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紙の本
忘れられていく時代へ
2014/10/20 21:53
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
人物伝を書くのにいろいろな人から松永安左衛門と言われて、その選択が当時斬新だったかよくわからないが、日本の電力業界の基礎を一人で作ったような豪腕、豪傑を引っ張り出したのは慧眼なのか、とにかく当時から知る人ぞ知るであったらしい。いろいろな商売に手を出して、福岡で石炭、市電、そして電気と広げたところで、これが成長産業だった。そして規模を拡大することで効率化出来ることを発見。吸収、合併を繰り返して、九州を手に収め、大阪、名古屋、東京にまで進出する。そこで止められはしたものの、放っておいたら手の付けられない独占企業になっていただろう。
ともかくその快進撃だけでもすごいのだ。その人間性が、豪快とか、内面は繊細とか、付け足しみたいなもの。不義理だの醜聞だのもこの勢いには関係ない。読みが鋭かったのか、時代の趨勢にマッチしたのか、ただ運が良かったというだけでは説明できないない、彼の事業を押し進めていたなにかを探るには紙数が少なく、しかし表からも裏からも、下世話なところまで含めて常に前向きである人物像を捉えているとは言えるだろう。
鳥尾夫人というのは、戦後GHQと深い繋がりを持ち、さまざまなスキャンダルを掻き立てられた人物らしいのだが、その経緯を丹念に整理して、決して悪人でもなければ疑惑の黒幕でもなかったということをレポートしている。いや、そうなのだが、これはみんなが忘れたスキャンダルを思い出させるのが目的であるような嫌らしさも醸し出している。上げてるんだか下げてるんだか、ある種のゴシップ記事の典型みたいなもので、ルポライターの元祖たる文体の駆使が「らしさ」である。
無論戦後の混乱期にはさまざまなことがあり、日本人だけでなくGHQにも米軍にも非難されるべき行為が多々あったわけだが、時間とともにそれらが風化するにまかせて、真相が闇に葬られていくのを怠惰に見送っていく人々こそが、実は梶山の糾弾しようとしている相手なのだろう。そしてGHQ相手に真相を明らかにさせることなど、どんな日本人にも出来ないことであり、読んだ誰もが落ち着かない気持ちにさせられるという効果を持っていそうだ。
義宮殿下、東条英機、正力松太郎、黒澤明、川上哲治、いずれも時の人であり、それらの人々の細かい噂話を繋いでいくのは、華やかな部分だけが強調されていく時間の流れに抗して、忘れては行けないことを記録していくことを目指しているかと思う。
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