いいことずくめのマンガ生活

第6回となる今回は、日本を代表するアイドルグループ、モーニング娘。の第10期メンバーで、サブリーダーも務めるモーニング娘。’18の飯窪春菜さんをゲストに迎えてお届け。

前編・後編の二部構成、後編をお届けします。

飯窪春菜（以下、飯窪）『恋は雨上がりのように』はアニメ化されていますけど、これは正真正銘の純愛モノ。女子高生がバイト先のファミレスの店長に恋するお話なんです。店長っていうのが、40代バツイチ子持ちで10円ハゲのある男性なんですけど。

中川翔子（以下、中川）枯れ専！

飯窪主人公の橘あきらちゃんはすごく無表情で、「好き」っていう気持ちや表情も店長にしか出さない。しかも目つきが悪くて、店長には睨まれてると思われちゃったりして。とにかく一途で、「店長の気持ちを、私だけが知っている」と思っているあきらちゃんがとっても可愛くて。なんてピュアな物語なんだろうと思って好きになりました。この作品が好きすぎて、写真集を出すときに彼女になりたくて（笑）、同じ制服を用意してもらったんです。あきらちゃんの通っている高校を「聖地巡礼」しながら撮影してもらいました。そのくらい好きな作品なんですよ。絵柄もちょっとレトロなタッチで親しみやすいですよね。

中川（マンガをパラパラとめくりながら）え？　この子、40代の店長の服の匂いを嗅いでるよ!?

飯窪そうなんです（笑）。それを見られてごまかしたりするあきらちゃんの仕草が、とっても可愛いんですよ。あきらちゃんは元々陸上部のエースだったんですけど、足を怪我したことで陸上を諦めて、バイトを始めた先で出会ったのが店長だったんです。その店長はというと、大学の頃からずっと小説を書きたいんですね。でも夢叶わずファミレスの店長をしていて、ちょっとくすぶっているところにあきらちゃんみたいなキラキラした子が現れる。彼女を通して自分の人生を見つめ直していくんですよね。純愛モノとしても素敵だし、夢にくすぶっている人が読んでも元気になるような、そんな作品です。

中川なんて読みたくなる語り口！　こんなに愛情を持って語ってもらえたら、きっとマンガもうれしいよね。

飯窪それと、去年映画化された『ひるなかの流星』の原作者でもあるやまもり三香先生の『椿町ロンリープラネット』。これは、お父さんの借金のため、1人で住み込みの家政婦のバイトを始める高校生、大野ふみちゃんの話です。彼女が住み込みで行った先が、若い小説家の男の人の家で。それがまた無愛想なんだけどイケメンの年上なんですよ。そういう2人が一つ屋根の下、一緒に暮らしていく中で、どんどん惹かれあっていくっていう。やまもり先生はコマ振りが秀逸なんです。次のページで絶対にインパクトのあるシーンやセリフがやってくる。

中川（読みながら）ああ、いいね！　イケメンの年上の小説家はいい。しかも長髪黒髪で、猫背？　ゆるゆるのTシャツとジーパンはヤバイ。すっごいタイプ！（笑）。栄養失調で倒れちゃう感じとか。

飯窪そう！ 放っておけないんです（笑）。『椿町ロンリープラネット』には、男の人の素敵なポイントが全部詰め込まれてる。ゴツゴツした指とか、鎖骨のラインとか、もう読んでてニヤニヤが止まらない。外じゃ絶対に読めなくて、家でいつも読みながら「ウホ！」とか言ってます（笑）。

中川この、髪を無造作に束ねているのとかもたまらないね！

飯窪無造作なんだけど、決して不潔じゃなくて。そこがいいんですよね、とっても魅力的。あと、設定としては、高校だけが舞台じゃないところも気に入っています。私もだんだん年を取って、高校生活から程遠くなってきたら、キラキラした学園モノがちょっと辛くなってきて（笑）。なので、こういう年上の男性が出てくる作品に惹かれるようになってきたっていうのはありますね。

中川はるなん、ピュアで可愛いんだけど、若干こじれ出してきてるね（笑）。それがまたいい塩梅だ。

飯窪（笑）。それから、『クジラの子らは砂上に歌う』。これも去年アニメ化されていますけど、クレパスのような画風がとっても素敵だったんですね。絵が優しいんです。「泥クジラ」という船の中で生活している人たちの話で、舞台が「砂の海」っていうファンタジーなんですけど、そこで描かれる日常はとてもリアルで淡々としているんですよね。そのギャップが不思議で惹かれるというか。

中川はるなんってさ、まだ評価が確立してない作品とか、アニメ化される前の無名の作品とかも見つけてくるじゃん。どうやって探してるの？　絵だけキレイでも、あんまり入らない作品もあったりするだろうし。いや、マンガってどれも素晴らしいんだけど、その中でも「うわあ！」って興奮する作品ばっかり選ぶじゃん。

飯窪最初は「表紙買い」というか、絵のタッチに惹かれて買っていますね。とりあえず3巻くらいまで読んでみて、自分の好みだったらその先も買い続けるし、そうじゃなかったら別の新しい作品を見つけます。あと、書店員さんのオススメとか、POPが飾られているマンガは気になりますね。めちゃめちゃ本を読んでいるであろう書店員さんがオススメなら、絶対面白いはず！って思うし。

