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紙の本
わたしの常識あなたの非常識
2003/06/26 11:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるいは国家首脳が集って世界の行く末を決める会議で、あるいは世界的な企業が莫大な金額の取引をする時、のるかそるかを決めるのが通訳であることは珍しくない。重大なシーンのキーパーソンである通訳者は、責任の重さゆえに容赦なくのしかかるプレッシャーを笑い飛ばすために駄洒落と下ネタの達人となる!?
思わず爆笑してしまうエピソード満載の本書。しかしそのキモは、人と人とが何とかして意思疎通しよう、相互理解しようと願う切なる思いを誰よりもよく理解している米原氏が、他者を少しでも理解するために何が必要なのかを語る、その言葉である。
育った国や文化が違えば当然モノの見方も変わる。日本で当たり前であることが他国では通じないことはザラにあるだろう。世界各国の常識非常識にあまねく通じていれば話は少しは楽になるが、そんな芸当はとても不可能。ならば次善の策は何かというと、たぶん、自分の認識にできる限り余白を持つように心がける、ということなのだ。
自分の常識に凝り固まっていては、他の国や他者を理解することなどできない。柔軟な思考をし、認識に余白を持つためには批判的精神と複眼思考が欠かせない。そのふたつを獲得する非常に有効な手段が外国語の習得であるが、日本の現状ではそれが怪しくなっている。
英語一辺倒の「国際化」を憂う米原氏の言葉には、実に重い説得力がある。
紙の本
シモネッタに爆笑
2021/02/05 23:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雲絶間姫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一言で言うと、オーナペットもバター犬も目くそ鼻くそ、どっちも下ネタには変わりない。
紙の本
人と人とをつなぐ通訳者、その裏と表!?
2003/10/02 02:29
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山村まひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
このエッセイ集によると、同時通訳者は、通訳のときに言葉遊びや、掛詞、駄洒落を訳すのに四苦八苦し、苦しめられているクセに、なぜか駄洒落好きが多いのだだとか。
名通訳者の中には駄洒落の達人が多い、ということで、シモネッタ・ドッジ、ガセネッタ・ダジャーレで漫才コンビを組んで、一儲けできないものか…というようなあたりから、この本のタイトルがついたのでした。
通訳者ならでは、という駄洒落がたくさん登場し、思わず笑ってしまうようなエッセイが次々に登場します。
もともと、タイトルと、拾い読みした内容が面白かったので読み始めたこのエッセイ集ですが、読み終わってみると、印象に残っているのは「通訳者ならではの視点から眺めた日本語」「世界の中の日本」について、などでした。
米原さんご自身、小・中学校時代をプラハのソビエト学校で学ばれたそうで、日本に戻った時に、漢字を覚えるのに苦労されたとか。
世界のさまざまな国の、さまざまな言葉の中でも、日本語は文字の多さでは群を抜いていて「なぜ、こんなにたくさんの文字を覚えなければいけないのか」という疑問を持たれたことや、また反対に、日本語の文章は漢字が意味を持っているおかげで、一度覚えてしまえば断然早く読める、というようなことも、書かれています。
その国にしか存在しない言葉というのは、普段の生活の中ではあまり意識しないものですが、そういう日本語ならではの単語やことわざは、日本ならではの考え方や、日本人ならではの感じ方と通じているのだなあ…と、読みながらしみじみと感じました。
また、言葉は通じてこそ花、というか…どんなに美しく、正しい言葉も、相手の心に届かなければ意味を成さないのだ、ということ。
ある意味あたりまえなんだけれど、原点ですよね。
小・中学校時代を外国で暮らし「人間は、他者との意思疎通を求めてやまない動物なのだ」ということを身をもって体験された米原さん。
「両者の意思疎通は、わたしがいて初めて成立している」という誇りを持って、これからも人と人との掛け橋として、世界をつないで行って下さいね。
初出『うたたね日記』