電子書籍
シリーズ探偵の前に現れるシリーズ犯人
2022/07/21 11:22
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸川乱歩的な意匠を現代ミステリーに纏わせてきた著者の次なる試みは、蜘蛛男(のような犯罪を楽しむ残虐な殺人者)+二十面相(のような名探偵の好敵手たるシリーズキャラクター)。名探偵二階堂蘭子の宿敵として魔王ラビリンスなる怪犯罪者が登場します。
長めの短編2篇収録の本書は、蘭子とラビリンスの戦いの開幕ベル。著者得意の不可能犯罪の謎解きをを楽しみつつ、来たる本格的な名探偵と、魔王と称される殺人鬼の戦いへと高まるムードを堪能しましょう。
紙の本
本格探偵小説を読みたいなら
2004/07/04 19:17
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投稿者:エット - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔ながらの英米の黄金時代の本格探偵小説が大好きな方ならば、お勧めします。
かって1980年代始め頃、本格探偵小説を読もうとすると過去の遺産を漁るしかありませんでした。もう新しい書き手は現われず、ほそぼそと古本めぐりをするか、装いの替わった、何処にでもいそうな平凡な登場人物が事件を解決する、これが進化というならば黄金時代の本格探偵小説から比べてずいぶん遠くへいってしまった作品を読んで我慢するような半ばあきらめのような読書時代でした。
そこへ次々と新本格の方々が作品を書くようになって、いままで翻訳されてなかった、黄金時代の探偵小説も翻訳され読める良い時代になりました。
昔からの探偵小説ファンは、本格風の作品が読みたい訳ではありません。
頭の痛くなるような複雑な構成、ワクワクするような犯罪現場を表す見取り図、アニメ絵で表されるようなちゃちなものでない読者の想像力でどのようにもふくれあがることのできる理想的な、知的遊戯としての名探偵、それに対抗できる悪意、犯罪。
こうした物が読みたいのでしたら、この作品はおすすめします。
今、本格物が流行っているからといって密室、名探偵といったキーワードのみ使った作品は歓迎しません。
オススメしてるのに★★★なのは、1話目が面白くて、だんだん尻つぼみといった感なのですが、このシリーズの序段に過ぎないようで次回に期待してです。
紙の本
「きみとぼく」すら書けていない
2004/06/27 20:36
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投稿者:マルガレーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
二階堂黎人といえば、西尾維新や佐藤友哉などのメフィスト賞系を(というより、今では「ファウスト」系か)、「きみとぼく」本格と批判した人。西尾や佐藤の小説は、ミステリの骨格が弱く、「きみとぼく」の狭い範囲でしか世界を書いていない、と。なるほど、二階堂は新本格(死語?)の中ではトリック派だから、批判の前段を言う資格はある。でも、後段の狭い世界云々はどうか? 二階堂は「きみとぼく」派に対し、彼らも経験を積めば世界が広がるだろう、みたいなことを先輩風吹かせて語っていた(『猪苗代マジック』巻末)。しかし、ご本人は相変わらず、社会性のない絵空事を書き続け、古ぼけた様式美をなぞるだけ。二階堂は『人狼城の恐怖』で、本格ミステリの「長さ」の記録は打ち立てた。その努力は認めよう。だが、ミステリの「世界」、小説の「世界」は全然広げていないし、この「世界」を活写してもいない。
『悪魔のラビリンス』も、怪人対名探偵の古典的パターンをなぞったもので、昔の映画館のペンキ絵看板でも見せられているみたい。登場人物がみんなブリキ人形みたいで、薄っぺらい。それに比べ、西尾や佐藤は、ミステリ云々はべつにして、どんなに奇天烈な設定でも「きみとぼく」の、ある種の心理的なリアリティは生々しく書けている。つまり、二階堂は「きみとぼく」の狭い心理的世界すら書けていない。二階堂には、自分のクローンみたいな作家(加賀美雅之)を後押しして味方作りに励むよりも、「きみとぼく」の心理描写から勉強し直して欲しい。
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実は昔、二階堂蘭子シリーズは苦手だった。それが「人狼城の恐怖」を読んで、すっかり好きになって、その後読み残してたシリーズを読んだらさらに面白く読めたのだった。で、この本は、「人狼城」の事件後行方不明になった二階堂蘭子の「人狼城」以前の事件という設定になっている。で、登場するのは今後、明智小五郎に対する二十面相のように、二階堂蘭子のライバルになるべく作られた「魔王ラビリンス」の登場編。魔王ラビリンスが仕掛けた二つの事件を蘭子はあっさり解決するけど、魔王ラビリンスの正体は不明のまま、という形で終わる。その次の「魔術王事件」(講談社ノベルズ、1800円)の前振りかも知れない。「魔術王事件」は読み始めたばかりで、まだ分からないが、ラビリンスの名前はやたら出てくるので、これ読んで「魔術王事件」に行くというのは正解だろう。で、この「悪魔のラビリンス」なのだが、作中に出てくる迷路も自作かなあ、ちょっと凄い。事件も古典的なトリックのようで、ちゃんと新しく、でも昭和40年代という時代背景とマッチしたものになってるというあたりの、ムード作りとトリックの両方に気を遣った構成が好き。異様に簡単に謎を解いていく蘭子の描き方も良いなあ。二階堂黎人の作品の中では、軽めで読みやすいので、ここから入るというのもアリかも。
