紙の本
『FULL DARK,NO STARS』の分冊その2
2016/07/31 08:29
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
そして『ビッグ・ドライバー』は不意の暴力に見舞われた女性の復讐譚、最後の『素晴らしき結婚生活』は連れ添った男が実はシリアルキラーであったことに気づいてしまった妻の苦悩。 わぁ、一言で書くとほんとに「容赦のない話」だ。
でも全編どうしようもない恐怖と絶望、ということもない。 妻が気づいたことに夫がすぐ気づくあたりは「ぞわーっ」となりますが、どことなくユーモアっぽいところや淡々とした記述があり・・・だからこそ要所要所でぞっとさせるんだろうけれど、全体としてそんなにしんどくない。
それは何故だろう・・・私が慣れたから? 語り手が女性だから?
それとも、大長編であればある程、登場人物に感情移入したり愛着が生まれたりして、そういう人たちを悲劇が襲うからつらくなるのだろうか? たいして知らない人であれば事実をそのまま冷静に受け止められるのか? ・・・なんだか「人としてどうよ」という気持ちになる。
『Four Past Midnight』(『ランゴリアーズ』&『図書館警察』)は面白かったし怖かったのにな~。
そんな私がキングにいちばん痛めつけられたのは『デスペレーション』です。
お気に入りは『デッド・ゾーン』と『IT』かなぁ。 やっぱり長編を読もう!(2013年7月読了)
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起こってほしくないこと、なってほしくない展開ばかりで、読むのがヤーな気持ちなのに、なぜかぐいぐい読まされる。伏線の小出し加減と、こっそりしのばせてあるユーモアのせいだな。
「ビッグ・ドライバー」は不愉快の割合が多いので、嫌い。「素晴らしき〜」はラムジーの造型が絶妙。
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「ビッグドライバー」と「素晴らしき結婚生活」の2編からなる一冊。
中編でしたが、どちらも読みごたえたっぷり。
読む人をあんなに葛藤の渦に巻き込みながらも救いのある結末。
倫理的、人道的にはいかがなものかと。
感情移入しながらページをめくる手が止まらず一気読み。
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一気読みでした。うーん、さすが巨匠!どちらの中編も女性視点で、スリリングで、感情移入して読みました。
ビッグ・ドライバー。単なる通りすがりの悪意かと思いきや、共犯が2人も!辛くも生き延びたテスが、暗渠の中で出会うものが、彼女に復讐を決意させる…負けるなテス!ラストの告白が、少しだけ救いになるところがいい。
素晴らしき結婚生活。…よかったねダーシー、旦那の帰宅直後に殺されなくて( ;´Д`)。女の感は鋭いので、長く一緒に暮らしていても、夫の正体に気づかなかったとしたら、夫は相当に頭がいい。そしてそんな夫を、確実に仕留めようと思ったら、それを気づかせないことも難しい。でも、やっぱり最後はよくやった!
というわけで、イヤミス?のわりに読後感の悪くない作品でした。キングが後書きで言う「普通の人が異常な状況におかれる話」、それが面白くて自分の好みなんだなあ、と今更納得。この後も新刊が出待ちしてるようで、大変楽しみ!特にシャイニングの続編〜早く〜( ̄◇ ̄;)誰の訳かな?
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中編集「Full Dark,No Stars」の後半2作を収録。
どちらも女性がトラブルに巻き込まれ、自分の手で決着を付ける話。簡単と言えば簡単なストーリーを、主人公の立場や性格やライフスタイルからじわっとと編み上げていく、キングが長編を書くときの手法が使われていながら、コンパクトにまとめられていて読みやすい。
陰惨といえば陰惨だが「1922」収録の2編に比べると、ひじょうに救いがあるカンジ。漆黒の闇にも、ちらりと小さな星が輝く。
マニアとしては「素晴らしき結婚生活」に、久々に登場するキャッスルロックにニヤリ。
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「高潔さは事を上首尾に終わらせることにあるのではなく正しい行いをすることにある」。分冊2冊4編中、3編は「いい」けど、最後の1編『素晴らしき結婚生活』は「すごい」。久々に興奮したー!