中川マンガには課金を惜しまないことにしてるんだ。素晴らしいね。

飯窪でも、それは中川さんもそうだと思うから。

中川私は最近、書店に行けてなくてポチリ専門でさ。表紙見て「お！」と思ってパラパラめくってみて決める、ということが出来てない。レビューの評価が良いから買うってなると、まだ知られてない作品に出会うには一歩遅れちゃうんだよね。やっぱりポチリだけじゃなくて書店にも行こうって、今日は改めて思ったよ。

飯窪私、本棚に本が揃っていくのが楽しいんですよね。基本的にアナログ人間なので、電子書籍がよく分からないっていうのもありますけど（笑）。

中川あと、はるなんは常にポジティブに作品と向き合ってて、それも素晴らしいって思うんだけど、苦手な絵柄とかもあった？

飯窪小学生の頃に、漫☆画太郎先生の『地獄甲子園』を観て。あまりにも絵が怖くてトラウマみたいになってしまったことがあるんですよ（笑）。しばらく画太郎先生のマンガは手に取れなかったんですけど、ちょうど今『少年ジャンプ+』で『星の王子さま』が連載されていて、それを見たら星の王子さまがすごく可愛く見えたんですよ。「漫☆画太郎先生の絵、克服したかも」と思って、こないだ改めて『地獄甲子園』を読み直しました（笑）。だから、その年代によって感じ方とかも変わってくるかもしれないですよね。

中川戦っているんだね！　普段はどんな風にマンガを読んでいるの？

飯窪休日は基本的に外にお出かけすることが多いんですけど、「この日はマンガを読む日」と決める時もあって、そういう時は自分の本棚を眺めて「あ、今日はこれ読みたいな」っていうのを読み返したりします。

中川そうなんだ。この『とんがり帽子のアトリエ』は魔法使いの話なんだね。

飯窪そうなんです。私、魔法使いモノが好きなんですけど、『魔法使いの嫁』のヤマザキコレ先生が推薦帯で絶賛してたので読んでみました。絵柄がとっても丁寧で可愛らしくて気に入っているのもあるんですけど、「魔法をかけるってこういうことか！」という風に、今までの自分の中の「魔法使い論」が覆されたマンガなんですよね。ネタバレになっちゃうかもしれないので、あまり詳しくは言えないんですけど。

中川そして、最後に紹介してくれるのが……。

飯窪『女子高生に殺されたい』です。タイトル通り、「女子高生に殺されたい」と思っている高校教師の話で……。

中川ド変態だ。

飯窪死ぬ間際に快感を覚える男で、自分で首を絞めたりしてるド変態なんですけど、単に変態の願望を描くだけの話じゃないんです。自分が女子高生に殺されるまでの計画を、ものすごい長期に渡ったスケジュールで、超緻密に考えてるんですよ。

中川うキ、キモすぎる！（笑）

飯窪そう！　ただのド変態じゃなくて、スーパー超ド級の変態だったんです（笑）。でも、それがあまりにもよくできたお話なんですよ。ストーリーも構成も、たった2巻でこんなにまとめちゃうなんて、ものすごくハイレベルな作品だなって。それに私、古屋兎丸先生の描く少年少女の絵がとっても好きで、作品をたくさん読んでいるんです。『ライチ☆光クラブ』とか、『帝一の國』とか。

中川『ライチ☆光クラブ』、この間やっと読んだけど凄まじかった。こんな凄まじいマンガを読んでるはるなんも凄まじい。

飯窪（笑）。古屋兎丸先生の作品、色々ありますけど、最初に読むべき1冊を挙げるとしたら、私は『女子高生に殺されたい』ですね。

中川でもさ、はるなんこれだけマンガを色々読んで、しかもいろんな角度から楽しんでいるんだから、自分でも何か描けるんじゃない？

飯窪自分で何かを生み出すのは無理ですね……。ただ、私はファッションもすごく好きで、マンガを読んでてもそこに着目することが多くて。ハロー！プロジェクトのメンバーのことも、「あの子の足の、キュッとなっているところがいいな、そういうのを活かした洋服とか作れたらいいな」とか、そういう目で見ちゃうんですよね。

中川いつか洋服のデザインとかやったらいいかもね。そっかあ、はるなんにとってマンガっていいことずくめなんだね。

飯窪そうなんです！　いいことしかないですね。だから家にあるマンガは全部嫁入り道具として持って行くつもりです。それを受け入れてくれるお婿さんじゃないとダメだなって（笑）。ずっとマンガに囲まれて育ったから、マンガがない生活なんて考えられない。子供にも、私がママに教わったマンガからずっと教えて行きたいですね。

中川もう子孫のこと考えてるのか！（笑）　はるなんの子孫は生まれた時からこんなにたくさんのマンガがあるんだから、間違いなくハイパースペック子孫になるね！

飯窪あはは！

中川でもはるなんってさ、お正月もなくコンサートとか、ずっと忙しくしてるのに、休日ができるとすぐに誘ってくれるじゃん。行動力が溢れまくってる上にオシャレで。本来なら両立できないような宇宙を両方持って、そのバランスをコントロールしてる。きっと疲れることもあるはずなのに、いつもニコニコしてて……。しかもそのエネルギーがマンガから充電されてるなんて、本当に素敵だなあって思った。こうやって話してて、ますます好きになったよ。

飯窪わあ！　とってもうれしいです。

中川とりあえず今日は家に帰ったら、教えてもらったマンガを片っ端からポチって読み倒すね！

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