紙の本
実行に移された日米開戦。
2011/03/20 07:18
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マハンといえば『坂の上の雲』での主人公秋山真之が師と仰いだ海軍戦略家である。しかしながら、その海軍戦略家であるということはマハンの一面であって、外交問題や民族、宗教も含めて多角的に物事を論じた人物である。
本書はそのマハンの海上権力論の要約で構成されたものだが、読み進むうちにアメリカがマハンの対日政策と対日観を如実に実行したことが理解できる。白人優位主義、キリスト教原理主義とも思える発想がその根底にあるが、日本のハワイ移民から始まる日米の対立構造は日清戦争直後からのことに注目すべきである。日米開戦の発端は日露戦争勝利による満洲を含む中国市場の機会均等という開放政策の対立かと思いこんでしまうが、それ以前からの問題であったことは認識を新たにしなければならないだろう。
さらに、日本から見れば広大な北米大陸だが、マハンから見れば大西洋、太平洋に挟まれた島国の発想をし、太平洋の沿岸防備のためには何が何でもハワイをアメリカ領土にしておかなければならないという異常なまでの主張に驚く。
日米開戦はハワイ、カリフォルニアへの日本人移民による対立が始まりであると言っても過言では無いが、真珠湾攻撃の前に宣戦布告と同じ意味を持つパナマ運河の封鎖措置に出たアメリカの過敏なまでの行動原理はマハンの戦略にあったことが理解できる。
本書は日米開戦に興味を持たない方には何ら面白みは感じられない。しかしながら、根本的な問題は何であったのかを考える方にはまたとない参考書になりうる。
読みこなすに大変な一冊だったが、マハンの廻りくどい文体の原文を暗記していた秋山真之の頭の中の構造はどうなっていたのだろうか、そんなことが頭をよぎるものだった。
紙の本
アメリカ海軍の軍人マハンの海洋戦略についての考え方がよくわかる一冊です!
2020/03/27 09:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカ海軍の軍人であり、歴史家であり、また戦略研究者でもあったアルフレッド・セイヤー・マハンの著作を収録したものです。彼は、主として海洋戦略・海軍戦略・海戦術、及びシーパワー・制海権・海上封鎖・大艦巨砲主義などに関する研究を行い、なかでも古典的な海洋戦略を展開した『海上権力史論』は、今でも世界各国で読まれ、研究されている名著です。また、彼は、「世界の諸処に植民地を獲得せよ。アメリカの貿易を擁護し、かつ外国に強圧を加えるために諸処に海軍根拠地を獲得し、これを発展させよ」との持論をもっていたと言われています。同書を読むことで、彼の海洋戦略の考え方がよくわかります。
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マハンは近代海軍戦略の基礎を築いた戦略論の古典的泰斗で、彼の著作や論文は現代でも国家戦略、軍事戦略を考える上で決して外せない必読の書である。そのマハンの代表的な論文をいくつか取り上げ、紹介している本書は危機的な状況を迎えつつある日本の外交戦略を再考する上で、まず手にして欲しい重要な文献である。
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近現代の国家戦略における古典的な名著の抜粋版として、購入。
このような古典にありがちな、現代に置換えて理解する作業は、論文本文には当然必要であり、サクッとは読めない。
但し、序説に解説が詳しく著述されており、その部分だけを読むこととし買う価値あり。
当時のアメリカ合衆国の利益追求の為に軍人である著者の論文であるが、著述が、現代のアメリカ合衆国にも影響しているのが確実と思われるのは、1隻何千億円もする豪華な原子力空母を世界一保有している現代のアメリカ合衆国を理解に通ずる古典でありかつ名著。
もしかするとアメリカ合衆国の外交政策にとっての聖書・経典なのかも知れない。
