紙の本
イイ題名です
2010/07/18 22:38
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶにゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名に惹かれて古本屋で購入した。奥付を見ると、「2010年3月10日 第1刷」となっている。数えてみると文庫化されてまだ4ヶ月しか経っていない。速いものである。ホントに欲しい本はなかなか古本の市場に出回らないのだが……。
白石一文という作家がいるということは知っていた。その著作のタイトルが僕の好みに一致していて興味深く感じていた。『私という運命について』『この世の全部を敵に回して』『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』等々。題名だけ眺めているとなぜかわくわくしてくるのである。
しかし、一冊も読んだことはない。内容が表題通りであるのなら、おそらく読み通すには少々うっとうしい筈だ。好きだからこそわかるのである。いま僕はこんな小説など読みたくはないよ、と。気にはなったが敬遠してきた。そういうわけだからこの作家が今年直木賞を受賞していたことも知らなかった。たぶん新聞記事で目にしていたとは思うが、一緒に受賞した佐々木譲のほうに意識を持って行かれ、この作家は心に残っていなかったのではないかと思う。申し訳ない。
さて、『永遠のとなり』。
お互いに、あっちゃん、せいちゃんと呼び合う、50間近の二人の中年男の友情の物語。舞台は二人のふるさと、博多。せいちゃんは、部下の自殺をひきがねにうつ病を患って、家族と離縁し、故郷に帰って療養する。幼なじみで親友のあっちゃんは、肺癌を患い、何度も結婚離婚を繰り返し、やはり故郷で暮らしている。せいちゃんはあっちゃんの奥さんから夫の不倫の相談を持ちかけられ、あっちゃんの不倫相手と一緒に食事をしながら、生きるということの意味を自分に問いかける。あっちゃんも、あっちゃんの奥さんも、あっちゃんの不倫相手も、ただ自分のためだけでなく、相手を思いやりながら、しかし、なかなかうまく行動できず、でも、自分なりに生きようとしている。せいちゃんは、そんな人たちの中で、自分を見いだそうとしている。
やはり、そうだ。
この本は、内省の書物である。この作家は内省の作家である。
乱暴なことを言えば、物語の内容などどうでもいいとさえ思う。
ヒトは、生きるということがどういうことであるかを考えることによって初めて人になり、どう生きるかということを考えることによって初めて人間として生きるのだ。そしてやはり、人間として生きるためには、人と自分との関係、自分と自分との関係を知ることが重要な課題となる。
せいちゃんは、精神科の病室の中で、自分の意外な内面の真実に突き当たる。
「私は、私という人間のことが本当に嫌いだったのである。」
そしてその自覚から、彼は自分なりの回復の道を歩き始める。
いま現在、おそらくは何万人もの人間が、自分のことを嫌ってなお生き続け、あるいは、自死の一歩手前で葛藤しながら血の涙を流しているに違いない。僕もまたその何万人かの一人であったし、いまもなおそうあり続けている。
人生は、永遠であろうか。
あるいは、僕たちは、永遠のとなりで、日々たゆまぬ苦労をし、永遠のとなりで死すべき運命しか持たないのだろうか。
でも、
永遠のとなりとは何だろう。
永遠のとなりもまた、
限りなく永遠なのではないだろうか。
紙の本
感動の人間物語です!
2016/02/19 08:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、二人の苦悩を背負った幼馴染が久しぶりに再会し、お互いにその苦しみを分かち合いがら助け合って生きていく感動の人間物語です。主人公のうちの一人は、うつ病を患い、会社も辞め、家庭も捨てた青野精一郎。もう一人は肺がんを発病し、助からないと苦しむ津田敦。この二人が一体どのように助け合い、生きていくのか?ぜひ、本書をご一読ください。
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×りかけの人間がいました。
おしまい。
まだ若い私にはよくお話がわからなかったよ。
それとも、認めたくなかったのかもしれない。
だから
とかげのしっぽのように
イメージを切り離した?
