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紙の本
人形のふしぎ
2006/06/04 22:21
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
お山のお世話をする山の主さまたちや、お天気をつかさどるものたち(風師や雪師など)たちのお話を集めた連作短編集。
作者さんらしいやわらかいお話たちでした。
この人のお話を読むと、やさしいというのは、かなしいや、せつないとイコールなのかもしれない、なんて思うことがあります。
もちろん単にやさしくこころ温まるお話たちもあるのですが、ときどき、やさしくあたたかいからこそ、かなしみが底の方からコポコポと湧き出てくるように感じるお話もあるのです。
今回の表題作にして描き下ろしである中篇『ゆきのはなふる』は、そんなお話でした。
一緒に収録されている、他のお山の主さまたちの恋物語なども、素敵なお話ですが、今回はやっぱりこの表題作が一番です。
雪を降らせるのが仕事である雪師の幻宵は、ある日、とても繊細な造りの等身大の人形(ヒトガタ)を拾います。そのまま捨て置くのも忍びなく持ち帰り、「雪花」と名づけて手元に置くことにするのですが、雪花は、幻宵たちが口ずさむ唄などに反応して動くことが分かります。
人形なのに姿かたちは人間と変わりなく、動く。魂があるかのようなのに、人形。
雪花の存在をどう受け容れればよいか戸惑う幻宵ですが、見つかった造り手から、あることを聞きます。
これは、「人形」という不思議な存在のお話であると同時に、喪失についてのひとつのお話。
やわらかで切なくてやさしいこの物語と、作中の唄の響きが、とてもよく合っています。
下に唄の一部を引用しますが、最後まで読むと本当にすてきなので、ぜひ作品を手にとって味わってみてください。
北風木枯らし吹いたなら お山に冬が参ります
ひいらり白く枝の先
ゆきのはなふる はなのふる
霜が降りたらお魚は 苔を枕に水の底
しんしんつめたいお星さま
ゆきのはなふる はなのふる
紙の本
優しいだけではない物語。
2020/05/04 22:09
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投稿者:なまねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主様シリーズ完全収録。
わかつきさんらしいふんわりとした絵柄。
しかし時々、登場人物のせりふにどきりとする。
「はるつぼみ桜色」の香珠姫のせりふ、「そうやっていつまで生殺しにしておくおつもり?」とか。
「ゆきのはなふる」の瓏芫の「ヒトそっくりなものがヒトではないのにヒトの形をして動くのです」「つくってはいけないものでした」とか。
そういうところが好きなのだと思う。
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