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同書の真価を認めたのはイギリスであった。
1893年にマハンがイギリスを訪れたとき、ビクトリア女王がバッキンガム宮殿の晩餐会に彼を主賓として招いた。
ドイツは、皇帝ウイルヘルㇺ2世が「これは第一級の古典的研究である」と称賛した。
日本は、金子堅太郎がアメリカに居て読了し、1892年日本で出版した。
* 驚いたことにマハンは1867年蒸気スループ艦で副長として日本に1年以上も停泊していた。であるからマハンは『街角に大小を差した侍』を見ている。
当時27歳のマハンは神戸付近の山岳を探勝し、「目の覚めるほど美しい」と称賛している。それはそれ、マハンが親日家と言うわけではない。日本を知る、日本の自然を称える外人を、親日家と称して喜ぶがそれは大きな錯覚だ。知日家が正しい。
40年後マハンは既に対日戦争の計画の立案に参画していた。
アメリカ海軍が日本を敵国と想定したのは1875年と言うから、明治維新から間もなくの事であり、日清戦争の遥か前である。
『日本は、西洋の物質文明を吸収、享受する半面、西洋の「宗教的理念」を受け入れようとしないので、両者は衝突する運命にある』、とマハンは説いた。
マハンはアジア人を「劣等民族」とみなしていた。マハンはカルフォルニアの日本人移民問題には極端な排日論者であった。
アメリカ海軍が日本を仮想敵国として「オレンジ計画」に着手したのは1906年である。
○ 仮想敵国とはと定義する。「その国の親疎に論なく最大勢力を持って我に対しえる一国をとり、仮にこれを想定敵中目標とする」
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加藤寛治は、(1870~1939)海軍兵学校主席 最終履歴、海軍大将
1893年2月、マハンが、「ハワイと我海上権力の将来」を執筆しているとき、加藤寛治は巡洋艦浪速でホノルルに向かった。後年加藤は回顧して、「当時の微々たる米国海軍力に対し、わが最新鋭艦を背景にすれば、アメリカのハワイ領有は未然に防ぐことが出来た」と臍をかむ思いであったと言う。(当時、日本はイギリスに次ぐ太平洋上の海軍国であった)
* 日本人なら勇ましい話と思うがこれは錯覚である。
日清戦争の直前であり、ましてそのあとの日露戦争時でも英・米に後押しをしてもらわなければどうなったかはわからない国力の日本である。一時的にその地域で海軍力がほんの少し勝っていると言って行動に出るのは愚かである。
1941年、太平洋ではわが方が有利であると言って、「1~2年は暴れてご覧に入れる」と山本五十六は大見えを切ったが、その後は見るも無残、悲惨であった。
1942年6月5日、(口ほどにもなく)1~2年どころか開戦して僅か半年で、ミッドウエー海戦で敵に質量とも優る戦力を持っていながらも大惨敗。この時点で太平洋戦争は事実上終了した。
遡る1893年に山本五十六のような考えの持ち主が先輩の加藤寛治がいたという事は驚きであり悲しい。日本人の習性かも知れない。しかもこの二人は無責任な大衆と違って海軍兵学校の首席と二位の秀才であつた。
日本海軍は、マハンよりもマハン的な教条に凝り固まっていた。日本の戦略は、戦艦中心主義、主力艦隊決戦、船団護衛の軽視などどの点を取ってみてもマハン理論を一段と硬直させたドグマであった。マハンの影響は日本においては破壊的、破滅的であった。それはマハンの影響というより、マハンの理論の選択的・恣意的・意図的な曲解、誤解、歪曲の結果と言うべきであると訳者は解説している。日本海軍の指導者を真珠湾攻撃に導き、東京湾上での無条件降伏をもたらしたのはマハンの亡霊であった。
一方ルーズベルトはマハンの弟子として、マハンの戦略ドクトリンを適用して、対日勝利の道を築いた。
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諸国家の海上権力を左右する主要な条件として次の諸要素がある。
