紙の本
祝・新装版刊行
2008/02/17 17:44
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまたまなのでしょうが、私がこの小説を読みなおした時にちょうど新装版が講談社文庫より刊行されました。自分の関心や評価が出版社と同期したようで、それはそれでうれしいのですが、まあ講談社には講談社の都合があったのでしょう。
というわけで、実は私はこの新装版を読んだわけではありません。本屋で立ち読みをしたところでは、活字が大きくなっていたくらいで、当然内容に変わりはないとは思います。なので、こちらに書評を書くことにしました。
一言で言ってしまえば、久しぶりに読んでも若さを感じる作品ですね。
もちろん昭和53年度の江戸川乱歩賞受賞作ですし、その当時にも最年少受賞者で、若者の魅力が評価されていたようにも覚えていますが、30年たっても決して古びることなく(多少小道具などに古さを感じざるを得ないところはありますが)、十分楽しめます。それとも、当時若者だった私だから、そう感じるのでしょうか。
語り口が若者であること、若者の風俗にからめた話であること、そして犯罪そのものも若者らしい、と言っては語弊がありますが、これこそ「ぼくらの時代」の小説だねと思った記憶が蘇ってきました。多少推理ものとしては無理があるように思えなくもないですが、きっと謎解きそのものよりも「時代」を描きたかったのではないかと過剰に深読みをして、許してしまいましょう。
若者はきっといつの時代も同じような思いを抱えながら生きているし、それから先の人生を生きていこうとしているのだと思うので、新装版を多くの人たちに読んでもらいたいですね。そして、ここに出てくる若者たちを「どう思う?」と聞いてみたく思います。
それに、これがあの栗本薫のデビュー作であるということからも、多くの人たちに読んでもらいたいと思ってしまいます。
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超人気アイドルのファンの女の子が、番組収録中のスタジオで謎の死を遂げる。アルバイトで現場にいた大学生の‘ぼくら’、薫、信、ヤスは、自慢の頭脳を使って事件を追いはじめる…
栗本薫の小説デビュー作。同名の作中人物が、自分が遭遇した事件の記録を綴るという形で始まるこの小説、‘革命児’らしい著者の挑戦が感じられて、興味深い。探偵役だったはずの彼らが、物語の最後に立つ場所は…鏡の迷宮を歩くような、めくるめくミステリー体験。かなりユニークな作品。
男子が髪伸ばして、ロックだかなんだか騒がしい音楽やって、まるで自分だけで生まれてきたような顔して、口ばっかり達者で…1960~70年代に青春期を迎えた人たちは、戦争を身近に体験した大人たちから、こんな呪詛をあたりまえのように聞かされたんだろう。そんな時代の匂いが、むっとするほど感じられる、そんな‘ぼくらの時代’。
自分が‘ぼくら’の年頃だった時期(ちょうどこの本を最初に読んだ時期)は、作品の時代から10数年は過ぎていて、そういう意味では少々古い印象を受けたけれど、いつの時代も「今時のわかいもんは…」という言葉を聞かされることに変わりなく、当時の自分も、そんなセリフばかり吐く大人たちをうっとうしく感じて、`ぼくら‘にリアルな親近感をもっていた、そんな気がする。
自分も微妙な齢になった今、読み返して思うのは、大人たちの気持ちの複雑さだ。「今時のわかいもんは」には、諦めてしまった夢、捨ててしまった憧れ、後悔、焦燥…そんな想いが練りこまれている、そんな風に見えてきた。大人たちの言葉を、ただ「うるさい」と感じて、聞き流すことしかできなかったけれど、その時の大人たちが若者だった時の話を、時々は聞いてみてもよかったなと、今更にして思ったりして。
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何とも懐かしい、というのが正直な感想であった。ここで描かれている風俗は、作品が書かれた当時はリアルタイムの現実だったと思うのだが、今となってはまさに時代劇である。テレビ局を主な舞台にしているけれど、あ、これはあの番組かな、なんていちいち思い当たる。登場人物のファッションも、雰囲気も。レコードが(CDでなく)モチーフのひとつになっているあたり、今の若い人が読もうとしたら、脚注が必要になるのではないだろうか。
しかし、登場人物、特に主人公の3人の思考パターンはまったく違和感のないものだった。作品中では世代の違いや対立がいろんな形で現れてくるし、それがその作品の多分中心なのだと思う。そしてこれはミステリの形を借りた、ひとつの世代の「存在宣言」のようなものなのだと思う。そしておそらく僕は、その世代のしっぽなのだろう。
今の大学生たちは、大人に対してどんな感覚を持っているのだろうか。この物語に登場する3人の大学生の思考や感覚に、共感することができるのだろうか。とても気になる。
