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みんなのレビュー59件

みんなの評価3.9

評価内訳

59 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

貧困スパイラル

2009/11/18 04:21

17人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:marekuro - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書はタイトルが示すように高校中退のドキュメントです。
本書に取り上げられる事例の多くは、読み進めるにつれて
アメリカのスラム街の事を書いているんじゃないだろうか?
と思うような事例が出てきます。思わず、我が目を疑った事も
1度や2度ではありません。

いくつかの例を挙げますと
入学式だけ出て中退する生徒。九九が出来ない高校生。
55の次の数を数えれない生徒。
毎日、児童擁護施設を食堂代わりにしている生徒。
中学入学時から性行動が活発で妊娠中絶を繰り返す生徒。

貧困や10代の性については良く耳に目にしますが
さすがに九九ができないというのにはビックリしました。
例えばそれがLD(学習障害)からきているものならば
理解が出来ますが、単に勉強をする環境になく
九九ができない生徒がいるのだそうです。
とある高校で、数を数えられない生徒の割合は
入学した生徒の10%にものぼったそうです。
今一度、確認しますが上記の例は高校での事例です。

そして、そのような生徒達は入学してもすぐに中退となります。
理由は様々で、大きく分けると以下のようになるそうです。
    1)低学力
    2)学習意欲の欠如
    3)基本的な生活習慣の訓練(しつけ)がされていない
    4)人間関係の未成熟
    5)アディクション(物、動物、性行動への依存)
    6)親からのDV ネグレクト
    7)貧困層の囲い込み政策
    8)やめさせたがる教師たちのそんざい
    (p168-169より抜粋)

これらの要因が複雑に絡み合い中退するということでした。
中退後の彼(彼女)らは、働くことになりますが
就職の条件が「高卒以上」を求められる場面が多くなり
むしろ、高校在学中よりも厳しい条件で働くことになるという事でした。
当然、収入は少なく身分は不安定な非正規雇用になりがちで
労働環境も劣悪な環境で働かざるおえないそうです。

加えて、活発だけど知識の無い性行動により早くに親になります。
当然ながら経済力もなく、お金だけではない親としての機能も弱い
彼(彼女)ら。満足な家庭を築けません。
それによって、ふたたび貧困家庭を再生産させるというのです。
極端な言い方をしたのなら、九九の出来ない親の子供が九九の
出来ないまま育っていくという事でしょう。
そしてそれは確実に社会的に不利な状況を招きます。

著者は高校中退の原因の根本には貧困があると
述べています。そして貧困が故に高校を中退し
さらに貧困になるという事態を貧困スパイラルと表現します。

このような現実に対して著者からの提案は以下の通りです。
    1)高校教育の義務教育化と授業料の無償化
    2)高校教育の中身を普通教育から職業教育中心へ
    3)貧困家庭に対する経済的支援を厚くする。特に児童手当
    4)当面、小中学校の就学援助制度と高校の授業料減免制度の充実
    (p223-224 から一部改変して抜粋)

この提案を多くの人の目につくところに提示したなら
きっと議論を呼ぶことでしょう。
一方で上記提案の是非は別にしても、やはりこのような事態は
ひとごとではありません。


評者は福祉専門職で一児の父でもあります。
いち専門職として、その仕事の中で貧困によって困窮しているケースに出会う
ことも稀ではありません。
最近出会った極端な事例だと、お金はないが生活保護という制度も
知らない。だけどお腹はすくから、半年間1日1食を食パンと牛乳で過ごしていた
という事例がありました。
この事例においては、そもそも生活保護という制度にアクセスできない
状態への介入でした。
いよいよ生活に窮したら生活保護を受けられるという事すら知らなかったのです。
この家庭にも就学期の児童がいました。
あの子の将来が心配です。
そして、あの子が将来築く家庭が心配でもあります。
また、自分自身は一児の父として身の引き締まる思いでした。

このようにリアルでも本書で述べられているような事例に出会うことがある
評者ですが、著者の提案する内容のほんの一部に疑問があります。
それは、経済的支援を厚くするという箇所です。

もちろん経済的支援を厚くする必要はあります。
ですが、現状では貧困家庭に支援を厚くしても
お金の消えていく先は予想がつく範囲です。
※もちろん全ての貧困家庭に当てはまるわけではありません。
その意味から、経済的な支援に加えて、それ以上に専門的な
ソーシャルワークやケースワークなどが
より必要になるでしょう。むしろ、人の手による支援を
厚くする方が優先なのかもしれません。
本書で事例となっている大阪のような大都市は
地方や山間部と比較してお金の消えていく先が無数とあります。
ただ、経済的支援を厚くするだけでは砂漠に水をまくようなものでしょう。

また、然るべき機関には計算ワーカーと揶揄された事もある
ような人ではなく、専門的な教育を受けた人間を
配置する必要もあると思います。
それは然るべき機関だけではなく、高校も同様だと思います。



昨年度末より、派遣切り、派遣村などで
メディアが貧困に関して焦点があてており
貧困に関する本も、大小様々なものが出版されています。
そして、当然のようにというか残念な事に政治の道具に利用
されている感も否めません。

高校中退という現象は昔からあるでしょう。
ですが、本書にあるデータから
その中退の傾向が変化してきている様子が伺えます。

スチューデントアパシーなどと言われ
無気力の賜物と解釈されていた高校中退の原因が
格差の拡大によって起こる貧困に端を発するという
側面を強調している本書。著者の
「新自由主義が格差を拡大させた」
という主張により

読む人によっては不快になるかもしれません。


しかし、どのような理由をつけても
増え続ける中退者、そして増え続ける貧困家庭。
それらは事実としてあります。
その点を自己責任で片付けるには
問題の規模が大きすぎるような気がするのです。

本書の感想ですが
ひとつ難点を挙げるとしたら
ドキュメントと論文がごちゃまぜになった
章立てでしょう。
1部2部とわけていますが
データで論じる部分と事例を載せる部分を分けた
方がよかったかなという印象です。
ですが、著者の提案の一部や細部は別としても
概ね共感をもって、かつ多くを考えさせられて
本書を読了しました。

最後に、18世紀イギリスの政治家であるエドモンド・バーク
の有名な台詞を提示して本書評を終えたいと思います。

「教育は国家にとって安くつく防衛手段である」








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