1) 地理的位置
2) 地勢的形態
3) 領土の規模
4) 人口
5) 国民性
6) 政府の性格
1] の地理的位置、一国が陸上で自衛手段を講じる必要もなく、自らの領土を陸続きに拡張する誘惑に駆られないような位置にある場合は、進出の目標を専ら海上に求める事が出来るので、大陸国と境界を接する国よりも有利である。
2] 地勢的形態 長い海岸線を有していても、港湾が無ければ、その国には海上貿易も海運も海軍も発達しない。
3] 領土の規模 海岸線の長さは城壁の様なもので、守備隊の兵数は海岸線の長さに比例していなければならない
4] 人口 海運に関連した人口が多いことが、古今を通じて海上権力の要素である。
5] 国民性 もともと同一人種である英・蘭は天性の実業家であり、生まれつきの商人である。貿易事業に彼らほど素質の無いヨーロッパ諸国は、フランスのような大国ですら、英・蘭二国の船舶業とその植民地の産物を必要とするようになった。政治家が如何に先見の明に富み細心であろうとも、人々の間に自発的で強力な衝動がない時は、これを政治家の努力に依って、埋め合わせる事は出来ない。P82
6)政府の性格
このような論考は戦略の領域に属する。これに反して戦術は人造の武器を手段に用いるので、人類の変遷や進歩につれ時代とともに変化するものであり、戦術上の理論を修正したり、全面的に改変したりする必要が生じる。
○ 1890年「過去4半世紀の間アメリカで支配的な理念は、自国の産業発展のために国内市場を保護するという事であり、それは選挙のたびに強力に主張され、政府の方針になった。
* それは現代に続き同じで変わるところはない。
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*民主党、社民党、公明党、そして公務員を主体とするエリーとには読んでもらいたい。
○「今日では諸国において一般に、往時よりも戦争を憎悪する気持ちが高まっている。
我々は利己的で貪欲であることは先祖より落ちないにしても、平和の破綻に伴う苦痛や苦難の厭う気持ちは、我々の方が強い。しかしこの極めて貴重な平和を維持し、貿易の利潤を邪魔されることなく享受し続ける為には、相手国とほぼ互角の軍事力を備えて対抗できる用意が無ければならない。今日ヨーロッパ諸国の軍隊が抑止されているのは、決して現状が良しとしているのではなく、それぞれの敵国に軍備が整っているからである」P98
「国際法の制裁力や大義名分や正義というものは、弱小国が大国・横暴国を抑えて紛争を公正に解決するための頼みの綱とはならない」。
七つの海を制する覇者英国から独立戦争に勝ち抜いた、大国アメリカの言である。
* 民主党、社民党、公明党、日本のリベラルなエリート達の言う国連中心主義者たち、憲法9条を金科玉条として崇め唱えている日本のエリート達は、金子堅太郎が100年以上前に日本の官の必読書としたこのマハンを読んでいるだろうか。エリートだから当然読んでいるだろうが、先に書いてあったように読み手が、自分に都合の悪いものは意図的に曲解してしまうのであれば役立たずだ。
* サンドウイッチ諸島[ハワイ]への関心、執着に、アメリカ人は病的と思えるほどである。確固とした独立国ハワイに対し既に自分の領土のように振る舞っている。
ハワイはあまりにもちっぽけな弱小国で超大国に見込まれたその時点で、その運命極まれりであった。
ハワイが太平洋のど真ん中に類例を見いだせない要衝であれば、沖縄も東アジア大陸を抑える戦略的島礁である。これも他に類例・代替を見出せないのはハワイと同じである。さらに維持コストは日本持ちときている。アメリカが何で沖縄を手放せようか!
韓国の竹島への有無を言わせない実効支配、中国の尖閣諸島及びその界隈への暴虐な行動と同じ類のものである。
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* 善隣は、はたして平和を愛する諸国民であろうか!
