honto×東京ポッド許可局 『推薦図書論』

TBSラジオ「東京ポッド許可局」の人気コーナー“推薦図書論”と、ハイブリッド型総合書店hontoがコラボレーション!毎週、局員たちが最近読んだ本、気になる本を紹介!しかも、リスナー局員の方だけがゲット出来るお得なクーポンやプレゼントも!
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2018年1月29日(月)放送で紹介されたタツオ局員推薦本

タツオ局員からの推薦コメント

これ、なにが面白いかっていうと、歴史物って確実にわかっていることはあるわけですよね。
ただ、間にわかっていないことがあるという。その行間を埋めるのに「ああ、こういう解釈があったんだ」というのをひとつ、この漫画で見せてくれているわけですよね。

たとえば聖徳太子(厩戸皇子)……いまでこそ、厩戸皇子の実在すら疑われているけど、いたとして、なんでこの人は天皇になっていないのか?とか。
なんか家系図にいきなり突拍子もない女の人と結婚をしていたりとか。あと、この漫画の完結の後も2人(厩戸皇子・蘇我蝦夷)の人生は続く。途中で終わるんですけど。

最終的に蘇我蝦夷は厩戸皇子、つまり聖徳太子の息子の山背大兄王っていうのを暗殺しているんですよ。っていう、その歴史を知っていると、より味わい深く読めるというか。史実は動かしていない。けど、こういう解釈があったら、「ああ、その事情もわかるわ」みたいな感じが面白くて。

(中略)

そのね、どうやって自分の天才性を厩戸皇子は演出していったか?みたいなこともこの漫画には書かれていて。
たとえば、三国志で諸葛亮孔明が風の動きを計算して、火の行方を予め知っているように演出したみたいなのがあるんだけど、聖徳太子も雨が全然降らなかった時、雨乞いをしろと言われて。いろんな人が雨乞いをするけど、全然降らない。聖徳太子も時の泊瀬部大王という人に恨まれていて、「雨乞いをしろ」と言われて。

で、(失敗したら)責任を取らせて失脚させようというのにハメられるんだけど。でも、気象学の知識があるから、いろいろのらりくらりとかわして、「そろそろ雨が降りそうだ」っていう時に「雨乞いをします」と。
で、法隆寺の八角堂に籠って雨乞いする。で、本当に厩戸皇子が雨乞いをしたら「雨が降った!」ってなるわけ。

2018年1月22日(月)放送で紹介された鹿島局員推薦本

鹿島局員からの推薦コメント

実はこの小畑さんは1955年デビュー。55年体制の年。昭和30年です。絶頂が昭和43年11月6日、満員の蔵前国技館で世界王座に挑戦した一戦。
この試合を中継した東京12チャンネル(現・テレビ東京)で視聴率22.4%。開局依頼最高の数字を当時、叩き出した。力道山と同じ時代に生きていた、そういう方。

そもそも小畑さん以前の女子プロレスは差別されていて、ストリップでのガーター争奪戦が女子プロレスのルーツと言われていたぐらい。
エロとスポーツっぽい見世物的なものだったのを、小畑さんたちの世代が「そういうものとは一線を画してスポーツライクでやりましょう」っていうことで、時代を作っていったんです。

たとえば、下品なヤジを飛ばした客には試合中でも応戦した。
「男のプロレスはあんなに人気があるのに、なんで女のプロレスは軽蔑されるのか?じゃあ、女でも絶対に世間に認めさせてやる!」というのが私の道だったと。

著者の秋山さんは女子プロレスという、本当に戦っている人が実はもっと大きい意味で、戦後の男社会の中で戦ってきたというところにスポットを当てているんです。これは相当面白かったです。

2018年1月15日(月)放送で紹介されたマキタ局員推薦本

※「Papa told me」の紙の本は絶版となっております。今回、続編となる関連書を紹介致します。

マキタ局員からの推薦コメント

(友人の芸人・国井咲也が)「騙されたと思って読んでください」みたいなことを言うから、「じゃあ、騙される。あんたのことを信用して一応見てみるよ」っつって読んでみたらこれがまあ、面白いのなんの。
と言ってもね、「面白い」って言ったってかきむしられるような面白さとはちょっと違うんですよ。

これ、設定としては父子家庭。知世(ちせ)ちゃんという小学生の女の子がいて、そのお父さんが的場さん。作家・ライターで家でいろいろと仕事をしている人なんですよ。
で、娘がちょっとませたところもあるんですけど、なんとも言えずかわいらしくて。時に哲学的な芯を食ったことを発言したりする。