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人狼城から3年、二階堂蘭子復活!?かと思いきや、過去の話。名探偵には宿命のライバルありということで、そのライバル登場。犯人からの警告や密室殺人におびただしい死体と、本格ミステリ要素満載だけど、密室トリックが予想内だったのが残念。
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二階堂蘭子シリーズ第6作。人狼城で行方不明になった蘭子が再登場!と思ったら、人狼城前の事件でした。ホームズvsモリアーティ教授とか、明智小五郎vs怪人二十面相など名探偵に宿敵は付き物。蘭子の宿敵となるラビリンスが登場し、次の魔術王事件の布石になっている様子。こういう立場の本なので、事件は解決しても犯人の正体は分からず捕まらずなので、ちょっとすっきり感に欠けるが、この著者はやっぱり蘭子モノが一番面白い。
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魔王ラビリンス対二階堂蘭子 対決シリーズ。メフィスト連載時から読んでいた。昔の明智小五郎シリーズを彷彿させる名探偵対怪人もの
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『寝台特急〈あさかぜ〉の神秘』
二階堂蘭子の元に届けられたラビリンスからの挑戦。寝台特急〈あさかぜ〉で殺害された上野リリカ。ラビリンスから命を狙われていた〈悪魔サタン〉。寝台特急の密室の謎。
『ガラスの家の秘密』
死体の見つかった四方城家の屋敷。ミイラ化した4つの遺体も謎。ラビリンスに囚われ脱出した柴田有作。四方城春近、晋太郎親子の殺害遺体。男色の気のあった晋太郎。密室のガラスの家の殺人。
2010年8月8日再読
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なんかおしまいまでグッと来ないなあ・・・と思っていたら、
魔術王事件への布石だったのね・・・どうりで・・・。
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二階堂蘭子シリーズ。
魔王ラビリンスVS二階堂蘭子シリーズの一作目。
名探偵にライバルは付き物ですが、
かなり残忍非道なライバルのようです。
これからの展開がまた楽しみ??
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シャーロック・ホームズに憧れた著者が書いた作品。
その想いの強さに打ちひしがれ、私は半分までしか読めなかった。
というのも、
・ワトソン役が、しょうもないことを数十行に渡って大袈裟に述べ、ページ数を稼ぐという大役を果たしている。
・ホームズ役は、ツンデレ嬢。
・どうやらサーカス団の人間は何でもできるらしい。
余りにシャーロック・ホームズへの憧れが強過ぎて
却って侮辱的な作品になってしまったようだ。
決して著者は悪気があったわけではないことを信じたい。
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名探偵二階堂蘭子と魔王ラビリンスの死闘を描く連作短編。といっても、事実上2編だし、かなり強いつながりがある。ただし、それぞれの短編で示される謎は解決するが、全体を貫くいくつかの謎はまったく解決していないし、これからも続いていくことが予想される。というか、そうでなければ怒る。
トリックは鮮やか。でも、やや小粒な印象。話の内容も、なんか能書きだけが派手で、あんがいちまちましているような感じがする。それもこれも、前に読んだ「人狼城」があらゆる意味で派手だったからだろう。ちょっと物足りない気分のまま読み終えた。
2004/8/14
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二階堂は完成度が高く読みやすい。
「殺人の美学」魔王ラビリンスの登場。
彼と蘭子との対決はまだまだ続く。完。
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再読。蘭子シリーズ11作目。
魔王ラビリンスがとうとう登場。
作中での時間軸は4部作よりも前にあたる。
探偵VS怪人の構図は、乱歩を読みあさって育った私には懐かしさを覚える嬉しいもの。
物語的には蘭子VSラビリンスの、プロローグ的位置付けでしょうね。
謎を残して終わるので続きもこのまま読み進めたいところですが、『双面獣~』が相当グロかった記憶があるので、ちょっと小休止。
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ー この日を境に、私たちのまわりでは、世界はすっかり様を変えてしまった。それまでの長い間、私の周囲は明るい太陽に照らされた楽園だった。それが突然、真っ暗な地獄風景へと変貌したのである。暗闇の世界に隠れ潜んでいた巨大な魔物が飢えた野獣のように獲物を求め、我々の世界を我が物顔で闊歩し始めたのだった。
あれから長い年月を経て一つ二つの事情が変わり、一部の条件も揃って、今ようやく、私はこの事件について発表することを許された。本当のことを言うと、私はこの陰惨な事件を積極的に語りたいとは思わない。しかし、真実はいつも一つである。それを糊塗することはできないし、私にはその権利もない。世の中の人間は、事実を知る必要がある。あの頃、日本人の一人一人が、《魔王ラビリンス》の餌食になる可能性があったというそれだけの事実からしてもだ。 ー
大時代的な言い回しやセリフ、思わせぶりな表現、二階堂蘭子のいかにもな振る舞い、探偵小説のガジェットてんこ盛りの名作。
《魔王ラビリンス》との死闘を描く冒険活劇の第一作目。
続きが気になる。
江戸川乱歩リスペクトの作風でこれはこれで面白い。