- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
5 件中 1 件~ 5 件を表示 |
紙の本
居眠り同心捕物帳
2011/03/07 14:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
居眠り同心捕物帳である。念願かなって例繰方から定廻りになった藤木紋蔵の活躍がうれしい。定廻りや臨時廻りの「御成先着流し御免」についての説明はこれまでにも何度もあったが、今回は、定廻りになってまもない紋蔵がそのいでたちに気恥ずかしさを覚えるところから始まっている。
定廻りになって付け届けがふえ、収入が倍増して暮らしが豊かになったのはいいが、岡っ引き十数人とその手先合わせて数十人を抱えて、彼らのなかには破落戸あがりも多く、全員に悪さをさせずに食わせるように気を配らなければならないとか、寒風吹きすさぶときもかんかん日照りのときも外回りに出なければならず、毎月決まった休みがとれるわけでもないとか、定廻りになってみてわかる苦労もある。さすがに外を歩き廻っているときには居眠りをしないが、捕えた悪者を番屋で取り調べているときには居眠りをすることもあるとは、さすがというか、器用というか……。
>「旦那はしょっちゅう居眠りをなさってる。おれは一睡もさせてもらってねえ。不公平じゃねえか」
二晩と二日続けて無宿人の角次の取り調べをしたときには、こんなことを言われている。紋蔵は、拷問はもちろん、「石抱き」もさせないで動かぬ証拠と優れた推理で罪状を認めさせる同心として名を挙げたいという野心を持っていて、そのために余計に苦労している。
「石抱き」も拷問じゃないか、と現代の私は思うのだが、当時の役人は区別していたという。もっとも、「石抱き」もなるべくしないほうがいいとは、されていたそうだ。
『時の物売りと卵の値』や『坊主びっくり貂の皮』は、特に、紋蔵の推理が冴えていておもしろい。辣腕の寺社奉行脇坂中務大輔(脇坂安董)が、讒言によって一度は辞任させられたが数年後に再登用されて、「また出たと 坊主びっくり 貂の皮」という川柳が詠まれたという、史実の裏に、紋蔵の活躍があったとは!幕府の小判改鋳に乗じて贋造貨幣が出回った史実とも絡めて、紋蔵と岡っ引きたちとのチームプレーがぴたりと決まって気持ちが良かった。
紋蔵は部下が失敗したときにはちゃんと自分が責任をとり、一方で上司からは相変わらず無理難題を押し付けられ、中間管理職の悲哀と重圧によく耐えて、しぶとくがんばっている。定廻りとしての仕事に例繰方時代の経験を生かしているのはいいのだが、例繰方からも、手伝いを頼まれて出向いていき、ここで鮮やかに必要な資料を探し出したりするとまた例繰方に戻されるかもしれないし、同僚の顔をつぶしてもいけないからと、わざと資料を見つけるのを遅らせたりするのだが……。
『大坪本流馬術達者のしくじり』は、酔っ払い運転ならぬ酔っ払い乗馬もだめですよ、と言いたくなるような話だ。もっとも、酔っても乗馬の技術は確かだったのだが、酒乱とまではいかないものの狼藉を働いて人を失明させる。とんでもない話だ。だが、この馬術達者の旗本は、なかなか、好感のもてる人物だ。また、彼とやりあった火消したちや、町の顔役も、気分のいい人物で、この短編は、気に入っている。
小説のなかでは説明されていないが、「大坪本流」などの、江戸時代に花開いた日本の馬術は、今はほとんど残っていないという。現在、流鏑馬などの行事で使われる馬術も、西洋馬術だそうである。日本では蹄鉄を使わなかったそうだ。また、去勢もしなかったので、暴れ馬には困ったという。『そそっかしい御武家』は、暴れ馬が建物の二階に駆け上がる、という、有り得ないような騒動が起こり、その影で犯罪がおこなわれていて、頑迷でずうずうしい馬子が捜査を撹乱する。腹の立つ田舎者だが、ずぶとく、したたかに立ち回り、最後には、あっぱれと言ってもいいような気もしないでもない。
『密約』にもあった、吹上上聴が、またも、おこなわれることになる。ここでまた、紋蔵が活躍する。御蔭で御奉行は将軍のおぼえもめでたく、紋蔵は、かつての例繰方の主としても、定廻りとしても、面目を施すのだが……。
やはり、例繰方に紋蔵がいないと困る、また、第二の紋蔵を育てたい、などの理由で、安藤覚左衛門や沢田六平が、紋蔵の良き理解者である蜂屋鉄五郎に、引導を渡してやってくれ、と迫る。
蜂屋鉄五郎が紋蔵を家に招き、酒食でもてなそうとしたとき、紋蔵も、これから何を言われるのか、悟っていた。お互い、相手の気持ちを思い遣って、苦い酒を、気持ちよく楽しそうに飲んだ、というのが、泣かせる。
紋蔵は、後輩が、紋蔵自身が手をつけていた事件を引き継いで手柄を挙げるのを気持ち良く受け止める。居眠り紋蔵は、地味に(ここ重要!)、いい男だよね……。
紙の本
念願の定回りとなった紋蔵が父譲りの手腕で活躍する
2010/01/10 19:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
居眠り紋蔵シリーズ第七弾。
紋蔵が念願の定廻りになっての作品で、期待を持ってページをめくった。
しかし、読み始めて面白みが薄くなっていることに気づいた。
ほとんどの内容は、定廻りとなった紋蔵が、日々岡っ引きが持ってくる小さい事件に追いまくられながら、大きな事件に出会い解決していくという、捕物帳的な色合いが強くなっている。
そのため、今まで紋蔵の世界を作っていた、紋蔵の家族や無理な注文を押し付ける上司達、そして大竹金吾や捨吉の出番は少なくなり、ホームドラマ的な要素がなくなったことが、面白みが薄くなってしまった原因ではないかと思う。
変わり種の事件は相変わらず面白く、事件はどう落ち着き先が非常に気になるものの、読み進めて行くにしたがって、今までの面白さが恋しくなる。
果たして今までの面白さを恋しく思う気持ちは、全8話のうち6話『そそっかしい武家』までだった。
7話に新しい展開の芽が顔を出し、8話で花が咲く。
シリーズ第八弾が楽しみだ。
5 件中 1 件~ 5 件を表示 |