年をとってから読むべきかなぁと思った。
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まず、恋愛ものじゃないです。なんと言うか、ある程度年齢の行ったおじさんたちが人生について考えるお話です。だからと言って共感しにくいかって言うとそんな事なく、読んでて考えさせられる箇所や、気持ちが入り込む箇所もありです。特に、人生や命についてそれぞれの人たちが語るシーンは、どれも深いです。物語の舞台となっている場所が、僕が昔住んでた福岡市東区方面で、懐かしくもあり、場所とその頃の気持ちとがシンクロしてちょっと得した気分でした。
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永遠のとなり...読み終わったら題名の意味が分かりました。そんな人がいたらなぁって思う。人生に於けるさまざまな障害。それを乗り越えるためにみんな一生懸命生きている。でも不幸な人も沢山いる。[人間は生きたがる動物であると同時に死にたがる動物だ]印象に残る言葉でした。
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いい作品。
横浜まで在来線で行ったときの旅のお供。
白石一文作品はけっこう読んだけど、
この作品はとくに作者独特の濃い部分(よくも悪くも)が一番少ないかも。
この二人のやりとりもいい。
やっぱりいろいろ考えさせられます。
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中年のおじさん2人が主人公だからかな…、あんまり、おもしろくなかったです。
読破するのにずいぶん時間がかかってしまった。
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父に薦められて読みました。
確かに、心にしみる部分も何点かあったけど、印象としてはいまいちでした。すみません。
人生の再生ストーリーのようにあらすじでは書かれていましたが、私としては腑に落ちませんでした。
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この前、直木賞を受賞した白石さんの最新文庫化作品。
しかし、生きるってのはなんとも悲しいし、寂しいし、辛いし。
でも生きていくしかない。でもどうやって?
答えは見つからない。見つからないかもしれない。それでも見つけてみよう。となりで見ていてあげるから…。
そんな作品。初めて白石さんの作品を読んだが、是非今後も読書のローテ作家に入れて読んでいきたいと思えた。
人間てめちゃ弱いんだよ。
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俺にはこの小説を評価することができない。この小説の良さが分からなかったからだ。
読み終わった感想としては、なんというか、典型的な日本小説だな、という印象しかうけなかった。
中盤から主人公の現在の状況に対する説明が入ってやっと物語が引き締まってくるが、導入部で損をしている気がする。白石一文という作家のことをよく知らないので、最初の2、3行を読んだ段階では「なんだ、この低俗な導入は」と思いゴミ箱に捨てようかと思った。あの導入部はやっぱり損だと思う。中盤を最初に持っていって、導入部を中盤に持っていけば印象が変わったろうと思うのだけど、素人考えだろうか。
買って損したという気持ちはないし、考えさせられる内容ではあったけど、ストーリーやギミックがどうも典型的すぎて俺には良さがわかりませんでした。
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『永遠のとなり』(白石一文、2010年、文春文庫)
人生に挫折した時どうやって再生するのか、ということを描いた小説。再生物語らしく、内容は感動的です。愛の中に、友情の中に、「永遠のとなり」はあるのでした。
(2010年5月11日 大学院生)
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白石さんの作品は初めて読みました。
女性の挫折や夢を破れる時のケースとは違い、
男性はまずは仕事が第一でそれで夢を追いかけていたり、
うつ病になってしまった精一郎は故郷に戻ったことにより、
小学生以来からの親友の敦の訳の分からない行動に付き合うことになります。
でもそれが敦流のもてなしというか、こんな風に生きていけば良いかと
導いてくれる人でした。
無意味だと思う行動でもあっても、敦の中ではきちんとした道理もあったのですが、
その中でも敦は生きるということをいつも考えていました。
「生きているとは何なんだ」と言われたら何て答えたら良いんだろう?
でもこの中の登場人物のように「自分が死を目前にしていたら、
このまま死んでたまるか!」という気持ちになると思います。
普段生きることに対して真剣に向き合うことなんて滅多にないから。
何かのきっかけでもないと自分の生き方なんて考えないことが多いです。
でもいざ死が目前に迫ってきたら、ここから1日でも長く生きて伸びてやる!