周りを見まわせば、中国、韓国、北朝鮮、露西亜、東は亜米利加である。これらが本当に公正と信義を持ち続ける国であると信じられるのか!周囲は皆核保有国である。
辻本清美が記者のインタビューに答えて「日本の行くべき道は非武装中立です」と見栄を切った。たまたま例に辻本の名を上げたが、このような日本をことのほか排撃する否(ひ)日(にち)的日本人が、国を代表するエリートたちに犇(ひし)めいている。この類は軍備は持つな、持てば相手国まで到達する攻撃機の給油装置を外せ、爆弾の懸架装置は外せ。専守防衛には攻撃的兵器は必要無いとくる。長年の平和の下で柔弱に流れている一般国民を焚きつけ、扇動し、自国の戦力撤廃を削減を叫ぶ者たちは日本人ではない。
アルフレッド・マハンは、百数十年前に既にこういった考えをする者に嘆いていたのである。そして以下のように記している。
○ 「近年、軍備を全廃を要求する声が不吉にも高まってきている。世界中の国が
剣を鋤に打ち直し、槍を鎌に改鋳して平和に徹する日の到来するのを心から待ち望む点にかけては、筆者(マハン)は、人後に落ちるものではない」
○ 「しかしながらアメリカをふくめてヨーロッパの文明は、見せかけの空辣な平和に安んじていてもよ���気楽な状況に置かれているのだろうか!」
○ 「一旦有事の際、国民の正義感の高揚に待つのではなくて、国際司法裁判所に安心して平和の維持を託してよいのであろうか!」
○ マハンは古人の言を引用して言う「法律なるものは正義の侍女に過ぎない」
日本国憲法 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
1)戦争の放棄
2)戦力の不保持
3)交戦権の否認
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*日本国憲法をマハンが見たら目を疑うだろう と言うより仰天するであろう。
マハンは唱える 「わが現代文明を存続させていくのに、軍備全廃が最も有望な手段だと考えられるほど前途の見通しは明るいであろうか?」 p145
ハワイと我海上権力の将来P116~P139
ハワイの重要性を繰り返し述べ、もしハワイの様な重要地点が仮想敵国によって占拠されるならば、我が国の太平洋岸および太平洋上の貿易が重大な脅威を蒙るであろう。
*(日本人は百人中百人がハワイと言えば常夏の島の観光地、芸能人の群がる保養地を思い浮かべるだけだが)、アメリカ人にとっては太平洋の要(かなめ)の戦略地としての想いから、ハワイに神経質になっていた。太平洋はアメリカ人の湖沼なのである。
そこへ 前記したように1892年加藤寛治が火を点けようとし、1941年には
山本五十六が火点けを実行して電光石火日本艦隊は立ち去った。アメリカ人は怒った。
戦争介入を嫌っていた米国一般大衆も怒った。“ジャップをたたけ!”戦争だ!
一部はほくそ笑み嗤った。
*今日2月15日、紀伊國屋書店他(アメリカ史の真実C,・チェスタトン著を購入に)を回ってみたが、店頭には山本五十六の本の平積みあり、棚差しあり、在ること在ること、五十六は神様扱いである。冷静に歴史を見、考えるのではなくこれはもう日本の宗教である。
○「ヨーロッパ文明はキリスト教の加護の基に成長したのであり、その精華は今なおイエスの聖霊を発現しているのである。ところが東洋の思想家たちは、キリスト教の伝統に縛られること無くヨーロッパ文明の物質的進歩を摂取できるのは、有利な事であってなんら害はないと考えているが、それは憂うべきことである」
*この考え方はキリスト教徒白人たち全体の忸怩とした共通した思いである。
同時代にイザベラ・バード女史が、日本紀行文の中で、日本紳士が宗教をあざ嗤った事に対し、キリスト文明の創った物質面のみを享受した猿(さる)!と立腹している。
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「教化されたキリスト教世界に課せられた偉大な任務、この使命は達成されねばならず、さもなくば滅亡しかないのだが、それを取り囲んでいる圧倒的に人口の多い種々の古来文明、とりわけ中国、インド、日本を懐柔し、それをキリスト教文明の理想までに高める事である」。
「西洋文明の優位こそが、わが人種のみならず広く世界全般にとっても、将来への最も明るい希望を抱かせるものと考えざるを得ない」