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「モダン・ホラーの帝王」スティーヴン・キングによる、2010年刊行の中編集"Full Dark, No Stars"から、既刊の「1922」に続く邦訳集。「1922」同様に”暗く容赦ない”2篇を収録。奇しくも、「1922」収録の2篇は男性が主人公だったのに対し、こちらは2篇とも、平穏な日常生活の中から突如恐怖と苦痛に見舞われた女性を軸に描かれている。
詳しくはこちらに。
http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2014-07-17
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久しぶりに,一日で読み終えなかった本。キングは昔から好きだが、これはキングが精神がかなり上にいったのでは?と思うくらい。私の歳くらいだとバンバン出てくる映画やらなにやらは、すっと出てくるが、あまり見ない人は比較が?になりそう。でも多分誰でも知っている範囲とは思うが…
一編一日ずつ読んだ。なかなかえぐさもあるのだが、多分現実からはそう遠くない感情だろう。映画やドラマじゃきれいごとになりそうな。しかし、ヒントを得たところがそれぞれあるとはいえ、これはフィクションだし。私が特に感心するのは、キングが男なのにここまで女性心理を書けること。わかったつもりで書く作家は多いがその域を出ない人がほとんどの中、キングらしい力量だ。
本当に彼の感性は素晴らしい。
相変わらずスピード感ある小説で、一気に読ませてくれる。
また私の中の神経が鋭くなり、ネガティブにもポジティブにもプラスになったそのことは良いのか悪いのかは答えを出さずにおいておこう。
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「怪物」を書き続けるキングが、怪物と人の間を揺れ動く、普通の人たちを描く。
穏やかな日常がある日理不尽に打ち崩される、そこまでは普段のキングですが、ささやかな幸せを維持しようと足掻くその前に、彼女達が嫌でも見据えねばならない正義とは、倫理とは。
この二篇は、今までのキングとはまた違う味わいを見せてくれる逸品です。
本編とは関係ありませんが、作者の後書きにある言葉に感銘を受けました。
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「セル」あたりから疎遠になってたキング作品。久しぶりの読書。映像がすぐ目に浮かぶ描写は素直に面白かった。ダラボン監督か製作でドラマ化して欲しい。
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「素晴らしき結婚生活」は、長年連れ添った夫の正体に気づく場面の緊張感と夫に対する吐き気を催すような不快さの描写が良い。
「ビッグ・ドライバー」は復讐が簡単すぎるだろ!とは確かに思うけど、この女性が悲惨な状態からなんとか逃げ帰るまでがキング。
起承転結の「転結」よりも「起承」の部分が見せ場だと思う。
そういう意味では、物語はオチが面白くないと、っていう枠からははみ出ている。
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前に読んだ『1922』の分冊。「ビッグ・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」の2編収録。
「ビッグ・ドライバー」は講演の帰りに大男に拉致され暴行を受けた作家が復讐を決意するという話。「素晴らしき結婚生活」は30年近く連れ添った夫が連続殺人鬼であると知った妻の行動の描く話。
どちらも普通の生活を送っていた女性が突如異様で狂気に満ちた状況に身を落とすという点で共通している。そしてどちらの女性も自分ひとりで決断し、きっちり行動に移す。
超常現象はないしホラー要素にしてもさほど強いわけでもない。その分、異様な状況におかれた人間の姿が濃密に描かれていて圧倒される。良い具合にキレのあるキングだった。
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妄想がまざっているとはいえスーパーナチュラルじゃないから不愉快さが際立つ。上手い。この手のはなしは家で読みたくない。
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日常が引き裂かれ、闇から圧倒的恐怖があふれだす!
巨匠キングが贈る「暗く容赦なき物語」2編
「ビッグ・ドライバー」
中年女性ミステリ作家のテスは、地方の図書館にイベントの講師として招かれる。
その岐路、ちょっとしたことから変更したことが、彼女の日常を引き裂くことになる。
拉致・暴行の末殺害されかかるも命からがら逃げかえる。
翌朝、彼女の心には「復讐」が刻まれていた。
日常的な飼い猫とカーナビを擬人的に描写し違和感なく会話させていることが素晴らしい。
「素晴らしき結婚生活」
もしも長年連れ添ってきた夫が連続殺人犯だったら……
主婦のダーシーは、骨董屋の夫ボブが連続殺人犯であることを示す証拠を、
ひょんなことから発見してしまう。
これまでの結婚生活が、子どもたちの成長含め素晴らしいものであったことが彼女を苦しめる。
やがて本人の口から明かされる過去の犯罪。
そして彼女がとった行動とは――。
疑惑の翌朝に、夫が隣で自分を起そうとしたところに恐怖した。
長年連れ添った夫婦でさえ、相手を理解することのむずかしさ。
途中経過は残酷なものの二編共に結末は裁かれない。これは救いなのかもしれない。
また、実は著者あとがきが一番おもしろかったりする。
ミステリ :☆☆
ストーリー :☆☆☆☆☆
人物 :☆☆☆☆☆
読みやすさ:☆☆☆☆☆
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「ビック・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」の2本の短編。
分冊された「1922」の片割れ。
「1922」がとことん救いがなかったのに対して、こっちは救いと言えないにしろ、真っ暗ではない。
が、やっぱ、後味が悪いんだよね。そこがキングたるゆえんなんだろうけど。
2作とも、帯にあるように「日常が引き裂かれ、」た女性の話になる。彼女たちは「圧倒的恐怖」からもがき立ちあがろうとうする。
と、書くと称賛される行動のように思えるのだが…。
彼女たちも結局は、怪物、だからなのだろうか。
そう、善良なおびえる被害者であると見せかけて、彼女たちは決してそうではない。それは彼女たちが行動を起こしたからというわけではない。
いや、その行動の根底にあるのは強烈な<自己保身>だからなのではないだろうか。
きっと、同じ話を他の作家が書くと、彼女たちは戦うヒロインとして描かれるのだろう。
キングだって、一応そんな風に描いている。
が、それは所詮<エゴ>なのだと、キングはページの向こうでうすら笑ってるそんな気がした。
にしても、なんで毎度分冊しちゃうんだろうな。
「ランゴリアーズ」&「図書館警察」はやたらゴツかったので仕方ないなって思ったんだけど、コレと「1922」なら分けなくても、と思うんだが。
分けない方が原題「FULL DARK,NO STARS」が染みてきたと思うんだけどな。