honto+インタビュー vol.33 阿部和重

注目作家や著名人に最新作やおすすめ本などを聞く『honto+インタビュー』。
今回は、『シンセミア』『ピストルズ』に続く神町トリロジー完結編
『オーガ(ニ)ズム』を上梓した阿部和重さんが登場。

『シンセミア』『ピストルズ』に続く神町トリロジー完結編『オーガ(ニ)ズム』を上梓した阿部和重さん。これは文学の可能性を追求した純文学作品なのか、それともエンターテイメントのスパイアクション小説なのか。阿部さんにお話を伺いました。

マーベル作品と比較して読んでもらえたらうれしいです。

 作家・阿部和重の自宅に血まみれの男が転がり込んできた。その男はCIAのケースオフィサーのラリー・タイテルバウムだった。ラリーと幼い息子を連れ、阿部和重は迫り来る核テロの危機から世界を救えるのか? 20年をかけて完成した神町トリロジー完結編は文学関係者に大きな衝撃をもって迎え入れられた。

「『シンセミア』『ピストルズ』『オーガ(ニ)ズム』、どの作品から読んでいただいてもかまいません。どの順番で読んでも楽しんでいただけると思います」

 純文学の作家というイメージの強い阿部さんだが、『オーガ(ニ)ズム』は、リーダビリティが高く、とても「笑える」と評判だ。

「デビュー作の『アメリカの夜』から、笑えるということは自分の身体感覚・日常感覚とマッチしていると思っていました。それに、私が小説を書くきっかけとなった『ドン・キホーテ』(セルバンテス)は小説の元祖のような作品ですが、本当におもしろくて笑える。それでいて多様な可能性を秘めている。私も、その『ドン・キホーテ』を目指して小説を書いているところがありますので、笑えるということはとても大事な要素だと考えています」

 地下爆発で国会議事堂が崩落したことにより、首都機能が移転され、新首都となった神町(じんまち)で、代々、「アヤメメソッド」と呼ばれる人心操作の秘術を扱う菖蒲家(あやめけ)。小説家の阿部和重はCIAケースオフィサーに菖蒲家へのスパイ活動を要請され、3歳の息子・映記(えいき)とともに、神町に向かう。神町にはアメリカ大統領バラク・オバマが来訪することになっていた。そこで作家は世界を破滅に向かわせる陰謀に直面する。まるでスパイもののハリウッド映画のようなストーリーだ。

「もちろん、文学として誰も達成していない挑戦をしたという感触はあります。ただ、物語は、まずおもしろいのが前提だと思っていますので、『オーガ(ニ)ズム』もエンターテイメントとして楽しんでいただけるはずだと考えております。また、『オーガ(ニ)ズム』は、ハリウッドのテレビドラマや映画に匹敵するものにしたいと思って書いていました。『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『トイ・ストーリー4』などと同じように楽しんでもらえたらうれしいです」

新刊のご紹介

オーガ(ニ)ズム

オーガ(ニ)ズム

阿部和重

出版社:文藝春秋

『シンセミア』『ピストルズ』に続く神町トリロジー完結編。作家、3歳児、CIAケースオフィサーによる破格のロードノベル!

著者プロフィール

阿部和重(あべ・かずしげ)

1968年山形県生まれ。「アメリカの夜」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。『無情の世界』で野間文芸新人賞、『シンセミア』で伊藤整文学賞・毎日出版文化賞、『グランド・フィナーレ』で芥川賞、『ピストルズ』で谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『インディヴィジュアル・プロジェクション』『ニッポニアニッポン』『ミステリアスセッティング』『クエーサーと13番目の柱』『Deluxe Edition』『キャプテンサンダーボルト』(伊坂幸太郎との共著)など。

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