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主人公たちもあい光彦の風貌や設定は時代が違っていて、どうにも想像がつかない。しかし世代間の対立や、大人に振り回される子供たちの訴えという軸には大いに共感出来る。視点がころころかわってしまうために感情移入しがたいが、それこそが狙いだったのだと納得もする。
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最初に読んだ感想としては、この作品を男性が書いていたとしたらすごく非難を浴びたかもしれないのではないかと感じました。ひょっとしたら 賞はもらわなかったかもしれないかもしれないと。
伊集院大介 もの を沢山読んで,栗本薫の愛好者になってから読みました。
「ぼくらの時代」を、栗本薫の作品として最初に読んでいたら,栗本薫の作品を読み進もうと思わなかったかもしれません。
この作品以外での登場人物としての栗本薫(男性)は,もっと透明感があり,素直だと思っていました。
「ぼくらの時代」でのような行動は取っていないような気がしました。
ネタばれになるのであまり理由は書けません。
栗本薫の愛好家以外の人の評価をぜひお聞きしたいと思います。
栗本薫の愛好家になってしまったので,ついつい擁護したくなっています。批判は抑えたくなっています。
栗本薫の初期の作品なので,難点があってあたりまえではあるので, 歴史的作品としての評価が高い。
賞を取った作品という意味が無かったら,評価は低いかもしれない。
栗本薫(登場人物)を男性として描写したのが作家栗本薫(女性)の原点であることがわかると、さまざまな謎が読み解けるだろう。
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こちらにレビューが書かれています。↓
http://booklog.jp/users/kaizen/archives/4062759330
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これもやはり中学時代に読んだ記憶が。
栗本薫作品はグインサーガが入口だったので、ファンタジー作家がミステリーも書けるなんて、器用な人だな、なんて生意気な感想を抱きながら読みました(笑)
推理小説もよく読みましたが、ミステリーマニアを自負するところまでは到っていないので、この作品がミステリーとしてどのような完成度(つまり謎と、それを解く為の鍵の配置、そしてトリックの着想や実現性)なのか、判断はつきません。
でも、物語としては(俺の判断基準は常にそこにあります)秀逸だと思います。
ミステリーの括りではあるけれど、これはジュヴナイル小説だと思います。
思春期の葛藤そのものが書きたかったんじゃないかな。
ぼくらシリーズは、そんな甘酸っぱさに満ちた作品です。
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乱歩賞第24回。読みやすいにょ☆アルキメデスより爽やか風味て感じ。
キャラがユーモラスで親しみやすい。若者たちの心の葛藤を描いて、理解に苦しむ大人たちがいてと共感する部分が多々あったかな。エンタメ的にもよくできている話。
非常に面白かった。
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文体も時代背景も80年代でちょっと古いかな、という印象ですが、 独特の感性が鋭く表現されていて、少し懐かしい気がしました。
彼女自身も音楽が好きだったのですね。
文中に登場する洋楽は、きっとこだわりが強いのでしょう。
それと、書きたいことがあとからあとから沸いて出てくるような
彼女の創作意欲が垣間見えるようで、ものすごいエネルギーを感じます。
もう少し元気でいてくれたら、違ったものが読めただろうに。
本当に惜しまれます。
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ミステリ色はわりと薄め。連続女子高生殺人事件に挑むロックバンド仲間の大学生3人組、を中心に据えた、まさに「ぼくらの時代」の物語。しかし、あの動機が表向きだけでも通ってしまうって凄い時代だと思う。。
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僕らの時代
栗本薫の代表作で、30年前の江戸川乱歩賞受賞作。
ロンゲ、バンド、アイドルといった昭和50年代の世俗が見えるミステリー作品。連続殺人事件をロックバンドのメンバーが探偵よろしく推理し何事件を解決していく?かに見えたが、バンドメンバーが殺されてしまう。そんな中でもしらけ世代の僕らは、無感動を装いながら大人たちを煙に巻いていく。
しかし最後の結末は、実は連続殺人事件ではなく、連続自殺事件であり、僕らはその自殺にストーリーを持たせる役目だった!?