なんだけど、特にとりたててすごい面白いっていうストーリー展開がされていくわけじゃなくて、日常の中のほんのちょっとした心のザワッとしたものとか、ちょっと心がキュンとなってときめいたりしたことというのがエッセイ漫画のようにしてつづられているんですよ。

で、ご近所づきあいなんかもあって、双子のお姉さんたちが出てきたりとか。
あと義理のお姉さんがいたりとか、いろいろなサブキャラが登場してきて知世ちゃんとすれ違う中で知世ちゃんに大事なことを大人たちが教えられたり、あるいはその知世ちゃんが大人たちから大事なものを教えてもらったり……みたいなことを非常に軽いタッチで。全然説教臭くないんですよ。

本当に心にいい風がフーッと吹くような感じ。
僕ははじめて漫画を通してそんな体験をさせてもらったんですよね。僕はね、またに心が荒んだ時に読むようにしているんですよね。

(中略)

(最初に読んだ)その当時は僕はまだ独身でしたけど、後に自分が娘の親になるとは思っていなかったので。
後に自分が娘と共にすごしていく時間の中で、僕は非常にこれを参考にしています。

2018年1月8日(月)放送で紹介されたリスナー局員推薦本

リスナー局員からの推薦コメント

僕がおすすめしたいのは『働かないふたり』という漫画です。タイトルの通りニートの兄と妹の2人の日常を描いており、風景は基本家の中。出かけても近所という超狭い範囲でストーリーが展開します。
「朝の星座占い、最下位だったけどこれから寝るから関係ないね」とか「服を売ってでも中古ゲームを買いたい」とかダメダメなエピソードのオンパレード。

特に大きな出来事は何も起きないんですが、2人のしょうもないやり取りにクスッと笑ってほっこりした気持ちになり、ついつい読み進めてしまうんです。なりたくはないけど、なんかうらやましい2人の生活を覗き見するような楽しさがあります。
基本的には1話完結なので読みやすく、最近流行りのパニック系やサスペンスのように「次、どうなるんだろう?」とは全く思わない展開なので、いつでも本を閉じることができます。寝る前におすすめの1冊です。

2018年1月1日(月)放送で紹介されたタツオ局員推薦本

やし酒飲み (岩波文庫)

エイモス・チュツオーラ(作),土屋 哲(訳)

紙の本を見る

タツオ局員からの推薦コメント

そういえば僕も(2017年に)一風変わった仕事をやったなと思ったのが、岩波文庫の文庫フェアというので帯を書いたんです。
今日紹介するのはアフリカの作家、エイモス・チュツオーラの『やし酒飲み』という小説です。この『やし酒飲み』の魅力を僕は帯で書いたんですけど、「起承転結なんのその。因果関係なんのその。これを読めば普段いかに私たちが常識に縛られているかわかります。読書を超えた脳みそが溶けるような経験がこの1冊に」というね。

(中略)

このエイモス・チュツオーラっていう作家もアフリカで生まれていろんな神話に触れてきたのを、自分で英語を勉強して英語で書いてアフリカ文学を知らしめるというので、この『やし酒飲み』という作品を書いたんですね。ただ途中から本当に脳みそをかち割られそうな展開ばっかりで。
なんか主人公が途中で死んじゃうんですよ。語り手が死んで死の世界に行って、また生き返るんですよ。この世界観で「死」ってなにを意味してるの? とか全くよくわからない。
あと途中で人にそそのかされて踊りだしたりとか、イリュージョンなんです。だからこれ、談志師匠に読んでもらいたいっていうようなイリュージョンが詰まった1冊です。

(中略)

アフリカ文学は南米の文学と並び称されるほどまだ未発見ですごい神話があると言われていて。
日本で「神話」っていうと北欧神話とかギリシャ神話とかが重宝がられたり、あとは古典文学。日本書紀の世界とかが神話として言い続けられているんですけども。アフリカは全部(神話などは)口伝なんですよ。だからそういう語り継がれてきたものをなんとか現代のテキストに……ということで。

(中略)

本当にいろんな読み取り方ができて。ナチュラルなアフリカの物語を世界的な文学の流れに組み込んだものなんですけど。
そういった意味では、我々の世界では常識と思われている起承転結っていうものがいとも鮮やかに否定されているんですよね。

(中略)

これを読んだ時に「わからない」って思う感覚をすげー大事にしてほしいんですよ。
「わからない」っていうことはいかに我々が「わかる」世界に縛られているのかっていうことを感じられると思うんで。お酒を飲みながらグデングデンになりながら読んでもらいたいと思います。

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