実相解説。
本書の愁眉は受刑生活の模様。特に、認知症患者、知的・精神障害者、自閉症を含む広汎性発達障害と目される者が配置される寮内工場。それは筆舌に尽くしがたい。
また、福祉制度に無知な受刑者と、彼らへのケア・情報提供の不足、それによる経済的な不如意が再犯の温床となっている可能性も感得できそう。
一方、高齢受刑者の多さも、高齢化社会での福祉制度がカバーする必要のある対象の多さに気づかされる。刊行の古さを補って余りある内容だ。
著者をいわゆる高齢・障碍者受刑者の世話係的役割につけたのが、矯正担当側の深謀遠慮だったらすごいな(多分違うだろうが)。著者自身、これらの実情を社会へ開示し、改善の制度的道筋を実現する可能性を秘めた人物だからだ。