なまねこさんのレビュー一覧
投稿者:なまねこ

空挺ドラゴンズ 1 (アフタヌーン)
2020/02/10 21:26
ファンタジー苦手な人も。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
絵柄がジブリっぽいなというのが表紙を見た時の第一印象。
個人的にはあまりファンタジーが得意ではない。でもこれは面白かった。
生き物を狩って解体して、売って、食べてというリアルな生活に密着した話だからというのと、ファンタジーにありがちなややこしい世界観の解説がないから(というか不要)だと思う。
登場人物たちのキャラも魅力的。今後の展開が楽しみ。

北北西に曇と往け 1 (HARTA COMIX)
2019/07/28 21:55
続きが気になる。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
初の入江さんの漫画。表紙に惹かれて購入。なんとなく読む前は北欧の日常系の話かなと勝手に思っていたけれど、主人公は17歳で探偵で、ハーフらしいし、車と意思疎通ができるらしいし、一体この先どうなっていくのかとても気になる。あと、アイスランドに行ってみたくなる。

猫を棄てる 父親について語るとき
2020/06/13 22:23
物語の源流。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
村上春樹版ファミリーヒストリー。といっても主に父にまつわる話。
小説でなくエッセイである。
村上春樹に限らず他の作家であっても、作品を形作っている一端は確実に家族との時間なのだろう。
その時間が人によっては穏やかで幸福な思い出として記憶されていたり、苦い確執であったり、あるいは両方がないまぜになっているものだと思う。
あとがきに「身内のことを書くというのは(少なくとも僕にとっては)けっこう気が重いことだった」とある。
それでもこうしてひとつの作品となっているということは、なんらかのわだかまりがある程度は昇華されたのかもしれない。
「一滴の雨水」として、歴史や思いの一端を次につなげていこうという作者の意思を感じる。
血のつながりもないただの一読者ではあるが、そう思った。

愛がなくても喰ってゆけます。 (F×comics)
2020/04/12 21:54
読むたびにお腹が空く。
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「YながFみ」という漫画家とその周囲の人々の、食にまつわる短編集。
一応、実在する人物とは一切関係ありませんとの但し書きはあるのだが、どうしても何割かは作者本人の実話なのかなと思ってしまう。
それはともかく、登場するお店などは実在(2005年当時)するそうなので、いつかいってみたい。
とにかくどの食事もデザートもおいしそう。
白黒画面でここまでおいしそうに描けるのは、やっぱり作者の食べることへの愛ゆえだろうか。
グルメレポートだけでなく、人間観察というか、登場人物の描写が深く、実在感がある。
一話一話は短いけれど薄っぺらくない漫画だと思う。

地獄の楽しみ方
2020/02/23 21:52
言葉で地獄を渡り切る。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
十代の聴講生たちに行われた特別授業をまとめた本。
十代から遠く離れて久しい私にも、充分面白く読めた。
久しぶりの京極さんの本だったが、小説でなくともやはり京極節。
そして一問一答以外は、ちゃんとそのページで文章がおさまっている几帳面さ?も相変わらず。
「言霊は、心以外には効きませんが――心にだけは効くんですよ」
言葉は使いようによって、あるいは受け取り方によって呪いにも祝いにもなる。
言葉なんて捨てて生きていくといっても、そう考えた時点でもう言葉を使っている。
どうせ使わなきゃならないんだったら、より使いこなして生きていく方が楽しいかも。

流浪の月
2020/07/23 22:33
静かに生きることの難しさ。
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
赤の他人の九歳の少女と十九歳の青年が、二人きりで二か月間生活を共にする。
保護者には連絡もなく、少女は行方不明扱い。
この事実だけを見て誰もが、これは小児性愛者のわいせつ行為目的による誘拐事件であると、ごく「自然」に了解するのだろう。
少女に何もなかったわけはないだろう、と。
真実はまったく異なるのに、「被害者」が言えば言うほどかわいそうだと思われ、ますます「普通」のひとたちから乖離していく。
どんなに言い募っても、ひとは自分の信じたいものしか信じようとはしない。
そのことが怖ろしいと思う。
更紗と文の行く先は明るい未来とはいえないのかもしれない。
静かな暮らしが過去に脅かされる日がまた訪れるかもしれない。
でも、もう二人はどこへでも行けるのだ。
名前のつけられない関係性でも、他の誰にも理解されなくてもいいじゃないかと、声を大にして言いたい。

タイタン
2020/07/05 21:43
働く意味、仕事の意味。
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ほとんどの人間が仕事をせず、一生を終える未来の世界が舞台。
そこでは人間のかわりに、AI「タイタン」があらゆる「仕事」を行っている。
しかし、世界にいくつか設置された「タイタン」のうちの「コイオス」の不調が発覚。
主人公の心理学者がカウンセリングを試みることになるのだが……。
個人的には非常に面白かった。
昨年連載された作品のようだが、現在のコロナ禍に読んだせいか、働くこと・仕事とは何なのか、コイオス同様考えさせられた。
作中、その答えが主人公の内匠により語られるのだが、ひとつの見解として納得。