ときっと思う事があると思います。
誠一郎のように精神的な病気というのは、怪我や感染病などと異なり
完治という判断が難しいけれど、また辛くなった時にそれを持ち堪えてという成功体験の積み重ねが回復の自信になるようだと誠一郎は語っていました。
こうゆう少しの変化でも前に進んでいるんだなと思いました。
私たちの欲望は細分化されて過剰なサービスが増えて満足な生活を
しているかのように見えるけれど、実はその一方では家族で仲良く暮らしたいとか
本当に困った時に誰かに助けて欲しいとか、人間というのは本当はサービスなんか欲しいわけではなくて心の支え、温かさが欲しいのかと思いました。
だから今のネット世界でも、見ず知らずの人達とツイッターなどで何かつぶやいてみて、それにコメントがきたら嬉しかったり、ブログでもコメントがきていたら嬉しかったりするからネットがどんどん広がっているのかと思いました。
人はやっぱり誰かのそばで繋がっていたい動物だと思います。
敦が最後に癌が発病した時に病床で語っていた話は凄く設得力がありました。
敦が今まで表には出さなかった本音が出ていて、
どんなに今まで自分の状況が苦しかったかってことを。
それを振り払うかのように生きてきたこと。
それを聞いた誠一郎も今までとは違う答えが見つかって、
それぞれぞれが未来への第一歩に繋がっていて、
本当に心から信頼できる親友というのは良いなと思えました。
舞台が博多なので博多弁が良い具合に出さえているので、
標準語よりも更に心に温かさが伝わりました。
挫折したり、夢が破れたり、落とし穴にはまったり、
人生で色々な困難な壁に突き当たることがあると
何でこんな人生なんか!なんて思い悩む事が多いと思います。
そんな時にどのように復活できるか、再起するのか、
もう一度人生をやり直そうと心から思える一冊だと思います。
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「鬱」という状態になる人を
過去や未来を見失ったのではなく、今を見失ったのだ
と表現したのは上手いと思った。
今生きる人の大多数が今を生きる事に疑問を抱かない。
死を意識して初めて生きたいたいと思う。
死が有るからこそ生があり、死の恐怖が生を生々しく感じさせる。
では、生とな何かと考えると
生とは未来でも過去でもなく、今なのだと思う。
だから今を見失った人は自分を見失い正常で居られなくなる。
今、生きている。
レビューになってないけど、そんなことを考えた。
白石さんの本はすごく好きだけど
この本はいまいち意図が分からなかった。
終盤、女性が都合良く体を求めてくるのは、白石さんの理想のシチュエーションなのかなあと。。
そんな都合良い女いるのかー?って感じだった。
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真実味のある、飾らない日記のような小説。
テーマが『人生』と重く、かつあまりにもリアルで遊びや飾りがないのだが、それでも息詰まるような重苦しさは、ない。
登場人物の輪郭が理屈っぽくなく、等身大でありきたり。だからこそ、目を伏せたくなるような内容・テーマの話でも読み進めることができる。納得的。
主人公とは(そして作者とも) かなり年の差があり、心境をそのまま受け止められたわけではなかったが、経験豊かな先輩にやさしく諭されているような気分になった。
それでも、キーセンテンスはかなりキツい。
『要するに、わしらは毎日生まれて毎日死によるんよ。明日生まれんのが死ぬていうことやろ。』
『私は、私という人間のことが本当に嫌いだったのである。そう気づいた瞬間、何だそうだったのか、とすべてが了解できる気がした。』
『おそらく人間は自らの孤独と向きあわなければ、自身の真価を見出だすことがむずかしい生き物なのだ』
作者の生の声だろう。でなければこれは出てこないと思う。
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誰もが一度は「何のために生きてるんだろう」「どうして私がこんな目にあわなくちゃいけないんだろう」とか考えると思う。
私も離婚して、検査入院で難病と診断された時「なんで私が?」と恨めしく思ったものだ。
「私だから与えられたんだろう」「私が選ばれたんだろう」「まだ試練が足りないんだろう」と考えた。
そして、なっちゃったものはしょうがない、あるがままを受け入れて毎日楽しく生きていこうと。
それでも、将来のことを考えた時不安だらけになる。
精一郎は部下の自殺をきっかけにうつ病になって、会社を辞め離婚をして故郷へ帰る。
退職金でローンを返し、残りの半分以上妻子に渡し、ぎりぎりの生活をしているのに、息子はさらに入学金、授業料を要求してくるし。
肺がんを発病した敦は、会社を畳んで郷里に帰り、離婚してはまた結婚を繰り返し、さらに困っている人をほっとけずに助けになろうとしている。
そんな中で二人は、それぞれの恐怖を抱えながら生きる意味を模索していく。
なんか、世の中って理不尽だなって思ってしまう。
いい人だから幸せな人生を送れて、悪い人が不幸になるってわけでもないし。
でも、生きていくしかないんだよね。
「わしらは毎日生まれて毎日死によるんよ。
明日生まれんのが死ぬていうことやろ」
敦の言葉が印象的。