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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.12
- 出版社: NTT出版
- サイズ:20cm/338p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7571-4092-9
紙の本
グローバルプレイヤーとしての日本 (日本の〈現代〉)
著者 北岡 伸一 (著/編集),猪木 武徳 (編集),坂村 健 (編集),松山 巖 (編集)
日本はどこに進むのか? 「世界史の運命に手をかける」ことができるのか? 政治、外交、安全保障など、現在の日本のあり方を再点検し、日本が総合的なグローバルプレイヤーとなる道...
グローバルプレイヤーとしての日本 (日本の〈現代〉)
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商品説明
日本はどこに進むのか? 「世界史の運命に手をかける」ことができるのか? 政治、外交、安全保障など、現在の日本のあり方を再点検し、日本が総合的なグローバルプレイヤーとなる道筋を示す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
北岡 伸一
- 略歴
- 〈北岡伸一〉1948年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。同大学法学部教授。法学博士。専攻は日本政治外交史。著書に「清沢冽」「自民党」「国連の政治力学」など。
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紙の本
中国が成長を続けて、やがてアメリカを追い越すという説が少なくない。しかし、私はそうは思わない。一時的に経済力などでアメリカを追い越すかもしれないが、またアメリカが抜き返すのではないかと北岡伸一教授は言う。北岡伸一教授が指摘するアメリカの強さを以下に整理してみる。
2011/06/29 13:51
11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1)アメリカの強み:国土の広さ
中国とアメリカの国土は、ほぼ同じである。しかし、耕作可能、居住可能な平地の面積は、中国が国土の15%程度であるのに対し、アメリカは国土の80%ほどもある。つまり、アメリカは中国の五倍以上国土が広いのである。一見したところ、中国は広いように見えるが、農業生産の活発な地域は意外に限られていて、しかも何千年も耕作を続けてきた結果、土地がかなり荒れて来ている。しかも近年、農地がどんどん工業商業用地に転換されている。現在、中国の一人当たり耕作地は0.1ヘクタールで、これは世界平均の0.25ヘクタールをかなり下回る。中国の食糧生産は2000年から減少に転じ、2004年には食糧輸入国に転落。2008年からは農産物の輸出を抑制するようになっている。農業の生産力を含め、アメリカの国土が広く、中国がそれほどでもないことを忘れてはならない。
2)アメリカの強み:人口
今後、中国では急速に少子高齢化が進む。ある予測では、中国の人口は2030年代から減り始める。これはひとりっ子政策のせいではない。むしろ人間は豊かになり、高学歴になると子供の数が減るのは、どの社会でも起きる鉄則のようなものと考えるべきであろう。人口減少が始まる前から、通常は経済の減速が始まる。日本で言えば、人口が減り始めたのは2005年だった。バブル経済が崩壊し、経済が停滞し始めたのは1990年だった。これは日本の人口減少が始まる15年ほど前のことである。これと同様のことが中国でも起きると仮定すると、中国経済の低迷は2015年から2020年くらいにはじまることになる(これは日本経済にとってけっして良いことではない)。
他方でアメリカの人口はまだ増え続ける。現在、先進国で唯一人口増加を続けているのがアメリカである。2050年になっても人口は四億に達してなお増え続ける。マイノリティの出生率が高いこともあるが、移民が継続的にアメリカに流入し続けている効果も大きい。2050年で中国の人口が減少に転じ12~13億人、アメリカが4億人ならアメリカの優位は揺るがないだろう。そして、その後もまだアメリカの人口が増え続け中国の人口が減るなら、アメリカの中国の差はむしろ広がっていくことだろう。
3)アメリカの強み:軍事力
アメリカが他国に比べ圧倒的な強みを誇るのが軍事力である。アメリカが年間に費やす軍事費は6983億ドルであり、第2位の中国から第15位のトルコまで14カ国の軍事費の合計額よりも大きい。アメリカに軍事的に挑戦できる国は党部習われることはない。それに軍事には蓄積も重要な意味を持つ。長年アメリカが培ってきた軍事技術、軍事力は簡単に追いつけるものではない。また中国は経済でも科学でも、本当にオリジナルなものを発見する能力をまだ身につけていない。その点では日本の方が遥かにオリジナルなものを生み出してきた。現在の中国の力は、単に物量と模倣である。
4)アメリカの強み:大学
今後は経済も軍事も、ますます科学技術に依存するようになることは間違いない。アメリカの知識の源泉はアメリカの大学である。アメリカの大学は、20世紀最大の発明のひとつではないかと私は考える。広大なキャンパス。潤沢な研究資金。激しい実力競争など。世界の大学ランキングで常にハーバード、イエール、プリンストン、コロンビア、スタンフォードが上位に名を連ねているのは、英語大学に対する過大評価という部分を差し引いても、やはりうなづけるものがある。
5)アメリカの強み:システムを作る力=ソフトパワー
欧米はリベラル・デモクラシーとそれに基づくシステムを世界に広めることが出来た。欧米のシステムはルールをベースとするもので、そのルールにのっとれば非欧米諸国も欧米と競争することが可能だが、中華秩序はこうした普遍性に欠ける。普遍的なシステムとは、誰もが勝者になりうる公平な制度であるが、中国のシステムは常に中国が中心で、中国が不利になるとルールは常に中国が有利になるようねじまげられる。いつかは中国も伝統的文化に根差した普遍的なモデルを世界に提示するかもしれない。しかし、それがいつになるのか。そういう時がそもそも来るのか。今の時点では分からない。今の時点では、普遍的なシステムを提供し、そのシステムによって世界をコントロールするのはアメリカなのである。
6)アメリカの強み:自己変革能力の高さ
このように見てくると、寺島実郎あたりが垂れ流す「文明史的観点から中国の台頭は明らか」「地軸の変化」という観察が、如何に薄っぺらで浅薄なものであるかがわかるというものである。21世紀も世界の中心はアメリカであり続け、そのアメリカと同盟関係を結ぶ日本は相当有利な地位にあると見ることが出来る。まさに「日米同盟よ、永遠なれ」である。