紙の本
解散総選挙に先立ち・・・
2012/11/18 00:12
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投稿者:Fukusuke55 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ねじれ」のために、にっちもさっちも動かなかった赤字国債法案などが、するするっと可決し11月16日、あっという間に衆院が解散しました。
野田総理が党首討論で「解散」宣言したことを機に、2009年の政権交代を支持した一人の有権者として、この3年間の総括をしたいし、する責任があると思い手にしたのが本書。
本書では、自民党末期の小泉退陣から安倍・福田・麻生内閣に始まり、政権交代、鳩山内閣・菅内閣の混迷、大震災から野田政権へ、その間の凋落を時系列に、そして淡々と追っています。この淡々とした描写がなんともいいです。
終章では、民主主義の再生は可能か?という問いかけに各種の調査結果を踏まえて、代議制民主主義の機能不全をいかにして正常に回復するか、政治学者としての著者の面目躍如。具体的な提言がいくつか示されています。
全体の3/4を占める過去3年の総括を読みながら、「おお、そうだった、そうだった・・・。」と振りかえっていたのですが、徐々に無常感にとらわれてきました。われわれが付託した「民主党」の個々の政治家が、プロフェッショナルではない(むしろ素人)だとわかっていながら、あまりにナイーブに彼らの「清新さ」に賭けてしまったことを正直反省しました。
3年前に民主党のマニフェストをさっと一読した記憶があるのですが、そこに書かれていた政策を支持していたかというと決してそんなことはなくて、単に旧来のスキームを打破したかったことが、私の投票行動の原点でした。終章の「有権者の投票にいたる意識」を読むと、私のような有権者の日本中で積算され、あのようなムーブメントとなってしまったのだなぁと。自分たちも勘違いしていたし、民主党を勘違いさせてしまったなぁ・・・。
著者は、現在の選挙制度スキームでは、「民意」を反映した代議制民主主義は立ちいかないということを客観的に示した上で、マニフェストに明示した政策の「予算登録」を制度化すること、首相国民"推薦"制度など、「よりよい民主主義」のための提言をいくつも掲げています。
それぞれに、いくつものハードルがありそうではあるものの、ここまでしないと、「民意の反映」などはあり得ないなと思うのです。これは、「素人の意見をプロに押しつける、参加したがるB層」ということではなく、また「放置」、「諦観」とも違う民意の示し方です。
さすがに本日現在で14-15ある政党をひとつひとつ比較検討できないので、候補者個人の過去・現在・未来をきちんと見てみる必要ありかと思います。この3年間、「政権交代」が日本にとって何を意味していたのか・・・有権者の一人として再度、日本の現在と未来を付託する代理者を、自らの責任の下で投票したいと思います。
# 1ヵ月で新しい日本のリーダーが決まるのですが、一方で4年間かけて選び抜かれていくアメリカ大統領選挙とは候補者、有権者・・・本当に対照的だ・・・。候補者も成長する、有権者も成長する。
紙の本
私なりの政権交代の最終的総括です。一体いつまで日本政治の閉塞・漂流状態が続くのか?
2012/12/24 00:19
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投稿者:ミルシェ - この投稿者のレビュー一覧を見る
期待できそうな政党が見つかるまで投票は見送りたいと悩みましたがどこにも投票できませんでした。以前にレビュー執筆済みの「政権交代とは何だったのか 山口二郎 岩波書店」に続き、私の中での政権交代総括最終編です。更に踏み込んで、なぜ民主党政権は、正常に機能しなかったのかと、一体三年前の政権交代とは何だったのか?を、包括的に取り上げていて非常に良いと思います。また、この著者の立ち位置も各党を総括して眺め、評価している姿勢がいいと思います。政党の問題、小選挙区制の問題、そしていまだに自らで主体的に考え、成熟しているとはいえない有権者の問題など、総合的視野が良い。感じたのですが、これは私も「政権交代とは何だったのか」でも書いている通り、民主党自体にも、新しい政治を作っていくという、確固たるビジョン、戦略、覚悟がなかったのもありますが、有権者達にも希薄で、単に劣化が明らかになった自民党への嫌気だけで今度は民主党に入れてみるかという、あくまで傍観者的なお任せ的な意識でしかなく、いわば「疑似政権交代」・「お任せ政権交代」でしかなかったのでは?という虚しさが、強くなっています。これも書いている通り、民主党の理念・政策など甘っちょろい書生論くらいに思っていた人の方が多かったはず。漠然とした期待だけで民主党に政権交代をさせ、傍観していたような人達ばかりで、これでは政権交代したって、日本の政治が具体的に良くなる訳がないと書きました。やはり、民主党って、大半の有権者にとっては自民党の代用品だったん(自民党の劣化コピー、政権交代のための過渡政党でしかなかった事が露呈したし。)民主党の所属議員達も同様。現在でも野党議員のままで大臣になっていなかったら、有権者達にこんなに関心を持たれるようにならないままだったんだろうなと思われる、民主党の閣僚達も何人も見えますし。本人達は、実力だとか、やっと政策が理解してもらえたとか思っているのでしょうが。