途中から以前読んだことがあることを思い出した。
そうだよね。栗本薫これだけ読んでるんだから。
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最初は、軽佻浮薄な70年代の風刺小説のようでした。文章のタッチも軽いので、殺人事件を扱ったミステリにしては緊張感がありません。しかしながら、読後には若者たちの苦悩を描いていたことが分かります。著者の瑞々しいデビュー作です。
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あるTV局で起こったあるアイドルのまわりで起きた連続殺人事件のお話です。
この話を支えてるのは、昔かたぎの警察といまどきのロックな奴ら。
付属の赤川次郎と栗本さんの対談にもあったけど、
昔の大江健三郎の時代だったら『われらの時代』だったのに、これは30年前に出版された当時は『ぼくらの時代』にタイトルが変わった。
たぶん、30年後の今、こういう推理小説を書いたら『ウチらの時代』になるのかな~?
なーんて考えたりしちゃう。。。
この30年前から援助交際なんてあったんだぁ~。
でもその当時は何千円の単位だったんだな~とかリアルに思ったりして。。。
話自体は古くないよね~。っていうか今でも全然変わってない。
そんな社会を背景に書いてあるとこがちょっと悲しかったりする。。。
結末は、ちょっと意外な展開でビックリしたけど、まぁ普通の推理小説だったかな。。。?
栗本さんは、中島梓で文壇デビューしたんだけど、この本の主人公がこの本の書き手で栗本薫ってんで、それから栗本薫と中島梓と使い分けていろいろマルチに活躍しなさった偉い人だったのね~。
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頻出するサブカルチャーや固有名詞は古過ぎますが、時代背景が分かるのでこれはこれで良いかなと思いました。ただ、登場人物たちの語り口調やノリは好ましいものではなく、感情移入できませんでした。
前半の事件の真相は意外ではありましたが、あまり正々堂々とした答えではなかったので、やや期待外れでしたし、後半の密室も予定調和で、本格推理小説としてはイマイチかなと思いました。
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図書館で。
栗本薫のミステリ…というか現代ものはどうやら合わなそうだな… もうやめておこう…
というわけで80年代の無気力・何考えてんだかワカンネー系若者の象徴が長髪だったんだなぁ…と悟った感じです。そしてそんな彼らもきっと今頃は中年のイイおじさんになっていて「近頃の若いもんは」とか「俺たちの頃の方がまだマシだった」なんて言いあってるんだろうな。歴史は繰り返す。
それにしてもロックバンドで「ポーの一族」って。それだけでちょっと笑っちゃうんですがどうなんでしょうか。ポーの一族だったらゴスロリ系とかじゃないのか?メタルとかもしくはクラシック寄りのテクノとか。外見にもこだわっていて、化粧とかして、衣装にも凝ってる感じの!ジーパンにTシャツで伸ばしただけの長髪がそんなバンド名にしたらファンに怒られないのか?ダメだろ~それは~(笑)どうせ少女漫画で付けるなら…なんだろ…ホット・ロード辺りが合うような?…でも暴走族は違うか。サジタリウスぐらいでいいんじゃないのか?(少女漫画じゃないか)
謎解き辺りはふぅん、という感じで読み終わりました。昔のテレビ番組ってあんな感じだったんだなぁ~ ドラムの子の殺人はとばっちり感があって可哀想な限りですが大人はわかってくれないから俺たちが…といきがってる辺りで彼らも大人を軽視したんだから手痛すぎるしっぺ返しを受けた、という事なのかも。
それにしても一番の被害者は歌手の彼なんじゃなかろうか。目の前で少女が死んでいくのを見てる訳だし。