honto+インタビュー vol.34 阿部智里

注目作家や著名人に最新作やおすすめ本などを聞く『honto+インタビュー』。
今回は、大人気「八咫烏シリーズ」約3年ぶりの新刊であり、
第2部となる『楽園の烏』刊行を記念して阿部智里さんが登場。

―第一部完結から様々な番外編を経て、満を持して発売された第二部(新刊)のこれからの見どころをお教えください。

第二部第一巻は、それまでのシリーズを知らずとも楽しめる形にしたつもりです。第一部からの読者さんはどうしてもキャラクターの「その後」が気になるかとは思いますが、まずは物語を楽しんで頂ければ幸いです。続きではどうしても第一部と第二部の間に何があったのか触れなければなりませんが、少なくとも第一部の貯金を消費するだけの第二部にはしないつもりです。新しい物語が、今後の見どころになってくれればいいなと思っています。

―全体の物語を構成し、各物語に伏線をちりばめていくといった展開で読み手を物語に引き込んでいく八咫烏シリーズですが、最終的な結末はもう阿部さんの中で出来上がっているのでしょうか。

一応着地点は見えていますが、どういった描き方にするかについては悩んでいます。全く同じ事象でも、視点人物や切り取り方によって見え方はまるで変わってくるので、一番物語の終わりとしてふさわしい形を模索している最中です。今回の新刊が三年も出せなかったのは(今思うと)そこが問題だったので、同じ穴に嵌りたくはないんですけど……どうなるかな……?

―独特の世界観、魅力的な登場人物やストーリーのアイデアは、どこから生まれてきているのでしょうか。

アイデアは「ひらめき」なので、私が今まで味わった全ての経験から、としか言いようがありません。しかし同時に、少しでも魅力的に感じてもらえるようにと常に四苦八苦しているので、そっちの作業部分のほうが作家としては大事だと思っています。

―小学生のころから物語を書き続け、八咫烏シリーズや『発現』など様々な作品を生み出してきた阿部さんにとって、物語を書き続ける原動力は何でしょうか。

色々な要素がありますが、根源的な部分の話をすると、自分の中から出て来た「ひらめき」があまりに面白かったので、どうにか他の人にも見てもらいたいという一心で、ここまで来たような気がします。また今回、三年ぶりに書き下ろしの初稿を編集さんに送信した瞬間は「やっと解放された! しばらく休みたい!」と思っていたはずなのですが、一日休んだら「何か書きたいなー」となっていました。そういう自分自身にちょっとびっくりしたのですが、「ゲラが戻って来るまで二週間あるなら、短いやつ書けるじゃん!」となったんです。そして、八咫烏シリーズとは全く関係ない短編『唯一の君』(NHK出版「本がひらく」で公開)を書かせて頂きました。なんというか、そういう本能みたいなものがあるんだなと気付かされたというか、結局はただ書くことが好きなだけなのかもしれないです。

新刊のご紹介

楽園の烏

楽園の烏

阿部智里

出版社:文藝春秋

シリーズ累計150万部突破!「八咫烏シリーズ」第2部、ついに刊行開始
「この山を売ってはならない理由が分かるまで、売ってはいけない」
資産家である養父の奇妙な遺言とともに、ある「山」の権利を相続した安原はじめ。その途端、彼のもとに「山を売ってほしい」という依頼が次々と舞い込み始める。この山には一体、何が隠されているのか? その答えを知っていると囁く美女に誘われ、山の内部に入ったはじめは、そこで信じられないものを目にする――。
舞台は東京から、八咫烏たちが住む異界「山内」へ。猿との大戦(『弥栄の烏』)より20年の時を経て、いま再び物語が動き始める。動乱の時代を生き抜いた八咫烏たちの今。そして新たなる世代の台頭。第1部以上のスケールを持っておくる傑作異世界ファンタジーです。

著者プロフィール

阿部智里(あべ・ちさと)

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から「八咫烏シリーズ」を書き続けている。19年『発現』(NHK出版)刊行。「八咫烏シリーズ」第2部『楽園の烏』(文藝春秋)刊行。松崎夏未氏が同シリーズをコミカライズし、『烏に単は似合わない』はWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)にて全四巻が完結、現在は『烏は主を選ばない』青年漫画誌「イブニング」(講談社)にて連載中。八咫烏シリーズ特設サイトはhttps://books.bunshun.jp/sp/karasu

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