やはり自民党が劣化・凋落していった結果ではないかと。この国の有権者にとって政治家は、基本的に誰かの代用品なのでしょう。これは伊藤惇夫氏の「国家漂流」の日本人の政治リーダー軽視傾向と重なりますが。所詮、日本人って、政党側も有権者側も絶対にこの政治家こそがリーダーにというのがないんですよね。だからすぐ、政党も人気が落ち目になったと思ったら、すぐ取替、有権者もまるで流行りものみたいに、すぐに次から次へと目移りする。その時その時の、いわば旬の人気者になっている政治家達というだけで、漠然とした期待を抱くだけ。それで、別に自分達で積極的に彼らを政治家として育ていこうという努力は何もしない。主体的な応援もしない。何かをきっかけにすぐ冷める。私は積極的な期待を、民主党に抱いていたのですが。数年間の中で裏切られましたが。それから今回の自民党圧勝という選挙結果を知って、更に日本の政治に、閉塞感・絶望感が深まりました。三年で、また逆戻り?という思いです。この三年間、自民党だって、基本的に民主党の揚げ足取りばかりで、とても新たな政党として、反省すべき所は反省し、やるべき党内改革はやり、新たに生まれ変わったとは思えませんし、結局与党しかできない自民党と野党しかできない民主党、という感じですね。日本にはいつまで経っても、こんな政党達しかないのか?という絶望感が、募っています。二大政党制には、程遠い。もはや、政権交代すれば必ずしも政治が良くならないのは心に刻みますが。しかし、いつになったら日本の政治は新しい第一歩に進むのか?本当に期待できる政党の誕生は、難しいのでしょうか?
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歴史にイフは禁物だが、もし小泉が2005年から4年間首相をやっていたら、民主党の混迷はなかっただろう。
鳩山さんが一番の癌だな。引き際は良かったのに、引いてない。
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小泉政権から野田政権までを概説。特に目新しいことは書いてないけどわかりやすい。後半は選挙制度の話に逸れる。まもなく衆院選ですな。67点。
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「政権交代するほど良い政治」といわれて行われた九〇年代の政治改革。
その実態は、権力の担い手が変わっても政治が変わらなければ、有権者にとっては意味がないことを「民主党政権の三年間」を例にとって丁寧に記述したもの。本書の焦点は、選挙前に政治家が約束したことが選挙後に国会で遵守しているかどうかにある。その上で、終章でそれまでの記述を著者が得意とする計量分析でまとめている点を評価したい。また、今後、どのような改革を行えば、より良い政治を実現できるのかについて、著者自身の意見を提示している。さらに巻末では、読売、朝日、毎日の調査結果の一覧や民主党や政府の主要役職一覧を掲載し、今後の研究の素材も提供している。新書とは言え、内容は単行書と同等の読みでがあった。
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あくまでも日本政治に関する啓蒙書。民主党政権の政治について時系列を追って整理され、政権交代を考える上で選挙制度をどうすればよいかという議論について筆者独自の主張が展開されている。
民主党政権について、時系列を追って簡潔に整理されているところや終章の選挙制度をどうすべきかというところは一読の価値があると思うが、不満も少なからずある。第一に、書名『政権交代―民主党政権とは何であったのか』と内容が必ずしも一致していないと感じる点。第二に、本書冒頭で示されたクエスチョンと構成がキレイにシンクロしていない点である。もう少し筆者自身でクエスチョンを洗練させ、それに基づいて本書が記されていればよかったと思う。おそらく、上記の問題点は本書の構成についてあまり考えられていないから生じたのではないか。
この分野になじみのない読者なら読んでもいいかとは思うが、政治学を専門的にやってきた人からすると正直言って退屈な本であると思う。
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途中から、あまりの面白なさに飛ばし読み。
上っ面新聞の上っ面記事の羅列。
まったく魂が入っていない本で、時間の無駄でした(涙)。
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著者の小林良彰氏は国内外の大学で研究を続けている法学博士。現在は慶応大と横国大で政治学と公共政策論を担当。選挙を前に面白そうだと、日経新聞の広告を見て購入。
感想。面白い。時系列で整理してくれる良書。コメントがとても腹に落ちる。
備忘録。
・世論を著者がまとめるに、「政権交代は良かった」が「政権交代で政治が良くなった訳ではない」。
・それは、前回の衆議院選は、民主党が良いというのではなく、自民党には投票したくないという民意によるものだったから。
・エリート民主主義、参加型民主主義
・マスメディアは「強きを助け弱気を挫く」。それが視聴者受けする。小泉を助け安倍を挫く。
・過去に提出された法案の内訳は、衆法10%、参法5%、閣法85%。それほど官僚主体の政治。政治家主導を掲げた民主党は準備不足だった。
