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紙の本
山田太一の、ひとつの答え
2015/08/27 07:20
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは2014年12月に、2夜連続でNHK総合テレビで放映されたテレビドラマのシナリオ。
いま、このようにシナリオだけ一冊の本になる作家はほとんどいないのではないかしら。山田太一はそういう点でも、稀有なシナリオライターといえる。
主となるシナリオのほかに、このドラマのプロデユーサーだった近藤晋による「回想シーンがまったくない“傑作”」と山田太一へのロングインタビュー「正義がどこにあるのか、分からない時代に」が収められている。
ドラマは、かつて青年海外協力隊の経験がある拓自という老人が自暴自棄になって自分にナイフを突きつけてきた青年次男と生活をともにすることで自身が経験した惨たらしい内乱の様と向き合い、生きることの意味、正義のありようをみつめる物語である。
近藤はこの作品のすばらしい点は「回想シーンがまったくない」ことだと書いているが、セリフだけで拓自という老人が経験したことを再現しているのだから、確かに最近のドラマでは珍しいかもしれない。
その分、そのシーンでの拓自のセリフは長くなっている。ドラマではこの役を松本幸四郎が演じたらしいが、これだけのセリフをしゃべれる役者も少なくなっているともいえる。
近藤の山田作品への評で「いつも凛として、人間を追っている」と表現している。
このドラマでいえば、拓自という主人公がまさにそうだ。青年次男に何かを教えるでもなく、かつて自身が見た何かに憑りつかれて命を捨てていった若者と次男を重ね、静かに次男を変化させていく。
いまどきそんな人間がいるのかわからないが、きっと山田太一の中では、変わることのない人間像なのだと思う。
また近藤はこうも書いている。
「大事なのは、「自分が存在するこの時代」に「どう生きるか」」、それを山田太一は一貫して描いてきたのだと。
それは、山田太一へのロングインタビューのタイトルと呼応しあう。
まさに私たちは「正義がどこにあるのか、分からない時代に」、ナイフと向かいあっているのかもしれない。
そして、この作品は山田太一の、ひとつの答えでもある。
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