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今回は、8月1日から『青夏 きみに恋した30日』が全国順次公開予定の女優・葵わかなさんが登場。
「この役を演じるのが今のタイミングでよかった。半年も続いた『わろてんか』を経て、私自身の演じられる幅が、以前よりまちがいなく広がったと思うので。」
昨秋から半年にわたって放映された連続テレビ小説「わろてんか」では、少女から大人まで女性の一代記を。今春のドラマ「ブラックペアン」では医療の最前線で働く女性を演じた葵わかなさんがこの夏、スクリーンに登場!
映画『青夏 きみに恋した30日』では前の2作と一転、純粋な恋愛にあこがれる女子高生・理緒を演じることに。作品の見どころと、多忙な俳優業を通して得たものを教えていただきました!
― 一人の母にして、一座を切り盛りする社長でもある女性を演じた「わろてんか」のイメージが残っているせいだろうか。こんどは16歳の女子高生役だと聞くと、その振り幅の大きさに観る側のほうが少し驚いてしまいます。演じる側としては、どんな年頃がやりやすいのでしょうか。
年上になるより、自身の体験や記憶のある年下になるほうが、ずっとやりやすいのではと想像しますが。
「いえ、これがそうでもなくて、若返るほうが意外に難しいなと私は感じました。歳を重ねる役のときは、今の自分にはない要素を想像で付け加えていくわけですけど、年下になるときって、すでに知っている何かを、自分の中から引き算して取り払わなくちゃいけない。知ってしまったことを頭から消すのは、なかなかたいへんな作業です。
最初に台本を読み合わせたとき、監督からは『まだまだ、もっと幼くなってほしい』と言われました。引き算が足りなかったんですかね。そこから台本や原作を読み込んで、監督と話し合ったりしながら、16歳の理緒をつくっていきました」
―「理緒」はずいぶん奔放なキャラクターのようですが、演じやすい・演じづらい役柄というのはあるのでしょうか。
「たしかに理緒は、自分とかなり違う性格なんですよね。私はよくよく考えてから行動するタイプなのに、理緒は直感に基づいて、とにかくまずは動いてしまう。私の中にはそういう要素がなかったから、ちょっととまどいました。
でも、理緒のことを考えていると、どこかうらやましい気持ちも芽生えました。そのあたりを取っかかりにして、理緒の心情を追いかけていきました。すると、なんでこんな行動しちゃうの? というシーンでも、ああここは直感だから理由なんていらないんだなと理解できるようになりました。また別のシーンでは、理緒なりの理由がちゃんとあって筋が通ってるなどと、一つひとつ確認していきました。
ついあれこれ考えてしまう私としては、考えに考えを重ねていって、考えないで動く理緒をつくっていくという複雑な過程を経ていますね。
ただそれも最初だけで、自分と理緒がうまくなじんできたらもうだいじょうぶ。何も考えないまま役に入っていけるようになったのでよかったです」
―『青夏』は高校生による、ひと夏の恋愛ストーリー。透明感あふれる作品世界の住人になるために心がけたことは?
「『青夏』には原作漫画があって、これがまた完璧! と言いたくなるほどピュアなお話です。少女漫画のいいところは夢があって、しかもその夢が日常の中に潜んでいるところ。これを実写化して生身の人間が演じると、どうしても夢から現実の方向に近づきます。それでリアリティが増すのはいいんですが、同時にピュアな夢の部分を壊してしまわないようにしないといけない。そう思うんです。
どうしたら『青夏』がもともと持っているキラキラした〝すてきさ〞を表せるか、理緒の純粋さやまっすぐなところをそのまま演じられるか。そんなことを考えながらいつも撮影に臨んでいました。
この役を演じるのが今のタイミングでよかった。半年も続いた『わろてんか』を経て、私自身の演じられる幅が、以前よりまちがいなく広がったと思うので。ぜひどこまでも純粋な、だれもがキュンキュンしてしまう作品に浸ってみてください」
新刊のご紹介
葵わかな(あおい・わかな)
1998年神奈川県生まれ。2009 年女優デビュー。13年『陽だまりの彼女』で映画初出演。その他出演作多数。NHK連続テレビ小説「わろてんか」のヒロイン・てん役、TBS 日曜劇場「ブラックペアン」では新人看護師役を演じた。8月1日から『青夏 きみに恋した30日』が全国順次公開予定。
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- 【vol.21】安藤忠雄『仕事をつくる(私の履歴書)』(日本経済新聞出版社)
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