マハンのほんの一部の抜粋でも欧米人の心の内が判ろうと言うものである。であるから金子堅太郎はマハンの「海上権力史論」を持ち帰り、官は必読せよと緊急に翻訳し出版した。
◎「武力の行使は海外進出に役立つだけでなく不可欠である。(それは)インドやエジプトに於いて達成された、人類にとって巨大な進歩?は、組織化された物理的な力の行使によって可能になったのであって、今なお武力の維持に大きく依存している」。
◎「思想の次元を異にして共通の規範の無いに文明間のバランスが乱される危険に備えて、武力行使の用意が無ければならない」
○ 「他国の難局に乗じて自国の利点を追及し、正義に基ずかない利益や譲歩を強要するというのは、我が国の誇りが許さない」。
*著者が心底このように思っていたと信じたいところだが、鵜呑みにするべきでもない。(これは大切である)
アジアの問題
○ 「アジア諸民族の常態は、ある面では、羊飼いを失った羊の群れの常態に酷似しているかも知れないが、彼らは飼育された羊の常態では決して無い。アジア人の天性の性格が個々人に現れるときには、剛健でエネルギッシュかも知れないのだが、アジア民族の精力の大半は発展を頑迷に拒み停滞状態にしがみつくことに浪費され、その結果遂に社会制度であれ、政府形態であれ、自力再生が明らかに不能な状態に陥ってしまう」
○ 結局どのような結果に落着するかは、我々の現在の視界をはるかに超えている」
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○ 「我々はこれまで、この巨大なアジア民族の周辺部と接触して来たのに過ぎないのだが、この大群を我西洋文明の中に組み入れることは、今後人類が解決すべき最も重要な問題の一つである。そして我々の間でも数世紀にわたるキリスト教の伝播によって徐々に形成された理想を、アジア民族が吸収しうるだけの時間を与えてやる必要がある」
*完全に上から目線の西欧中心の世界観である。しかしアジア民族の大衆が長年の間、為政者たちエリートによって虐げられ、塗炭の苦しみに喘いだ苦界が固定化されていたことを思うと、癪ではあるが彼らの憐みの視線を完全否定はできない。
○ヨーロッパ文明が接合したことによってアジア文明に属する人々に個人的・社会的・政治的福利の最良の果実を齎(もたら)したことは確実である。
◎ まさにそうした変化が日本で達成された。
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9月末に閉店してしまった「松丸本舗」で見かけて、気づいたらカゴに入っていた一冊。
マハンは、海上からの戦略(シーパワー&シーレーン)についての研究者、になるのでしょうか。
ん、司馬さんの『坂の上の雲』でも取り上げられていて、
ドラマでも出てきていますので、聞き覚えのある方もおられるかもですね。
こちらはそのマハンの出した論文の抜粋・ダイジェスト集になります。
ポイントは丁寧に押さえられていて、マハンの提唱する理念について触れるには十分かと。
”国家の海上権力を左右する主要な条件として、次の諸要素を挙げることができよう。”
1)地理的位置
2)地勢的形態(これと関連して天然の産物と気候をも含む。)
3)領土の規模
4)人口
5)国民性
6)政府の性格(国家の諸制度を含む)
ちょうどタイミング的に『自由と繁栄の弧』の再読と並行したので、いい相乗効果でした。
というのも、その麻生さんの理念とも非常に合致する内容と感じたからです。
”野蛮状態とは、わが文明に内在する精神を吸収することなく、
その物質的進歩のみを摂取するのに汲々たる人びとの文明のこと”
そう見ると非常に理解しやすく、「日本」の行く先も見えてくると思います。
ん、「弧」に日本の生存圏も乗ってくるのであれば、喜んで「伴走者」となりたいところです。
”三ヵ国(英・米・日)は、顕著な海洋国家”
マハンの生きた19世紀当時、アジア圏で第一に西欧化したのは日本であって、
次に来るのは「支那(china)」であろうとは、マハン自身の言でもあります。
そして(支那が)真っ当な手段で西欧化してくればよいのだが、
してこないのであれば、封じ込める必要があるとも、言及しています。
ちなみにここで言う「支那」は、当時支配下に置いていた朝鮮半島も含んでいます。
”戦闘の状況は、武器の進歩につれて、その多くが時代とともに変わるけれども、