エドワード・ゴーリーの世界 改訂増補新版
2020/06/18 22:10
コレクター必見。
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膨大なゴーリー作品を網羅とはいかないまでも、書籍だけでなくポスターやTシャツなどのグッズの写真も掲載されている。
豆本やタロットカードなど、眺めるだけでも楽しい。
ゴーリーの本は、主に不幸・残酷・理不尽・不条理なのだが、不思議と嫌悪感なく読めてしまうし、どこか滑稽味があるところが良い。

棒がいっぽん (Mag comics)
2020/04/04 21:11
引き算のよさ。
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細部まで描きこまれた漫画、たとえば「乙嫁語り」のような作品も好きだけれど、高野さんのようなあっさりした線で描かれた漫画もいい。
あっさりといっても手間を省いた感じは一切なく、むしろ必要な余白だからこそ白いまま残してあるのだろう。
1987年(昭和62年)から1994年(平成6年)までの短編6作が収められているが、恐ろしいほど古びていない漫画。
「奥村さんのお茄子」もいいけれど、「美しき町」「病気になったトモコさん」の映画のような終わりのシーンも印象的。

自分を操る超集中力
2020/03/09 21:34
お得感がある本。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
年齢のせいか、なかなか集中できない……と思っていたので、読んでみた。
わかりやすく、集中力を高めるための手法が具体的に書かれている。
このページ数にぎゅっと詰め込んだ感じで、すぐに実行できそうなことも多い。
集中できないと思っている人、一読の価値あり。

ヘンテコノミクス 行動経済学まんが
2020/02/06 20:39
とてもわかりやすい。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
行動経済学、と聞くと難しそうなきがするけれど、漫画なせいか、すんなり読めた。
絵柄はなんとなく昭和の4コマ漫画を彷彿とさせる。好みの合う合わないはあるかもしれない。
ついつい真ん中を選んでしまう(極端回避性)、無料の誘惑作戦など誰しもやってしまいがちな行動も
この本を読んで納得できるのでは。

虐殺器官
2020/01/16 20:27
SFファン以外の人にもぜひ。
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主人公の米軍大尉クラヴィスが各地での内戦や虐殺の影にちらつくジョン・ポールという謎の男を追う、というのが大まかなストーリー。よい物語は要約が短いというのは本当かもしれない。SFという言葉で縛ってしまうのがもったいない、現在や未来の有り様を考えずにはいられない物語。残酷な描写もあるけれど、幅広い世代に読んでほしい。

ご近所の博物誌 (Jets comics)
2020/06/21 17:12
架空の動植物が魅力的。
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都から来た博物学者の二羽と、彼女の手伝いをする羽目になった三稜。
両親を亡くし、村長の家に住む三稜はいたずら者で、村人からは厄介者扱い。
しかし二羽の好奇心に巻き込まれていくうちに、三稜も世界をもっと知りたいと思うようになる。
ゆるい異世界物で、わかつきさんらしいふんわりした雰囲気がいい。
各章に登場する動植物が面白い。
「一客一亭」にちらっと出てくる、二本並べて植えると際限なく伸びる花が地味に好き。
この本の影響で牧野富太郎と寺田寅彦を読んだ覚えがある。

世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか
2020/06/19 22:25
今の時期だからこそ納得。
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NHKの番組で著者に興味を持ち、読んでみた。
2月の終わりに購入したと思うが、その頃よりも(新型コロナウイルス蔓延後の)現在の方が内容に深く納得できた気がする。
本書では「価値の危機」「民主主義の危機」「資本主義の危機」「テクノロジーの危機」、この四つの危機の根底にある「表象の危機」の五つの危機を扱っている。
同じ著者の『なぜ世界は存在しないのか』は哲学素人の私にとっては難解であったが、本書はインタビューの書き起こしだからなのか、非常にわかりやすく読みやすかった。
トランプ大統領の言動の捉え方、GAFAに対する考えなど、そういう見方もあるのかという発見があってよかった。

白銀の墟玄の月 4
2020/05/10 22:05
長い長い歴史の始まり。
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おそらく他の作家なら、驍宗の脱出を劇的に描き、そこからは畳みかけるように泰麒と驍宗側の人々が破竹の勢いで阿選を打ち破り王宮へ帰還、更には慶や延などの面々もやってきてめでたしめでたし、とするのでは。
しかしそうはいかないのが小野不由美さん。
すんなりと事が進むとは思っていなかったが、それにしても四巻は結構つらかった。
でも、やはり読んでよかった。
戴は失われたものがあまりに多く、いろんな問題も山積しているけれど、それでも今後は長い歴史を築く国になっていくのだろうと思う。
いや飽くまでも架空の国の話だけれども、そう思わせてしまうところが十二国記。
琅燦の胸の内が今ひとつわからなかったので、スピンオフなど出るといいなあ。