・TPP、原発等々、賛否両論あるが、小選挙区で選ばれた代議士は「地域の代表」であり、地域には賛否両論あり、民意を十分に反映できる仕組みなのだろうか。⇒なるほど。
・また有権者もどこまで代議士個人に注目して投票しているのか。終章にいろいろ検証が書かれているのだが、どの政党に属しているかが投票結果に大きく影響しているらしい。党議拘束というのもあるし。
面白い。読んで良かった。
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この本の価値は終章に尽きる。よく民主主義がうまくいっているとかいないとか言葉だけの議論はあるが、民主主義の機能をデータで測定する研究は独創的である。前半部の民主党政権に関する記述は、終章のケーススタディとして読めば良いのではないか。
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今になって本の表題の意味がわかった。有権者の目線で何故、民主党政権が誕生したのか、そしてマニフェストがどうして実現できていかなかったのかを冷静に綴り、読んでいて2009年以降の3年あまりを整理でき、面白かった。その上でどうすれば日本政治が良くなるのかについての提言を提示しており、頷けた。一読を勧めたい。
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初めての本格的政権交代が何故、期待通りに進まなかったのかを淡々と客観的に記録に書き、その上デモクラシーの機能を数値化して改革案を述べた本。新書ではあるが、通常の本一冊分の意味がある。
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民主党の政権交代の3年3ヶ月を単なる無駄ととらえるのか、それとも歴史の中のある意味必然と捉えるのか、アンケートなどの結果を生かしながら、新書の枠内にうまくまとめていると思った。
最初の150ページは、政権交代の小史である。小泉総理の郵政選挙から、安倍、福田、麻生総理から民主党への政権交代へは、自民党への懲罰的な選挙投票だったとしており、マニフェストに賛成したわけではないとしている。その上で、鳩山、菅、野田総理の実際の政治の中で、政策や方向がぶれていくさまが載っている。
その上で終章の50ページでは、選挙の有権者の投票の分析、また制度が必ずしも有効に作用していないことを挙げている。なかなか民主主義の制度は理念だけではうまくいかないものだと感じた。しかし、これが実際の現実だとも思う。
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選挙公約も国会での活動業績も有権者の投票行動には、影響を与えていない。所属政党と僅かに経歴が影響を与えている。
選挙公約の策定方法、候補者の予備選、選挙への公費助成のあり方、選挙制度などについての提言には、斬新な内容が多く再読の余地あり。
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民主党への政権交代前夜から、
民主党政権における政権運営を概説し、
日本の選挙制度の問題点を探る一冊。
語り口が非常にわかりやすく、民主党政権を振り返るのにちょうど良い。
また、有権者が選挙に際し何を見ているかを明らかにした上で、
その態度を受け入れた上で最適な選挙制度を提言する姿勢には
好感が持てた。
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今となっては空手形の別名扱いの「マニフェスト」だが、理念自体は決して否定されるものでないと思うし、考えてみれば公約のない選挙なんて怖くて参加できるものではない。公約の重要性は民主党政権の未熟さとは明確に切り離して冷静に議論すべき問題なのにと思っていたら、この本で見事に論じられていた。
著者によれば原因は小選挙区制度にある。対立候補が互いに多くの有権者の支持を得ようとして総花的な公約を提示する結果、どの政党も政策が似通ってしまう。そしていざ政権を担当し公約を実行しようとすると、有権者の一方の期待に反する行動を取らざるを得なくなるというもの。
また、有権者の側でも自らの意思が政治に反映されるという期待値が極めて低いため、次の選挙では政策ベースでなく単なる政党ベースや知名度ベースでの投票が行われ、勢い投票行動は現行政権への懲罰的な色彩を強く帯びることになる。
かくして有権者が選択したというわけでもなく、実現性も高いわけではない政策を掲げる政権が誕生する。そしての公約が破られ、懲罰的選挙が行われ・・・というvicious cycleが成立してしまうというわけだ。
政治改革が行われた90年代以降、殆どの選挙は政権担当政党の完敗(例外は小泉政権)であったことを考えると、小選挙区制に原因ありとの議論は非常に説得力がある。現在久し振りに安定的な政権を頂く日本だが、低学歴・低所得者が特に現行政権への不満を抱く傾向があることを考えると、何か一つのボタンの掛け違えで民主党政権のような混乱に陥らないとも限らない。今のうちに本書で検討されているような選挙制度改革を検討する必要があると強く思った。
気になるのは題名。主題は明らかに選挙制度にあるのに、これだと民主党政権の総点検のみが中心であるような誤解を与えてしまい、損だと思う。また終章の展開が素晴らしいだけに、中盤までの民主党クロニクルがやや冗長だと思った。