歴史を学ぶことによって、一定不変の原理を見出しうる”
ここで言う西欧化は、当時の国際水準での普遍的な価値、すなわち、
民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済を、実現しているかとの視座になりますか。
今の判断基準で見ればいろいろと至らない点も多いでしょうが、歴史の事象を判断するに、
当時の状況を鑑みずに今の価値観だけで読み解くのは、かなり危険です。
なお、世界で最初に人種種別撤廃を明確に主張したのは、日本が最初だったりします(1919年)。
アメリカやイギリスの反対で潰されてしまいましたけども、、閑話休題。
”平和は、われわれの直面している状況を無視することによって達成されるものではない”
けだし、真理をついている一言だと思います。
特に、大陸国家である中共政府が、海洋権益への帝国主義的な野望を露わにしてきた昨今、
海洋国家である日本が、他の「海洋国家」とどう連動していくべきかを読み解く一助ともできるかと。
その「海洋国家」の候補としては、、アメリカ、オーストラリア、インド、台湾や、
フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマーなどのASEAN諸国が、まずはあがりましょうか。
ん、やはり『海上権力史論』の方も読んでみたいですね、、大学で借りてくるか、、
それなりに高いですが「基本書」として購入してしまうか、非常に悩ましいところです。。
19世紀位からのアメリカの国家戦略にも影響があるような、気がします。
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マハンの理論が日本に与えた影響や、海上権力を握るのに重要な箇所を分かりやすく訳しているので、マハンの入門に良い本です。西洋の海軍史を複雑に記す事の多いマハンの文章を、日本人向けに分かりやすく抄訳しているのは、講談社学術文庫のなせる技だと思います。
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ものすごい本だった…
表現が難解で、時折理解が追いつかないんだけど、言わんとしていることはぼんやり見てて、書いた時期を振り返ってはぞっとする。
そして中国もこれを読みこんでいるということ。
それを踏まえると、今の動きの意図が見えてくる。
日本はこのままだとまずい気がする…。
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http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?amode=11&bibid=TB10070891
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抄訳部分を読んでから序文に戻るのがいいかもしれない。マハンの論はかなり好戦的で「やられる前にやれ」「攻撃こそが最大の防御」と言わんばかりである。私は日本人なので台頭する日中に対する警戒心のこもったマハンの視点はなんとなく新鮮に映った。これまで「民衆⇔権力⇔戦争」の三者間に対する知識は蓄えてきたと思うけれど『権力⇔権力』の関係性にはいまいち関心が薄かったのだなと反省。中世までの戦史と地政学についてもっと勉強したいなと思った。当時の日本人の知への貪欲さを見習いたいが、捉われて現実を見失うことないようにしたい。
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茂木誠氏の推薦コメント。
「マハンの大著『海上権力史論』も翻訳があるが、読みにくいのでこちらをお勧めする。
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19世紀末に多くの論考を残したマハンの考えは、当時の帝国主義的な風潮を背景としたものである。アメリカは太平洋を隔てて東洋とぶつかるフロンティアである。したがって、国内産業に目を向けている場合ではないだろうというのがマハンの主張。キリスト教の精神で繋がっている共同体の一国であるアメリカがフロンティアにいるのだから、産業の利を活かし、植民地を見つけ、商業を円滑に進めるための海軍を整えよと説いた。